第005話 ロスト・ネット・ワールド編その3
01 吟侍達の道程(どうてい)
芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)達は、現在、ロスト・ネット・ワールドと言う宇宙世界に来ていた。
12番、クアースリータという化獣(ばけもの)が所有する宇宙世界だ。
ここに来る前は、幼い頃に誘拐された友人達を救出へと惑星ウェントスに向かった吟侍達は、王杯大会エカテリーナ枠という戦いの大会に参加する事になった。
その途中で最強の化獣、クアンスティータの第一本体、セレークトゥース誕生事件に遭遇する。
そのまま、セレークトゥースの所有する宇宙世界、セレークトゥース・ワールドでの冒険をしたのだが、そこは現界(げんかい)と呼ばれる宇宙世界の常識を遙かに超越するレベルの場所だった。
現界に戻るにあたって、上がりすぎてしまった力を制御してから帰還した彼らに寄ってくる存在は数多く居た。
そんな中、一人、~上立者(しんじょうりっしゃ)と呼ばれる超高位存在に呼ばれた吟侍は、その存在に自身が置かれている状況の説明を受けた。
問題は山積み。
やらなきゃならない事の多さを実感したのだった。
そんな吟侍がまず手をつけるべきと判断したのは、セレークトゥースにかかりきりでほったらかしになっていた、セレークトゥースの双子の姉であり兄でもあるクアースリータと親しくなるという事だった。
クアンスティータを導くと~上立者に約束した吟侍だったが、クアンスティータだけ導いても意味がないと判断したのだ。
セレークトゥースは現在、繭蛹卵(けんようらん)という状態になり眠りについている。
第二本体であるクアンスティータ・ルーミスが誕生する時まで目覚める事は無い。
セレークトゥース・ワールドに行ったのだから、今度はクアースリータの所有する宇宙世界に行って見ようと判断した。
吟侍は、セレークトゥース・ワールドに続いてソナタ・リズム・メロディアス第六王女、ステラ・レーター、エカテリーナ・シヌィルコ、レスティーと共にロスト・ネット・ワールド行きを決める。
今回、片倉 那遠(かたくら なえ)は参加せず、フェンディナ・マカフシギは、ロスト・ネット・ワールドには行くが別行動を取るため、同行しないと言うことになった。
今回、追加されるメンバーとして、聖魔妖精エクス/クェスとブルー・フューチャー出身のディアマンテを迎え、7名体制でクアースリータにロスト・ネット・ワールドに送ってもらった。
だが、来て早々、仲違いをしてしまい、パーティーからソナタ、ステラ、エカテリーナの三名が去ってしまった。
彼女達は別行動をするつもりになったらしい。
吟侍達、残されたメンバーの前にはソナタ達三名の気持ちを操った女、【アコンルーク】が現れる。
嫌悪感を持つ吟侍達。
だが、この【アコンルーク】はロスト・ネット・ワールドの事情通であるようだ。
気に入らないがまずは、話だけでも聞いて見ようという事になったのだった。
02 株式ファイター
吟侍、レスティー、ディアマンテ、エクスは、目の前に居る謎の女【アコンルーク】を見つめた。
【アコンルーク】は、
「じゃあ、何から教えてあげようかしらね。その前にあなた達の実力を見せてもらいましょうか」
と言ってある地点を一瞥(いちべつ)すると、そこから一人の男が現れた。
その男が現れてからそう間もない時間でどこから現れたのか、たくさんのギャラリーがうじゃうじゃと出て来た。
「うおぉぉぉぉぉぉっ」
「ぴーっ」
「ヒューヒュー」
「わーわー」
「やれやれぇ〜」
等々の声が響き渡る。
吟侍達はほんのわずか、動揺した。
いきなりの事で何が起きて居るのかよくわからないからだ。
吟侍とレスティーが【答えの力】で状況を探ろうとするよりも先に【アコンルーク】が、
「――株式ファイターって知らないよね?教えてあげるわ。株式会社の株主って株を買ってオーナーの一人の様な状態になることよね?それと同じでね、一つの存在の力を株式に変えて、他の存在がそれを買うのよ――自分の力を上乗せしてね。株式の元になっている存在はそれで、勝負をして勝つと敗者から力を奪って配当金の様に(奪った)力を分配するシステムが確立されているのよ。これはクアンスティータという強大過ぎる存在から身を守るためにロスト・ネット・ワールドで発展した特徴の一つ――と言っても、このシステムに頼っているのはロスト・ネット・ワールド内では比較的弱者に分類される存在。クアンスティータというよりはロスト・ネット・ワールド内での弱肉強食の世界を生き抜くために発展したシステムと言い換えても良いかしら?ロスト・ネット・ワールド初心者である、あなた方の腕試しにはちょうど良いでしょ?」
と矢継ぎ早に説明した。
つまり、目の前に現れた男と戦えという事なのだろう。
恐らくは、周りのギャラリー達はこの男の株主でもあるのだろう。
この男に自身の力を上乗せして賭けているからこそ、この男の勝利を望んでいる。
株式というよりはギャンブルに近いかも知れない。
男は株主達の期待に答えるために、吟侍達と勝負し、勝って吟侍達の力を奪うつもりなのだろう。
そして、それは【アコンルーク】のはかりごと。
彼女に言いように利用されているのだろう。
吟侍は、
「おいらがやる。みんなは下がっててくれ」
と言って一人、前に出た。
ディアマンテは、
「はい、わかりました吟侍様」
と言い、レスティーは、
「何かあったら治療は任せて」
と言い、エクスは、
「カミーロの奴が褒めていた力、見せてもらうわ」
と言った。
吟侍は、
「おいらの名前は芦柄 吟侍だ。あんたの名前は?」
と聞いた。
対戦相手の男は、
「俺の名か?これからくたばる奴に名乗っても仕方がねぇが、後ろのねーちゃん達は俺の女にでもさせてもらうから、ついでだからお前にも聞かせてやる。俺様の名前は、【プントラ】だ。冥土の土産に覚えておけ。駄賃としてお前の全ての力をもらい受けてやるから安心して死ねや」
と言った。
吟侍は、
「悪いが、お前さんに負けるつもりはこれっぽっちもねぇよ。株式なんちゃらってのだけ確認させてもらったら、すぐに終わらせるつもりだ」
と言い返した。
【プントラ】は、
「生意気な奴だ」
と機嫌を悪くし、吟侍は、
「あんたは無礼だったろ?お互い様だ」
と返した。
【プントラ】は、
「ミンチにしてやる」
とつぶやいた。
吟侍は、
「おい、【アコンルーク】さんよ、こんなの、相手になんのか?見るからに弱そうじゃねぇか」
と言った。
【アコンルーク】は、
「そうね。大した存在ではないわね。でも株式制度を甘く見てもらっては困るわね」
と言った。
【プントラ】は、
「おい、小僧、無視してんじゃねぇよ。今は俺と会話してんだろうが、さっさと命乞いでもしたらどうなんだ、ぜってぇ許さねぇけどな」
と言った。
吟侍はさも、うっとうしそうに、
「良いから、とっとと、株式ファイトってのを見せてくれよ。こっちもその後、早々に終わらせるからさ」
と言った。
【答えの力】で【プントラ】の履歴を調べた吟侍は反吐を吐きそうな気持ちになった。
それくらい下劣な男だった。
影で色んな悪事に手を染めている。
