第005話 ロスト・ネット・ワールド編その7
01 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)達の動き。
芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)達は離ればなれになっていたソナタ・リズム・メロディアス第六王女達と合流する事が出来た。
現在、彼らはロスト・ネット・ワールドという宇宙世界に来ている。
彼らのこれまでの動きは正に波瀾万丈と言っても良かった。
吟侍達は幼い頃、さらわれた友人達を救出するために四連星の一つ、風の惑星ウェントスに救出活動に来ていた。
だが、そこでトラブルに巻き込まれ、彼らは王杯大会エカテリーナ枠に出場する事になる。
その大会の最中に最強の化獣(ばけもの)クアンスティータが誕生する事件が起きる。
そのまま、吟侍は仲間と共に、誕生した第一本体(クアンスティータ・)セレークトゥースが所有する宇宙世界、セレークトゥース・ワールドで冒険をする事になった。
そのセレークトゥース・ワールドで尋常では無いほど大きな力を手にする吟侍達だったが、共同経営者【ぴょこたん】の助けもあって、力を制御してもらい、更に内向きに力を使う事も覚えて、吟侍達は現界(げんかい)と呼ばれる宇宙世界に戻ってくる事が出来た。
戻ったのもつかの間、彼らには様々な出来事があった。
そして、吟侍はクアンスティータの双子の姉であり兄でもあるクアースリータが所有する宇宙世界、ロスト・ネット・ワールドでの冒険を決意する。
吟侍と共にロスト・ネット・ワールドに向かったのは、
ソナタ、
ステラ・レーター、
エカテリーナ・シヌィルコ、
レスティー、
ディアマンテ、
聖魔妖精エクス/クェスの6名だ。
フェンディナ・マカフシギもロスト・ネット・ワールドに向かったが、彼女は自分の力と向き合うため、単独行動を取る事になる。
一方、ロスト・ネット・ワールドに来て早々、吟侍達はチームワークがバラバラになる。
【アコンルーク】という存在により感情操作を受けたソナタ、ステラ、エカテリーナの三名は別行動を取る事になった。
正体を現した【アコンルーク】との出会いを吟侍は無効にして、彼女達と再会する事になった。
だが、同時に、圧倒的な気配も彼らに迫っていた。
第二本体クアンスティータ・ルーミスの従属側体でもある第二側体、クアンスティータ・ソリイントゥスが吟侍に会いにやってきたのだ。
一挙手一投足が大きなプレッシャーを与えるソリイントゥス。
その行動理由は如何に?
吟侍達に緊張が走る。
02 フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスとのコミュニケーション
一方、フェンディナ・マカフシギは、七大ボスとの約束の場所のエリアに来ていた。
このエリアに来てやることは一つ。
七大ボスを呼び出す事だ。
【クライ・クライ・クライ・クライ】を追っ払ったというのと、それまで襲いかかって来た刺客達を退けて来た戦績が影響したのか、フェンディナ・マカフシギに襲いかかってくる敵はめっきりと減った。
七大ボスとの取り決めで決めていた特殊なパワーを彼女はひねり出した。
これは通常時に出すパワーではなく、酷く歪(いびつ)なパワーであるため、普通の存在はまず出さないし、出せない。
大きな力を持っている七大ボスクラスならまだしも、そこいらの刺客はまず出す事が不可能な不自然な波長のパワーだ。
つまり、このパワーを出す事が自分がこの地点に話し合いに来ているという連絡手段となる。
七大ボスとの会話を盗聴などして聞いていれば別だが、これは七大ボスの弱い方の5名だけに共通した合図だ。
弱い方と表現したのは強い方が存在しているからだ。
七大ボスの弱い方と強い方の内訳は、以下のようになっている。
まずは、弱い方の5名は、
フェンディナ、
【デュジル】、
【ラクン・シュアル】、
【バーンエディラ】、
【ヴェレイ】だ。
強い方の2名は、
【ウェルヴェレ】、
そして、クアンスティータになる。
【ウェルヴェレ】にだけはまだ会ったことが無いが、弱い方のフェンディナ以外の4名とはすでに会っていて再び集まる約束をしている。
弱い方の5名の七大ボスは同盟を結ぶ事による細かい取り決めを考えて、考えがまとまったら、集まるという事になっている。
正直、フェンディナ・マカフシギは考えはまとまっていない。
だが、ゆっくり時間をかけている暇は無い。
胸騒ぎがするため、一刻も早く話をまとめたいのだ。
フェンディナ・マカフシギは更に七大ボス達を待っている間、最強の【別自分】フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスを呼び出して話し合う事にした。
とにかく、やるべき事を手っ取り早く終わらせたかったのだ。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは呼び出された時、
「………」
と無言だった。
無口なのかな?
フェンディナ・マカフシギはそう思った。
それは、困った。
フェンディナ・マカフシギ自身もコミュニケーション能力に不安があるので、口下手なフェンディナ・マカフシギと無口なフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスでは話し合いにならない。
フェンディナ・マカフシギは相手に合わせる形で話合いをなんとかやってきたが、相手が無口だった場合、対処の取りようがない。
フェンディナ・マカフシギは、
「あの……、【ウェル・クァムドゥエス】さん、こんにちは。【マカフシギ】です……」
と自己紹介はしたが、後が続かない。
そのまま彼女も、
「………」
と黙ってしまった。
気まずい。
気まずい沈黙がしばし、支配する。
沈黙に耐えかねたのか、フェンディナ・マカフシギは、
「あの……あの、あの……」
となんとか話しかけようとするが、【あの……】の後が続かない。
元々、引っ込み思案な性格なのだ。
すると、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは、手のひらに突然、何かを出現させ、
「んっ……」
と言って、フェンディナ・マカフシギにその何かを差し出したようだ。
シュー生地に包まれた丸い物――どうやらシュークリームのようだ。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスはこれを食べろと言いたいのだろうか?
