第005話 ロスト・ネット・ワールド編その6

ウェントス編第005−06話挿絵

01 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)達の行動歴


 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)達は、今、現在、ロスト・ネット・ワールドという宇宙世界でバラバラに行動していた。
 彼らがこれまでにたどった道は波瀾万丈と言える。
 吟侍達はまず、幼い頃にさらわれた友人達を救い出すため、絶対者アブソルーター達が支配している四連星の一つ、風の惑星ウェントスに救出活動をしていた。
 だが、トラブルに巻き込まれ、王杯大会エカテリーナ枠に出場する事になる。
 その途中で最強の化獣(ばけもの)クアンスティータが誕生する事件が起き、吟侍は仲間達と共に生まれたばかりの第一本体(クアンスティータ・)セレークトゥースが所有する宇宙世界、セレークトゥース・ワールドで冒険する事になった。
 そこでの何度にものぼる死線をくぐり抜けると気づけば現界(げんかい)と呼ばれる宇宙世界に戻ったらそれを破壊してしまうほど強大な力を身につけてしまっていた。
 これではまずいと、セレークトゥース・ワールドに居る共同経営者【ぴょこたん】に力の制御をしてもらい、更に、内向きに力を発動する技術を習得し、戻ってこれた。
 戻って来たのもつかの間、吟侍には片付け無ければならない事が次から次へと降って沸いてきた。
 吟侍達は仲間と共に今度はクアンスティータの双子の姉にして兄でもあるクアースリータの所有する宇宙世界、ロスト・ネット・ワールドに旅立つ事になった。
 吟侍と共にロスト・ネット・ワールドに向かったメンバーは、
 ソナタ・リズム・メロディアス第六王女、
 ステラ・レーター、
 エカテリーナ・シヌィルコ、
 レスティー、
 ディアマンテ、
 聖魔妖精(せいまようせい)エクス/クェスの6名だ。
 フェンディナ・マカフシギもロスト・ネット・ワールドに向かったが、彼女は一人、自分を見つめ直すため、単独行動を選択する。
 一方、ロスト・ネット・ワールドにたどり着いて早々、吟侍達からメンバーが離れる事になる。
 ディアマンテに対する些細な嫉妬心を謎の女、【アコンルーク】に増幅させられ、ヒステリーを起こしたソナタ、ステラ、エカテリーナの三名が吟侍達と別行動を取ることになった。
 吟侍達、ソナタ達、フェンディナと三チームに分かれてロスト・ネット・ワールドを冒険する事になったが、トラブルは次々と降ってくる。
 三チーム三様の冒険は続くのだった。