吟侍が最も嫌いなタイプの存在と言えた。
だから、吟侍もけんか腰なのだ。
【プントラ】は、
「こ、ぶっ殺すっ!!!」
という言葉が合図となり、まっすぐに吟侍に向かって行った。
攻撃は単純――ただ、殴りかかるだけ。
そう思ったが、違った。
【プントラ】のただ、殴りかかる攻撃に対して、複数の付加価値がついていた。
殴るだけの攻撃に特殊効果がいくつも発動する。
【答えの力】で残らず無効化したが、それにしても付加価値の数が尋常ではないくらい多かった事に気づく。
ただの殴りかかるという攻撃に対してついていた付加価値となる特殊効果の数は百や二百ではきかない。
四桁はあったのでは?と思うくらい、付加価値がついてきたのだ。
これが、恐らく、特殊な株式制度で株主が【プントラ】に対して払った株としての力なのだろう。
株主の数が多ければ多いほど【プントラ】の力や付加価値は増す事になる。
【プントラ】自身は恐らく殴る蹴るくらいが普通の存在よりも強めなだけの雑魚と呼ぶにも評価が高すぎるくらいの存在に過ぎないのだろう。
だが、【プントラ】株を買っている存在――【プントラ】に力を貸している存在の数が多いのだ。
そのため、ただの攻撃が複雑かつ強大かつ多彩なパワーとなって吟侍に襲いかかってきたのだ。
ロスト・ネット・ワールドに逃げ込んでしまった弱者達は自身の力を上げるために、協力する事を覚え、効率よく、力をつける方法を模索した。
それによって誕生したのがこの株式ファイター制度なのだろう。
今の攻撃で大体、どういうものかがわかったが、そうなると、【プントラ】のどのアクションに株が使われているかがわからないので、迂闊に近寄る事は出来ない。
下手をすれば、【プントラ】の防御に対しても株が存在し、カウンターで吟侍に攻撃を仕掛けてくるかも知れないのだから。
だとすれば――
吟侍は、
「すうっ……」
と息を吸う。
そして、セレークトゥース・ワールドで披露した新必殺技、【インフレーションバーストキック】を放つ。
超加速インフレーションを起こすと同時にキックを入れて破裂させるという超必殺技だ。
セレークトゥース・ワールドではかなり下位の存在でもその力は通用しなかったが、この力は本来、現界においては使用出来ないほどの強大過ぎる力だ。
力を大分制御しているとは言え、小規模なインフレーションバーストが起きたキックを受けた【プントラ】は跡形も無く消えた。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
という音が響き渡る。
本来であれば、ロスト・ネット・ワールドの大部分を破壊してしまう威力を持っている【インフレーションバーストキック】だが、吟侍は、それを内向きに使う事で威力を【プントラ】に集中させるようにした。
それはどういう事なのか?
それは、通常の攻撃であれば、破壊エネルギーは対象者以外にも外側に分散するため、星や宇宙などにも破壊エネルギーのダメージを与えてしまうという事になる。
だが、吟侍は対象者である【プントラ】の体内――内側に破壊エネルギーを集中させた。
そのため、【プントラ】自身が消失した時の衝撃こそは外側に放出されるが、吟侍の【インフレーションバーストキック】自体の破壊エネルギーは【プントラ】の中だけに集中したため、被害がそれほど広がらなかったのだ。
これは、セレークトゥース・ワールドから戻る時に、【ぴょこたん】にアドバイスを受けて思いついた方法だった。
宇宙世界を破壊するエネルギーを持ちながら、余計なものに被害が広がりにくくするという画期的な力の放出方法だと言える。
吟侍は、
「じゃあな、【プンスカ】……だったっけ?」
と言った。
もう、彼の中では【プントラ】では無く、【プンスカ】と記憶されていた。
名前さえまともに覚えてもらえないほどの存在だったが、それでも吟侍がちょっと驚くほどのインパクトはあった。
【株式ファイト】というのはそれだけの特徴があった。
相手が雑魚以下の【プントラ】だったから良かったものの、もっと上の実力者がこの制度を利用したら非情に厄介な事になるだろう。
【プントラ】の消滅を見たギャラリー達は、
「おいおい、負けちまったよ」
「誰だよ、低リスクで、もうけられるっつったのは?」
「情けねぇ奴だ」
「負け分、取り戻さねぇとな」
「誰が行く?」
「お前が行けよ」
「そういうお前が行けよ」
等々、口々に文句を言っていた。
誰一人、【プントラ】を惜しむ者は居なかった。
楽して力をつけるためだけの関係。
そこには愛も友情も情けも無い。
あるのは利益によるつながりというだけだった。
信念も何も無い。
ギャラリーは力に対して群がっているに過ぎない。
【プントラ】も【プントラ】なら、株主達も株主達だ。
揃いも揃って、お友達にはなりたくないようなクズの集まりと言えた。
そんなんだから、このロスト・ネット・ワールドでは固まってでしか行動出来ないほどの弱者なのだろう。
そういう意味では【アコンルーク】が言っていたのもわかった。
弱者だからこそ、この制度を利用するしかないのだろう。
強者もこの制度を利用したのではこの制度は成り立たない。
ロスト・ネット・ワールド初心者への腕試しとしては手頃だったのだろう。
吟侍は、
「すうっ……」
と息を吸い、
「消えろ、お前等に用はねぇ!!!」
と一喝した。
すると蜘蛛の子を散らすようにわらわらとギャラリー達は散っていった。
所詮は、絶対的優位に立ってないと大口もたたけないような小者の集まり、烏合の衆だ。
吟侍の迫力に気圧されて、あっという間にその場から居なくなった。
【アコンルーク】は、
「おー、怖い怖い――坊や、なかなかやるわねぇ〜」
と言った。
相変わらず、吟侍をなめているようだ。
まるで、本当のロスト・ネット・ワールドのレベルはこんなものじゃないとでも言いたげだった。
その余裕顔が気に入らないが、彼女にはロスト・ネット・ワールドの情報を教えてもらわねばならない。
吟侍は、
「知っている事、話してもらおうか」
と言った。
その表情は虚仮にし続けるならこっちにも考えがあると言うことを示すようにムスッとしていた。
【アコンルーク】は、
「言われなくても話してあげるわよ、坊や」
と言った。
見た目が幼い少女なので、小馬鹿にされている気持ちが強かった。
全く好きになれないタイプと言えるだろう。
03 【ドラゴッド】と【ドラゴッドル】
【アコンルーク】はその場に座り、
「さて……何から教えてあげましょうか……」
と話を始める。
彼女がまず話したのは、ロスト・ネット・ワールドの強者というよりも、ロスト・ネット・ワールド特有の固有種について話だした。
まずは、ドラゴンよりも上位の種についてだ。
吟侍が知っているのは王杯大会エカテリーナ枠にも出ていた【ガート】選手がそうだった師主族ラスティズムというのがある。
師主族ラスティズムは魔法よりも能力浸透度が高い、稀法(きほう)を使い、しっぽが翼の様になっている翼尾(よくび)ウイング・テイル、肩の部分にある突起物は肩角(けんかく)ショルダー・ホーン、背中の光輪は光円陣(こうえんじん)ライト・サークルという特徴を持っているため、龍族とは異なる特徴をもっていたが、【アコンルーク】が話したのは龍族からの突然変異種で【ドラゴッド】と呼ばれる存在についてだ。
