第〇話 グランドスタート


1 未来での死闘

0話001 「くっ、化獣(ばけもの)め、これだけの集中砲火がまるで意味をなしてねえ!」
「泣き言を言うな!生まれてしまったものは仕方ないんだ、なんとしても倒せ」
「駄目だ、全然、利いてねえ…ケラケラ笑ってやがる…」
「まだだ、まだやれる…」
「うぉぉぉおぉぉぉぉ…」
「ひぃいぃぃぃ…みんな、みんなやられちまった…逃げるしかねぇ…」
「何処へ逃げるってんだ…諦めるしかねぇ…全部…何もかも…」
 全宇宙からかき集められた歴戦の勇者達…
 銀河を埋め尽くす程の超大軍勢…
 超科学力の超巨大兵器の数々…
 いくつもの秘術、大禁忌とされている超大魔術…
 幾重にも張り巡らされたトラップまた、トラップ、更にトラップ三昧…
 敵の影はたった一つ。小さな子供、いや、赤子だ…。
 その影に全ての勢力が全力で挑み、全滅しようとしている…
 それも為す術もなくあっさりと…
 超銀河団の無数の星々を砂粒に見立てての砂遊びをされた時には誰もが絶望した…
 敵の名はクアンスティータ…。
 恐ろしく強大なパワーと理解すら出来ない謎の力を持つ最強の化け物だった…。

2 残った勢力

「…全部入れても生存者は431億と少しか…ずいぶん減ったな…」
0話002 「ずいぶんといいますが最初の人数を考えれば、殆ど全滅ですよ隊長…」
「そうだな…」
 スーパーレジスタンス、ブルー・フューチャーの隊長の一人、テソロは呆然とした。
 敵の力のあまりの巨大さにただ呆然とするしかなかったのだ。
 テソロ達ブルー・フューチャーの生き残りは最後の手段として、異世界、別次元にいる怪物達との同化を試みこの世界では身につけることが出来ない程のパワーと異能力を持って生還した。
 殆どの者がこの試みで存在毎、消えて無くなり、あるいは、別の存在となり異世界に飛ばされた。
 何とか20人だけ、超巨大パワーを得ることが出来た。
 そして、体調が戻りきっていなかったテソロ達、12人を置いて、絶好調だった8人は敵の、クアンスティータの討伐に参加した。
 だが、戻って来た者は1人もいなかった…。
 一人一人が超銀河団の一つや二つ、簡単に支配出来るだけのパワーを持っていたつもりだったが、その敵に対してはひとたまりもなく、名を残すこともなく全滅した。
 おそらく、テソロ達12名が戦いに加わっていても結果は全く変わらなかっただろう。

3 クアンスティータ・リステミュウム

 クアンスティータ・リステミュウム…敵の名だ。
0話003 七つの本体を持つとされている複合多重生命体である化獣でもある。
 リステミュウムはその内、五番目に誕生したクアンスティータだった。
 先に誕生した四つのクアンスティータも恐ろしい力を持っていたが、リステミュウムは更に輪をかけてあまりにも強大な力を持っていた。
 他の四つのクアンスティータですら霞む程のパワーだった。
 信じられない事だが、そのリステミュウムをも上回る本体がまだ、二つもあるという。
 その事が更なる絶望感を与えていた。
 神話の時代からクアンスティータだけは誕生させるなと言われて来たが、テソロ達はその意味を嫌と言う程、思い知っていた。
 どうしようもないのだ。
 この世界の万物の何をどう使おうがリステミュウムには敵わないのだ。
 唯一、過去の世界に対抗策が無いのなら作れば良いという考え方で世界を驚かせたという吟侍(ぎんじ)と呼ばれる少年からヒントを得て、テソロ達は異世界の怪物との同化という手段を思いついた。
 その過程で、他の並行世界が存在し、そのどの世界もリステミュウムに苦しめられていることがわかり、並行世界同士通信することを可能とすることも出来た。
 だが、他の並行世界の者たちといくら強力してもリステミュウムには遠く及ばないことが解ってしまった。
 知れば知るほど、リステミュウムは新たなる恐怖を提供し、他の並行世界も次々と消滅していった。
 どの異世界も後が無くなってきているのだ。
 このままではリステミュウムによって、全ての世界が滅ぼされてしまう…。

4 吟侍という希望

 使える手段を出し尽くしたブルー・フューチャー達が最後にすがった希望、それが、芦柄吟侍(あしがらぎんじ)という人間だった。
 彼の生きていた時代にクアンスティータ・リステミュウムは誕生していない…。
 だが、もし、生きていたら彼ならば何とかしたかも知れない…。
 そう思わせる何かを彼は生前持っていたという…
 別の並行世界、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャーからも彼を求めて代表者達が過去へ渡ったと連絡が来た。
 ブルー・フューチャーとしても希望を求め、代表者が過去へと渡る事になった。
 全ては救世主、吟侍を存命させ、リステミュウムと戦わせるために…。
 だが、このまま黙って過去へと行くことは出来ない。
 せめて…せめて一矢報いなくては…リステミュウムに怒りの一撃を…

5 クアンスティータのもたらす悪夢

 世界中の勇者達が全滅してからの全宇宙は最悪だった。
 クアンスティータの生み出す悪夢によって焦土というのも生ぬるいような惨状の場所が至るところに広まっていった。
 リステミュウムの気まぐれでY染色体は完全に破壊され、世の中に男性は居なくなってしまった。
 ただの気まぐれでだ…。
 生存者の生態系は完全に乱されてしまっている。
 リステミュウムの謎の力の影響だった。

0話004 謎の力…文字通り、その能力の片鱗すら全く見えない正体不明の力だった。
 拍手をすれば、上下左右表裏が全て逆転し、じゃんけんのチョキを出せば、星の位置が根こそぎ入れ替わる。
 回れ右をすれば、生物の属性が悉く変わり、弱者が強者を捕食し、指ぱっちんをすれば、隕石が雨の様に降り注ぐ…。
 全く意味の解らない能力だった。
 味方の数も増えたり減ったりし、人間関係まで、変更されたりするので、パニック状態に陥った。
 そして、リステミュウムは自らが所有する世界を解放した…。
 それによって、これまでの勢力図は簡単に塗り替えられた。
 それまで、我が物顔にふるまっていた暴君達もリステミュウムの世界から来た新たな怪物達の前に一溜まりもなく、その座を明け渡さざるを得なかった。

 傍若無人ぶりが少しの間、続いたが、今はすでに、リステミュウム自信にこの世界に対する興味は無い…。

 ただ、目障りなら…、邪魔なら消し飛ばす…それだけだった。
 敵対するものが全滅するまで付き合う必要すらない…。

 攻撃の詰め合わせ…リステミュウムはただ、怪しく光る一撃を放てばいい…。後は、その光が敵が全滅するまで様々な攻撃を…最悪の効果を生み出していく。
 今となってはリステミュウム自身よりも彼女の世界の住民達の方が驚異となっていた。
 本来なら、世界のあちこちに点在するはずの最強者達…それは、クアンスティータが所有する世界に取り込み自らの勢力として独占している。
 一体一体が、まとめてかからねば倒せない様なボスキャラ達を殆どまとめ上げてしまっているのだ…。
 正にやりたい放題…誰にもどうしようもない…。
 どうしようもないのはわかっている…。
 わかっているが、無念にも消えていった仲間のためにも立ち向かわねばならない。
 いや、違う、自分達が悔しいのだ。
 何を考えているかも解らない赤子にいいように弄ばれることが…

6 最強の戦士ディアマンテ

 リステミュウムに直接仕掛けては確実に消されてしまう…
 それではただの犬死にだ。
 ブルー・フューチャーでは、ならば、せめて、リステミュウムの世界の怪物の一体だけでも倒してやろうという事になっていた。
 テソロは生き残ったブルー・フューチャーのメンバーを招集して作戦会議を開いていた。
 メンバーの殆どは深刻な面持ちで参加している。
 ただ、一人を除いて…。