フェンディナ・マカフシギは、
「あの……食べても?」
と聞くと、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは、
「んっ……」
と言った。
どうやら食べて良いらしい。
フェンディナは小さく口を空け、パクッと食べる。
「……おいしい……」
と感想を一言。
それに反応してか、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは、
「んっ……」
と言った。
さっきから【んっ……】しか言っていないがどうやらなんとかコミュニケーションが取れているようだ。
それから、お互い無言で、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスが用意したお菓子類を食べていった。
最初は戸惑ったが、これがフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスのコミュニケーション方法なんだと理解するのにそれほど時間はかからなかった。
向こうが、【んっ……】しか言わないので一方的な話になるが、フェンディナ・マカフシギは自分が置かれている状況や協力して欲しいこと、趣味や、行動、仲間の事などを話し始めた。
時々、
「んっ……」
という返事だけが返ってきたが、それはフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスが理解しているのだと思えた。
コミュニケーションが苦手という部分については【別自分】の中でこのフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスが一番、フェンディナ・マカフシギに近しい存在の様に思えた。
フェンディナ・マカフシギは理解して居なかったが、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスが用意したお菓子も彼女の力の断片を表現していた。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスが用意したお菓子はみんな、自然界には存在しない食べ物――つまり、加工を必要とする食べ物だった。
誰かが作らないと出来ない物――それを一瞬にして出現させる力を持っているのだ。
これを【加工出現(かこうしゅつげん)の力】と言う。
敵を倒すという事をしていないため、その力の凄さには気づきにくかったが、これが実践で利用されるとしたら、どのような加工した物も出現させる事が出来るという事を意味している。
つまり、相当に強い力なのだ。
そういう凄い自己紹介に気づかず、フェンディナ・マカフシギはフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスと共に黙々とお菓子を食べ続けていた。
喉がつまりそうになったとき、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは出現させたカップに入ったジュースを差し出す。
これも加工品だ。
二人のフェンディナはまったりとした時間を過ごす。
平和です……
一瞬、フェンディナ・マカフシギはそんな事を思った。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスとの時間が他の【別自分】との時間よりも落ち着いていたからだ。
そんな二人に声をかける存在が――、
「――何をやっているのかしら?」
【デュジル1−1】だった。
どうやら、七大ボスが到着したようだ。
今度は、フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスと打ち解けるためのイベントから、七大ボス同士での話合いにシフトする事になる。
03 七大ボスとの再会――一触即発
【デュジル1−1】は、
「集合をかけたって事は条件面の提案がまとまったと受け取って良いのかしら?」
と言った。
【ヴェレイ】は、
「その顔じゃ、まだまとまっていないって書いている様なものの様な気がするけど、呼び出したのはどういう事かしら?」
と少々ご立腹なようだ。
フェンディナ・マカフシギは焦った。
確かに条件面での考えがまとまっていないのに話合いをする事はルール違反とも言える行為だった。
だが、彼女は退く訳にはいかない。
同盟を結ぶなら結ぶ、交渉決裂なら決裂で、早く話をまとめて、吟侍達の元に向かいたいのだ。
フェンディナ・マカフシギは二番目の姉、ジェンヌ・マカフシギの力であるスペシャル・アカシック・レコードの情報を検索提示した。
スペシャル・アカシック・レコードには万物のありとあらゆるものが大体、書いてあるとされている。
この情報の一部を他の四名の七大ボスに見せ、フェンディナ・マカフシギは、
「こ、これが私の自己紹介っていう訳にはいきませんか?私、急いでいるんです。仲間の元に戻りたいんです。だから、話をまとめたくて……」
と精一杯の説明をした。
七大ボス4名は、
「「「「………………」」」」
と押し黙る。
しばしの沈黙。
この沈黙はフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスの時とは違う。
お互いを理解し合おうとしてうまく行かなかったという時の気まずさではない。
一歩間違えば、戦闘に発展するかも知れない危うい情報開示だった。
なぜならば、この情報が正しければ、フェンディナは弱い方の5名ではなく、どちらかと言えば、強い方の3名でくくられてもおかしくないというほど、彼女の力の強大さを示していたからだ。
この5名の中では間違い無く、自分が一番強い――そう表現している情報を見せられて、果たして、他の4名が納得するのだろうか?
【バーンエディラ】は、
「つまり、あなたは、自分が一番強いから自分に従えと?」
と聞いて来た。
違う。
そんな事が言いたい訳じゃ無い。
同盟を組みたいのは本当の事で戦いたくは無いというのがフェンディナ・マカフシギの正直な気持ちだった。
【デュジル1−1】は、
「オッケー、じゃあ、こうしましょう。私達とあなた、全員、一つずつ力を見せ合いましょう。それが自己紹介という事にしましょう。お手合わせ願うって事で……」
と戦闘モードに入りつつある。
一触即発。
選択を間違えば、七大ボス4名を相手にフェンディナが戦う事にもなりかねない。
フェンディナ・マカフシギは冷や汗を流す。
選択を誤った。
そう思った。
その時、スッと彼女の前を遮る影が……。
さっきまで一緒にお菓子を食べていたフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスだった。
彼女は、
「んっ……」
と相変わらずの台詞を吐く。
だが、今回の【んっ……】には大丈夫、自分に任せてという意味が込められている事を感じ取った。
フェンディナ・マカフシギは、
「あの……、任せちゃっても?」
と聞く。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスの答えは相変わらずの、
「んっ……」
だった。
今度の【んっ……】には、任せてもらってオッケーだという意味が込められている。
以心伝心――今ならば、フェンディナ・マカフシギはフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスの気持ちがわかる。
最強の【別自分】フェンディナ・ウェル・クァムドゥエス――なんて頼りになる存在なのだろうか。
彼女は右手を挙げたかと思うと、次々と他の4名の七大ボスを指さした。
すると、七大ボスは何かを悟ったような顔をし出した。
これは冗談のようなネーミングだが、【指さし確認】という力だ。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは指を指した相手に理解を求める情報を与える力を持っている。
一瞬にして、たくさんの情報が七大ボスに流れ込み、彼女達を理解させたのだ。
無口なフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスにとっては便利な力と言えるだろう。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスは、フェンディナ・マカフシギに向かって親指を立て、
「んっ……」
と言うと、そのまま去って行った。
後は、フェンディナ・マカフシギに交渉を任せるという意味だった。
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスが使った力は戦闘用としてではなかったが、【加工出現の力】も【指さし確認】も凄すぎる力だった。