ドラゴンから変化した存在なので、特徴はドラゴンと似ているのだが、大きな違いはドラゴンの様な上半身と下半身は別々になっており、それをつなげる形で巨大な球状の物体がついているというのが【ドラゴッド】の特徴で、その力は龍族のそれを遙かに凌駕すると言われているらしい。
【ドラゴッド】はクアンスティータを恐れてロスト・ネット・ワールドに逃げ延びた龍族が環境に適応するために突然変異を起こした種族という事になっている。
ドラゴンに挑むつもりで【ドラゴッド】に挑むと、しっぺ返しを食らうどころかやられてしまうという忠告を受けた。
さらに、【ドラゴッド】からの突然変異種というのも存在し、それは【ドラゴッドル】と呼ばれているとの事も聞いた。
【ドラゴッド】が上半身と下半身を球状の物体がつないでいるのに対して、【ドラゴッドル】の特徴は上半身と下半身をつないでいるのはゴツゴツした物体で、透けていて、中には琥珀の様に他の何かが入っているというのが特徴であるとの事だ。
【ドラゴッドル】の力は、【ドラゴッド】の力が子供だましに思えるほど強大過ぎる力を持っているらしい。
強者は別として、生物としてのヒエラルキーの頂点はロスト・ネット・ワールドにおいてはこの【ドラゴッドル】がその一角を担っているらしい。
吟侍達がその説明を受けている時、別行動を取っていたソナタ達の前にも脅威が迫りつつあった。
ソナタは、
「なんでこうなっちゃったのよ?」
と言った。
ステラは、
「わからない。何故か感情の制御が聞かなかった」
と言い、エカテリーナは、
「そなたらもか?妾もじゃ。何故か無性に腹が立ってのぅ。今思えば、どうという事でもなかったのじゃが……」
と言った。
喧嘩別れして吟侍達と離れたものの、途中で自分達が冷静さを欠いていた事に気づき、三人で話し合っていたのだ。
ソナタ達三名は、【アコンルーク】によって感情を暴走させられ、ディアマンテについてちょっと面白くないと思った気持ちを増幅させられたのだ。
冷静になってみれば、ずいぶん、くだらない事で怒ったものだと、恥ずかしくなった。
吟侍達の元に戻りたいがこのままでは少々、ばつが悪い。
何か、成果の様なものを手土産に持って帰りたいという気持ちになっていた。
その手土産を持参して、吟侍達の元に戻ろうという事に三人は決めたのだが、その手土産を何にするかを決めあぐねていた。
三人ともロスト・ネット・ワールドは当然、初めてであるため、どこに何があるのかさっぱりわからないからだ。
考えても答えが見つからない。
三人とも吟侍やレスティーが出来る【答えの力】は使えないのだ。
その場に見合った答えなど用意出来るはずもなかった。
黙っていても仕方ないので、とりあえず、歩いて、あたりをぶらっと散策(さんさく)して見る事にした。
そんな彼女達に近づく影が――
見た目はドラゴン――
だが、少し違う。
上半身と下半身が別れていて、間に球状の物体が挟まっている――、そう、吟侍達が【アコンルーク】から説明を受けていた【ドラゴッド】が正にソナタ達に近づこうとしていたのだ。
ドラゴンと言えば乙女が生け贄に出されるエピソードも多い。
【ドラゴッド】も正に、餌として、ソナタ達を狙おうとしていたのである。
【アコンルーク】は言った。
「ドラゴンに対する気持ちで戦うと痛い目を見るだけじゃ済まない」
と。
パッと見はドラゴン。
ただのドラゴンであれば、ソナタ達三人娘の敵では無い。
その違いに気づけるか?
それが、大事なポイントだった。
一匹の【ドラゴッド】が三名の前に姿を現す。
【ドラゴッド】もドラゴン同様に複数の種類が存在した。
ソナタ達の前に姿を現したのは【ウィンドドラゴッド】という風属性の【ドラゴッド】だった。
【ウィンドドラゴッド】にも個体名が存在し、この【ウィンドドラゴッド】の名前は、
【ウィンドラ】と言うらしい。
【ウィンドラ】は、
「我が名は【ウィンドラ】、高等なる種族【ドラゴッド】の【ウィンドドラゴッド】だ。下等生物よ、我が糧となるがよい」
と言った。
つまり、彼女達を食べると宣言したのだ。
エカテリーナは、
「ずいぶん、威勢が良いトカゲじゃのう。妾の名はエカテリーナ・シヌィルコじゃ。ただの絶対者アブソルーターじゃ。どれ、相手をしてやろう。ここは妾が出る、そなた達は下がっておれ」
と返す。
こういう時は真っ先に表に出るのが彼女である。
エカテリーナVS【ウィンドラ】の戦いが始まる。
【ウィンドラ】はウィンドブレスを吐く。
超強烈な風が巻き起こる。
しかも、ただの風ではない。
とてつもない【ダメージ密度】を持った風だ。
【ドラゴッド】族の特徴の一つとしては攻撃の【ダメージ密度】がとてつもなく高いという事もある。
例えば、風で切りつけたとする。
それが仮に切り傷だったとしてもその傷はどんな回復魔法や回復薬でも極端に治りが遅くなるのだ。
ダメージとしていつまでも相手への負の遺産として残るために、治りにくいのだ。
その風を受け、エカテリーナが吹き飛ばされ、途中で止まる。
踏ん張って、その場に踏みとどまったのだ。
エカテリーナは、
「貴様――ただのトカゲではないな」
と言った。
戦闘狂でもある彼女はこの一撃だけで、ドラゴンを超越した存在だと言うことに気づいた。
エカテリーナも吟侍同様にセレークトゥース・ワールドで得た膨大過ぎる力を制御して戻って来ている。
とは言え、吟侍に【答えの力】という反則技とも言える力があるように、彼女にもクアンスティータの乳母にして摂政(せっしょう)でもあるオルオティーナから譲り受けた古き力というものがある。
4種類ある古き力の内、【不可能を可能にする力】はすでにエカテリーナの身になりつつある。
クアンスティータから逃げてロスト・ネット・ワールドに行き着いた先で、たまたま突然変異を起こして強がっているような輩に後れを取るつもりは無かった。
エカテリーナは、【不可能を可能にする力】で自身の力を限界突破させ、本来は通用しないであろう【ドラゴッド】の硬すぎる皮膚を突き破り、【ウィンドラ】を撃破した。
絶命したのを確認したエカテリーナは、
「今夜はトカゲの姿煮じゃな」
と言った。
ソナタは、
「え〜それ、食べるのぉ〜?」
と言ったが、エカテリーナは、
「文句を言うな。他に食材が見つからぬ以上、こいつを喰うより他にあるまい。それに、こやつも妾達を喰おうとしたのじゃ、妾達が喰ってやる事がこいつに対する供養になるじゃろう」
と言った。
ステラは、
「私達三人じゃ食べきれないわよ、こんなに大きいの。私達の数百倍もあるじゃないの」
と言ったが、エカテリーナは、
「心配するな。妾とて、2番の化獣フリーアローラを子宮に宿す身ぞ。余った分は、ちゃんとフリーアローラの勢力に片付けてもらうわ」
と言って自分のお腹をポンっとたたいて見せた。
頼りの吟侍達と離れてしまったとは言え、彼女達もセレークトゥース・ワールドの冒険を生き抜いてきたのだ。
三人とも、【ドラゴッド】一匹にやられるような玉では無かった。
04 宇宙海(うちゅうかい)の勢力とは?