02 VSアコンルーク


 吟侍達は【アコンルーク】との約束のエリア、【宇宙海】のエリアに着いた。
 今まで黙っていた【アコンルーク】がいよいよ動き出す。
 【アコンルーク】は、
「ありがとう。あなたたち、私をここまで運んで来てくれて」
 と言った。
 どういうことだろうか?
 それは、実は【アコンルーク】は地縛霊の様に吟侍達と出会った場所に釘付けになっていたのだった。
 誰かと同行するという事でのみ、移動出来る存在――それが【アコンルーク】の正体だった。
 うまく利用できそうな存在を探していて、そこで吟侍達に目をつけたのだ。
 吟侍には【答えの力】があるので、下手な動きをすればボロが出ると考えた【アコンルーク】は出来るだけ動きを見せず、黙ったまま、吟侍達に同行する事によって吟侍に【答えの力】で自身が持っていた思惑を探らせないように心がけていた。
 だが、【宇宙海】のエリアについてしまえばこっちのもの――【アコンルーク】はそう考えていた。
 同じエリアにさえ入ってしまえば、後は簡単。
 【宇宙海】の宝を引き寄せ、自身の力として、吸収し、彼女は真の姿を現した。
 幼い女の子だった外見から筋骨隆々のムキムキの怪物が顔を現す。
 体は男性のもの、顔はカマキリに似たもの、背中からはカジキマグロの背びれを思わせるようなひれが生えていて、肘にはかたつむりの殻を思わせるような物がついているなどの特徴を持つ本性を現した。
 【宇宙海】のエリアの宝――【万能反物質(ばんのうはんぶっしつ)】で出来た玉を手にする。
 この玉に触れるものは全て、対消滅するという危険極まりない代物だった。
 どのような物、どのような存在に対しても反物質を生成し、ふれたものを破壊する危険なアイテムだ。
 これを体内に取り込む事により、【アコンルーク】の体がふくれあがる。
 ちょっとした小山ほどの大きさになる。
 吟侍は、
「用済みになったおいら達を始末するつもりか?」
 と聞いた。
 【アコンルーク】は、
「私の奴隷になるなら生かしてやってもいいぞ」
 と言った。
 吟侍は、
「やっている事が三下の悪党並みだな。おいら達がそんな申し出、受けると思うか?」
 と言って戦闘態勢を取った。
 吟侍は内心ため息をついた。
 【アコンルーク】には何か企みがあると思っていたが、もったいぶって引っ張ったあげく、何の事はない――薄っぺらな企てしか無かったと思うと正直、がっかりだった。
 セレークトゥース・ワールドを冒険したという事が大きく影響し、吟侍は敵に対しても高潔であることをどこかで求めていたようだ。
 クアンスティータに関わる存在はみんな、確かにどこか高いプライドのようなものを持っていた印象があったが、他の存在にそれを求めるのはお門違いでもある。
 他の存在はクアンスティータに対し、怯え、恐れ、逃げる事が当たり前の様になっている。
 ある程度の力を持つが故に、クアンスティータへの恐怖には常にさらされている状態だ。
 逃げるためにはいくらでも卑屈になるだろうし、姑息な手を使う事もあるだろう。
 【アコンルーク】はクアンスティータを恐れる存在達によって作られているロスト・ネット・ワールドにおいて、力を求めるために、【宇宙海】のエリアの【万能反物質】の玉を狙った。
 だが、【宇宙海】の猛者達によって事前に察知され、【アコンルーク】は幼女の姿に封印され、吟侍達と出会ったエリアに釘付けにされたのだった。
 それが、【答えの力】で覗いた、【アコンルーク】のプロフィールだった。
 【アコンルーク】は逆恨みして、【宇宙海】のエリアに戻って【万能反物質】の玉を使って、【宇宙海】のエリアの猛者達を倒そうと考えていた。
 そして、その力を得た今、目指すは猛者達の居る深海宇宙の城に向かおうとしていた。
 吟侍達は二の次だ。
 自分が猛者達に復讐するのに協力するのであれば、良し。
 邪魔立てするというのであれば排除する――そういうつもりになっていた。
 今は、【アコンルーク】の体は触れる物全てを破壊する体になったと思って有頂天になっている。
 だが、本当にそうだろうか?
 例えば、それは、クアンスティータには通用するのだろうか?
 【万能反物質】の力を手にしたとしてもクアンスティータに通用するとはとても思えない。
 クアンスティータの方が、【アコンルーク】よりも遙かに恐ろしい存在だと言える。
 比べる事すら間違っているようなものだ。
 クアンスティータはそれだけ、全くの別物だ。
 【アコンルーク】もこの力を手に入れたとしてもクアンスティータには決して挑まないだろう。
 なので、触れる物全てを破壊するというのは間違っているだろう。
 クアンスティータにはまず通じない。
 セレークトゥースに挑めばあの勘違いの力、【ミステイク・フィルタ】で簡単に無効化されてしまうだろう。
 そう思うと絶対的恐怖を持った力ではない。
 そこでまず、一安心。
 そして、仮に触れる物全てを破壊するというのであれば、ロスト・ネット・ワールドは何故壊れない?
 そこで、二安心。
 万能ではない破壊能力であるのであれば、崩す手はいくらでも作り出せる。
 吟侍はそう考えた。
 【答えの力】で【万能反物質】の力を破壊する力を生成しようと試みる。
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ……
 というまるで目覚まし時計の様な音が響く。
 吟侍が複雑な構成を編んでいる音だ。
 戦いの姿勢を取りながら今までの冒険を思い出す。
 【アコンルーク】とは良い思い出が無かった。
 行動を共にしていてもどこか別の考えを隠し持っている感じがして、レスティーやディアマンテ、エクス/クェスとも打ち解ける事は無かった。
 普通、一緒に旅をすれば、少なくとも多少の情がわく事もあるとは思ったのだが、結果、一度も心を許すこと無く、敵対する事になった。
 出会いそのものが、ソナタ達の感情操作をした最悪のものだったというのもある。
 それで、吟侍達も身構えて対応していた。
 一緒に行動していても【アコンルーク】はずっと孤独だったと考えると、彼女(彼?)は寂しい存在だったのでは?と思った。
 吟侍は感情的になっている。
 何故?
 そう、【アコンルーク】は元々、感情を操作する力を持っていたのだ。
 感情操作をして、吟侍の情け心を刺激し、【アコンルーク】に対する攻撃の手を緩めさせようと思っているのだ。
 ソナタ達も利用されたくらい強力な心理操作。
 情に厚い部分も持って居る吟侍にとってはかなりやりにくい力だ。
 それに【万能反物質】による破壊能力。
 この二つを駆使して吟侍に迫ってきた。
 非情に厄介な二つの能力を持った【アコンルーク】。
 だが、吟侍は、
「フェンディナ……お前さんが借りた力、また借りさせてもらうぜ」
 と言った。
 吟侍は、仲間となった存在の力を借りることが出来る。
 セレークトゥース・ワールドでは琴太と共に行動しているはず(実際には敵対してしまったのだが、)の野茂 偲(のも しのぶ)の忍術をハイパー・ダウンロードをして使った事がある。
 別行動を取る事が決まったフェンディナは、
「いつでも使ってください」
 と言って、自分の力の一部を吟侍のピンチに使えるように契約してくれていたのだ。
 フェンディナ・マカフシギには三名の姉がいる。
 長女ロ・レリラル・マカフシギ、
 次女ジェンヌ・マカフシギ、
 三女ナシェル・マカフシギだ。
 三名の姉は精神的に弱い、妹のために自身の力の一部をフェンディナ・マカフシギに使える様にしてくれていた。
 ロ・レリラルは、相手の設定などを変える力を。
 ジェンヌは、スーパーアーカイブにアクセスして、情報を得る力を。
 ナシェルは、結果をねじ曲げる力を、妹のためにいざという時、数回だけ使えるようにしてくれていた。
 吟侍はナシェルの用意した【結果をねじ曲げる力】を借りて、自分達と【アコンルーク】の出会いを無かった事に変えたのだ。
 これにより、軽くパラドックスが起きる。
 だが、ここはロスト・ネット・ワールドであり、現界ではない。
 現界であれば、すでに誕生しているクアンスティータの影響で、力が無効になってしまう可能性もあったが、ロスト・ネット・ワールドではこのパラドックスは比較的すんなりと受け入れられた。
 次々と吟侍達が【アコンルーク】と出会ってから、行動したという事実が書き換わる。
 結果、【宇宙海】のエリアにはやってきたが、【アコンルーク】とは出会わなかったという事に変わっているので、問題ない状態になった。
 ディアマンテは、
「あれ?吟侍様……なんで私達、このエリアに来たんですかね?」
 と聞いた。
 なんでこのエリアに来たのかさっぱりわからなかったからだ。
 当然と言えば当然である。
 レスティーもエクス/クェスもわからない。
 ナシェルの力を使った吟侍だけが、【アコンルーク】の事を覚えている。
 彼女(彼?)は元の位置で、釘付けになったままになっている。
 ソナタ達との喧嘩別れも修正され、ソナタ達はディアマンテに対してイラついて離れて行ったのでは無く、単にはぐれてしまって別行動で、行動しているという事実にすり替わっていた。
 吟侍は、
「さぁな、宇宙海のエリアだから泳ぎに来たんじゃねぇか……」
 ととぼけた。
 【宇宙海】のエリアの宝、【万能反物質】の玉は元の位置に戻っている。
 猛者達が守っているらしいので、このまま無視して進んでも良いだろう。
 【アコンルーク】とはこれっきり。
 もしも、改めて出会った時、人の感情操作するなどして、吟侍達の反感を買わない出会いが出来た時はその時は友達になっても良い――吟侍はそう思った。
 少なくとも、人を騙して、利用しようと思っている間は友達にはなれないが。
 【アコンルーク】との出会いが無効になった事で、【宇宙海】に向かうという目的は終了した事になる。
 【宇宙海】のエリア自体はこのエリアからたくさんの生命体が生まれたりしているので、興味惹かれる所もあるのだが、今は他に目的が出来た。
 怪物ファーブラ・フィクタが絡んでいると思われる結婚式への参加だ。
 怪物ファーブラ・フィクタが暗躍していると思われる結婚式に参加して、動向を見てみる事を次の目標とした。
 吟侍達は【宇宙海】のエリアで少しだけ遊び、次の目的地を目指して、進むのだった。


03 ソナタ達とフェンディナの整合性


 吟侍が【アコンルーク】との出会いを無効にしたことにより、ソナタ達の行動理念もすり替わっていた。
 彼女達は元々、【アコンルーク】に踊らされ、感情が爆発し、ヒステリーを起こした事を恥じて、吟侍達に手土産を持って行こうと思って行動していたが、別行動という部分は生きているものの、ヒステリーを起こして離れたという事実は消えていた。
 ソナタは、
「ったく、吟侍のバカタレ……どこ、ほっつき歩いているのよ」
 と言った。
 ステラは、
「早く、合流しないと……」
 と言った。
 エカテリーナは、
「何をしておるのじゃ、あやつらは?」
 と言った。
 三名とも自分達から吟侍と離れて行ったという事実が消えている。
 ただ、吟侍達とはぐれたという事だけが結果として生きている。
 こうなると非はソナタ達から吟侍にという事になっていた。
 パラドックスが起きて、事象の辻褄を合わせるために、起きた事の一つだった。
 つまり、本当の非常時でもなければ、ナシェルの力、【結果をねじ曲げる力】は使わない方が良いという事だ。
 その力がどんな不都合を自分に運んで来るか全くわからないからだ。
 ソナタ達が【イクストーヴァス】を一体、手に入れたという事実は生きていた。
 ソナタは、
「それにしても高い買い物だったわね。この【イクストーヴァス】。賞金首を片っ端から捕まえて稼いだから良いけど、なんで、私達、これを手に入れようと思ったんだっけ?」
 と言った。
 ステラは、
「デザインが素晴らしいから、吟ちゃんを待っている間、1体手に入れようって事になっていたのよ」
 と答えた。
 整合性を取ろうと不都合な部分が修正されている。
 エカテリーナは、
「そんな事より、これからどうするのじゃ?吟侍の奴がどこへ行ったかもわからぬのにこのままでは見つからぬぞ」
 と言ってきた。
 ソナタは、
「大丈夫じゃない?あいつには【答えの力】があるんだから。あいつかレスティーあたりが見つけてくれるんじゃないの?」
 と気楽に返してきた。
 ソナタ達は自分達が持って居る違和感を会話する事で解消していこうとしていた。