その場に残っているフェンディナ・マカフシギはおずおずと、
「あの……同盟は……また、今度でも……」
と言ってその場を去ろうとした。
交渉は決裂したかも知れないと思った彼女はまずは、吟侍達の元に向かうのを優先させようと思ったのだ。
そんな彼女に【デュジル1−1】は、
「待ちなさい。話は終わって無いわ」
と引き留めた。
彼女達の怒りを買ったかと思ったフェンディナ・マカフシギは思わずビクッと反応する。
「あの……失礼があったのなら謝りますから……」
というが、【デュジル1−1】
「いいえ、失礼があったのはこちらの方。確かにあなたは私達より、一歩も、二歩も飛び出ているようね。立ち去った無口なあなたが理解させてくれたわ。悔しいけど、私達よりもあなたは強い」
と言い、【バーンエディラ】は、
「引き留めたのは私達の紹介がまだだって事だからよ。あなたにばかり説明させて、不公平でしょ、それ?」
と言ってウインクした。
どうやら好意的に解釈してくれたようだ。
今まで無口だった【ラクン・シュアル】は、
「非礼はこっちだった。ごめん」
と頭を下げる。
そうされてしまうとかえってかしこまってしまう。
フェンディナ・マカフシギは、
「そ、そんな頭を上げてください。仲間になったんじゃないですか」
と言った。
雨降って地固まるじゃないが、どうやら同盟成立という事で話はまとまりそうだった。
【ヴェレイ】は、
「じゃあ、私達は貴女の提案にあった、力を一つ出すという事で自己紹介とさせてもらうけどそれで良いかしら?」
と言った。
フェンディナ・マカフシギは、
「あ、はい。もちろんです。よろしくお願いします」
と言った。
【ヴェレイ】は、
「じゃあ、私達同士で力試しをするのは止めておきましょう。とりあえず、敵は適当に私が用意するわ。その戦いを見てもらいましょうか」
と言った。
そう言えば、前に会った時も【ヴェレイ】は一度、倒した敵を根こそぎ復活させる力を見せていた。
【クライ・クライ・クライ・クライ】の様に、敵を連れてきたりする力があるのかも知れないと思った。
【デュジル1−1】は、
「じゃあ、順番を決めましょうか?誰から行く?」
と言った。
どうやら、1名1名、バトルシーンを見せてくれるようだ。
フェンディナ・マカフシギの方の自己紹介は済んだので、後は、4名の七大ボス達の実力を確認したら同盟成立――後は、吟侍達の元へ向かえる。
七大ボス達は相談した結果、【デュジル】→【ラクン・シュアル】→【バーンエディラ】→【ヴェレイ】の順番に戦いを見せてくれるようだ。
と言っても見せる力は一つずつ――
複合多重生命体(ふくごうたじゅうせいめいたい)揃いである彼女達の力の全容を知るという事にはならない。
あくまでも、自己紹介という事でのバトルという事になる。
04 七大ボスの実力――自己紹介バトル
そして、【ヴェレイ】が用意した敵が到着した所でまずは、【デュジル】の戦闘シーンを見せてもらえる事になった。
【デュジル】は現在、1−1から1−4までの4名が存在している。
1−1の最初の1は第一層という意味での1、後ろの1は、何名目という意味での1
だ。
クアンスティータの様に、同時に何名が存在しているというタイプの複合多重生命体のようだ。
【デュジル】達に割り当てられた敵の名前は、わからない。
名前を名乗らなかったからだ。
敵の力もわからない。
使わずにあっという間に【デュジル1−1】にやられてしまったからだ。
【デュジル1−1】は体から胞子の様なものをまき散らした。
その胞子の様なものは敵の体へと張り付き、敵の体の一部から敵と敵対する存在を作り出した。
つまり、敵は絶対に逃げられない敵を自身のその体からはやしたという事になる。
そうなってしまうと後は凄惨な殺し合いが敵だけで行われる事になる。
【デュジル1−1】と敵対した敵は十数名居たが、全て、この力で一掃された。
彼女が言うにはこの力の名前は【敵対胞子(てきたいほうし)】というらしい。
同盟を組んだから良いが、敵対すれば恐ろしい脅威となるのは確実な力だった。
続いて、の出番は、【ラクン・シュアル】だ。
彼女の敵の名前も不明だ。
わからない。
敵が名乗る前に倒してしまったからだ。
敵の能力などもよくわからない。
【ラクン・シュアル】の力は【生体情報(せいたいじょうほう)の改ざん】だ。
敵対する存在の生体情報をめちゃくちゃに変更させる事が出来るという力になる。
やはり、【デュジル】同様に敵対したら厄介極まりない力と言えた。
彼女が担当した敵も十数名いたが、この力一つで制圧してしまった。
次の出番は、【バーンエディラ】だ。
お約束のようになるが、彼女と敵対した存在の名前も不明で、能力などについても同様だ。
敵対した敵の数も十数名。
そして、同じように、【バーンエディラ】の能力一つで全滅させられた。
彼女が使った力は、【絶望憑依(ぜつぼうひょうい)】という力だ。
【デュジル1−1】が使った力に似ているが、絶対に治らない病や霊のような存在を取り憑かせとり殺すというものだ。
【デュジル1−1】との違いは胞子をばらまいて、敵の体から敵対する存在を作り出すのではなく、【バーンエディラ】に普段、取り憑いている存在などを移して、とり殺すというものだ。
言ってみれば感染元のようなものだ。
最後の出番になったのは敵対する存在を用意した【ヴェレイ】だ。
彼女が自分で呼び出した敵と戦う事になった。
【ヴェレイ】の敵も他の七大ボスの例に漏れる事なく十数名で、敵が名乗らなかったため、不明。
敵の能力も同様に不明でただ、一方的に【ヴェレイ】が攻め立て、勝利したという結果になった。
【ヴェレイ】は分裂する多重人格者とも呼ばれる存在で、13の性格イコール体を持って居る存在だ。
それぞれの体に共通する特徴としては化獣(ばけもの)のように勢力を持っているという事だ。
ただし、化獣との違いは怪物ファーブラ・フィクタと魔女ニナの子供では無いという事と、化獣が勢力を完全に所有しているのに対して、【ヴェレイ】は餌にしている団子で手懐(てなず)けているという事だろうか。
【ヴェレイ】は性格毎に赤、青、黄色、桃色、緑、紫、橙、茶色、黒、白、金、銀、灰の13色の団子を作る事が出来る。
団子の色毎に、手懐けている勢力が異なるというものだ。
普段、顔を出している主人格の【ヴェレイ】が作り出せる団子の色は赤。
つまり、赤色の団子で手懐けた勢力を自身の兵力として使う事が出来るというものだ。
【ヴェレイ】は赤団子を餌に呼び出した勢力であっという間に敵を片付けた。
片付けたというよりは平(たい)らげたという方が正解か。
敵は、【ヴェレイ】が呼び出した勢力が骨一つ残らず食べ尽くしてしまった。
目を覆いたくなるほど、凄惨な食事だった。
本当に、フェンディナの方が実力が上なのか?と思ってしまうほど、4名ともものすごい力を示した。
正直、フェンディナ・マカフシギは内心ビビっていたが、これで同盟成立という事になった。
後は、細かい相談をして、また、別れる事になった。
同盟した七大ボスの呼び出し方は今回と一緒。
特殊な波長のパワーを出せば良い。
それで連絡をお互い、取り合うということになった。
いろいろあったが、これで、フェンディナも一応、目的は果たした事になる。
何かあったような雰囲気の吟侍の元に駆けつけるため、七大ボスと別れたフェンディナ・マカフシギは吟侍達の居そうな場所を探して進むのだった。
05 ソリイントゥスとの遊戯
一方、吟侍達は第二側体(クアンスティータ・)ソリイントゥスと出くわしていた。
その圧倒的な存在力に気圧される吟侍達。
緊張が辺りを張り詰めていた。
ソリイントゥスは、
「もうすぐ、パパ達も来ちゃうから、それまでちょっと、遊ぼっか?」
と言った。
【パパ】とは怪物ファーブラ・フィクタの事を指す。
あの男が吟侍達の前に再び姿を現すという事なのか?
ソリイントゥスの言う、【遊び】とは何を意味するのだ?
吟侍達の緊張はピークに達した。
ソリイントゥスは、背中に背花変(はいかへん)を出した。
背花変とは千角尾(せんかくび)と共にクアンスティータである事を証明するものだ。
偽クアンスティータとして認められたタティー・クアスンという少女の場合は1片辺り三角形で4片(タティー・クアスンの場合、真ん中の1片は機能しない)、側体クアンスティータは1片辺り五角形で6片、本体クアンスティータは1片辺り六角形で7片となっている。
ソリイントゥスは側体クアンスティータなので、五角形6片の背花変となっている。
中心に五角形の1片があり、その周りに5方向に五角形の5片がついているという形になっている。
ソリイントゥスはその内の1片をつかむとブチッとちぎった。
ちぎった背花変の欠片をまるで粘土の様にコネコネと捏ねる。
そして、丸めたかと思うと、おもむろに吟侍達の方にポイッと放り投げた。
吟侍達は――、
何だ?
何をしやがった?