一方、【アコンルーク】の話は続く。
彼女が【ドラゴッド】や【ドラゴッドル】の次に話したのは、ロスト・ネット・ワールドの勢力図についてだった。
ロスト・ネット・ワールドは大きく分けても10万以上の勢力が乱立している状態にあると言われているらしい。
とてもじゃないがそんな数の勢力などを相手にしてられない。
そんな事が可能なのはクアンスティータのような飛び抜け過ぎた化け物くらいだろう。
そんな10万以上の勢力の全てがクアンスティータを恐れて逃げてきた勢力なのだ。
例え力を合わせたとしてもクアンスティータの足下にも及ばないだろう。
そう考えて見れば、そのクアンスティータの所有する宇宙世界に行って、良く生きて帰ってきたなと思う吟侍達だった。
その話は置いておいて、さすがに10万以上の勢力、全てを気にする事は出来ないが、その中でもポツポツと頭一つ出て来ている勢力がいくつかあるらしいということだったのでそれを気にしようという事になった。
――で、この場から一番近い宇宙にいるのは宇宙海(うちゅうかい)の勢力だという。
宇宙海とは宇宙空間が全て海の様になっている場所を指す。
宇宙海からは様々な生命体などが誕生し続けているらしい。
宇宙海の特徴としては、周りの宇宙を飲み込み、宇宙海の一部にしてしまう事が出来る宇宙だという。
宇宙海と言っても水ではなく、水の様な何かであり、その正体はわからないらしい。
吟侍は【答えの力】があって、真実を探し出す事が出来る。
そうして欲しく無ければ、自分で答えろと【アコンルーク】に真意を問いただすと、どうやら彼女の目的は、その宇宙海にある宝を手に入れたくて、利用できる存在を探していたらしい。
彼女が言うには、ソナタ達が戻ってもまた、同じように感情が暴走して、もめるらしく、その効果を解いて欲しければ、彼女に協力しろ――そう言いたいらしい。
現に、本当に一番近い目立った勢力は別にあるが、それを無視して彼女の目指す【宇宙海】の勢力を一番近い目立った勢力として紹介したのだ。
【アコンルーク】は、
「別に悪い取引じゃないでしょ坊や?私は宝を手に入れ、あんた達は仲間を取り戻せる――Win-Winの関係よ」
と言った。
吟侍は、
「どこがWin-Winだ」
と怒りを押し殺した声で言った。
――そう、ソナタ達の感情がおかしくなったのは【アコンルーク】が操作したからであって、決して、【アコンルーク】が宝を手に入れるための行動とフィフティーフィフティーな関係の取引ではなかった。
だが、【アコンルーク】は、効果は自立型で、例え自分を殺してもこの効果は消えないと言った。
【答えの力】で探ったが、やはり同じ答えが出た。
吟侍としては、【答えの力】でこの効果自体を消してしまうという事も出来るだろうし、レスティーは治療のスペシャリストだ。
優秀な調治士(ちょうちし)である彼女であれば、よくわからない効果を理解し、それを改善もしくは治療する事も決して不可能な事ではないだろう。
つまり、取引としては成立しないとも思ったが、【アコンルーク】には、ロスト・ネット・ワールドの情報を教えてもらっているという事もあるので、その分だけでも仕事をしようと思う事にした。
【アコンルーク】の言う、頭一つ飛び出してきている勢力の一つが【宇宙海】の勢力だとすると、それが、十大殿堂のメンバーに関係するという事も考えられる。
十大殿堂は【総全殿堂(そうぜんでんどう)】やQOHよりは弱いと言ってもそれ以外の存在からしてみればかなりの強者であると言えるからだ。
ここは一つ、【アコンルーク】の策略に乗せられて見よう――それが【答えの力】で導き出された答えだった。
吟侍は、
「まぁ良い、あえてあんたの策略とやらに乗せられてやるよ。ただし、気に入らない事があったら、途中でも方向転換するつもりだからそこんとこ、よろしくな」
と言った。
【アコンルーク】は、
「まぁ良いでしょ、それで。よろしくね坊や」
と握手を求めて来た。
吟侍は、
「坊やじゃねぇよ、芦柄 吟侍だ」
と言うが、【アコンルーク】は、
「坊やは坊やよ。おしめが取れたら名前で呼んであげるわよ」
と言った。
つくづく気に入らないが、【アコンルーク】には今の【答えの力】でもたどり着けない何か?がある様な気がする。
それがわかるまでは……と、気持ちを押し殺して、握手した。
念のために、握手したら出る効果が無いかどうかを【答えの力】で確かめる。
どうやら、そんな効果は無いようだ。
だが、油断は出来ない。
吟侍を小馬鹿にするくらいだから、まだ、何かを隠している可能性がある。
【アコンルーク】は【答えの力】に対しても大して怯えていなかった。
まるで、自分は何を探られても大丈夫だとでも言わんばかりだった。
セレークトゥース・ワールドと違い、このロスト・ネット・ワールドでは吟侍達にとって圧倒的脅威となる存在は居ないのかも知れない。
だが、くせ者、食わせ者はたくさんいるようだ。
何より、セレークトゥース・ワールドよりもずいぶんと柄が悪い様な気がする。
力に自信が無い分、どんな姑息な手を使ってこないとも限らない。
それだけは注意しようと思うのだった。
05 フェンディナの行動
吟侍達が疑心暗鬼な状態にある時、フェンディナもまた、ロスト・ネット・ワールドの別の地に立っていた。
彼女は一人、吟侍達とは初めから別行動でロスト・ネット・ワールドに来ていた。
彼女には吟侍達とは別の目的がある。
だからこそ、別行動を申し出ていたのだ。
彼女の目的――それは、自分自身の力を見つめ直すという事だった。
フェンディナは、クアンスティータ誕生のショックで、一気に秘めていた力が覚醒された。
だが、それは本来、クアンスティータが誕生していなければあり得なかった事でもある。
つまり、正式な覚醒では無かったのだ。
吟侍達と旅を続ければ、正式な覚醒として再覚醒をする機会は無いと考えた彼女は一人、別行動をして、改めて力の再覚醒をする事に決めて居たのだ。
再覚醒が終わったらすぐにでも吟侍の元に駆けつけられるようにロスト・ネット・ワールド内で一人、行動する事を決めた。
フェンディナは、まず、【別自分(べつじぶん)】から見直す事にした。
【別自分】とは同じ【フェンディナ】を名乗る別の存在の事を指す。
フェンディナは、フェンディナ・マカフシギと言い、マカフシギ四姉妹の四女として三人の姉(長女ロ・レリラル・マカフシギ、次女ジェンヌ・マカフシギ、三女ナシェル・マカフシギ)が居るが、他のフェンディナはこの三人の姉とは全く血のつながりは無い。
ちょうど、クアンスティータとクアースリータの様な関係だと言える。
クアンスティータも第一本体セレークトゥースのみ、クアースリータと双子という関係だが、第二本体からはクアースリータとは双子の関係ではない。
クアンスティータもこのフェンディナの特性を一部受け継いでいる存在であると言える。
フェンディナ・マカフシギ以外の【フェンディナ】は、
フェンディナ・ミステリア、
フェンディナ・エラーズ、
フェンディナ・モークェン、
フェンディナ・フェ・ナンディ、
フェンディナ・ウェル・クァムドゥエスの5名だ。
フェンディナ・マカフシギも合わせて6名の【フェンディナ】が存在し、関係からすると、クアンスティータの本体達の関係によく似ている。
全く同じという訳ではなく、当然、フェンディナの方はクアンスティータの様に繭蛹卵(けんようらん)の状態を繰り返して極端なレベルアップを果たしていくような特徴は無い。
クアンスティータがいろいろと入り交じり過ぎているのだ。