 一方、フェンディナ・マカフシギは、自分の力から、ナシェルの用意した力が一つ、持って行かれた事を感じ取った。
 フェンディナ・マカフシギは、
「吟侍さん、力、使ったんですね……」
 と独り言を言った。
 フェンディナ・マカフシギ自身は【アコンルーク】と出会っていないので、吟侍によるナシェルの力を使った違和感というものは無いが、自分の体からハイパー・アップロードされ、吟侍の体にハイパー・ダウンロードされた【結果をねじ曲げる力】の移動は感じ取っていた。
 なので、彼女も薄々、どのような状況になったかは感じ取っていた。
 つまり、結果を変える必要がある事が起きたのだという事は気づいている。
 ソナタ達、フェンディナ・マカフシギはそれぞれの立場でそれを受け止めていたのだった。


04 蚤の市(のみのいち)パニック


 ソナタ達は、現在、蚤(のみ)の市(いち)に来ていた。
 ロスト・ネット・ワールドとしては最大規模クラスの蚤の市で、これよりも大きな蚤の市はロスト・ネット・ワールド上では十数カ所しかないという。
 十数カ所もあると言うと、この蚤の市の規模は大した事が無いようにも印象を受けるが、ロスト・ネット・ワールド全体の大きさを考えれば、それでもものすごい事と言えた。
 蚤の市はロスト・ネット・ワールド中から集められた様々な骨董品や美術品、アンティークからブランド品、古道具などが所狭しと置いてある店が延々と続いている場所だ。
 そこには一体、何の役に立つんだというよくわからないものから、とびっきりの掘り出し物まで置いてある。
 良い物に巡り会うか、それとも訳のわからないものをつかまされるかは目利きにかかっている。
 クアースリータへの土産には良いのがあるかも知れない。
 この状況に一際(ひときわ)、目を輝かせる者が居た。
 ステラ・レーター――その人だった。
 彼女の未来の世界における数多くの肩書きの一つとして、【特別特殊鑑定士(とくべつとくしゅかんていし)】という資格も持っていた。
 未来の世界では過去の世界で作られた物などの価値を正確に判断する技術が確立されており、彼女は趣味で【特別特殊鑑定士】第1級の資格を得ていた。
 ステラは、
「すごい、すごい、すごいわぁ〜……これも、これも、これも……これもよ。宝の山じゃない、ここは」
 と興奮を抑えられない。
 王族であるソナタと支配者であるエカテリーナはその辺りは無頓着で、いまいちその良さがわからない。
 ソナタは、普段クールなステラが興奮しているのを見て、
「どうしたのよ、スー。珍しく興奮しているじゃない」
 と聞いた。
 ステラは、
「おそなちゃん、わからないの?これの価値が?こんなに安く売っているけど、これ売るところで売ったら、山一つ買えるくらいの価値があるのよ。これ、ここ、ここ、このマークが本物だっていう証明になっていて、これは普通に作っても作れなくて……」
 と説明を始める。
 エカテリーナは、
「あーわかったわかった、ステラ、そなたがその訳のわからぬものに興味を示しているのはわかった。じゃが、今の妾達に必要なものとは……」
 と言いかけると、ステラが、
「何を言っているのよエカテリーナ。あなたにはこれの価値がわからないっていうの?」
 と言った。
 ソナタが、
「あーごめん、私もわかんないわ」
 と言うと、ステラは、
「あなた達、それでも権力者なの?あー駄目駄目、これの価値がわからないなんてあなた達、権力者失格よ、失格」
 と首を横に振った。
 ソナタは、
「そこまで言わなくても……」
 と言い、エカテリーナは、
「そんなものの価値がわからんでも生きていける」
 と言った。
 その言葉にステラは過剰反応して、
「二人とも、そこになおりなさい。これから私がレクチャーします。そもそも……」
 と言って、何やら講義を始めた。
 エカテリーナはソナタの方を見て、
「急にどうしたのじゃ、こやつは?」
 と聞いたが、ソナタも、
「知らないわよ、私だって。少なくとも前世の双葉だった時はこんな性格じゃなかったはずだわ」
 と答えた。
 ステラは、
「そこ、私語うるさい。良い?これはね、今を遡る事……」
 と話を続けだした。
 ソナタとエカテリーナはステラの面倒臭い部分を見た気がした。
 こうして、ステラ手動の元、蚤の市でのクアースリータへの土産を含めた掘り出し物探しが始まった。
 【イクストーヴァス】を手に入れるために稼いだお金がどんどん無くなっていった。
 ステラは買い付けの鬼と化していた。
 エカテリーナは、
「ソナタ、お主、あやつを止めよ。資金が無くなる」
 と言ったが、ソナタも、
「そんな事言ったって、止められる雰囲気じゃ……」
 と言って戸惑っている。
 ステラは有無を言わせない表情で、どんどん、掘り出し物と思われる品を手に入れていく。
 買ったものを片っ端から、エカテリーナの子宮にある鏡の世界に放り込んでいく。
 エカテリーナの子宮は2番の化獣、フリーアローラの所有する勢力の持つ空間とつながっている。
 そこには、フリーアローラの勢力がいるのだが、それを完全に倉庫代わりに利用していた。
 エカテリーナは、
「いい加減にしろ」
 と言った。
 その時、ステラは、
「はっ、私は一体、何を???」
 と言ってようやく止まった。
 どうやら、掘り出し物の山を前にして我を忘れていたようだ。
 エカテリーナは、
「正気に戻ったか?で、どうするのじゃ?こんなに買って、処理に困るであろう?」
 と言った。
 ステラは、
「ご、ごめん……つい……」
 と詫びを入れた。
 ステラは骨董品に目が無く、見ると欲しくなってしまうという癖があるようだ。
 骨董品マニアのようだ。
 だが、きな臭い事ばかりだったロスト・ネット・ワールドの中でもこういう平和なイベントがあるんだなとソナタ達は思うのだった。


05 キャロル・フレーズ・メロディアスとの邂逅(かいこう)