と身構えるが、背花変の欠片で出来た玉は何の変化もなくただ、ポンっと置かれているだけだ。
吟侍は、
「な、なんだ?」
と言った。
ソリイントゥスの意図がわからないからだ。
ソリイントゥスは、
「だから、遊ぼうってば。それ、使ってなんか作ってよ。ボクチンの作ったやつと戦わせて遊ぼう。勝敗の基準はパワーじゃなくて、芸術性が高い方が勝ちね」
と言って、自分も更に背花変をちぎって丸めている。
背花変――万能細胞であるそれを使って粘土遊びで遊ぼうというのだろうか?
間合いを伺う吟侍達だったが、ソリイントゥスはほぼ無防備で、背花変を使って粘土遊びをしている。
例え、隙をついて攻撃しても通用しないという事なのだろうが、それにしても無防備過ぎる。
攻撃してくださいと言わんばかりの隙だらけの姿勢だ。
「うーん……ここはこうしてみよう……」
と言う言葉が証明しているように本気でただ遊ぼうとしているかのようだ。
吟侍は【答えの力】を使わなかった。
使って真意を確かめてもわからないと考えたからだ。
吟侍はそのまま、ソリイントゥスを信用して背花変を使って遊ぶ事にした。
遊びを考えるのは得意とする吟侍だ。
遊ぼうというのであれば、それに答えて遊べば済む事だ。
ソナタは、
「ちょ、ちょっと吟侍、何やってんのよ?」
と聞くが、吟侍は、
「何って、ソリイントゥスが遊ぼうって言うから、おいらも遊ぼうかと……」
と答えた。
エカテリーナは、
「だ、大丈夫なのか?」
と聞く。
吟侍は、
「わからん。だけど、遊びを拒否するよりかはずっと良いと思うぞ。」
と答えた。
こうして、ソリイントゥスと吟侍による背花変での粘土遊びのようなものが黙々と行われた。
子供の頃は趣味でいろいろ自作のゲームを作っていた吟侍はこういうものも得意だった。
最初はソリイントゥスの迫力に押されてかなり萎縮していた吟侍だったが、しばらくすると本気で遊びだした。
パッと見、異様な光景が広がる。
背花変を使った制作物が吟侍、ソリイントゥス側に次々と並ぶ。
背花変の欠片は元々、ソリイントゥスの背中から生えている程度の大きさだが、意志を注ぎ込む事によっていくらでも容量が増えていった。
お互いが100体の創作物を作った所でバトル開始。
作り物とは思えない創作物達による、生き生きとした戦いが繰り広げられた。
結果は吟侍が作った創作物が辛くも勝利した。
残った創作物の数は2体。
後の198体は崩れ去り、背花変に戻った。
ソリイントゥスは、
「凄い凄い。【吟侍パパ】、凄いね〜、まさか、ボクチンが作った物が負けちゃうとは思わなかったよ〜やっぱり、キャラクターの髪型とか細部まで細かく作ったのが勝因だったのかな?ボクチン手抜きしちゃったからな〜」
と言った。
どうやら、ソリイントゥスは勝ち負けにはこだわっていない様だ。
ただ、芸術性の高い作品を作れた事が単純にうれしかったようだ。
なので、吟侍が勝ったからといってソリイントゥスの機嫌が悪くなるという事はない。
良い勝負が出来たのは喜ぶべき事であって、怒ることではないと思っているようだ。
ソリイントゥスは、
「楽しかったよ。遊んでくれてありがとう【吟侍パパ】」
と言った。
吟侍達としても、ソリイントゥスに敵対の意志がないことが確認出来ただけでも御の字と言える状況だった。
06 怪物ファーブラ・フィクタの予告
ソリイントゥスとの遊戯が済んだ時、
パチパチパチ……
と拍手をする音がした。
拍手をした相手が声をかける。
「なかなか面白い見世物だったよ。息災だったか芦柄 吟侍」
と言った。
吟侍は、
「お、おめぇ……」
と言った。
声の主、それは【F】こと、怪物ファーブラ・フィクタだった。
傍らにはもう一名、女性がいる。
怪物ファーブラ・フィクタは、
「紹介する。こちらは俺のかみさんになるリーセロット・セカイウチュー嬢だ。お前さん達にはニナ・カエルレウスと言った方が良いかな?第二本体、クアンスティータ・ルーミスを産み落とす女だ」
と良い、ニナ・カエルレウスは、
「初めまして。ニナ・カエルレウスです」
と挨拶をした。
怪物ファーブラ・フィクタは、
「わかっているとは思うが今、俺達に手を出そうとすれば、そこに居るソリイントゥスがそれを阻む。ソリイントゥスは第二本体の従属側体だ。つまり、ルーミスの誕生を守る役目を持って居る。ニナに手を出せば、さっきまでのお遊戯という訳にはいかないぜ」
と言った。
怪物ファーブラ・フィクタに言われなくとも全員、それは承知していた。
怪物ファーブラ・フィクタはソリイントゥスが居るから安全だと判断してニナ・カエルレウスを連れてきたのだ。
吟侍は皮肉交じりに、
「子供の影に隠れるとはずいぶん情けねぇ親だな」
と言った。
怪物ファーブラ・フィクタは、
「何とでも言えば良い。俺の本来の目的はクアンスティータを生み出して行く手伝いをする事。そのためならば、プライドでも何でも捨ててやるさ」
と言った。
正直、怪物ファーブラ・フィクタと吟侍の力関係は、パワーでは本気になれば、セレークトゥース・ワールドでの冒険を通して【クティータ】の力を得ている吟侍の方が上になっている可能性が高い。
が、能力浸透度(のうりょくしんとうど)と能力浸透耐久度(のうりょくしんとうたいきゅうど)で言えば、七倍の魂を持っている怪物ファーブラ・フィクタの方が上だろう。
どの部分で勝負するかによって、結果は変わってくるという状態だ。
吟侍は、
「何が狙いだ?」
と言いつつ、ディアマンテを手で制している。
彼女は今にも怪物ファーブラ・フィクタに襲いかかりそうな雰囲気だった。
今、動いたら全てがおじゃんになる。
だからこそ、ディアマンテにも動いてもらっては困るのだ。
怪物ファーブラ・フィクタは、
「いや、何、結婚式の正式な日取りと場所を教えてやろうと思ってな。今から現界標準時で言う所の11日後に行われる。会場はロスト・ネット・ワールドではなく、現界でだ。本当はロスト・ネット・ワールド内で行ってここを破壊してやろうと思っていたが、考えが変わった。現界でやる。参加したければ、セカイウチュー家の領地の519657836番のADS3568794まで来ると良い。そこが、同時に出産式でもある」
と言った。
【519657836番のADS3568794】と言われても覚えにくい。
これだけの番号があるという事はそれだけ、セカイウチュー家の領土というのが現界の宇宙では想像以上に広範囲に渡ってあるという事を意味している。
【519657836番のADS3568794】はセカイウチュー家発祥の地とされている場所であり、怪物ファーブラ・フィクタとしては花嫁の実家を立てたという事になるのだろう。
尻に敷かれている――とまでは言わないまでも、その事実を聞くとなんとも情けない話ではある。
【プライドでも何でも捨ててやる】という事はこういう意味も含まれるのだろうか?