0話005 「吟侍様って格好いいのかな〜?」
「ディアマンテ、不謹慎だぞ、今は作戦の事だけ考えろ!」
「はーい…」
 テソロはディアマンテを注意する。
 命がけの作戦に対しての緊張感のなさを戒めたのだ。
 が、ディアマンテに緊張感がないのには原因があった。
 彼女は情緒不安定なのだ。
 それは、彼女がブルー・フューチャーの中で最強の力を持っている証でもあった。
 彼女は自らが同化した怪物達の力に常に内側からさらされていて、常に不安なのだ。
 明るく振る舞っていないと気が狂ってしまいそうなのだ。
 生き残ったブルー・フューチャーのメンバーは複数の異世界の怪物達との同化に成功しているが、その中でもディアマンテは唯一、二桁の…16体の怪物との同化に成功していた。
 宝石の王様、ディアマンテという名前が与えられているのも伊達ではないのだった。
 その彼女が手にした力はあまりに大きく、現在、彼女がそつなく使いこなせる力は超瞳力(ちょうどうりょく)と言われる力だけだった。
 瞳に映る全てのものを破壊する力だ。
 星よりも大きな怪物ですら、一瞬にして跡形もなく消し去れる程の力を持っている。
 もちろん、目に映れば星であろうが、銀河であろうが、破壊することも出来る。
 殆ど反則のような力を持っているのだ。
 その彼女ですら、リステミュウムや彼女の世界の怪物達には単独では勝てない…。
 それが、テソロの見解だった。

7 能力浸透度

 何故、目に映る全てを破壊する力を持つディアマンテが勝てないか…。
 それは、能力浸透度が深く関係してくる。
0話表 能力浸透度が上回れば例え不死身とされている怪物にだろうと死を与える事が出来る。
 不死身である身体に、死という結果を植え付ける事が出来るからだ。
 例をあげれば、能力浸透耐久度が1で不死身である吸血鬼に能力浸透度が2のナイフで攻撃するとダメージを与える事が出来るという事だ。
 ディアマンテとリステミュウムの世界の怪物達についても同じ事が言える。
 彼女の能力浸透度がリステミュウムの世界の怪物達の能力浸透耐久度を大きく下回るからだ。
 どんなに無敵とされる力を持っていようが、能力浸透度が相手の能力浸透耐久度を下回ったら効果は半減、もしくは0以下となり全く効果はない…。
 それだけならまだしも逆に刺激を与えて相手に力を与えるという事にもなりかねないのだ。
 クアンスティータは圧倒的なパワー、恐ろしい数々の異能力に加えて、能力浸透度、能力浸透耐久度も恐ろしく高いために、最強の化獣とされていた。

 悔しいが、そんな化け物に挑んでも徒労に終わるだけだろう…
 テソロ達は負け犬と言わざるを得ない…。
 だが、負け犬には負け犬の意地がある…。
 噛みつく所さえ間違えなければ、ほんの僅かでもリステミュウムに悔しい思いを与えることが出来るはずだ。

 だから、彼女達は噛みつく場所を探し出した。
 それが、今度のターゲットだ。

8 ターゲットの怪物

 テソロ達がターゲットに選んだ怪物は最も多くの民を死に至らしめた名も無き怪物だった。
 リステミュウムの世界の怪物としては全くの小物だが、だからと言ってテソロ達には簡単に倒せる相手ではない…。
 名前が無いと不便なので、テソロ達はその怪物をエネミゴ(スペイン語/敵)と名付けた。
0話006 エネミゴの確認されている能力は6つ。
 一つは怯えた者の魂を抜くという能力。
 二つ目は自らの影を分離して襲わせるという能力。
 三つ目は巨大化する能力。
 四つ目は口からはき出す、物を腐らせる腐敗ガス。
 五つ目は指と指の間には空間を切り裂く歪みがあるという事。
 六つ目は体中の至るところから突然出現する尾のような触手のようなもの。先端が鉈のような物である時とチェーンソーのような物の時、モーニングスターの様な時や十徳ナイフのような時等がある…

 リステミュウムの世界の怪物だという事を考えるとこれだけの能力以外にも能力を持っている可能性は非常に高い。

 クアンスティータの世界に住む怪物達に能力の出し惜しみなど全くない。
 いくつもの異能力をバーゲンセールのようにどんどん使っていく。
 異能力の対抗策など、1つ1つ考えても無意味だということだ。
 エネミゴは異能力が1つ破られれば、別の異能力を繰り出すだろう…。
 リステミュウムの世界の怪物としては数にも入らない小物であるエネミゴですら、今までの世界なら、強大なボスキャラとして君臨しているだろう…。

 会議はエネミゴを倒すことで満場一致。そのまま、決起集会となった。

9 エネミゴ討伐

 現在、殆どの怪物達も生命体を殺すという事に飽き始めている…。
 ただ、エネミゴだけは、好んでそれを…殺戮を続けている…。
 止める気配はない…
 こいつだけは始末しておかないとこのまま過去へ行く訳にはいかない…。
 テソロ達は練りに練った作戦を決行するために配置についてエネミゴを待ちかまえた。
 エネミゴその巨体からは信じられない程のスピードで動き回り、殺戮を繰り返しながら、近づいてくる。
 後、一歩進めば作戦スタートという状況で、エネミゴは立ち止まった。
0話007 そして…
『へへへへへ…出てこいよぉ〜わかってんだぜぇ〜クソ女共ぉ〜あ〜ひゃっひゃっひゃ〜』
 エネミゴは下品な笑い声をあげる。
 テソロは百四十八重のトラップ作戦が読まれた事を察知して表に出てきた。
「…一応、ものを考えられる知能はあるみたいね…無意味に生き物を殺すことしか出来ない大バカカス野郎だと思っていたんだけど…」
『ひゃっひゃっ…一つ良いことを聞かせてやるよぉ〜俺様は外様(とざま)モンスターだ。クアンスティータとは縁もゆかりも全くねえ、名前ももたねぇただのモンスターだった…。だがよぉ〜クアンスティータってのは太っ腹だなぁ…そんな俺様に異能の力をくれた。忠誠を誓っただけなのによぉ〜』
「何ですって?」
『この俺様の今の異能の数、知ってるかぁ〜?20だぜ、20!20もくれやがった!正に、クアンスティータ様々よぉ〜お陰でこの俺は嫌いな人間共を殺しまくり放題ってわけよぉ〜あひゃひゃひゃひゃひゃ〜笑いが止まらねぇってのはこのことよぉ〜』
「下種野郎…」
『だから、万が一、億が一、兆が一、この俺様を倒したとしても、クアンスティータにとっちゃ、痛くもかゆくもねぇって寸法よぉ〜だが、そんなことにはならねぇ。何故だか解るよなぁ〜俺様がお前らを残らずぶち殺すからだよぉ〜』
「………」
『なぶり殺しにされるお前達の愉快な顔を特等席で見られる俺様は楽しい一時を過ごせるってもんよぉ〜うひゃひゃひゃひゃひゃ〜』
「…居るのよねぇ、強い者の威光を借りて自分の力だと過信するどうしようもない愚か者が…」
『ひゃっひゃっひゃっそんな愚か者にぶっ殺されるお前らは何様よぉ〜?ゴミクズ様かぁ?』
「少なくともあんたより遙かにご立派よ!」
『…もういいや…死ねよ』
「どっちが?」
『お前らがだよぉ〜』
 エネミゴは攻撃を開始した。
 テソロの合図で、ブルー・フューチャーのメンバーは散開した。
 エネミゴVSブルー・フューチャーの死闘が始まった。