 一方、フェンディナ・マカフシギは、次なる【別自分】、フェンディナ・フェ・ナンディを呼び出す場所を探して、さ迷っていた。
 フェンディナ・フェ・ナンディは、【別自分】の中でもフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスに次ぐbQの実力者だ。
 相変わらず、単独で行動しているフェンディナ・マカフシギの周りには異物を掃き出そうと様々な強者達がうじゃうじゃ向かって来ていた。
 そんな中、彼女はソナタに面影が似た女の子と出会った。
 大勢に襲われているのを見て、彼女が助っ人に入ってくれたのだ。
「大勢で寄ってたかって、一人の女の子をいじめるなんて最低ね。あんた達に大先生の爪の垢でも飲ませてやりたいわ」
 と言って。
 ソナタに似ているという事は双子の妹であるカノンにも似ているという事になる。
 フェンディナ・マカフシギは、
「そ、ソナタさん?」
 と尋ねたが、その女性は、
「ソナタ?違うわよ、私の名前はキャロルよ。確か義姉さんに一人、ソナタって名前の人が居るって聞いた事あるけど、私じゃないわ」
 と言った。
 フェンディナ・マカフシギは、
「ちょ、ちょっと待ってください。あなたはソナタさんと関係があるんですか?あなたは、メロディアス……」
 と話しかけるも、キャロルは、
「ごめんねぇ〜、急いでいるの、私。――遅刻しそうでさ。授業に遅れちゃうから、さよなら〜」
 と言って、あっと言う間に走り去って行った。
 フェンディナ・マカフシギが出会ったキャロルという名前の少女――それは紛れもなくソナタやカノンと同じ、メロディアス王家のプリンセスだった。
 ソナタ達の父親にあたるブルース国王、その四番目の王妃、カヴァティーナ・フィナリス・メロディアスはソナタ達の義妹を身ごもったまま行方不明になっていた。
 そのカヴァティーナ第四王妃が産んだ娘が、第八王女、キャロル・フレーズ・メロディアスだった。
 母親のカヴァティーナはソナタの二年先輩であり、幼い頃、ソナタの口から吟侍の活躍を聞かされていた。
 ソナタは表だっては馬鹿にしていたが、内心では吟侍はヒーローそのものだった。
 その内に秘めた思いは吟侍の恋人である妹、カノンには話す事が出来なかったので代わりにカヴァティーナに話していた。
 ソナタの話を聞かされたカヴァティーナはその後、神隠しにあい、当時からすれば少し未来に当たる時代のロスト・ネット・ワールドに来てしまった。
 そこで、キャロルを産み落とした。
 ロスト・ネット・ワールドはセレークトゥース・ワールドほどではないにしても時の考え方が崩れているので、キャロルはあっという間に成長したが、母娘二人が生きていくにはロスト・ネット・ワールドはかなり、過酷だった。
 ロスト・ネット・ワールドを出て行くためには勇者になるしかなく、カヴァティーナは挑戦したが、失敗した。
 そして、娘であるキャロルがその後を継ぐ事になった。
 母、カヴァティーナは娘キャロルの希望になればと【芦柄 吟侍】の事を【大先生】と呼ばせてソナタから聞いていた彼の戦闘スタイルを学ばせる事にした。
 そして、彼女はロスト・ネット・ワールドを舞台にメキメキと力をつけていくことになる。
 吟侍の戦闘スタイルである創作バトルスタイルを主体として。
 元々天賦(てんぷ)の才があったというのもある。
 キャロルはロスト・ネット・ワールドでメキメキと実力をつけたのだ。
 そして、キャロルにとっても憧れの存在である吟侍と共に行動している女性(フェンディナ・マカフシギ)を助けたという事になるのだが、吟侍とはニアミスという状態になった。
 フェンディナ・マカフシギは現在、ロスト・ネット・ワールドの一つ、パルティスという場所に来ていた。
 【パルティス】こそがキャロルが活躍するエリアだった。
 このままキャロル達を現界に連れて帰れれば良いのだが、フェンディナ・マカフシギには彼女がソナタの関係者であるという確証を持てる知識は残念ながら持っていなかった。
 姉、ジェンヌの力を使えば事実を知ることが出来ただろうが、フェンディナ・マカフシギはそれを必要とする時だとは思っていなかった。
 便利な力も使わなければ意味が無いという事だ。