フェンディナ・マカフシギは他の5名の【フェンディナ】の事を【別自分】と呼んでいる。
【別自分】のフェンディナ達はフェンディナ・マカフシギとは性格も力も異なっている。
意志も別で、それぞれ独立して動いている。
【別自分】の共通する特徴としてはフェンディナ・マカフシギの意志で呼び出せるという事だ。
つまり、ロスト・ネット・ワールドに来ていない他の【別自分】のフェンディナ達をフェンディナの意志でこの宇宙世界に呼び出し、出現させる事が可能だと言う意味だ。
呼び出すという権利はフェンディナ・マカフシギにのみにあるので、他の【別自分】のフェンディナから呼び出されるという事は緊急時でもない限り滅多に無い。
今までは自分の用事で呼び出すのは悪いと思っていたから、呼び出さずにいたが、そうも言っていられない。
これからの冒険では必要になってくるかも知れないからだ。
【別自分】のフェンディナは元々、フェンディナ・マカフシギが居てこそ、存在する存在でもある。
そのあたりの事をまず、はっきりさせて行こうと思っていた。
これが終わったら、次は六名のフェンディナ達の両の瞳に隠された力についても向き合わねばならない。
これもクアンスティータ誕生事件のショックでいきなり解放されてしまったが、本来の人生では出なかったかも知れない秘められた力だった。
それが、クアンスティータに対する恐怖で一気に防衛本能が高まり、解放してしまった。
【フェンディナ・マカフシギ】の右の瞳には【フェルディーナ】という存在が、
【フェンディナ・マカフシギ】の左の瞳には【フェナクティーナ】という存在が、
【フェンディナ・ミステリア】の右の瞳には【フェンナッティヴァ】という存在が、
【フェンディナ・ミステリア】の左の瞳には【フェルトクォマルー】という存在が、
【フェンディナ・エラーズ】の右の瞳には【フェマクーリ】という存在が、
【フェンディナ・エラーズ】の左の瞳には【フェスギジャナイ】という存在が、
【フェンディナ・モークェン】の右の瞳には【フェタリフェッタリ】という存在が、
【フェンディナ・モークェン】の左の瞳には【フェテクレ】という存在が、
【フェンディナ・フェ・ナンディ】の右の瞳には【ヴェックァク】という存在が、
【フェンディナ・フェ・ナンディ】の左の瞳には【ツィグァヴ】という存在が、
【フェンディナ・ウェル・クァムドゥエス】の右の瞳には【トゥウェンディモナ】という存在が、
【フェンディナ・ウェル・クァムドゥエス】の左の瞳には【ユァリクィッタ】という存在がそれぞれ隠れている。
それら全てがフェンディナ本来の力なのだ。
セレークトゥース・ワールドではそれにさらなる力も上乗せしてしまったが、それを差し引いてもフェンディナという存在は、現界に置いては一目置かれる存在であると言えるのだ。
ただ、フェンディナ・マカフシギが気弱であるために、吟侍達のパーティーでは目立つ事は無かっただけなのだ。
本来ならば恐れられる様な存在の一名に数えられる立場のフェンディナは、自分自身のこの力と向き合う事で自分の力をコントロールしようとしていた。
今までのフェンディナは追い詰められるとどんな暴走をするかわからない様な危うい状態だった。
吟侍達にそのことがバレないようにしていたが、セレークトゥース・ワールドでさらなる大きな力を得てしまった時、力というものの恐ろしさを直に感じるようになった。
見えないふりをしていたらダメだ。
ちゃんと自分の力と向き合わなければ。
その事だけが、セレークトゥース・ワールドから帰ってから彼女の頭で繰り返しリフレインされていた。
フェンディナの決意は硬い。
自分の力をコントロールするまで吟侍達のパーティーに戻るつもりはなかった。
フェンディナ・マカフシギはまず、フェンディナ・ミステリアを呼び出した。
【別自分】を1名ずつ呼び出して、会話をして理解し合うという方針だ。
フェンディナ・マカフシギは、
「こ、こんにちは、【ミステリア】さん。実はお話をしようと思って」
と声をかけるが、フェンディナ・ミステリアは、
「――誰かがこっちを見ているわよ」
と開口一番にこの言葉が出た。
フェンディナ・マカフシギは、
「えっ?」
と、フェンディナ・ミステリアが指し示す方向を見た。
すると、影がいくつか確認出来た。
どんどんその後方には影がいくつも出現してきている。
フェンディナ・ミステリアは、
「【マカフシギ】、貴女と話すのは良いけど、ここはそれに適した場所では無いようよ。向こうは敵意むき出しの様だし、まずは片付けてから、それなりの場所で話しましょう」
と言った。
そして、一歩、後れを取ったフェンディナ・マカフシギを置いて、敵意をむき出しにしていた影に向かって突っ込んでいった。
影達はロスト・ネット・ワールド特有の株式ファイター制度を利用した存在だったが、フェンディナ・ミステリアにとってはそんな事は一切、関係無かった。
自分達に敵意を向ける存在は即座に排除――それが彼女の選択だった。
フェンディナ・ミステリアもフェンディナ・マカフシギに負けないくらいの多彩な能力を持つ存在だった。
彼女は、視線の先に大きな煙のようなものを出現させたかと思うと、それがあっという間に影達を包み込み、煙が晴れたかと思うと影は跡形も無く消え去った。
彼女の力の一つ、【消滅煙(しょうめつえん)】だ。
煙の中には、非情に細かい小さな分子崩壊現象が無数に起こっていて、その煙に包まれた者は一瞬にして、分解されるという凶悪そのものの力だ。
気の弱ささえ無かったら、フェンディナ・マカフシギ自身にもこれと同様の力はある。
フェンディナ・マカフシギは優しすぎるのだ。
フェンディナ・ミステリアにはその甘さは無いようだ。
敵対する存在にかける情けは持ち合わせていない。
だから、凶悪な力が目立ったのだ。
フェンディナ・マカフシギはこの光景を見て、胸がチクリと痛む。
敵とは言え、別の自分が余りにも残酷な始末をしてしまったことに心を痛めたのだ。
自分の力が恐ろしい――フェンディナ・マカフシギはそう思うのだった。
その気持ちを知ってか知らずか、フェンディナ・ミステリアは、
「場所を移動しましょう。ここじゃ、貴女、まともに話せそうもなさそうだし……」
と言った。
フェンディナ・マカフシギは、
「え、えぇ……」
と頷くことしか出来なかった。
フェンディナ・マカフシギの試練は始まったばかり――これから自分の力と向き合って行かなければならないのだ。
06 召喚ナーツンドアのエリアの通過
吟侍達は一旦、【アコンルーク】と行動を共にする事にした。
【アコンルーク】の指定する【宇宙海】のエリアを最短ルートで目指し、彼女との取引でもある【宇宙海】の宝とやらを手に入れるかどうかを決める前に、まずは、そこへ行かなくてはならない。
十大殿堂のメンバー探しやクアースリータへのお土産も用意しなくてはならないので、あまり余計な冒険には出たくない。
そして、頭一つ出ているとされている【宇宙海】の勢力のエリアの前にもどうしても通らなければならないルート、そして壁というものがある。
なるべく少ない壁を通って行くにしてもそれでも2、3カ所は立ちふさがる壁というものは存在する。
その一つ目として、あるのは、【召喚ナーツンドア】のエリアだそうだ。
【召喚ナーツンドア】――馴染みの無い言葉だが、地球のもので表現する所の曼荼羅(まんだら)がイメージとして近かった。
【ナーツンドア】とは、【テスラカ星人】の言葉で、【その宇宙の全てを表したもの】という意味があるらしい。