10 エネミゴの猛攻

 エネミゴの猛攻が始まった。
 初っぱなから、情報に無い異能力を使って来た。
 頭垢(ふけ)かと思われた細かい何かが頭から飛びだし、それが、子犬くらいの大きさにまでふくれあがり、テソロ達に襲いかかった。
 口と目玉が一つだけの化け物だった。
 続いて、叫び声が強力な超音波となって押し寄せる。
 更に、全身の毛穴から血液のようなものが飛び出し、それが凝固し、無数の針のようなものに変質して土砂降りの雨のように降り注ぐ。
 また、腹が割けてそこが、大きな顎となる。
 かと思えば、見えないブラックホールが所々に出現してコマの様に回転しながら暴れ回る。
『あひゃひゃひゃひゃ〜どぉだぁ〜』
 エネミゴは早くも勝ち誇る。
「いくら能力をもらおうが、元がたいしたことないなら程度が知れたわね…鼻で笑えるわ!」
 エネミゴの前にテソロが立ち塞がる。
 エネミゴの異能力はディアマンテの超瞳力が全て打ち落としていた。
 いくら、クアンスティータの力で数多くの異能力と圧倒的なパワーを身につけようと、能力浸透力と能力浸透耐久力はその者の元々の資質がベースとなる。
 能力浸透力と能力浸透耐久力はディアマンテの方がエネミゴよりも上だったのだ。
「てめぇはどうしようもないクズだけど、一つだけ礼を言ってやるよ」
 メンバーのトパシオが咆える!
 と同時に強力な一撃をエネミゴに与える。
『ぐおぉぉぉぉ…な、何だとぉ〜?』
「それはね…」
 メンバーのクアルソが山を蹴飛ばし、つぶやく。
 それが、エネミゴにヒットし宙に飛ばされる。
「クアンスティータへの怒りをあんたにぶつけられるからよ!」
 グラナテの一言が合図となり、ブルー・フューチャーのメンバー12人の集中砲火がターゲット、エネミゴに降り注いだ。
『ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』
 腐ってもリステミュウムの力をもらっているだけあって、大した耐久力だったが、怒りの攻撃は緩まない。
 やがて、エネミゴは四散し絶命する。
 絶命した後も、驚異の回復力で再生しようとしていたが、テソロ達の集中砲火は続き、やがて跡形もなく消え去った。
 驚いたのは消え去った後も復活するエネルギーを感じたのだが、それも後処理して事なきを得た。
 リステミュウムに関わるものを倒すだけで、これだけの手間がかかるのだ。

11 そして、現代へ

 絶望するしかなかった未来…。
 だが、力をあわせれば敵わなかったものにも鉄槌を加えることも出来た。
 これは、大きな進歩だった。
 そして、吟侍という救世主の大きな可能性も自分達で示したことになった。
 リステミュウムに対抗する手段はきっとある…。
 そう、希望を持てた。
 だから、彼女達は行くのだ、過去の世界、現代へ…。
 吟侍という明日への希望と出会うために…。

12 出発前夜−吟侍の住む世界

 テソロ達が救世主と崇める吟侍…
 彼の居る世界では仲間を救うために異星に旅立つ準備が行われていた。
 テソロ達の世界より、遙かにレベルの低い敵…ではあるのだが、それでも、吟侍達には遠く、強大な敵として立ち塞がっている絶対者、アブソルーター達が支配する四連星へ友達を救いに行く準備だった。

 吟侍達は遙か遠くの星、地球からの移民達が生きるセカンド・アースという星に住む人間だ。

0話008 ソロモン王、アーサー王、サンジェルマン伯爵、ロジャーベーコン、ラスプーチン…数々の偉名を名乗り長い時を地球で生きて来た男はジョージ・オールウェイズ神父と名を変え、仲間を連れ、地球からセカンド・アースへと移り住んだ。

 それから、また、更に長い年月が経ち、いくつかの国が出来、人口は100億近くにまで増えていた。

 増えるという事は良いことばかりではない。物を奪い合って争いが生まれる。

 歴史は、過ちは繰り返される…。
 戦争もあり、また、たくさんの人が死んだ。
 人々は平和を求め、国家間でも平和への取り組みが模索されはじめていた。

 そんな矢先だった…。
 異星からの侵略者達が現れたのは…

 火の星/イグニス、土の星/テララ、水の星/アクア、風の星/ウェントス…この四つの星から奴隷として使うために、子供を攫いにやってきた絶対者、アブソルーターと呼ばれる略奪者達が来たのだ。

 アブソルーターとは神御(かみ)や悪空魔(あくま)になれなかった者とされ、不思議な力を持っていた。

 ジョージ神父達は抵抗を試みるも強大な力をもつアブソルーター達に良いようにされてしまっていた。
 数多くの子供が攫われてしまったのだ。

 そんな時、アブソルーター達を追い払ったのが、当時、まだ、幼い子供だった吟侍だった。
 吟侍は食堂に飾ってあった黒い塊、ルフォスの核を心臓に取り込むことによってアブソルーター達を圧倒する力を手に入れていた。
 アブソルーターを追い出した事で、吟侍は勇者と呼ばれるようになっていた。

13 出発前夜−仲間

 吟侍が取り込んだルフォスの核…それは、クアンスティータと同じ化獣の1核とされるものだった。
 神話の時代、ティアグラという化獣と相打ちとなり、力の大半を失ってはいたが、クアンスティータと同じように自身の支配する世界をまるまる1つ所有していた。

 吟侍は仲間と共に、ルフォスの所有する異世界で修行をしてアブソルーター達に対抗出来る力を身につけ、四連星に攫われた友達を救いに行くために準備していた。

 そして、準備が整い、明日救出作戦に向かう事になっていた。
 今日はその前に安全を祈願して宴会が開かれていたのだ。
 今夜ばかりは無礼講…。
 突然、告白する者もいれば、喧嘩をおっ始める者もいる。
 とがめる者は誰もいなかった。
 明日からは危険と隣り合わせの生活が待っている異星へと旅立つのだ。
 最期になるかも知れない…
 そう考えると最後くらい好きにやらせよう…。
 周りの判断はそうだった。

「おい、吟侍、出かける前に俺とお前とどっちが強ぇかはっきりさせとこうぜ」
0話0090話010 ユリシーズ・ホメロスが吟侍に話かける。
 彼は元ならず者で、今は改心(?)し、吟侍の恋人、カノンのチームで救出作戦に参加する事が決まっている。
 訳あって、吟侍はカノンと同じチームで参加することが出来ない…。
 吟侍としても恋人と他の男を一緒に冒険に出すのは面白くない…。
 ユリシーズとしてもカノンを一番守れるのは自分だとアピールしたかった。
 つまり、この二人には争う理由がある。
 だが、吟侍は…
「やめとくよ…それよりお花ちゃんの事しっかり守ってくれよな」
 と言って争う事を拒否した。
 【お花ちゃん】とはカノンの事だった。
 カノン→花音→お花ちゃんと呼んでいるのだ。
「ちっ、腰抜けが…」
 ユリシーズは舌打ちする。
 それを聞いていた琴太(きんた)は
「こら、ユリ公、うちの吟侍への文句なら俺が聞く!いつでも相手になってやるぜ」
 と言った。
 琴太と吟侍は義兄弟の間柄で、琴太と吟侍、それに導造(どうぞう)の三人で芦柄(あしがら)三兄弟と呼ばれていた。
 それぞれが訳ありで、孤児院に引き取られることになった時、ジョージ神父は子供達に世界人名字典から自分の名字と名前を選ばせた。
 これから、自立して生活していかないといけないから、そのために新たな名前をと思って提案したのだ。
 孤児院の子供達の半数は元のままの名前を使ったが残り半数は新たな名前を手にした。
 その時、芦柄三兄弟は偶然、同じ名字を選び、義兄弟の契りをかわしたのだ。