06 フェンディナ・フェ・ナンディの超実力


 フェンディナ・マカフシギはフェンディナ・フェ・ナンディを呼び出した。
 キャロル・フレーズ・メロディアスの助けもあって、ある程度、敵の気配が消えたためだ。
 これから、フェンディナ・フェ・ナンディと交渉をしていくことになる。
 フェンディナ・マカフシギは、
「【フェ・ナンディ】さん。こんにちは、【マカフシギ】です」
 と言った。
 他の【別自分】達についてもそうだが、フェンディナ達の間では【フェンディナ】という部分を外して自分や【別自分】を表現する。
 つまり、フェンディナ・マカフシギの場合は【マカフシギ】、
 フェンディナ・フェ・ナンディの場合は、【フェ・ナンディ】と言った具合にだ。
 フェンディナ・フェ・ナンディは、
「こんにちは【マカフシギ】さん。【フェ・ナンディ】です」
 と答えた。
 どうやら、【フェ・ナンディ】は礼儀正しいタイプのようだ。
 キャロルが、フェンディナ・フェ・ナンディと会話するのに十分な場所を確保してくれた事も手伝って、彼女との話し合いはスムーズに進んだのだった。
 ある程度打ち解けて来たところでようやく敵らしき気配がまた近づいて来た。
 もう十分だと判断したフェンディナ・フェ・ナンディは挨拶がてらこの敵達と戦ってくれるという事になった。
 フェンディナ・マカフシギとフェンディナ・フェ・ナンディが打ち解けてすぐに姿を現した敵は、パッと見の印象ではバンシー――泣き女の様だ。
 バンシーの様に死を予言するという事は無いが、この女の姿をした怪物達が泣くことにより無数の不幸が沸いて来る。
 フェンディナ・マカフシギが敵に囲まれる前に泣き声のような声が聞こえる事があったが、どうやらこの女達がフェンディナ・マカフシギの前に敵を引き寄せていたようだ。
 この女達の名前は、【クライ・クライ・クライ・クライ】という。
 【クライ】が四つ、つながる珍しい名前だ。
 目には見えるが、実体は無いとされる存在で【クライ・クライ・クライ・クライ】自体に攻撃力は無く、ただ泣くだけだ。
 だが、その泣くだけの行為が狙われた者にどんどん不幸を運ぶ。
 そういう意味では貧乏神の要素もどこか持っていると言えるだろう。
 フェンディナ・マカフシギが異様に敵の襲撃を受けていたのはこの【クライ・クライ・クライ・クライ】に取り憑かれていたからだったのだ。
 今まではかなり遠方から泣いて敵を集めていたが、近くに敵となる存在が居なくなってしまったため、直接、フェンディナ・マカフシギの側に来て、敵を集める事にしたのだ。
 普通に攻撃しても実体が無いので、ダメージを与える事が出来ない厄介極まりない存在。
 通常はそう思うのだが、フェンディナ・フェ・ナンディは冷静だった。
 実体がないのであれば、実体を与えてから倒せば良い。
 フェンディナ・フェ・ナンディは、
「彼の者達に実体を……」
 とつぶやいた。
 するとその声に反応してフェンディナ・フェ・ナンディの体から靄(もや)のようなものがジワッと出て来たかと思うと、その靄のようなものは突然、ものすごい、勢いで【クライ・クライ・クライ・クライ】達を取り囲んだ。
 フェンディナ・フェ・ナンディの特殊能力、【虚像実体化縛(きょぞうじったいかばく)】だ。
 実体の無い存在はそれほど、頻繁に現れるという訳ではないので、滅多に使う事は無い力だが、フェンディナ・フェ・ナンディにとって、実体が無い存在など、全く脅威ではなかった。
 【虚像実体化縛】とは文字通り、実体の無い存在に実体を与え、そのまま捕縛してしまう力だった。
 フェンディナ・フェ・ナンディは、
「悔い改めなさい」
 と言って、実体を持った【クライ・クライ・クライ・クライ】達に次々とビンタを食らわしていった。
 【クライ・クライ・クライ・クライ】達は、
「ひぃぃいいいいいいいぃぃぃぃぃ……」
「ふわぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ……」
「ひぎぃぃいぃぃぃいいぃぃぃ……」
「へやぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 等々、数々の悲鳴をあげた。
 食らわしたのはビンタだが、それに、吟侍が得意とする能力破壊効果、【アビリティークラッシャー】の要素も含めている。
 【クライ・クライ・クライ・クライ】はビンタ一つで自分達の存在意義を問われるようなダメージを受けたという事になるのだ。
 フェンディナ・フェ・ナンディは、
「下がりなさい」
 と言った。
 そして、その声に反応する様に、
「ひぃぃいいいぃぃぃ………」
「ひぃぃいああぁぁぁ………」
「ひぃぃいええぇぇぇ………」
「ひぃぃいううぅぅぅ………」
「ひぃぃいおおぉぉぉ………」
「ひぃぃいぐわぁぁぁぁ………」
「ひぃぃいあうおわぁぁぁぁ………」
 等と様々な奇声を上げて散り散りに逃げ去って行った。
 フェンディナ・マカフシギは唖然となった。
 強敵と思われた【クライ・クライ・クライ・クライ】をいともたやすく追っ払ったからだ。
 実力で言えば、明らかにフェンディナ・フェ・ナンディは、フェンディナ・マカフシギの上を行っていると思われた。
 フェンディナ・フェ・ナンディはその後、何事も無かったかのように、
「それでは、【マカフシギ】さん。これからもよろしくお願いします」
 と丁寧に挨拶をした。
 フェンディナ・フェ・ナンディ――敵に回せば怖いが、味方となってくれるのであれば、これほど頼もしい存在もそうは居ないと思えた。
 フェンディナ・マカフシギは、
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
 と挨拶を返すと、フェンディナ・フェ・ナンディは、
「それでは、よしなに……」
 と言って、去って行った。
 これまで、四名の【別自分】と話し合ってきたフェンディナ・マカフシギ。
 【別自分】だから、自分と同じ性格だと思っていたが、話して見ると全然違っていた。
 それぞれが個性を持っていた。
 【別自分】は【別人】と言っても良いのかな?とフェンディナ・マカフシギは思うのだった。
 【別自分】も残すところは、フェンディナ最強とうたわれるフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスを残すのみ。
 フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスとの交渉が済んだら、それぞれの両の瞳に隠された力との交渉をと思っていたが、予定を変更する事にした。
 フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスとの交渉が済んだら、吟侍達と合流する事に決めたのだ。
 理由は時間がかかりすぎた事だ。
 フェンディナ・マカフシギは【別自分】との交渉をするだけで、ロスト・ネット・ワールドに来てずいぶん、時間をかけてしまった。
 そろそろ、吟侍達と合流しないと彼らに申し訳が立たないという思いが強くなって来たのだ。
 自分のわがままで単独行動を取らせてもらったが、当初の予定より、ずいぶん、時間がオーバーしてしまったと彼女は思うようになった。
 何か、自分の知らない所で大きく事が動いているのでは無いかと心配になったのだ。
 となると、もう一つ、気になる事が。
 それは、七大ボス達との交渉だ。
 彼女達とはまた会う約束をしたが、それがいつという事は決めていない。
 吟侍達と合流する前に、この七大ボスとの同盟についても話をまとめて置かなければならないと思っていた。
 つまり、吟侍達と合流するまでにする事は二つ。
 一つはフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスとの会話。
 もう一つは七大ボス達との会話だ。
 フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスとは呼び出せば、いつでも会える。
 だが、七大ボスとは集まる約束を取り付けなければならない。
 フェンディナ・マカフシギは、取り急ぎ、七大ボスとのアポイントメントを取る事にしたのだった。
 アポの取り方は、決めて居る。
 待ち合わせ場所に指定している場所で、合図を送るというものだ。
 フェンディナ・マカフシギはその場所に向かって進むのだった。


07 吟侍達とソナタ達の合流


 吟侍は結婚式に参加するかどうかを決める前にソナタ達と合流する事を決めた。
 【アコンルーク】との出会いが無効になった今、彼女達と別行動する意味は無い。
 ひょっとしたら、怪物ファーブラ・フィクタ達との戦闘になるかも知れない結婚式の会場に向かうより先に彼女達にも事情を話し、これからの行動を決めようと思ったのだ。
 吟侍は、【ラッキーフレンド】を呼び出した。
 吟侍は、
「【ラッキーフレンド】、おそなちゃん達と再会したい。道を指し示してくれ」
 と言った。
 【ラッキーフレンド】は、
「こっち、こっち……」
 とソナタ達の居るエリアの方向を指し示した。
 戦力としてはフェンディナ・マカフシギも欲しいところだが、彼女は単独で行動したいと言って別行動を取っているので、彼女が戻りたいと思わない限り、共に行動するのはどうかと思って、合流するつもりにはなっていない。
 吟侍達は最短ルートを通ってソナタ達と合流する事にした。
 嫌な予感がする――とまでは行かないが何かが影で動いている気がする。
 絶望的とまでは言わないが、吟侍達の手に余る何かが動きだそうとしている。
 吟侍はそう感じていた。
 奇しくもフェンディナ・マカフシギと同じ気持ちだった。
 仲間とはぐれている場合じゃない。
 一刻も早く合流して、行動に移さねば――そんな気持ちだった。
 なんだか胸騒ぎがするのだ。
 吟侍は【答えの力】を【ラッキーフレンド】に合わせて使っていた。
 ディアマンテは、
「どうしたんですか、吟侍様?」
 と吟侍の微妙な変化に気づいた。
 さすがは、吟侍マニアという所だろうか。
 吟侍は、
「悪いが、おそなちゃん達との合流を急ぐぞ」
 と言った。
 レスティーも【答えの力】を使っていたのか、
「私もなんだか、急いだ方が良い感じがするわ。ロスト・ネット・ワールドの空気が変わったっていうか、何かが入って来た感じがする。これが私達に絶望を運んで来るという感じじゃないけど、セレークトゥース・ワールドで手に入れた力を解放させても、どうにもならないような大きな力――それが、私達の所に迫ってきている気がする」
 と言った。
 エクスは、
「ちょ、ちょっと、ちょっと、怖い事言わないでよ。何が近づいているっていうのよ?」
 と不安顔だ。
 彼女は【幸運の導き】という力を使える。
 この力は、旅の安全を強めるという効果がある。
 エクスが幸運の妖精と呼ばれているのはこの力があるからだ。
 怖くなったので、今まで使わなかったこの力を吟侍の【ラッキーフレンド】の付随させている。
 これで、絶対的に安全にソナタ達と再会出来る――とは思うのだが、吟侍やレスティーは、これだけやっても全て吹き飛ばせる、無効にしてしまうほど強大な力をその何かは持っていると感じていた。
 そこまで行くとそれに該当する存在は限られてくる。
 まさか、セレークトゥース誕生後に行方をくらました第一側体、クアンスティータ・トルムドアか?
 確かにトルムドアならば、吟侍達の胸騒ぎの原因としては十分に考えられる。
 再び、吟侍と遊びに来たのか?
 だが、この感覚はトルムドアとも違うと告げている。
 わからない。
 何なんだ、この言いしれぬ不安は?
 吟侍とレスティーは心の底からゾクッとする感覚を覚えた。
 とにかく、急がねば。
 急いでソナタ達と合流せねば。
 吟侍は仲間達を連れて急いで、ソナタ達の居ると思われるエリアを目指した。
 吟侍とレスティーに不安を覚えさせる何かはすでに吟侍達を捕らえている。
 捕らえていてなお、出るのを待っている。
 そんな気がする。
 手のひらで踊らされている?
 異質過ぎる何かの気配を感じる。
 向こうはいつでも姿を現す事が出来るのにあえてそれをしない。
 もてあそんでいる?
 想像もつかないほどの恐怖が吟侍達を襲う。
 冷静になれ。
 冷静になるんだ。
 吟侍はそれを自分に言い聞かせて、そそくさと行動する。
 幸い、何事も無く、吟侍達はソナタ達と合流することが出来た。
 再会したソナタは、
「どこ、ほっつき歩いてんのよ、バカ吟侍ぃ!待ちくたびれたわよ」
 との一言。
 ステラも、
「吟ちゃん、久しぶりって感じね」
 と。
 エカテリーナも、
「待っておったぞ」
 と言った。
 吟侍は、ホッとする――はずだった。
 ソナタ達の顔を見て仲間と合流できた事を喜び、ホッとするはずだった。
 だが、ホッと出来ない。
 安心出来ない。
 吟侍達を見つけた何かが今、正に出てこようとしていたからだ。
 吟侍は、
「だ、誰だ、お前さんは?」
 と天に向かって声をかけた。