何にせよ、宇宙標準時で11日後にはルーミスが誕生するという事を言っているのだ。
ステラやディアマンテの居た未来ではルーミスの誕生はまだずっと先だった。
だが、その未来は異なる道を示しだしているようだ。
クアンスティータの誕生なのだから、何があってもおかしくは無いが、それにしても早すぎる。
感覚的には第一本体のセレークトゥースが誕生したのはつい、この間だと思っていたくらいだ。
怪物ファーブラ・フィクタは、
「言いたい事はそれだけだ。ロスト・ネット・ワールドで何をしようとしているのかは知らないが、用事があるのなら早めに済ませておけよ。11日後には、ルーミスが生まれるんだからな。もちろん、セレークトゥースも動き出すぜ」
と言った。
――そう、第二本体クアンスティータ・ルーミスが誕生するという事はルーミスの誕生だけではないのだ。
繭蛹卵(けんようらん)になって眠りについている第一本体クアンスティータ・セレークトゥースもまた再び動き出すという事を意味している。
セレークトゥースはルーミスの力に引っ張られ、眠りにつく前よりも遙かにパワーを増して動き出すのだ。
クアンスティータと言う化獣は、誕生と繭蛹卵で眠りにつく状態を繰り返す事によって、だんだん数も増えてくるし、力も極端に上がってくるという――質、量共に更にずっと恐ろしくなってくる存在なのだ。
例えば、セレークトゥースが再び動き出した時、セレークトゥース・ワールドに向かった場合、前回と同じように行くと思ったら大間違いなのだ。
セレークトゥース・ワールド自体のレベルも跳ね上がっているのだから。
怪物ファーブラ・フィクタは、
「じゃあ、俺たちは帰るぜ。お前さん達が邪魔するなり見守るなりするのはお前さん達の自由だ。俺は俺の考えで動くだけだ。邪魔するなら、俺も刃向かうし、見守るなら、俺は何もしない。選択はお前さん達に任せるぜ。お前さんも俺の後世として、一応、クアンスティータの父親になる訳だからな。我が子が生まれるのに何の情報も与えないのでは不憫だと思って伝えに来ただけだ。んじゃな、俺等は帰るわ」
と言いたい事だけを言って、ニナ・カエルレウスと共に去って行った。
風雲急を告げる的な状況になった吟侍達。
残って居たソリイントゥスも
「ごめんね、【吟侍パパ】。パパはきっと【吟侍パパ】にかまってもらいたいんだよ。寂しがり屋さんなんだね。ボクチンも第二本体の従属側体として、誕生を見守るという役目があるんでね。パパが言うようにルーミス様の誕生を妨げるならボクチンも邪魔をするしかないんだよね。でも、本当は【吟侍パパ】と喧嘩したくないんだ。そこをわかってもらえるとうれしいな」
と言った。
吟侍は、
「あ、あぁ、そうか……」
と生返事を返す。
吟侍としても、ルーミス誕生をどう対処するか決めあぐねているのだ。
未来の勢力、新風ネオ・エスクのメンバーであるステラやディアマンテには悪いが、クアンスティータの誕生が最悪な事だとは思えないのだ。
未来の世界を壊滅状態に追い込まれたステラやディアマンテにとってはクアンスティータは許せない存在かも知れないが、彼女達が居た未来とは状況が変わってきている。
例え、第五本体クアンスティータ・リステミュウムが誕生してしまったとしても、彼女達が居た未来の様に、現界を壊滅状態にするとは限らないのだ。
だが、どのような行動を取るにせよ、ルーミス誕生の式がロスト・ネット・ワールドではなく、現界で執り行われるというのであれば、ロスト・ネット・ワールドでの用事を済ませて、現界に戻る必要が出て来た。
ロスト・ネット・ワールドはセレークトゥース・ワールドの時と違い、戻ったら現界では一瞬の出来事だったという訳にはいかないだろう。
それなりに、時間も経過する。
なので、ゆっくりとロスト・ネット・ワールドで冒険をしている訳にもいかないだろう。
吟侍達はソリイントゥスと別れ、これからの行動を相談するのだった。
07 これからの行動の取り決め
現界に戻る前にする事は三つ。
一つは、十大殿堂のメンバーを探して、勝負するなり、話合う事だ。
まだ、十大殿堂は【有続者(ゆうぞくしゃ)チョテウ】にしか会っていない。
少なくとも後、数名とは会いたい所だ。
もう一つは、クアースリータへのお土産だ。
この点は別行動をしていたソナタ達が役に立ってくれた。
蚤の市で色んな品を手に入れてくれていたのだ。
クアースリータへのお土産はエカテリーナの子宮に入っているそれらのアイテムの中から探すとして、エカテリーナは、【イクストーヴァス】を作った超職人【ジェーニヴィライ】と最後にまた、会うと約束したので、立ち寄りたいとの申し出があったので、お土産を買う代わりにそこも寄る事にした。
最後の一つはフェンディナ・マカフシギとの合流だ。
ずっと単独行動を取っているはずの彼女とまだ再会していない。
ルーミスの誕生式(怪物ファーブラ・フィクタとニナ・カエルレウスの結婚式?)前には彼女も戦力として加わって欲しいが今、どのような状況にあるか読めない。
その辺りをどうしようかと相談していたが、その時、
「吟侍さぁん……お待たせしましたぁ〜報告がありますぅ〜」
と言って、フェンディナ・マカフシギが姿を現した。
吟侍は、
「お〜、フェンディナ、待ってたぞ〜、こっち来てくれ〜相談したい」
と言って出迎えた。
これで、三つ目の用事は済んだ事になる。
バラバラだった三チームがこれで、全て揃った事になった。
こうして、全チームが揃った所で、改めて、それぞれのチームの報告会が行われた。
吟侍達の行動や、ソナタ達が買った【イクストーヴァス】の事やフェンディナ・マカフシギが同盟を結んだ七大ボスの事などはここで情報を共有し合った。
吟侍達を分断した【アコンルーク】の話だけは吟侍が適当に誤魔化したのだった。
フェンディナ・マカフシギとの合流は叶い、クアースリータへのお土産選びも相談時にエカテリーナの子宮から、骨董品などを出して選び合ったのでこれもクリア。
残すは、超職人【ジェーニヴィライ】との再会と数名程度の、他の十大殿堂のメンバー探しだけとなった。
これは、吟侍の【ラッキーフレンド】を利用すれば、出会うという事はそう難しくないかも知れない。
とにかく、けつが決まってしまっているので、残り時間で出来るだけの事をする事にした。
吟侍は【ラッキーフレンド】を呼び出し、
「【ラッキーフレンド】、今度は十大殿堂と出会いたい。なるべく最短ルートで頼む」
と言った。
超職人【ジェーニヴィライ】の店には帰る前に立ち寄るとして、まずは、出来るだけ、十大殿堂のメンバーと会うことだ。
これからは全員行動だ。
【ラッキーフレンド】は、
「わかった。こっち、こっち」
と一方向を指し示した。
吟侍達は全員で、その方向を目指して動き出すのだった。
11日フルで時間を使う訳にはいかない。
4、5日は現界での準備期間が必要だと考えるとロスト・ネット・ワールドに居られるのは最長でも後、一週間しかない。
とにかく、時間がない。
善は急げだ。
吟侍達は足早に行動するのだった。
08 クアンスティータ・ルーミスの声
吟侍達は【ラッキーフレンド】に導かれるまま行動し、現在、十大殿堂のメンバーが居そうなエリアに向かって移動中だった。
そんな中、
『全く……いつまで、うじうじしているつもりかしら……』
という声が突然、吟侍の耳に届いた。
吟侍の反応にいち早く、ディアマンテが気づき、
「どうかなさいましたか、吟侍様?」
と聞いた。
ソナタ、ステラ、エカテリーナは出遅れたとちょっと悔しがる。
自分達も吟侍の異変に気づいたが、一歩、間に合わなかった。
ディアマンテに先を越された形になった。
だが、【アコンルーク】も居ないので、ムキになることはない。
ちょっと悔しいという程度の気持ちだった。
吟侍に対してはよく気がつくという点でディアマンテを認めざるを得なかった。
吟侍は、
「いや、頭ん中に突然、声がして……空耳か?」
と言ったら、
『空耳じゃないわよ。直接、話しかけているの』
と答えが返ってきた。
吟侍は、
「だ、誰だ、あんた?」
と聞くと、
『誰だとはご挨拶ね。私はクアンスティータ・ルーミスよ』
と答えてきた。
吟侍は、
「えぇえ……?ルーミス?なんで?だって、まだ誕生して……」
無いと言いたかった。
この光景はちょっと、おかしかった。
吟侍以外のメンバーには吟侍が勝手に独り言を言って慌てているからだ。
ルーミスの声は、
『そうね。誕生してないわ、まだ』
と言った。
吟侍は、
「じゃ、じゃあなんで?未来の世界から声をかけているのか?」
と聞いた。
ルーミスの声は、
『違うわ。今現在から話しかけているわ』
と答えた。
どういう事だ?