14 出発前夜−兄弟喧嘩

「けっ、止めとけよ、琴太、お前ぇは吟侍より弱ぇじゃねぇか…。お前ぇじゃ話になんねーんだよ」
 アーサー・ランスロットが口を挟む。
 アーサーもユリシーズと同様にカノンのチームに加わっている。
「何だと、アーサー!手前ぇとやったって良いんだぜ!」
 カチンときた琴太はアーサーにくってかかる。
「やんのか、こら!」
「やらいでか!」
 にらみ合う両者。
 今にもつかみかかろうという雰囲気だ。
「止めろって…」
 吟侍が止めに入るが、琴太とアーサーは聞きはしなかった。
 周りもやれ!やれ!とはやし立てる。
 血気盛んな若き勇者達、力をもてあました挑戦者達は殴り合いを始める。
「みんな、落ち着いてよ!」
0話011 カノンも見るに見かねて止めようとする。
「ほっときなさいよ、やり合わせれば良いのよ。思う存分に…」
 カノンの姉、ソナタは彼女を制した。
 やっているのはただの殴り合い、ルフォスの世界で身につけた異能力は使わない。
 今は使うべき時ではない。
 それはみんな解っているのだ。
 この喧嘩はみんな無事で帰って来いよというお互いへの激励の挨拶なのだ。
 やがて、止めに入った吟侍や、喧嘩の原因を作ったユリシーズ、巻き込まれた導造達など、救出チームの男子メンバーが乱闘を繰り広げた。
 みんな顔を腫らしての殴り合いだ。
 どこか嬉しそうでもある。
 生きているんだ。
 そう、かみしめているかのように…。
 やがて、喧嘩は収束していくが、最後まで喧嘩をしていたのは芦柄三兄弟だった。
0話012 ただの兄弟喧嘩になっていた。
 締めはソナタの操るゴーレムのお仕置きビンタで決着はついた。
「はい、私の一人勝ちね!」
 ソナタは一人、勝ち名乗りを上げた。
「ソナタ姉さん…」
 カノンは姉の恥ずかしい一面を見た気がした。
 やられた吟侍達は…
「負けるんじゃねぇぞ…」
「そっちこそ…」
 などと言い合っていた。

15 出発前夜−ジョージ神父の忠告1

「気は晴れたか?バカタレ共…」
 喧嘩が収まったのを見計らってジョージ神父が声をかけた。
 吟侍達にとっては彼は育ての親。
 悪ガキ共の扱いは手慣れていた。
「俺は喧嘩を止めるつもりで…」
 琴太が言い訳をする。
「喧嘩両成敗だ。お前も悪い、琴太」
「すまねぇ…親父…」
「悪いと思ったら素直に非を認めるところがお前の良いところじゃ」
「へへ、照れるじゃねぇか」
 琴太は赤くなった。
 血はつながっていないが本当の親子だった。
 心の底の方ではしっかり頑丈な鎖でつながっているのだ。
「オホン、みんな、心して聞いて欲しい。明日、お前達が行くのは遊びじゃない。だから、一つの判断ミスは命にも関わることになる」
「んなこたぁわかってんだよ、くそじじい!」
 ユリシーズが悪態をつく。
「わかってないだろうから話すんじゃ。特にユリシーズ、お前がな!」
「うるせぇ!」
「お前は敵と思えば何にでも牙をむくだろう…。だが、あくまでも目的は人命救助じゃ。お前達の友を助ける事が第一優先じゃ。敵を倒すことではない!」
「敵をぶっ倒して助けりゃ、同じじゃねぇか…」
 クサナギ・タケルがつぶやく。
 彼もカノンチームだ。
「同じではない。今のお前達でも敵わない敵はごまんといる。そういう敵と相対したら戦わずに逃げろ。なりふりかまわずな」
「んな真似ができっかよ!」
「やるんじゃ。つまらんプライドで命を粗末にするな!」
「敵に背を向けるくれぇならくたばった方がマシなんだよ」
0話013 「…その時の周りのお前への評価はくだらんプライドのために仲間の命を危険にさらした愚か者という事になるぞ!決して、勇敢に戦った者とは評価されん!」
「戦うかどうかは俺の勝手だろうが!」
「それが、結果、カノン姫を死なせることになってもか?」
「なっ…!!」
「お前達は初めて自分達を評価してくれたカノン姫を死なせないために、守るために救出チームに参加した。ワシはそう聞いたが…違うのか?」
「…ち、違わねぇよ、姫さんの行動は危なっかしいからよぉ…見てられねぇから、俺たちは…」
「だったら、生きて帰る事を優先しろ!誇りなら後から勝手についてくるわ!」
「解ったよ、逃げりゃいいんだろ、逃げりゃ、だがよ、そいつにゃ絶対勝てねぇと思ったらだ。それまでは絶対に背中は向けねぇ!」
「…それでいい、何も向かってくる全てに対して逃げろと言っとるんじゃない。時には戦わないといけない時もある…」
神父が言いたかったのは押すときには押し引くべき時には引けということだった。

16 出発前夜−ジョージ神父の忠告2

 ジョージ神父はその後も旅の注意点を細かく言った。
 普段であれば、聞く耳もたずのユリシーズ達ですら、真剣に聞いた。
 それだけ大事な事だからだ。
 そして、それは一時間以上の忠告となった。
「最後に、化獣とは戦わない事じゃ。やり合っても敵わんじゃろうからな…。特に、クアンスティータに関わる事は一切刺激を与えず、通り過ぎろ!何があろうが、クアンスティータを誕生させてはならん!」
0話014 それを聞いていた吟侍の身体が震え出す。
 正確には吟侍ではない…彼の心臓となった化獣、ルフォスが震えているのだ。
 ルフォスはクアンスティータの事を心底、怖がっている。
 その恐怖に打ち勝つために勇気を持つ人間に、吟侍に協力しているのだ。
 神話の時代、ティアグラと共に最強の化獣として暴れ回ったルフォス。
 そのルフォスですら、まだ、誕生すらしていないクアンスティータを恐れている。
 神話の時代、ティアグラとルフォスが相打ちとなり、その隙をついて神御(かみ)と悪空魔(あくま)が残りの化獣を倒し、神御と悪空魔をそれぞれの頂点とする今の世界が出来たと言われている。
 その神話にクアンスティータは登場していない。
 ただ、元となる核だけが存在していた。
 そして、もし、クアンスティータが誕生していたら今とは違う結果になっていたとされている。
 クアンスティータはそれほどの影響力をもっていた。
 神御や悪空魔すらその誕生を恐れている化獣…、それがクアンスティータだった。
 クアンスティータが誕生すれば、全てが終わるとさえ言われていた。
 この世界において最強という言葉はクアンスティータのためだけにある。
 全ての存在はNo.2を目指しているのだ。
 最強は俺だと言っても笑われるのがオチだった。
 荒くれ者のユリシーズ達ですら絵本という形で心の奥底に恐怖が刻み込まれている。
 ジョージ神父に言われるまでもなく、クアンスティータに手を出そうという者はいない。
 ただ一人、芦柄吟侍を除いては。
 言うとバカにされるだけだから、黙っているが、吟侍はクアンスティータに勝ちたいと思っていた。
 幼い頃からずっと。
 それが、彼を最強の勇者と呼ばれるまでにしていたのだ。
 前に踏み出そうという力が他の人間より強いのだ。
 それを見抜いていた神父は
「クアンスティータに関わるな」
 という言葉を吟侍のために言って聞かせていたのだ。

17 出発前夜−ソナタとカノン

 喧嘩も収まり、ジョージ神父の忠告もすんで、みんな最後の別れを惜しむようにそれぞれ雑談を始めた。
 みんな別れが辛いとは言わない。
 ただ、たくさん、しゃべっておこうと思っているのだ。
「…にしても、ほんと、趣味の悪いぬいぐるみね…タヌポンだっけ?」
 ソナタはカノンが大事そうに抱えている狸のぬいぐるみを見て言った。
 別々に行動する事になるカノンのために、吟侍がプレゼントしたぬいぐるみだ。
 離れていても、思いを伝えるぬいぐるみだと言われたので、買い物に付き添っていたソナタが反対したのにもかかわらず、吟侍は三ヶ月分の小遣いをはたいてカノンにと買った。
 カノンは吟侍のプレゼントしたものなら何でも喜ぶが、このぬいぐるみをソナタを通して渡された時、涙を流して感動した。
「へへ、違うよ、まめぽんだよ、可愛いでしょ?」
0話015 「可愛いかも知れないけど、どこか抜けた面構えよね…」
「そうかな?愛嬌があって良いと思うよ」
「あんた本当にそれ持って行くわけ?」
「うん。そうだよ。吟ちゃんの代わり」
「あのバカの代わりって事に否定はしないけどね…」
 ソナタは後ろめたい気持ちになった。
 両思いである吟侍とカノンが一緒のチームにはなれず、自分が吟侍と同じチームで参加するからだ。
 実は、密かにソナタも吟侍に思いを寄せている。
 一緒に居られないとは言え、吟侍とカノンは恋人同士。
 妹を差し置いて自分がずっと吟侍と一緒にいる。
 そのため、どこか妹に対して後ろめたい気持ちをソナタは持っていた。