08 クアンスティータ・ソリイントゥス登場


 ――すると、
 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン……
 と吟侍達の周りにどんどん柱が立っていく。
 気づいた時にはあっと言う間に建物らしき場所の中に閉じ込められた。
 礼拝堂?
 吟侍は直感的にそう思った。
 厳かな雰囲気のある建物。
 周りに建っている柱は地球で言えばロマネスク時代の創作を思わせるような柱頭彫刻(ちゅうとうちょうこく)になっており、荘厳な天井画が見て取れた。
 何なんだこれは?
 吟侍達は不安になる。
 この建物の中にあふれる雰囲気は明らかに吟侍達をも簡単に飲み込んでしまうほど強大過ぎるものだった。
 エカテリーナは、
「誰じゃ?、姿を現せ」
 と言った。
 すると、
「どぉ?【ボクチン】の宇宙世界からちょっと持って来ちゃった。雰囲気あるでしょ?」
 という声がした。
 トルムドアじゃない。
 トルムドアは自分の事を【私】と言っていた。
 カノンにそっくりな側体クアンスティータじゃない。
 別の何かだ。
 吟侍達は誰もわからなかった――いや、一人だけわかった者が居た。
 ステラだ。
 彼女は、
「く、クアンスティータ・ソリイントゥス……第二側体のクアンスティータ……」
 と言った。
 すると声の主は、
「あったりぃ〜ボクチンはクアンスティータ第二側体のソリイントゥスだよん。芸術や変わったものを愛するクアンスティータ。トルムドアから聞いているよ。君が、【吟侍パパ】だね、よろしくね〜」
 と言った。
 軽い。
 軽い口調だ。
 どうやら、声の主は(クアンスティータ・)ソリイントゥスで間違い無いようだ。
 トルムドアも飛び抜けた威圧感を持っていたが、ソリイントゥスもそれに負けないくらいの威圧感を見えない状態でなお醸し出していた。
 トルムドアが第一本体のセレークトゥースの従属側体なのに対し、ソリイントゥスは、第二本体ルーミスの従属側体でもある。
 つまり、このソリイントゥスが動き出したという事は、第二本体、クアンスティータ・ルーミスの誕生が近づいているという事を意味していた。
 ソナタは、
「な、何しに来たの?私達をどうするつもり?」
 と聞いた。
 顔はすっかり青ざめている。
 側体とは言え、ソリイントゥスもクアンスティータ。
 やはり面と向かって相手をするには怖すぎるのだ。
 ソリイントゥスは、
「大した事はしないよ。ちょっと話に来ただけだよ。【パパ】からは、ルーミス様、誕生の時は何もするなと言われているから、そんなのつまんないと思って、動き出す前に【吟侍パパ】とお話に来ただけだよん」
 と言った。
 【パパ】と【吟侍パパ】と言い分けているのは【パパ】とは怪物ファーブラ・フィクタ、【吟侍パパ】が吟侍という意味なのだろう。
 続けて、
「これでも、この宇宙世界の存在をびっくりさせないように、気をつけて来たんだよ。この隔離教会の中だけで行動していれば、他の存在に気づかれないと思っていたんだけど、【吟侍パパ】とそこの女の人(レスティー)は気づいたみたいだね」
 と言った。
 どうやら、吟侍やレスティーが感じ取った不安をすでに察知していたようだ。
 吟侍は、
「とにかく、話すなら出て来たらどうだ?」
 と声をかける。
 このまま、声だけなら不安だったので、とりあえず、姿を確認して安心したいという気持ちになったのだ。
 そんな不安の気持ちを知ってか、ソリイントゥスは、
「あ〜ごめん、ごめん。不安にさせちゃったね〜じゃあ、出てくるよ」
 と言った。
 そして、少しの間があり、その後――
 コツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ……
 と無限に広がるのではないかと思われるような足音が聞こえて来た。
 足音一つとっても普通じゃ無い。
 どこか回廊でも歩いているのだろうか?
 登場シーン一つ、とってもこれだけの脅威を感じさせるクアンスティータ。
 怖い。
 恐ろしい。
 逃げ出したい。
 吟侍達の心をその気持ちが支配していく。
 だが――
 逃げちゃ駄目だ。
 恐ろしくない。
 怖く無い――吟侍達は気持ちを必死に切り替える。
 登場までの時間が一分にも一生にも感じさせる時間が過ぎ、ついに、ソリイントゥスが姿を現した。
 短めのツインテール。
 カノンとは似ていない。
 クアンスティータの特徴である背花変(はいかへん)は確認出来ない。
 背花変は見えなくする事も出来るらしいので、見えないようにしているのだろう。
 その代わり、もう一つの特徴である千角尾(せんかくび)が確認出来る。
 クアンスティータの側体で間違い無いだろう。
 緊張が極限まで高まる吟侍達とは対照的に、ソリイントゥスは、
「じゃじゃぁ〜ん。ソリイントゥスだよ、よろしくねん♪」
 と上機嫌だった。
 緊張感という面では雲泥の差というよりは本当に真逆な感じだった。
 一瞬たりとも気を許せない吟侍達に対してソリイントゥスはリラックスし過ぎている。
 まるでどこぞの温泉旅館にでも泊まりに来たかのような雰囲気だ。
 敵対して戦闘になっても勝てるという余裕なのか?
 それとも戦う事は無いという余裕なのかはわからない。
 吟侍達はセレークトゥース・ワールドで大きな力を手に入れた。
 だが、それはクアンスティータの所有する宇宙世界での話だ。
 他の存在に対しては大きな強みにはなっても、それは、クアンスティータには通じない。
 全く通じない。
 その程度の力など、クアンスティータは簡単にひとたまりも無く吹き飛ばせる力を持っているのだから。
 ソナタ、ステラ、エカテリーナ、レスティー、そして吟侍はセレークトゥースと会っているため、多少の耐久性はある。
 ディアマンテについてもステラと同様に未来の世界で第五本体のリステミュウムと戦って来たという経験からやはり耐久性はついている。
 だが、エクス/クェスは別だ。
 これがクアンスティータにあった初対面なのだ。
 あまりのショックで気絶してしまった。
 ショック死してもおかしく無いレベルだった。
 ついにソナタ達と合流出来た吟侍達だったが、ほぼ同時に、ソリイントゥスが出現してしまった。
 この場を切り抜けねばならない。
 どうする?
 クアンスティータ相手に逃げ延びる事は出来ない。
 この場でなんとかするしかないのだ。
 吟侍達は決断を迫られた。