【召喚ナーツンドア】の【召喚】はそのまんま【召喚】という意味であり、直訳すれば、【宇宙の全てを表現したものを召喚する】、あるいは、【宇宙の全てを表したものの中から召喚する】という事になる。
曼荼羅の様に宇宙を表現したものがあり、それを元に召喚する事が出来る者が支配している勢力が、【召喚ナーツンドア】のエリアとなる。
【召喚ナーツンドア】を使って召喚出来る存在の名前は、全て【ナーツンドア】であり、他の【ナーツンドア】との区別のため、【ナーツンドア・パゲ】とか【ナーツンドア・ポゲ】とか【ナーツンドア・トゥゲ】とかで呼ばれているが、これは、【テスラカ語】なので、わかりにくいとして、他の存在は、番号で呼んでいる。
いつしか【ナーツンドア】達も他の存在へのアピールのため、その番号での呼び方を共通語として認識するようにしているらしい。
現在、【ナーツンドア】は872名存在するらしく、番号も1番から872番までが割り振られている。
数字が少ないほど、偉大なる【ナーツンドア】とされ、尊敬されているが、基本的にこの番号は入れ替わる。
基本的には【ナーツンドア】で召喚されるものの種類の質で番号が決められるのだが、不動とされる1番から21番までの【ナーツンドア】の審査を受けて、22番以降の【ナーツンドア】の順位は入れ替わる事もあるという。
つまり、例えば【ナーツンドア30】と名乗っていた者が居たとすると、1番から21番の【ナーツンドア】の審査で、【ナーツンドア29】になったり【ナーツンドア31】なったりもするし、他の番号になったりもするのだ。
基本的に新しく【ナーツンドア】になった者は一番、大きい数字の【ナーツンドア】として活動をスタートさせる。
新たに、873番目の【ナーツンドア】が誕生したとしたら、最初は【ナーツンドア873】と名乗るが、その後の働きや審査によって、順位が変動し、少ない数の【ナーツンドア】と呼ばれる事もあるという。
と言う様に、繰り返し、【ナーツンドア】、【ナーツンドア】……という説明を受けた吟侍達だが、まだ、【曼荼羅】の方が聞き馴染みがあるので、言われてもいまいち、ピンとこなかった。
【アコンルーク】としては敵対する恐れがあるから説明しただけなのだろうが、吟侍にはフェンディナにもらった特殊能力、【ラッキーフレンド】がある。
なるべく敵とぶつからない様に避けて通る事はそれほど難しく無かった。
現に、【召喚ナーツンドア】のエリアはほぼ、素通りで通り過ぎる事が出来た。
後から【アコンルーク】によって、宇宙を表現した【ナーツンドア】は紙のようなものから宇宙を構成しているとされる存在達を呼び出して戦う者達と言われたが、吟侍達は大して興味沸かなかった。
吟侍達からすれば、それはただの召喚士と大して変わらない様にしか見えなかった。
それが宇宙を表現していようがいまいが、召喚して兵力とするのは変わらないと思ったからだ。
【アコンルーク】に言わせれば、【ナーツンドア】の奥深さをわかっていないとの事だが、試しに通りすがる時、ちょこっと【答えの力】で覗いて見たが、興味ありそうな素材は見つけられなかった。
探ったのが【ナーツンドア871】というブービー賞的立場の【ナーツンドア】だったというのもあるだろうが。
吟侍は、
「次、行こ、次」
と言って、さっさとこのエリアを通り過ぎた。
【アコンルーク】は、
「坊や、少しは冒険を楽しんだら?」
と言ったが、吟侍は、
「善は急げだ。おいら達はやることが他にある。避けて通れるのなら避けて通るさ」
と言った。
【アコンルーク】は、
「つまんないわね。まぁ、良いわ。ご要望通り、次に行きましょう」
と言った。
どうやら、吟侍達のバトルを酒のつまみにでもしようと思っていたらしい。
なのに、吟侍達のやる気が感じられず、期待外れだったため、がっかりしたようだ。
吟侍は自分の意志で行動したいタイプだ。
誰かに導かれて行動するというのは性に合わないのだ。
なので、さっさと終わらせたいという気持ちが強いのだろう。
【アコンルーク】とはとことんまでも気が合わないのだ。
吟侍達は先を急いだ。
07 有続者(ゆうぞくしゃ)チョテウのエリアへ
吟侍達が【宇宙海】のエリアにたどり着く前に立ちふさがる壁は後、2つあった。
その内の一つが、【有続者(ゆうぞくしゃ)チョテウ】のエリアだった。
【有続者】とは何なのか?
それは不老不死、不死身の存在の上位に当たる存在だ。
現界においても不老不死、不死身である存在を倒すという事はそれほど難しくない。
倒し方はいろいろあるが、最もポピュラーな考え方としては能力浸透度(のうりょくしんとうど)と能力浸透耐久度(のうりょくしんとうたいきゅうど)の問題が挙げられる。
例えば能力浸透耐久度が2の不死身の能力者がいたとする。
その存在には能力浸透度が1のナイフでは傷つけても回復するか、下手をすると傷一つつけることは出来ない。
だが、能力浸透度が3のナイフでは不死身の能力者を殺す事が出来るのだ。
要は不死身という力の能力浸透耐久度を上回る能力浸透度の攻撃をすれば倒せるというものだ。
なので、不老不死、不死身を自慢している存在は限界においても大した存在では無い。
だが、世の中には不死身を超える力を持つ者が存在する。
それが、【有続者】と呼ばれる存在だった。
【有続者】は完全に消滅させられても次の瞬間には元に戻れるという存在を指す。
不死性においては不老不死や不死身の存在を上回るのだ。
化獣で言えば、吟侍の心臓ともなっている七番の化獣ルフォスなどもこれにあたる。
つまり、化獣と同等の不死性を持っている存在であると言えるのだ。
ちなみに【有続者】の上位に当たる存在も居て、それは【不変者(ふへんしゃ)】と呼ばれている存在になる。
この存在は、例え存在ごと消されても元に戻れる力を持っている存在を指し、クアースリータを含むQOHや総全殿堂がこれにあたるとされている。
これ以上の存在は無いかと言えばあるというのが答えだ。
それは、クアンスティータやクアンスティータに関する者のみが該当する【よくわからない何か】とされるものだ。
【不変者】よりも上なのはわかるが、もはや人の知識では理解出来ない存在としてそう呼ばれているが、クアンスティータ関係だけの事なので、明確な名称は無いとされている。
余談はさておき、吟侍は【答えの力】で探りを入れて見た所、どうやら、【有続者チョテウ】は十大殿堂のメンバーであるらしいという事がわかった。
そのエリアに近づくに従って、赤いフードの男【クトゥーアル】から預かった、【メンバーメモリースティック】も反応している。
【クトゥーアル】からの依頼もあるので、ここは無視する訳にもいかない。
相手が十大殿堂であれば話は変わる。
気持ちとしては、【ラッキーフレンド】を使って先ほどと同じように素通りしたいところだが、一つ目の予定、十大殿堂の腕試しの第一弾として、吟侍はこの【有続者チョテウ】と会って話すなり、戦うなどする必要がある。
吟侍は、
「んじゃまぁ、会ってみっか」
と言った。
すぐさま、ディアマンテが、
「はいです、吟侍様」
と答える。
吟侍のイエスマンであるディアマンテは彼の行動に対して、反対する事は無いだろう。
レスティーも、
「一つ目の目的って事ね。意外と早かったわね」
と言って賛同した。
エクスは、クェスにチェンジしており、クェスは、
「行って見ましょう」
とやはり賛同した。
【アコンルーク】は、
「なぁに?今度は積極的じゃない?何かあるの?」
と聞いた。
吟侍は、
「大した事じゃねぇよ。ただ、頼まれごとがあったんだよ。まぁ、ほとんどこっちから持ちかけた話だけどな」
と答えた。