 双子という事もあって一緒にいることが多かったソナタとカノン。
 次期、国主を決めるライバルでもあるカノンの事はいつか出し抜いてやろうと思っていた相手でもある。
 カノンについても気持ちは自分とそれほど差は無かったと思う。
 だが、吟侍と出会ってカノンは大きく変わった。
 どこか、気持ちがまっすぐになった。
 そして、人々から好かれ始め、いつしか立場を王位継承権を2位にまで引き上げるにまで至った。
 同じ立場、いや、むしろ、自分の影に隠れていたような妹がそこまで変わったのは吟侍のお陰だとソナタは思っていた。
 だからこそ、ソナタは吟侍と同じ星に行く事を選んだ。
 一緒に行けないカノンの代わりに吟侍を監視するという立て前で。
 吟侍にもカノンにも本音を話すことが出来ない…。
 それが、ソナタの悩みでもあった。
 そして、カノンは…
「…ソナタ姉さんは次の女王になろうと思っているの?」
 と言ってきた。
「え?…何よ、突然…そりゃあ、私だって出来れば…」
 突然のカノンの言葉にうろたえる。
 最近のカノンからは考えられない言葉だったからだ。
「…私は、正直、女王になれなくてもいいと思ってるんだ…。でも、吟ちゃんは別!ゴメンね、譲れないよ、姉さん」
「な、何を言ってるのよカノン、私は別に…」
 誤魔化そうとするソナタ。
「私は負けないよ。一緒に笑うんだもんね〜」
「カノン…」
 ソナタは吟侍を思う妹の強い気持ちを感じた。

18 出発前夜−吟侍とカノン

 それからカノンは、まめぽんのぬいぐるみにキスをした。
 そして、吟侍めがけて投げつける。
0話016 ボスッ
 まめぽんは吟侍の顔面にヒットする。
「うわっ、何だ?あれっ?これって…」
 意外な相手からの行動に吟侍は鳩が豆鉄砲をくらったように目をぱちくりさせた。
「すっとら−いく!」
 カノンが叫ぶ。
 周りがみんな驚く。
 普段のカノンは人に物を投げつけるような真似は絶対にしないからだ。
「え、えーと…あの…」
 吟侍はどうしたら良いのか解らずオロオロした。
「吟ちゃん、パス!パス!こっちに投げて!」
「投げてってお花ちゃん…」
 戸惑いながらも吟侍は軽く弓なりにカノンの方にまめぽんのぬいぐるみを投げた。
 それをカノンは顔面でキャッチ。
「へへ、おあいこだね」
「え?」
 吟侍はカノンが何をしたいのか解らなかった。
 だが、カノンにとっては重要な意味があった。
 ソナタもそれに気付いた。
 まめぽんを通して気持ちを伝えたのだ。
 ずっと思っていますと…
 カノンは女神御セラピアの生まれ変わりであることが解っている。
 そのため、化獣の心臓を持つ吟侍に近づくと体調が悪くなってしまう。
 近づけない二人にとって、まめぽんのぬいぐるみは気持ちを伝える大事なアイテムなのだ。
 腑に落ちない表情の吟侍にカノンは満面の笑顔でこう告げる。
「行ってらっしゃい。それと、行ってきます」
「あ、あぁ、行ってらっしゃい…」
「もう…行ってきますは?」
「行ってきます…」
「はい、行ってらっしゃい」
 カノンは後ろを向き、上を向いた。
 涙を流さないためだ。
 今生の別れじゃない…。
 泣く必要はないからだ。
 二人の間に障害は多い…。
 でも、きっと乗り越える…乗り越えて見せる…。
 カノンはそう、心に決めた。

19 それぞれの星へ

「いやだぁ〜僕は、お花ちゃんと一緒に行くんだぁ〜」
 突然、導造が泣き叫ぶ。
 彼の行く先は火の星/イグニスだ。
 水の星/アクアへ行くカノンとは別行動だった。
「ちったぁ空気読め、このボケ!」
0話017 「痛いよ〜琴兄…」
「痛くない!」
 吟侍とカノンの雰囲気をぶち壊した導造を琴太が小突く。
 出涸らしの三男と呼ばれる導造はヘタレが服来て歩いている様な少年だった。
 だが、そんな導造も根っこの部分では琴太や吟侍の様に熱い部分を持っている。
 今では彼も立派な勇者(?)だ。
 思いはそれぞれあるが、友達を救い出すという共通の目標を持ってそれぞれのチームが動き出す。

土の星/テララには…
 芦柄 琴太をリーダーに、
 野茂 偲(のも しのぶ)、エース・スペード、ジャック・クローバー、キング・ダイヤ、クイーン・ハートがチームを組む。

火の星/イグニスには…
 芦柄 導造をリーダー(?)に、
 西川 虎児(にしかわ とらじ)、東 龍也(あずま りゅうや)、北島 武(きたじま たけし)、南条 朱理(なんじょう しゅり)がチームを組む。

水の星/アクアには…
 カノン・アナリーゼ・メロディアス第七王女をリーダーに、
 パスト・フューチャー、シアン・マゼンタ・イエロー、七英雄(ユリシーズ・ホメロス、アーサー・ランスロット、ジークフリート・シグルズ、クサナギ・タケル、テセウス・クレタ・ミノス、ヘラクレス・テバイ、ジャンヌ・オルレアン)がチームを組む。

風の星/ウェントスには…
 ソナタ・リズム・メロディアス第六王女をリーダーに、
 三銃士(ロック・ナックル、ニネット・ピースメーカー、カミーロ・ペパーズ)、そして、芦柄 吟侍がチームを組む。