続く。



登場キャラクター説明

001 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)

芦柄 吟侍 ウェントス編の主人公であり、ファーブラ・フィクタのメイン主人公。
 子供の頃、故郷、セカンド・アースを襲った絶対者・アブソルーター達を追い払った事から英雄と呼ばれる。
 その時、心臓を貫かれるが、七番の化獣(ばけもの)ルフォスの核でそれを補い、以降、ルフォスの力を使える様になる。
 勇者としての格は他の冒険者達より上だが、それだけに、他のメンバーより、強い敵を引きつける。
 創作バトルを得意としていて、攻撃方法のバリエーションはやたら多い。
 敵からすると最も厄介な勇者である。
 ウェントスでの救出チームに参加する。
 【答えの力】を身につけ、ティアグラに殺される未来も回避出来た。
 セレークトゥース・ワールドの冒険を生きて帰ってきた。
 今回はロスト・ネット・ワールドでの冒険をする事になる。


002 ルフォス

ルフォス 吟侍(ぎんじ)の心臓となった七番の化獣(ばけもの)。
 ネズミに近い容姿をしていて、最強の化獣である十三番、クアンスティータを異常に恐れていて、その恐怖に打ち勝つために、最も勇気を示した吟侍と命を同化する道を選んだ。
 ルフォス・ワールドという異世界をまるまる一つ所有していて、その世界のものは全て彼の戦力である。
 異世界には修行するスペースもあり、冒険者達の修行場として提供していた。
 異世界にある三つの核、マインドコア(心核)、スキルコア(技核)、ボディーコア(体核)を合わせる事により、新しい怪物等を生み出す事も出来る。
 ルフォス・ワールドはそれ以外にもロスト・ワールドという既に失われた世界をいくつも圧縮保存してある。
 ルフォス・ワールドには大物が隠れ住んでいる。
 クアンスティータ誕生により完全に萎縮してしまっている。


003 ソナタ・リズム・メロディアス

ソナタ・リズム・メロディアス ウェントス編のヒロインの一人。
 吟侍(ぎんじ)の恋人、カノンの双子の姉であり、共に行けない彼女の代わりに吟侍と共にウェントスの救出チームに参加した。
 吟侍の事が好きだが隠している。
 メロディアス王家の第六王女でもある。
 王家最強術であるCV4という特殊能力を使う。
 CV4は4つの声霊、ソプラノ、アルト、テノール、バスを器に入れる事により、特殊な能力を持ったキャラクターゴーレムとして操る能力である。
 力不足を指摘されていたが、ルフォスの世界のウィンディス、ガラバート・バラガの助力により極端な力を得ることになる。
 セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
 セレークトゥース・ワールドに続き、ロスト・ネット・ワールドへも吟侍のお目付役としてついていく事になる。
 吟侍達と喧嘩別れした状態になり、別行動を取っていた。


004 フェンディナ・マカフシギ

フェンディナ・マカフシギ 3名の姉(ロ・レリラル、ジェンヌ、ナシェル)達と別れて一人旅をしていた全能者オムニーアの少女。
 戦闘向きではない大人しい性格だが、自身のポテンシャルは姉たちをも遙かにしのぐ。
 また、そのポテンシャルの高さ故に脳に10番の化獣(ばけもの)ティルウムスを宿す事になる。
 心臓に7番の化獣ルフォスを宿すという吟侍を探していた。
 吟侍にティルウムス以外の何か秘密があると思われている。
 潜在している力が覚醒すれば、偽クアンスティータよりも上回ると推測されている。
 脳を支配している筈のティルウムスが、すぐ下の両方の瞳より下を異常に警戒している。
 クアンスティータ誕生のショックで自身に秘めていた力が一気に解放されて、ショック状態になっていて、必要以上に怯えている。
 セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
 自分の力を見つめ直すため、今回はロスト・ネット・ワールドでは別行動に。
 今回、自分が【七大ボス】という区分でクアンスティータと同じくくりで見られているという事を知る。
 弱い方の5名の1名に数えられている。


005 エカテリーナ・シヌィルコ

エカテリーナ・シヌィルコ 風の惑星ウェントスに君臨している絶対者アブソルーターの一人。
 2番の化獣(ばけもの)フリーアローラをその子宮に宿しているため、アブソルーターの中では最強と呼ばれている。
 戦闘狂であり、奴隷達の支配よりも強い相手との戦いを求める。
 突然のトラブルで出会った吟侍の事を気に入った。
 切り札としていた力がオルオティーナという存在だという事が解り、彼女の古き力を得て、極端なスキルアップを果たす。
 それでも、クアンスティータには遠く及ばず、萎縮してしまっている。
 初めて男性(吟侍)を頼りになると思い、自身に芽生えた恋心に動揺している。
 オルオティーナに貰った4つの古き力の一つである【不可能を可能にする力】を会得する。
 セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
 ロスト・ネット・ワールドでも引き続き吟侍と同行する道を選ぶ。
 吟侍達と些細な理由で喧嘩別れしてしまい、別行動を取っていた。


006 ステラ・レーター

ステラ・レーター 未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
 新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
 ステラはグリーン・フューチャーの一員で、かかしという超兵器を使う。
 また、若くして亡くなった依良 双葉(いら ふたば)という吟侍の幼馴染みの生まれ変わりでもある。
 力不足から、フェンディナやエカテリーナより、一歩遅れて戦線に出てくることになったが、役に立てなかった。
 セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
 ロスト・ネット・ワールドでも吟侍のサポートとしてついて行く事に。
 【アコンルーク】に利用され、感情が爆発してしまい、吟侍達と別行動を取っていた。
 嘘を見抜く力、【読偽術(どくぎじゅつ)】を特訓している。
 未来の世界では【特別特殊鑑定士(とくべつとくしゅかんていし)】1級の資格を持っていて、骨董品などの鑑定を得意としている。
 蚤の市(のみのいち)に行くと目の色が変わる。


007 レスティー

レスティー 吟侍にひっついてセレークトゥース・ワールドにやってきた調治士(ちょうちし)の少女。
 調治士とは化獣(ばけもの)等の超越的存在の医者のようなもの。
 彼女は吟侍の専属医の様な存在となる。
 吟侍から【答えの力】を受け取り、彼女も少ないながら【答えの力】が使える様になっている。
 セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
 ロスト・ネット・ワールドへも専属医のような立場として吟侍と同行する事に。