【アコンルーク】の事は気に入らないが、かといって、質問に答えないなどの無粋な真似をするつもりは無かった。
聞かれたら答えるくらいの事はする。
吟侍もそれくらいには大人なつもりだった。
意見がまとまったところで、吟侍達は【有続者チョテウ】のエリアに立ち寄るために、進路を微調整した。
ソナタ達もフェンディナも吟侍達とは別行動で動き出している。
三チーム、三様に動き出した。
三チームにまだ接点の兆しは見えない。
どのチームがどのように動いているか、それぞれのチームは把握し合っていないからだ。
だが、三チームに共通した思いがある。
それは、このロスト・ネット・ワールドで身になる何かを得てくる事。
それは全員変わらない目標だ。
ロスト・ネット・ワールドは広い――
無数の宇宙世界が、クアースリータ・ワールドにすがるように寄り集まって出来た集合宇宙世界なのだから。
だが、三チームともいつか、他のチームに出会うと信じて疑わなかった。
それは、セレークトゥース・ワールドという超危険な宇宙世界を生き抜いた同士としての勘の様なものだった。
三チームの冒険はなおも続く。
続く。
登場キャラクター説明
001 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)
ウェントス編の主人公であり、ファーブラ・フィクタのメイン主人公。
子供の頃、故郷、セカンド・アースを襲った絶対者・アブソルーター達を追い払った事から英雄と呼ばれる。
その時、心臓を貫かれるが、七番の化獣(ばけもの)ルフォスの核でそれを補い、以降、ルフォスの力を使える様になる。
勇者としての格は他の冒険者達より上だが、それだけに、他のメンバーより、強い敵を引きつける。
創作バトルを得意としていて、攻撃方法のバリエーションはやたら多い。
敵からすると最も厄介な勇者である。
ウェントスでの救出チームに参加する。
【答えの力】を身につけ、ティアグラに殺される未来も回避出来た。
セレークトゥース・ワールドの冒険を生きて帰ってきた。
今回はロスト・ネット・ワールドでの冒険をする事になる。
002 ルフォス
吟侍(ぎんじ)の心臓となった七番の化獣(ばけもの)。
ネズミに近い容姿をしていて、最強の化獣である十三番、クアンスティータを異常に恐れていて、その恐怖に打ち勝つために、最も勇気を示した吟侍と命を同化する道を選んだ。
ルフォス・ワールドという異世界をまるまる一つ所有していて、その世界のものは全て彼の戦力である。
異世界には修行するスペースもあり、冒険者達の修行場として提供していた。
異世界にある三つの核、マインドコア(心核)、スキルコア(技核)、ボディーコア(体核)を合わせる事により、新しい怪物等を生み出す事も出来る。
ルフォス・ワールドはそれ以外にもロスト・ワールドという既に失われた世界をいくつも圧縮保存してある。
ルフォス・ワールドには大物が隠れ住んでいる。
クアンスティータ誕生により完全に萎縮してしまっている。
003 ソナタ・リズム・メロディアス
ウェントス編のヒロインの一人。
吟侍(ぎんじ)の恋人、カノンの双子の姉であり、共に行けない彼女の代わりに吟侍と共にウェントスの救出チームに参加した。
吟侍の事が好きだが隠している。
メロディアス王家の第六王女でもある。
王家最強術であるCV4という特殊能力を使う。
CV4は4つの声霊、ソプラノ、アルト、テノール、バスを器に入れる事により、特殊な能力を持ったキャラクターゴーレムとして操る能力である。
力不足を指摘されていたが、ルフォスの世界のウィンディス、ガラバート・バラガの助力により極端な力を得ることになる。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
セレークトゥース・ワールドに続き、ロスト・ネット・ワールドへも吟侍のお目付役としてついていく事になる。
吟侍達と喧嘩別れした状態になり、別行動を取っている。
004 フェンディナ・マカフシギ
3名の姉(ロ・レリラル、ジェンヌ、ナシェル)達と別れて一人旅をしていた全能者オムニーアの少女。
戦闘向きではない大人しい性格だが、自身のポテンシャルは姉たちをも遙かにしのぐ。
また、そのポテンシャルの高さ故に脳に10番の化獣(ばけもの)ティルウムスを宿す事になる。
心臓に7番の化獣ルフォスを宿すという吟侍を探していた。
吟侍にティルウムス以外の何か秘密があると思われている。
潜在している力が覚醒すれば、偽クアンスティータよりも上回ると推測されている。
脳を支配している筈のティルウムスが、すぐ下の両方の瞳より下を異常に警戒している。
クアンスティータ誕生のショックで自身に秘めていた力が一気に解放されて、ショック状態になっていて、必要以上に怯えている。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
自分の力を見つめ直すため、今回はロスト・ネット・ワールドでは別行動に。
005 エカテリーナ・シヌィルコ
風の惑星ウェントスに君臨している絶対者アブソルーターの一人。
2番の化獣(ばけもの)フリーアローラをその子宮に宿しているため、アブソルーターの中では最強と呼ばれている。
戦闘狂であり、奴隷達の支配よりも強い相手との戦いを求める。
突然のトラブルで出会った吟侍の事を気に入った。
切り札としていた力がオルオティーナという存在だという事が解り、彼女の古き力を得て、極端なスキルアップを果たす。
それでも、クアンスティータには遠く及ばず、萎縮してしまっている。
初めて男性(吟侍)を頼りになると思い、自身に芽生えた恋心に動揺している。
オルオティーナに貰った4つの古き力の一つである【不可能を可能にする力】を会得する。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
ロスト・ネット・ワールドでも引き続き吟侍と同行する道を選ぶ。
吟侍達と些細な理由で喧嘩別れしてしまい、別行動を取っている。
006 ステラ・レーター
未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
ステラはグリーン・フューチャーの一員で、かかしという超兵器を使う。
また、若くして亡くなった依良 双葉(いら ふたば)という吟侍の幼馴染みの生まれ変わりでもある。
力不足から、フェンディナやエカテリーナより、一歩遅れて戦線に出てくることになったが、役に立てなかった。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
ロスト・ネット・ワールドでも吟侍のサポートとしてついて行く事に。
【アコンルーク】に利用され、感情が爆発してしまい、吟侍達と別行動に。
007 レスティー
吟侍にひっついてセレークトゥース・ワールドにやってきた調治士(ちょうちし)の少女。
調治士とは化獣(ばけもの)等の超越的存在の医者のようなもの。
彼女は吟侍の専属医の様な存在となる。
吟侍から【答えの力】を受け取り、彼女も少ないながら【答えの力】が使える様になっている。
セレークトゥース・ワールドの冒険により、大きな力を秘めて戻って来た。
ロスト・ネット・ワールドへも専属医のような立場として吟侍と同行する事に。
008 聖魔妖精エクス/クェス
カミーロが、ロスト・ワールドから現界に戻る時に出会った聖魔妖精のプリンセスであり、幸運をもたらす存在と言われている。
光属性のエクスと闇属性のクェスは交互に存在している。