 救出4チームはそれぞれの星での救出作戦を決行することになる。

 ジョージ神父はただ無事を祈った。

 若者達はそれぞれ旅立った。

20 土の星/テララ

 10日間の宇宙船生活を経て土の星/テララへとたどり着いた琴太チーム。
 土の星と呼ばれるだけあって、見渡す限り陸地が続く。
 宇宙船の中で、空から見た所によると殆ど水辺は見あたらなかった。
 だが、軽く地面を掘った所、水が確認された。
 地下水脈のようなものがありそうだった。
 辺りを探索していると途轍もない巨大な気を感じた。
 まっすぐ、琴太達の方へと向かって来ている。
0話018 この気には覚えがあった。
 琴太達が幼い頃、子供達を攫いに来たアブソルーターの一人だ。
 名前はルゥオ・スタト・ゴォル…今やテララを支配するまでに力をつけたアブソルーターだ。
 いきなり親玉の登場だった。
 吟侍が追い払った時とは桁違いの気を放っていた。
 琴太以外の救出チームはすっかり意気消沈、萎縮してしまっている。
「…待っていたぞ。…だが、あの時の小僧は居らぬか…ならば、用はない…去るがいい…」
「…吟侍は、弟はいくら待っても来ねぇよ。あいつはウェントスに向かった」
「ほぅ…不可能へと挑むか…あの小僧らしいわ…」
「俺の名は琴太、芦柄 琴太だ。吟侍の兄貴をやっている」
「ふん、小僧の兄か…だが、弟に感じた気魄は感じられぬ。貴様では俺の相手はつとまらぬ」
「吟侍に対して雪辱を晴らしたいってとこか…だが、悪ぃな、弟は忙しいんだ。相手なら俺がしてやるよ」
「図に乗るな、小僧がぁ〜」
 圧倒的な気が琴太達を吹き飛ばす。
 ものすごい迫力だった。
「へっ、やるな!相手にとって不足はねぇ!行くぜ、おらぁ!」
 戦闘態勢に入る。
「琴太君、駄目!!」
「何しやがんだ、偲」
「今は引くときよ。今、挑むべきじゃない!」
「俺はやれる」
「無理!」
 くのいちである偲の捕縛術により、琴太は簀巻きにされて、引きずられていった。
 今は力の差がある。
 退却するしかない…。
「去るものは追わぬ。好きに逃げるが良い…」
 ルゥオはさして興味を示さず、踵を返した。
 屈辱の退却…。
 それが、琴太チームの初戦だった。
 苦いスタートだった。
「何故、止めた?」
 安全な場所に逃げ切った時、琴太は偲につめよった。
「ジョージ神父の言葉、もう忘れたの?」
「…忘れてねぇ…」
「あなたはチームリーダーなのよ。あなたの判断で、チームが生き残れるか全滅するかが決まるの…少なくとも着いたとたんに全滅なんてしていられないの…解る?」
0話019 「…すまねぇ…頭に血が上り過ぎた…」
「とにかく、少し、近くを探索して情報を得ましょう」
「はは…」
「何?」
「どっちがリーダーだか解らねぇな、偲、ありがとさんっ!」
「私は頼りにしてるんだからね、リーダー!」
「おう、同じ過ちは繰り返さねぇよ!」
「ほんとに?」
「男に二言はねぇよ」
「嘘ついたら…」
「針千本ってか?」
「ううん、百万回キスでもしてもらおうかな?」
「な、何言ってやがんでぇ、藪から棒に!」
「ふふっ照れてる。かわい!!」
「男をからかうんじゃねぇよ」
「あーら、私は本気よ」
「て、てやんでぃ…何を訳の解らねぇ事を…」
 偲の言葉にドギマギする琴太。
 芦柄三兄弟はそろいも揃って恋愛オンチ。
 琴太も色恋沙汰は苦手だった。
 だが、何となく明るい雰囲気に包まれた。
 が、琴太と偲以外の四人はすっかり血の気が引いている。
 それほど、ルゥオのパワーは凄かったのだ。
 先行き不安な予感がした。

21 火の星/イグニス

 10日間の宇宙船生活を経て導造達のチームが火の星/イグニスへとたどり着いた。
 火の星と呼ばれるだけあり、あちこちで火山活動が活発であり、気をつけないと溶岩が噴き出して来る恐れもある危険な星だった。
 着いて早々、早くも導造は泣き言を言い始め、メンバーに宥められていた。
 もはやリーダーとしての威厳はかけらも無かった。
 そして、琴太のチーム同様に星の支配者のアブソルーターと対決する事になる。
 ただ、琴太チームと違うのは向こうから来たのではなくこちらから出向いたという事。
 それに、理由は手っ取り早く星の支配者を倒して早く帰ろうというちょっと後ろ向きな考えからだった。
 もちろん、その考え方はリーダーの導造だけで、他のメンバーは真っ先にボスを倒して、友達の安全を確保するんだと思っていた。

 イグニスの支配者ジェンド・ガメオ・ファルアも、導造達と因縁浅からぬ間柄だった。
 ジェンドもルゥオと同様に幼い頃、子供達を攫いに来たアブソルーターだった。

 イグニスの民に救世主、吟侍がいつか助けに来る…。
 その噂を自ら広めていた。
 救世主という希望の光が奴隷達に生きる希望を与える。
 その希望を上手く利用して、奴隷達を使うというジェンド流の人心掌握術だった。
 ジェンドは悪辣な男だった。
 そんなジェンドに真っ正面から挑む、導造達だったが、ルゥオ同様に遙かに力をつけたジェンドはまともに相手にはしなかった。
 導造達はジェンドの居城に放し飼いされているドラゴンの群れに行く手をふさがれていた。
0話020 「どうした?…まさか、たかが、数十匹のトカゲの群れに怖じ気づくような腕でこの俺に挑もうとは思ってはいまい?」
 ジェンドは導造達が敵わないと解っていてからかっている。
 暇つぶしのオモチャがやってきたくらいにしか思っていなかった。
「し、失礼しましたぁ〜」
 反転して逃げる導造達。
 相手が悪すぎた。
「お前達、今日のエサだ。存分に食え」
 ジェンドはドラゴン達をけしかける。
 火噴き竜の群れが一斉に導造達を追いかけ回す。
 導造達のチームはバラバラに逃げたためはぐれてしまった。
「あ〜怖かった…」
「信じらんない…何が怖かったよ、無計画にも程があるわよ!」
 一緒に逃げて来た朱理は頼りないチームリーダーを怒鳴り散らす。
「怒んないでよ、朱理ちゃん、僕も怖かったんだからさ〜」
「…誰よ、こんなのリーダーに指名したのは…」
「朱理ちゃん達でしょ?」
「そうだった、あーそうでした。私達が悪うございました」
「何をそんなに怒って…」
「怒って無いわよ…」
「怒ってるじゃん…」
「うるさい、これからすべき行動を考えてるんだから、ちょっとあっちに行ってて」
「怒りんぼ…」
「さっさと行け!」
「痛い、石投げないでよ」
 朱理ははぐれた仲間の事を考えた。
 この後、何処でどうやって落ち合うか…その事を考えていた。
 すると…。
「ねぇ…朱理ちゃん…」
0話021 「何よ?」
 見ると、導造は若い女性を連れ立っていた。
「この人、仲間になりたいって!偶然ここを通りかかったんだってさ」
「偶然ってここは溶岩地帯のど真ん中よ。どうやったら偶然、通りかかるのよ」
「僕らも来たじゃん」
「逃げ回っていたら仕方なくここまで来ちゃったのよ」
「あのー…」
「あんた、何者なの?偶然にしてはおかしいじゃない、こんな所に…」
「観光旅行に来ていて連れとはぐれちゃって…、あ、私、ヘスティアって言います。よろしくお願いします」
「信用しろって言うのはちょっと無理なシチュエーションじゃない?」
「まぁまぁ、旅は道連れ世は情けっていうじゃん、仲良くしよ、仲良く」
「こら、バカリーダー、何で買収された?」
「買収されただなんて人聞きの悪い…ただ、この人が僕の事を…」
「はい、気になる男性ですよ」
「嘘臭っ」
 仲間とはぐれた導造と朱理はヘスティアと名乗る謎の女性と出会っていた。
 前途多難な冒険…そんな予感を感じさせる出来事だった。