誕生していないのに、意識を持って話せるのか?
その疑問にはルーミスの声が答えてくれた。
『私の得意な力は【矛盾の肯定】よ。誕生していないからしゃべれないという部分の矛盾を肯定しただけの話よ』
と言った。
【矛盾の肯定】――両立する事の無い相反する事柄が同時にあり得てしまう力だ。
例えば、どんな矛をも通さない盾とどんな盾をも突き通す矛が同時に存在する事を肯定させるという力だ。
第一本体のクアンスティータ・セレークトゥースとはまた違った強大な力だと言える。
吟侍が昔、ティアグラとルフォスのテストを受けて、瞬間移動の数を数えた事があったが、それはクアンスティータの前に立つのにふさわしいかどうかを見るテストだった。
クアンスティータの力は理解力の無い者が見れば、どれも同じ不思議な力として映るだけだ。
だが、実際には全く違う力を使っている。
セレークトゥースの代表的な力である勘違いの力【ミステイク・フィルタ】とルーミスの代表的な力である【矛盾の肯定】は全く異なる力なのだ。
ルーミスの場合はあり得ない事柄が肯定されるという力になる。
ルーミスの声から判断してセレークトゥースの時の様な赤ん坊として自我が確立されていない状態とは明らかに違う。
明確な意志を持って、ちゃんと話している。
吟侍は、
「じゃあ、ルーミス……どうしたんだ、いきなり」
と聞くと、ルーミスの声は、
『どーしたもこーしたも無いわよ。私はあなた達を頼りにしようと思っているのに、その体たらくはどういう事なの?セレークトゥースの時のショックをいつまでも引きずってないでよ。私が誕生したらあなた達を鍛え治してあげるからあなたの中のネズミさんをたたき起こしておいてくれるかしら』
と言った。
ルーミスの言う【ネズミさん】とは恐らく7番の化獣、ルフォスの事を指すのだろう。
ルーミスは吟侍とルフォスを鍛え治すと言ってきているのだ。
吟侍は、
「ルーミスに稽古つけてもらえるってんならありがてぇ話だけどさ、どうしたんだよ、本当に?」
と聞くと、ルーミスの声は、
『私は本来の歴史では第五本体のリステミュウム誕生時の力を持って生まれる事になるわ。あのバカ親父――それがどういう結果をもたらすかも知らないで』
と言った。
【バカ親父】とは怪物ファーブラ・フィクタの事を指すのだろう。
ルーミスの声が言っている事が本当なら、ステラやディアマンテが居た未来よりも遙かに強大なクアンスティータとなっていくことになる。
ルーミスの時点で第五本体リステミュウムの時のパワーを持って誕生するなど、尋常ではなさ過ぎる。
歴史の改ざん程度では済まされない事態になってくるかも知れない。
吟侍は、
「何がどうなっているんだ?説明してくれルーミス」
と聞くと、ルーミスの声は、
『第七本体、テレメ・デ――最強のクアンスティータであるそれまでの道筋が出来てしまった。もはや、リステミュウムの脅威程度では済まなくなるわ、あなた達は』
と言った。
未来の世界を壊滅状態にした第五本体、リステミュウムを捕まえて【程度】と言い切った。
第七本体クアンスティータ・テレメ・デとはそれほどまでに強大な存在だと言うのだろうか?
そして、同じクアンスティータであるはずのルーミス自身が怯えているという事に気づく。
同じクアンスティータでも第五、第六、第七本体は完全な別格である。
第四本体ミールクラームまでの出来事など、所詮、茶番に過ぎないのだ。
第一本体のセレークトゥースにも遙かに及んでいないのに、それよりもずっと遙かに上を示されても途方に暮れるしかない。
吟侍は呆然となる。
ルーミスの声は、
『しっかりしてよ。頼りにしてるって言ってるでしょ。頼むわよ、【ネズミさん】起こして置いてよ』
と言って、そのまま音信不通となった。
事情がわからないソナタが、
「ちょっと、吟侍、ルーミスって聞こえたけど、どういうこと?クアンスティータ・ルーミスはまだ誕生して無いんじゃ無いの?説明しないさいよ」
と言った。
吟侍はポリポリと頭をかき、
「えーっと、何から説明したら良いのかな?おいらも突然過ぎて、何がどうなっているのかうまくまとまんねぇって言うか……」
と言った。
吟侍達はルーミス誕生前の慌ただしさの元、行動している。
ところが、すでにルーミスから話かけられていた。
それをどう説明するか?