どうしても吟侍と行動を共にするときかないソナタに幸運をと思って、カミーロの手から吟侍の側にという事になってロスト・ネット・ワールドの冒険に同行する事になった。
009 ディアマンテ
未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
ディアマンテはブルー・フューチャーの一員で、16体もの怪物と同化している超戦士でもある。
吟侍の大ファンであり彼のマニア。
ブルー・フューチャー最強でもある彼女はロスト・ネット・ワールドの冒険に同行する事になった。
同化している怪物の一体は万能言語細胞(ばんのうげんごさいぼう)を作り出す事が出来る。
010 赤いフードの男【クトゥーアル】
以前はフェンディナだけだったが、セレークトゥース・ワールドから帰ってきた吟侍達もスカウトしようと訪ねてきた存在。
実力はあるのだが、自信がプロデュースしている十大殿堂の評価は下がっていて対処が取れていない。
吟侍によってロスト・ネット・ワールドに逃げた十大殿堂のメンバーの様子を見に行ってもらう事になる。
吟侍に十大殿堂のメンバーが近づいたら反応する【メンバーメモリースティック】を渡している。
格好は、黒いフードの男の真似をしている。
彼の依頼もあり、吟侍達は十大殿堂と力試しをする予定を入れている。
011 クアースリータ
12番の化獣(ばけもの)。
クアンスティータを恐れる存在が集まって出来たロスト・ネット・ワールドという宇宙世界を持つ。
その最深奥(さいしんおう)には本当の意味で所有している宇宙世界クアースリータ・ワールドがあるとされている。
何でも特別な状態にするという力を持つ。
その力の強大さは、誕生時に、最強の化獣クアンスティータが誕生したと勘違いされる程のもの。
(第一本体)クアンスティータ・セレークトゥースの双子の姉であり兄でもある存在。
性別はおんこというものになる。
生まれたばかりで知識を得るなど、頭の回転は恐ろしく速いが、性格はてきとう。
時空重震(じくうちょうしん)という時空間で起きる地震を引き起こし、重震度(ちょうしんど)はそれまでの記録を大きく上回る9・7を記録する。
これは、震源地に当たる震源流点(しんげんりゅうてん)近くでは存在が存在を維持できず、分解と再生を繰り返す状態になってしまうほど巨大なものになる。
妹であり弟でもあるクアンスティータ・セレークトゥースが誕生したのを素直に喜んだ。
性別はおんこだが、クアンスティータに対し、お姉さんぶっている。
吟侍達をロスト・ネット・ワールドへと送り届けることになる。
012 アコンルーク
ロスト・ネット・ワールドに降り立った吟侍が最初に出会った、謎の女性。
見た目は幼い少女の様だが、中味は吟侍を【坊や】扱いするほど、年を経ている。
感情を操作する力を持っているらしく、ソナタ、ステラ、エカテリーナが心の憶測に持っていた感情を利用して、彼女達を怒らせ、吟侍達から去って行くように仕向けたりなどした。
性格はあまり良いとは言えず、吟侍を虚仮にしたりして好感が持てるような女性では無い。
どうやら、ロスト・ネット・ワールドの事情通らしく、吟侍達に案内を持ちかけるが、その真意のほどはわかっていない。
【宇宙海(うちゅうかい)】のエリアの宝を狙っている。
013 株式ファイター プントラ
動作などを株式化し、それを買った他の存在が自分達の能力などを上乗せさせて、戦う制度の事を株式ファイター制度と呼び、プントラはその株式ファイターに当たる。
株式ファイターは対戦相手に勝つ事により、相手の力を奪い、それを株主達に配当金のように分配するというロスト・ネット・ワールドの比較的弱者達に広まる特有のシステム。
プントラ自体は殴る蹴るが他の存在よりも強めのただの雑魚とも言える男だが、一挙手一投足に賭けている株式がたくさんあるため、彼の行動にはたくさんの追加効果が加わる。
性格はとても残忍で、吐き気を覚える様な悪いことにたくさん手を染めている。
吟侍によって、一瞬にして消し飛ばされた。
014 【ウィンドドラゴッド】ウィンドラ
ドラゴンがロスト・ネット・ワールドにやって来て超突然変異した怪物の事を【ドラゴッド】と呼ぶ、見た目はドラゴンと変わりないが、上半身と下半身が分離していて、それを巨大な球状の物体がつないでいる形になっている。
ダメージ密度がとても重い攻撃をしかけ、受けたダメージは治りにくいとされる。
ドラゴンと同様に多種多様な種族があり、【ウィンドドラゴッド】は風属性の【ドラゴッド】になる。
また、固有名も存在し、【ウィンドラ】は固有名となる。
【ドラゴッド】がさらなる突然変異をしたのが【ドラゴッドル】と呼ばれる存在で、【ドラゴッド】で言えば球状の物体の部分がゴツゴツした物体となり透けており、中には琥珀の様に何かがあるとされている。
【ドラゴッド】はドラゴンのつもりで挑みかかると殺されると言われていて、【ドラゴッドル】は【ドラゴッド】さえも子供だましだと思えるほどの戦闘力を誇り、ロスト・ネット・ワールドにおいては生物のヒエラルキーの頂点の一角を担っている。
ウィンドラはエカテリーナ達を食料として襲うが逆に食料にされてしまう。
015 フェンディナ・ミステリア
5名存在しているフェンディナ・マカフシギの【別自分】の一名。
同じ、フェンディナを名乗りつつも、フェンディナ・マカフシギの三名の姉、(長女ロ・レリラル・マカフシギ、次女ジェンヌ・マカフシギ、三女ナシェル・マカフシギ)とは血のつながりは無い別のフェンディナ。
フェンディナ・マカフシギにより別の宇宙から呼び出される事になる。
【消滅煙(しょうめつえん)】という煙の様なものを出す特殊能力を持っている。
これは細かい分子崩壊現象を起こしている煙で、それに包まれると一瞬にして崩壊するという凶悪な技でもある。
フェンディナ・マカフシギと違い、敵対する存在にかける情けは持ち合わせていない。
016 ナーツンドア871
【ナーツンドア】とは【テスラカ星人】の言葉で、【その宇宙の全てを表したもの】とされていて、地球で言うところの曼荼羅(まんだら)にイメージが近い。
【召喚ナーツンドア】とはその曼荼羅に近いものを使って、宇宙を構成しているとされる存在を召喚して戦う事を言う。
【召喚ナーツンドア】を使う者を【ナーツンドア】と呼び、このエリアの支配者とされている。
【ナーツンドア・パゲ】、【ナーツンドア・ポゲ】、【ナーツンドア・トゥゲ】などで呼ばれていたが、これは【テスラカ語】なので浸透せず、【ナーツンドア1】や【ナーツンドア2】などの数字で呼ばれるようになった。
数が少ないほど偉大な存在とされている。
吟侍が【答えの力】で探ったのはブービー賞的立場の【ナーツンドア871】であったため、彼がその奥深さを知る事は無かったまま、このエリアを素通りした。
017 有続者(ゆうぞくしゃ)チョテウ
不老不死、不死身の存在の上位に当たる存在を【有続者(ゆうぞくしゃ)】と呼び、消滅しても元に戻れる力を持っているとされている。
これは、7番の化獣(ばけもの)ルフォスなどもこれにあたる。
これより上の存在として、存在ごと消されても元に戻れる力を持っている不変者(ふへんしゃ)という存在がいる。
さらに上に【よくわからない何か】とされている存在が居て、それはクアンスティータやクアンスティータに関する存在だと言われている。
吟侍が【答えの力】で探りを入れた所、【有続者】チョテウは探していた十大殿堂の一名だという事がわかり、立ち寄る事になった。
その力は今は不明。