22 水の星/アクア

 10日間の宇宙船生活を経て水の星/アクアへとたどり着いたカノン一行。
 メンバーの数は4チームの中でも一番多い。
 にも関わらず、王家の護衛は一人もつけていない。
 カノンの友達と彼女を守りたいというメンバーだけで構成されていた。
 それがまた、カノンの人望でもあった。
 水の星とはよく言ったもので、見渡す限り海で、陸地を探すのに苦労した。
 数少ない陸地にも水辺は多く、正に水の楽園だった。
 アクアの支配者だが、テララやイグニスと違い誰だか解っていない…。
 当時、アクアとウェントスからは侵略者は来ていないとされていたからだ。
 だが、侵略者達は捕まえた子供を四つの星に振り分けると言っていた。
 だから、このアクアにも当時、攫われた子供がいるはずなのだ。
「姫さん、これからどうすんだよ?」
0話022 ユリシーズはカノンに指示を仰いだ。
「そうね…まずは、この星の事を知らないとね。まずは近くを探索しましょう。私の方針は対話と交渉。話せばきっと解ってくれるわ。頑張りましょう」
「俺は反対だ。口で言ってもわからねぇ野郎は世の中には腐るほどいる。先手必勝だ!とにかく、ぶちのめして優位に立つ。口を開くのはそれからだ」
「それじゃ、脅迫だよ。ダメダメ、まずは話あわないと…」
「それだよ、それ、その馬鹿げた考えを止めさせるために俺はあんたについて来たんだ。そんなんじゃ命がいくつあっても足りやしねぇ」
「話せば解る人だっているよ。こちらから仕掛けるなんてのはもってのほかよ」
「じゃあ、話は平行線だな。あんたは、あんたの好きにやればいい…。俺は勝手にあんたを守る」
「守ってくれるのはありがたいけど暴力はいけないよ。嫌うと言う気持ちには嫌うという気持ちが帰ってくるんだよ」
「うるせぇな、とにかく目についた奴は片っ端からぶっ飛ばす。それだけだ」
「お願いだよ。解って。それじゃ何も生まれない…」
「俺はあんたと仲良くなるために来たんじゃねぇ…俺はあんたを守りてぇから来たんだ。そのためには何でもやる!何でもな!」
「それなら、話し合いでも…」
「そいつは俺の性に合わねぇ…」
「…もう…」
 カノンはため息をついた。
 七英雄のリーダー、ユリシーズとは宇宙船の中から意見が平行線をたどっていたからだ。
 他のメンバーには席を外してもらって二人で話をしてみたが、結果は同じで意見の同意は得られない。
 ユリシーズはとにかく暴力に訴えようとするタイプの人間だった。
 カノンの方針とは真逆のタイプだ。
 だが、ユリシーズの言う事ももっともだった。
 最初から話が通じる相手など殆どいないだろう。
 話し合いで事がすむなら戦争は起きない。
 中には言葉が通じない相手もいる。
 まともな知性がない場合だってある。
 上手くいくことなど稀な事でしかない…。
 だとしても、カノンは対話を止めないだろう。
 そのための用意もしてきた。
 相手の気を引くためにその美声を惜しみなく披露するだろう…
 相手との交渉を考えて、カノン自身が発明して来たアイテムもある。
 中でも彼女が作り出した新金属、カノニウムは貴重な取引材料にもなる。
 彼女はその歌声と発明の力で、いくらでも悠々自適な生活を送れるのにそれを投げ出してこのアクアに来ている。
 遊びで来ているんじゃない…。
 1つは自分の目の前でみすみす攫われてしまった友達を助け出すため…
 1つは迫っているアクアの危機を救うため…
 もう1つは狂ってしまった吟侍との運命を取り戻すために参加しているのだ。
 人に限らず誰かを傷つける事が嫌いなカノン。
 だが、理不尽を正すためには誰かを傷つける覚悟も出来ている…。
 でも、それは最後の手段。
 まずは、お互いが歩み寄ることからはじめたい…それがカノンの意志だった。
 面倒臭いやり方だとは自分でも思っている…
 でも、それが、カノンという人間が選んだ生き方なんだ…
 カノンとユリシーズは相手を思いやるという気持ちで動いている。
 だけど、その思いの違いから行動は逆になってしまっているだけなのだ。

「…ワシはその男の意見に賛成じゃ…」
 カノンとユリシーズの会話を聞いていたのか突然、老紳士が現れカノン達に話かける。
 そしておもむろにカノンの手を取り言葉を続ける…。
「…傷一つない綺麗な手じゃ」
「あ、ありがとうございます」
「…褒めとりゃせん。この手は本当の痛みをまだ知らぬ手じゃ、この手の持ち主に果たしてこの国の、この星の者が何人ついてくるのやら…」
「え?」
 カノンは突然の駄目出しに戸惑った。
「いきなり来てなんだ、ジジイ!」
 自分に賛成意見を出した老紳士に対して怒鳴り声をあげるユリシーズ。
 カノンを悪く言われるのが面白くないのだ。
「忠告じゃよ、お主達が行く道は茨の道…これから苦労を重ねることになる…」
「ふざけんな!不吉な事、言うんじゃねぇ」
「待って、ユリシーズ君。…あの、ご忠告ありがとうございます。参考にさせていただきます」
「姫さん、あんた、人が良すぎるんだよ」
「そんなことないよ、おじいさんは親切にアドバイスをくれただけ。怒ることじゃないよ」
「あんたを死なせたくないという気持ちはワシも同じじゃ。あんたは綺麗なまっすぐな瞳をしとる。だから、つまらん死に方だけはさせとうない」
「ありがとうございます」
「消えろ、どっか行っちまえジジイ」
「ユリシーズ君は黙ってて。この人は悪い人じゃないと思うよ」
「んーなの、わかんねぇだろうが」
「わかるよ。おじいさんは優しい目をしてた」
「ワシの事はどうでもええ…時には鬼にならねばならぬ場合もある。それだけは肝に銘じてな」
「…はい、ありがとうございます。気をつけます」
0話023 カノン達は老紳士を見送った。
 老紳士は誰だったのか、それはカノン達には解らなかった。
 老紳士はカノン達が見えなくなった所まで歩いて来てその正体をさらす。
 若々しい男性の姿だった。
 カノンと同じ神御の転生した人間だった。
 彼の名はハザード。
 カノンの四番目の姉、シンフォニアに従う従者であり、神御の1柱、ドクサを見に宿す男でもあった。
 これはシンフォニアの命では無かったが、同じ、神御を宿す者として心配して見に来たのだった。
 カノンはこれから多くの挫折を繰り返すだろう…。
 そして、少しずつ強くなっていくのだ。

23 風の星/ウェントス

 10日間の宇宙船生活を経て吟侍達のチームは風の星/ウェントスにたどり着いた。
 風の星と言われるだけあって、凄まじい突風が至るところに吹き荒れていた。
 そのため、着陸は四つの星で最も難航した。
 それでも、なんとか無事に到着した。
「やっほー、やってきたぜ、風の星!」
 宇宙船のハッチが開き、吟侍の元気な声が辺りに木霊した。
 着ていた宇宙服はあっという間に脱ぎさった。
 しばらく入り口に立ち、風を感じる。
「…良い感じだ。風が生きている…」
 すると…
0話024 ゲシッ
「おわっ!!」
「邪魔よ、さっさと降りなさい」
 吟侍はソナタに蹴り落とされた。
「何すんだよ、おそなちゃん」
「あんたがもたもたしてるからよ!さっさと支度なさい」
「おそなちゃんなんか宇宙服着たままじゃねーか」
「何か言った?」
「いえ、何にも…荒れてるなぁ」
 吟侍はそうつぶやく。
 彼にはそう言ったが、ソナタの気持ちは逆だった。
 吟侍と一緒に冒険が出来る。
ソナタはそれが、嬉しくて仕方ないのだった。
 蹴ったのは照れ隠し。
 吟侍をかまいたいのだ。
「おそなちゃん、そんなんじゃ将来嫁のもらい手がなくなっちまうぞ」
「なんだとぉー」
「あーうそうそ、嘘です。物を投げないで…」
 吟侍とソナタの関係はいつもこんな感じだった。
 大体、吟侍がボケてソナタが小突く。
 そんな関係が子供の頃から続いていた。
 お互い、居心地の良い関係…それが、出来の悪い弟を姉が叱るという感じの関係だった。
 この冒険でこの関係にも変化があるかも?
 ソナタはそんな感じがしていた。
 吟侍じゃないが、ソナタもウェントスの空気を感じる。
 だが、そんな雰囲気を邪魔する一言が…
「ソナタ様、あそこに襲われている人が!」
 ロックが気付き二時の方向を指さす。
「何ですって?どこ?」
 ソナタが見るとグリズリーの三倍くらいの体格のモンスターが幼い子供を追いかけている。
 そのスピードは時速、60キロ。
 すぐに追いつかれてしまう。
 この距離では助けが間に合わない…そう思った。
0話025 だが、いつの間にか、吟侍は現場にかけつけて、子供を抱え上げてモンスターの手の届かない高台へと避難する。
「あっかんべー、残念でしたー」
 吟侍は下で悔しがるモンスターに舌を出した。
 そう、彼の行動はいつも素早い。
 他の人間が気付く前に察知し、最善の行動を取る。
 だから、いつもみんなの先を行く。
 ソナタが凄いと思っていることの一つだ。
 これで、仲間が何度救われたか解らない。
 吟侍の事はソナタの父、ブルース国王も認めていて、そのため、娘のカノンとの交際も認めている。
 今やセカンド・アースの誰もが認める存在にまでなった吟侍。
 ソナタは知っている。
 そうなるまでに、彼は影で人の何倍も何十倍も努力や苦労を重ねてきている事を。
 だから、今の吟侍があることを。
 だからこそ、今の吟侍は光っていることを。
 モンスターは悔しがり帰って行く。
 それを後ろに見ながら
「…ごめんな…お前も食べたかっただけだよな…」
 とつぶやく。
 こんな事を言うのもおかしいが、モンスターは子供を食べたかっただけだ。
 他に悪意は無かった。
 だから、吟侍はそのモンスターを殺さなかった。
 モンスターも生きるのに必死だから…。
 心臓に化獣を宿す吟侍にはそれが解るから…。
 弱肉強食の世界…。
 強者も生きるためには弱者を食べるしかない。
 それは、解るが見てしまった以上は助けるしかなかった。
 それが、吟侍の気持ちだった。
 そして、それは、高い潜在能力を秘めているからこそ思える余裕でもある。
 そんな吟侍の優しい気持ちを理解出来たからソナタも吟侍の事が好きになった。
 だが、吟侍達の旅は他の3チームより過酷なものとなるだろう…。
 類は友を呼ぶ…
 高い潜在能力を有する者の前には高い戦闘能力を持った敵が現れるものだ。
 テララの支配者、ルゥオは言った。
「不可能へ挑むか」
 と。
 このウェントスには他の3つの星をも大きく凌駕する秘密が隠されているのだ。