吟侍は困った顔をした。
続く。
登場キャラクター説明
001 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)
ウェントス編の主人公であり、ファーブラ・フィクタのメイン主人公。
子供の頃、故郷、セカンド・アースを襲った絶対者・アブソルーター達を追い払った事から英雄と呼ばれる。
その時、心臓を貫かれるが、七番の化獣(ばけもの)ルフォスの核でそれを補い、以降、ルフォスの力を使える様になる。
勇者としての格は他の冒険者達より上だが、それだけに、他のメンバーより、強い敵を引きつける。
創作バトルを得意としていて、攻撃方法のバリエーションはやたら多い。
敵からすると最も厄介な勇者である。
ウェントスでの救出チームに参加する。
【答えの力】を身につけ、ティアグラに殺される未来も回避出来た。
セレークトゥース・ワールドの冒険を生きて帰ってきた。
今回はロスト・ネット・ワールドでの冒険をする事になる。
002 ルフォス
吟侍(ぎんじ)の心臓となった七番の化獣(ばけもの)。
ネズミに近い容姿をしていて、最強の化獣である十三番、クアンスティータを異常に恐れていて、その恐怖に打ち勝つために、最も勇気を示した吟侍と命を同化する道を選んだ。
ルフォス・ワールドという異世界をまるまる一つ所有していて、その世界のものは全て彼の戦力である。
異世界には修行するスペースもあり、冒険者達の修行場として提供していた。
異世界にある三つの核、マインドコア(心核)、スキルコア(技核)、ボディーコア(体核)を合わせる事により、新しい怪物等を生み出す事も出来る。
ルフォス・ワールドはそれ以外にもロスト・ワールドという既に失われた世界をいくつも圧縮保存してある。
ルフォス・ワールドには大物が隠れ住んでいる。
クアンスティータ誕生により完全に萎縮してしまっている。
003 ソナタ・リズム・メロディアス
ウェントス編のヒロインの一人。
吟侍(ぎんじ)の恋人、カノンの双子の姉であり、共に行けない彼女の代わりに吟侍と共にウェントスの救出チームに参加した。
吟侍の事が好きだが隠している。
メロディアス王家の第六王女でもある。
王家最強術であるCV4という特殊能力を使う。
CV4は4つの声霊、ソプラノ、アルト、テノール、バスを器に入れる事により、特殊な能力を持ったキャラクターゴーレムとして操る能力である。
力不足を指摘されていたが、ルフォスの世界のウィンディス、ガラバート・バラガの助力により極端な力を得ることになる。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
セレークトゥース・ワールドに続き、ロスト・ネット・ワールドへも吟侍のお目付役としてついていく事になる。
吟侍達と喧嘩別れした状態になり、別行動を取っていた。
004 フェンディナ・マカフシギ
3名の姉(ロ・レリラル、ジェンヌ、ナシェル)達と別れて一人旅をしていた全能者オムニーアの少女。
戦闘向きではない大人しい性格だが、自身のポテンシャルは姉たちをも遙かにしのぐ。
また、そのポテンシャルの高さ故に脳に10番の化獣(ばけもの)ティルウムスを宿す事になる。
心臓に7番の化獣ルフォスを宿すという吟侍を探していた。
吟侍にティルウムス以外の何か秘密があると思われている。
潜在している力が覚醒すれば、偽クアンスティータよりも上回ると推測されている。
脳を支配している筈のティルウムスが、すぐ下の両方の瞳より下を異常に警戒している。
クアンスティータ誕生のショックで自身に秘めていた力が一気に解放されて、ショック状態になっていて、必要以上に怯えている。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
自分の力を見つめ直すため、今回はロスト・ネット・ワールドでは別行動に。
今回、自分が【七大ボス】という区分でクアンスティータと同じくくりで見られているという事を知る。
弱い方の5名の1名に数えられている。
今回、ようやく吟侍達と合流する事になる。
005 エカテリーナ・シヌィルコ
風の惑星ウェントスに君臨している絶対者アブソルーターの一人。
2番の化獣(ばけもの)フリーアローラをその子宮に宿しているため、アブソルーターの中では最強と呼ばれている。
戦闘狂であり、奴隷達の支配よりも強い相手との戦いを求める。
突然のトラブルで出会った吟侍の事を気に入った。
切り札としていた力がオルオティーナという存在だという事が解り、彼女の古き力を得て、極端なスキルアップを果たす。
それでも、クアンスティータには遠く及ばず、萎縮してしまっている。
初めて男性(吟侍)を頼りになると思い、自身に芽生えた恋心に動揺している。
オルオティーナに貰った4つの古き力の一つである【不可能を可能にする力】を会得する。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
ロスト・ネット・ワールドでも引き続き吟侍と同行する道を選ぶ。
吟侍達と些細な理由で喧嘩別れしてしまい、別行動を取っていた。
006 ステラ・レーター
未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
ステラはグリーン・フューチャーの一員で、かかしという超兵器を使う。
また、若くして亡くなった依良 双葉(いら ふたば)という吟侍の幼馴染みの生まれ変わりでもある。
力不足から、フェンディナやエカテリーナより、一歩遅れて戦線に出てくることになったが、役に立てなかった。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
ロスト・ネット・ワールドでも吟侍のサポートとしてついて行く事に。
【アコンルーク】に利用され、感情が爆発してしまい、吟侍達と別行動を取っていた。
嘘を見抜く力、【読偽術(どくぎじゅつ)】を特訓している。
未来の世界では【特別特殊鑑定士(とくべつとくしゅかんていし)】1級の資格を持っていて、骨董品などの鑑定を得意としている。
蚤の市(のみのいち)に行くと目の色が変わる。
007 レスティー
吟侍にひっついてセレークトゥース・ワールドにやってきた調治士(ちょうちし)の少女。
調治士とは化獣(ばけもの)等の超越的存在の医者のようなもの。
彼女は吟侍の専属医の様な存在となる。
吟侍から【答えの力】を受け取り、彼女も少ないながら【答えの力】が使える様になっている。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
ロスト・ネット・ワールドへも専属医のような立場として吟侍と同行する事に。
008 聖魔妖精エクス/クェス
カミーロが、ロスト・ワールドから現界に戻る時に出会った聖魔妖精のプリンセスであり、幸運をもたらす存在と言われている。
光属性のエクスと闇属性のクェスは交互に存在している。
どうしても吟侍と行動を共にするときかないソナタに幸運をと思って、カミーロの手から吟侍の側にという事になってロスト・ネット・ワールドの冒険に同行する事になった。
クェスの状態では捕まえた相手の能力を一つ封じるという力を持っている。
エクスの状態では【幸運の導き】という敵と出会わないようにする力を使える。
009 ディアマンテ
未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
ディアマンテはブルー・フューチャーの一員で、16体もの怪物と同化している超戦士でもある。
吟侍の大ファンであり彼のマニア。
ブルー・フューチャー最強でもある彼女はロスト・ネット・ワールドの冒険に同行する事になった。
同化している怪物の一体は万能言語細胞(ばんのうげんごさいぼう)を作り出す事が出来る。
また、相手の力を吸収して、増幅させて跳ね返す事も出来る。
吟侍の変化にいち早く察知するなどの気配りを見せる。
010 赤いフードの男【クトゥーアル】
以前はフェンディナだけだったが、セレークトゥース・ワールドから帰ってきた吟侍達もスカウトしようと訪ねてきた存在。
実力はあるのだが、自信がプロデュースしている十大殿堂の評価は下がっていて対処が取れていない。