008 聖魔妖精エクス/クェス

聖魔妖精エクス/クェス カミーロが、ロスト・ワールドから現界に戻る時に出会った聖魔妖精のプリンセスであり、幸運をもたらす存在と言われている。
 光属性のエクスと闇属性のクェスは交互に存在している。
 どうしても吟侍と行動を共にするときかないソナタに幸運をと思って、カミーロの手から吟侍の側にという事になってロスト・ネット・ワールドの冒険に同行する事になった。
 クェスの状態では捕まえた相手の能力を一つ封じるという力を持っている。
 エクスの状態では【幸運の導き】という敵と出会わないようにする力を使える。


009 ディアマンテ

ディアマンテ 未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
 新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
 ディアマンテはブルー・フューチャーの一員で、16体もの怪物と同化している超戦士でもある。
 吟侍の大ファンであり彼のマニア。
 ブルー・フューチャー最強でもある彼女はロスト・ネット・ワールドの冒険に同行する事になった。
 同化している怪物の一体は万能言語細胞(ばんのうげんごさいぼう)を作り出す事が出来る。
 また、相手の力を吸収して、増幅させて跳ね返す事も出来る。


010 赤いフードの男【クトゥーアル】

赤いフードの男クトゥーアル 以前はフェンディナだけだったが、セレークトゥース・ワールドから帰ってきた吟侍達もスカウトしようと訪ねてきた存在。
 実力はあるのだが、自信がプロデュースしている十大殿堂の評価は下がっていて対処が取れていない。
 吟侍によってロスト・ネット・ワールドに逃げた十大殿堂のメンバーの様子を見に行ってもらう事になる。
 吟侍に十大殿堂のメンバーが近づいたら反応する【メンバーメモリースティック】を渡している。
 格好は、黒いフードの男の真似をしている。
 彼の依頼もあり、吟侍達は十大殿堂と力試しをする予定を入れている。


011 クアースリータ

クアースリータ  12番の化獣(ばけもの)。
 クアンスティータを恐れる存在が集まって出来たロスト・ネット・ワールドという宇宙世界を持つ。
 その最深奥(さいしんおう)には本当の意味で所有している宇宙世界クアースリータ・ワールドがあるとされている。
 何でも特別な状態にするという力を持つ。
 その力の強大さは、誕生時に、最強の化獣クアンスティータが誕生したと勘違いされる程のもの。
 (第一本体)クアンスティータ・セレークトゥースの双子の姉であり兄でもある存在。
 性別はおんこというものになる。
 生まれたばかりで知識を得るなど、頭の回転は恐ろしく速いが、性格はてきとう。
 時空重震(じくうちょうしん)という時空間で起きる地震を引き起こし、重震度(ちょうしんど)はそれまでの記録を大きく上回る9・7を記録する。
 これは、震源地に当たる震源流点(しんげんりゅうてん)近くでは存在が存在を維持できず、分解と再生を繰り返す状態になってしまうほど巨大なものになる。
 妹であり弟でもあるクアンスティータ・セレークトゥースが誕生したのを素直に喜んだ。
 性別はおんこだが、クアンスティータに対し、お姉さんぶっている。
 吟侍達をロスト・ネット・ワールドへと送り届けることになる。


012 アコンルーク

アコンルーク ロスト・ネット・ワールドに降り立った吟侍が最初に出会った、謎の女性。
 見た目は幼い少女の様だが、中味は吟侍を【坊や】扱いするほど、年を経ている。
 感情を操作する力を持っているらしく、ソナタ、ステラ、エカテリーナが心の憶測に持っていた感情を利用して、彼女達を怒らせ、吟侍達から去って行くように仕向けたりなどした。
 性格はあまり良いとは言えず、吟侍を虚仮にしたりして好感が持てるような女性では無い。
 ロスト・ネット・ワールドの事情通。
 【宇宙海(うちゅうかい)】のエリアの宝、【万能反物質(ばんのうはんぶっしつ)】の玉を狙っていた。
 正体は筋骨隆々の体にカマキリのような顔、背中にはカジキマグロのような背びれ、肘にはカタツムリの殻のようなものがついているような姿をしている。
 闇のネットワークを持っている。
 吟侍達との出会いは無効になったため、元の位置に戻る事になった。


013 キャロル・フレーズ・メロディアス

キャロル・フレーズ・メロディアス ソナタやカノンの妹であるメロディアス王家第八王女。
 母、カヴァティーナ・フィナリス・メロディアス第四王妃が神隠しに会い、ロスト・ネット・ワールドのパルティスエリアに来てしまった時に産んだ娘なので、王族としての生活は全く送っていないため、お転婆な性格でもある。
 カヴァティーナがソナタの二年先輩でソナタから吟侍の聞いていて、その事を娘であるキャロルにも伝えていた。
 吟侍を【大先生】と呼び、その創作バトルスタイルを彼女の基本バトルスタイルとしている。
 元々、天賦の才(てんぷのさい)があったのか、メキメキとロスト・ネット・ワールドで実力をつけていった。
 今回、フェンディナ・マカフシギを助ける事になるが、憧れの存在である吟侍や義姉ソナタとはニアミス状態となった。


014 フェンディナ・フェ・ナンディ

フェンディナ・フェ・ナンディ 5名存在しているフェンディナ・マカフシギの【別自分】の一名。
 同じ、フェンディナを名乗りつつも、フェンディナ・マカフシギの三名の姉、(長女ロ・レリラル・マカフシギ、次女ジェンヌ・マカフシギ、三女ナシェル・マカフシギ)とは血のつながりは無い別のフェンディナ。
 フェンディナ・マカフシギにより別の宇宙から呼び出される事になる。
 【別自分】の中ではフェンディナ・ウェル・クァムドゥエスに次ぐbQの実力者でもある。
 礼儀正しい性格。
 【虚像実体化縛(きょぞうじったいかばく)】という実体の無い存在に実体を与えて捕縛する力を使う。
 ビンタ一つで能力破壊能力、【アビリティー・クラッシャー】としての効果も付随する。


015 クライ・クライ・クライ・クライ

クライ・クライ・クライ・クライ ロスト・ネット・ワールドにいる泣女、バンシーの様な存在。
 実体が無く、ただ泣くことしか出来ないが、泣くことにより取り憑いた対象者に不幸を運ぶ。
 フェンディナ・マカフシギに取り憑いており、彼女がロスト・ネット・ワールドで敵に多く狙われていたのはこの存在達のせいでもあった。
 フェンディナ・フェ・ナンディの力により、実体を与えられ、逃げ去る。


016 クアンスティータ・ソリイントゥス

クアンスティータ・ソリイントゥス 第二本体クアンスティータ・ルーミスの従属である第二側体。
 本体であるルーミスよりも先に誕生していた。
 (誕生というよりは突然、出現した状態)
 自分の事を【ボクチン】と呼ぶ、芸術と変わった者が大好きなクアンスティータ。
 ソリイントゥス・ワールドという宇宙世界を一つ所有している。
 その力は、登場シーンだけで、吟侍達が戦慄する程、大きい。
 側体でも他の存在を圧倒する程、強大な力を持っている。
 千角尾(せんかくび)や背花変(はいかへん)のように、クアンスティータである特徴を持っている。
 ソリイントゥス・ワールドで隔離教会(かくりきょうかい)という建物を持ってきてその中でこっそりと行動している。
 基本的には男でも女でもないおんこという性別だが、カノンから受けている影響が強いため、どちらかというと女性よりである。