吟侍によってロスト・ネット・ワールドに逃げた十大殿堂のメンバーの様子を見に行ってもらう事になる。
吟侍に十大殿堂のメンバーが近づいたら反応する【メンバーメモリースティック】を渡している。
格好は、黒いフードの男の真似をしている。
彼の依頼もあり、吟侍達は十大殿堂と力試しをする予定を入れている。
011 クアースリータ
12番の化獣(ばけもの)。
クアンスティータを恐れる存在が集まって出来たロスト・ネット・ワールドという宇宙世界を持つ。
その最深奥(さいしんおう)には本当の意味で所有している宇宙世界クアースリータ・ワールドがあるとされている。
何でも特別な状態にするという力を持つ。
その力の強大さは、誕生時に、最強の化獣クアンスティータが誕生したと勘違いされる程のもの。
(第一本体)クアンスティータ・セレークトゥースの双子の姉であり兄でもある存在。
性別はおんこというものになる。
生まれたばかりで知識を得るなど、頭の回転は恐ろしく速いが、性格はてきとう。
時空重震(じくうちょうしん)という時空間で起きる地震を引き起こし、重震度(ちょうしんど)はそれまでの記録を大きく上回る9・7を記録する。
これは、震源地に当たる震源流点(しんげんりゅうてん)近くでは存在が存在を維持できず、分解と再生を繰り返す状態になってしまうほど巨大なものになる。
妹であり弟でもあるクアンスティータ・セレークトゥースが誕生したのを素直に喜んだ。
性別はおんこだが、クアンスティータに対し、お姉さんぶっている。
吟侍達をロスト・ネット・ワールドへと送り届けることになる。
012 フェンディナ・ウェル・クァムドゥエス
5名存在しているフェンディナ・マカフシギの【別自分】の一名。
同じ、フェンディナを名乗りつつも、フェンディナ・マカフシギの三名の姉、(長女ロ・レリラル・マカフシギ、次女ジェンヌ・マカフシギ、三女ナシェル・マカフシギ)とは血のつながりは無い別のフェンディナ。
フェンディナ・マカフシギにより別の宇宙から呼び出される事になる。
【別自分】の中では最強の実力者でもある。
無口で、普段は、「んっ……」しか言わない。
誰かが作らないと出来ない物――それを一瞬にして出現させる力【加工出現(かこうしゅつげん)の力】や指を指した相手に理解を求める情報を与える力【指さし確認】等を使う。
フェンディナ・マカフシギとは最も気が合う【別自分】でもある。
013 デュジル
フェンディナと同じく複合多重生命体(ふくごうたじゅうせいめいたい)という複数の体を持つ存在という区分で、【七大ボス】に数えられる存在。
全く別の種族に見える4名が姿を現したが、それらは全て【デュジル】であり、第一層に数えられる。
【デュジル】は第一層から第四層までの変身区分があり、その度に人数が異なる。
実力が未知数なフェンディナの力を見学するために、ロスト・ネット・ワールドにやってきた。
【デュジル】1−3は裏技に精通しており、それによって、ロスト・ネット・ワールドの穴場を見つけてやってきた。
【七大ボス】では弱い方の五名に数えられている。
【デュジル】1−1は体から胞子の様なものをまき散らしその胞子の様なものは敵の体へと張り付き、敵の体の一部から敵と敵対する存在を作り出し戦わせるという【敵対胞子(てきたいほうし)】という能力を持っている。
014 ラクン・シュアル
フェンディナと同じく複合多重生命体(ふくごうたじゅうせいめいたい)という複数の体を持つ存在という区分で、【七大ボス】に数えられる存在。
見た目は普通の少女だが、長い尻尾がついており、その尻尾の先には別の生物(珍獣?)がついている。
実力が未知数なフェンディナの力を見学するために、ロスト・ネット・ワールドにやってきた。
【デュジル】にひっついてロスト・ネット・ワールドにやってきた。
その力は不明。
【七大ボス】では弱い方の五名に数えられている。
敵対する存在の生体情報をめちゃくちゃに変更させる事が出来るという力【生体情報(せいたいじょうほう)の改ざん】という能力を持っている。
015 バーンエディラ
フェンディナと同じく複合多重生命体(ふくごうたじゅうせいめいたい)という複数の体を持つ存在という区分で、【七大ボス】に数えられる存在。
青い肌に顔のついた赤い髪の女性の姿をしている。
実力が未知数なフェンディナの力を見学するために、ロスト・ネット・ワールドにやってきた。
【ヴェレイ】と共にロスト・ネット・ワールドの大軍勢を一掃出来るほどの力を持っている。
【七大ボス】では弱い方の五名に数えられている。
絶対に治らない病や霊のような存在を取り憑かせとり殺すという【絶望憑依(ぜつぼうひょうい)】という力を使う。
この力の感染元でもある。
016 ヴェレイ
フェンディナと同じく複合多重生命体(ふくごうたじゅうせいめいたい)という複数の体を持つ存在という区分で、【七大ボス】に数えられる存在。
眼鏡をかけた女性の姿をしている。
実力が未知数なフェンディナの力を見学するために、ロスト・ネット・ワールドにやってきた。
【ヴェレイ】と共にロスト・ネット・ワールドの大軍勢を一掃出来るほどの力を持っている。
倒した相手を一瞬にして復活させる力も持っている。
敵を連れてくる力を持っている。
フェンディナに同盟を持ちかける。
【七大ボス】では弱い方の五名に数えられている。
分裂する多重人格者とも呼ばれる存在で、13の性格イコール体を持って居る。
13の性格はそれぞれ、赤、青、黄色、桃色、緑、紫、橙、茶色、黒、白、金、銀、灰の13色の団子を作る事が出来る。
その団子を餌として勢力を手懐けている。
主人格の【ヴェレイ】が使える団子の色は赤。
017 クアンスティータ・ソリイントゥス
第二本体クアンスティータ・ルーミスの従属である第二側体。
本体であるルーミスよりも先に誕生していた。
(誕生というよりは突然、出現した状態)
自分の事を【ボクチン】と呼ぶ、芸術と変わった者が大好きなクアンスティータ。
ソリイントゥス・ワールドという宇宙世界を一つ所有している。
その力は、登場シーンだけで、吟侍達が戦慄する程、大きい。
側体でも他の存在を圧倒する程、強大な力を持っている。
千角尾(せんかくび)や背花変(はいかへん)のように、クアンスティータである特徴を持っている。
ソリイントゥス・ワールドで隔離教会(かくりきょうかい)という建物を持ってきてその中でこっそりと行動している。
基本的には男でも女でもないおんこという性別だが、カノンから受けている影響が強いため、どちらかというと女性よりである。
側体なので背中には五角形6片の背花変(はいかへん)を持って居て、それをちぎって吟侍と粘土遊びのような事をした。
018 怪物ファーブラ・フィクタ
暗躍する神話の時代から生きる男。
最強の化獣(ばけもの)クアンスティータの父でもあり、芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)の前世でもある。
関係者全てに同時にダメージを与える力などを持っている。
第二本体クアンスティータ・ルーミス誕生のために今回も暗躍している。
019 ニナ・カエルレウス
現界における最大の財閥、セカイウチュー家の令嬢リーセロット・セカイウチューを名乗って居るが正体は第二本体クアンスティータ・ルーミスを産み落とす第二のニナ、ニナ・カエルレウス。
クアンスティータ誕生事件により、実家はロスト・ネット・ワールドに避難していたが、結婚式イコールルーミスの出産式は現界におけるセカイウチュー家発祥の地で執り行われる事になった。
020 クアンスティータ・ルーミスの声?
まだ、誕生していないはずなのに聞こえて来た第二本体クアンスティータ・ルーミスの声。
ルーミスは【矛盾の肯定】という代表的な力を持っており、それは矛盾する事柄を肯定する(実現化させる)事が出来る。
そのため、誕生していないにもかかわらず、吟侍に声をかける事が出来た。
ルーミスが予想以上の力を持って誕生する事になり、父である怪物ファーブラ・フィクタの事を【バカ親父】呼ばわりするなど、少々怒っている。
一人称は【私】で、自我の様なものは確立されている。
ルフォスの事を【ネズミさん】と呼んでいる。