24 物語を彩る花−テララ

「これは…なんと不吉な…」
 土の姫巫女、ドゥナ・ツァルチェンは星見で不吉な運勢を感じた。
0話026 惑星テララには星を管理するために奴隷制度から解放された集団がいた。
 それが星巫女(ほしみこ)と呼ばれる女性集団だった。
 星の吉兆を占い、それをアブソルーター達に報告する。
 そのため、神殿のある巫女の村の中でのみ安全が約束されていた。
 これは、テララに限らず、イグニス、アクア、ウェントスにも星の巫女が存在する。
 テララは土の星…それ故、この星の星巫女は土の巫女とも呼ばれていた。
 土の巫女の最高責任者、それが、土の姫巫女だった。
 ドゥナの星見ではテララの民、奴隷達の希望となる可能性を秘めた男、琴太が死ぬというものだった。
 琴太が死ねばテララには暗黒の時代が訪れるとも出ていた。
 それを救うには風の便りが必要だとも出ている。
 時は一刻を争う…。
 まずは、琴太に会い、彼の資質を見極めねばならない…。
 が、巫女の村を出れば姫巫女であろうと命の保証はない…。
 アブソルーター達とはそういう契約だ。
 ドゥナが死ねば、代わりの者が姫巫女になれば良い…。
 アブソルーター達はその程度にしか考えていない…。
 命をかけることに依存はない…。
 だが、土の巫女達の中にはまだ、ドゥナの後継者となれるような資質のある巫女はいない…
 星巫女はアブソルーター達に結果を出さねばならない。
 必要だと思われなければ取りつぶされてしまう。
 ここは、テララで唯一、安全が保証された地。
 アブソルーターに狙われてここへ逃げて来た者も少なからず居る…
 ここを潰されるということはその者達の生きる術を奪うという事になる…
 だから、動けない…
 動く訳にはいかない…
 ドゥナは苦悩する…
(どうか…どうか、ここを見つけて…手遅れになる前に…)
 姫巫女は切に願った。
 今日もまた、星見の報告をしなくてはならない…
 ドゥナはテララの支配者ルゥオの使者が待つ星見の間へと向かった。

25 物語を彩る花−イグニス

「あっちゃ〜、先越されたわ、どうしよっかな…二人目ってのもかっこ悪いし…」
0話027 導造達が謎の女性、ヘスティアと出会った頃、1キロ先で双眼鏡を手に悔しがる少女がいた。
彼女の名はブリジット・コルラード。
 導造達と同じセカンド・アースの出身だが、国が違った。
 別の国から来た調査団の一人だった。
 変装を得意とし、導造の事を【かもねぎ君】と呼んでセカンド・アースにいた頃から彼をよく利用していた食えない少女である。
 導造はアイテム運がよく、珍しいアイテムをよく見つけたりしたのだが、彼女は悉くかっさらっていた。
 導造を追ってイグニスにたどり着いた彼女はタイミングを見て正体不明のミステリアスな女性として彼の前に現れようかと思っていたのだが、隠れていた場所にジェンドの放ったドラゴンが一匹現れて彼女も仲間とはぐれてしまったのだ。
 仕方なく、予定を早めて導造のチームに加わって自分の仲間を捜そうと思っていたのだが、一足遅く、導造は先にヘスティアと出会ってしまったという訳だ。
(冗談じゃないわ…かもねぎ君はあたしのものよ…あの取り入った女、何か隠しているわね…うん、絶対何か隠してる)
「かもねぎ君、騙されちゃ駄目よ。騙して良いのはあ・た・し・だ・け」
 ずいぶんとげんきんな少女だった。
 完全に自分の事は棚に上げて考えていた。
 ブリジットは仕方なく、一定の距離を保ちつつ導造達を追うことにした。
 幸い、導造や朱理には気付かれていないようだ。
 ただ、謎の女性、ヘスティアは気付いていて気付いていないふりをしているようだった。
 その証拠に彼女はブリジットと一瞬目を合わせたからだ。
 まるで、あなたも来るならどうぞと言わんばかりの態度だった。
 ブリジットは燃えた。
 人の裏をかくことにかけて負ける訳にはいかない…
 策略は自分の得意分野…
 何処の馬の骨とも解らないような女にいつまでも好きなようにはさせるつもりはない。
(見てなさい…かもねぎ君共々、出し抜いてやるから…)
 女狐ガールとしてのプライドがブリジットを熱くさせた。
 巻き込まれる導造はたまったものではないのだが…

26 物語を彩る花−アクア

 めぼしい集落も見つからず、キャンプをする事になったカノン達。
 カノンはまめぽんのぬいぐるみを枕元に置いて就寝した。
 まめぽんのぬいぐるみを枕元に置き、翌朝無くなっているとぬいぐるみは思い人に気持ちを伝えに行っていると言われて吟侍は旅の行商人から買ったと言っていた。
 もし、それが本当なら良いな。
 彼女はそう、思って寝た。
0話028 これは、彼女がまだ、アクアに向けて旅立ち宇宙船生活をしている頃からの習慣にしているが、まだ、まめぽんのぬいぐるみは無くなったりはしていない。
 今夜こそ…。
 そう思って寝るがいつも枕元にはまめぽんのぬいぐるみは存在した。
 だが、今夜は違っていた。
 何があるかわからないので夜は交代で見張りに出ることにしている。
 今夜はアーサーとタケルとヘラクレスが担当している。
 アーサー達を信用して、すっかり熟睡してしまったカノンの枕元に人影が立っている。
 顔は無い…
 目も鼻も口も無かった。
 耳も無い。
 まるで、のっぺら坊のようだった。
 気配は全くない、何も感じられない…
 だから、外で見張りをしているアーサー達は気付くことが出来なかった。
「…これにしよう…」
 のっぺら坊は小さな声でつぶやいた。
 消え去りそうな小さな声でだ。
 のっぺら坊はカノンの顔に左手を添えた。
 それから、右手を自分の顔に当たる部分に添える。
 すると、のっぺら坊だった顔は髪の色こそ違うもののカノンにそっくりになった。
 のっぺら坊だった少女の名はクアンスティータだ。
 最強の化獣、クアンスティータの本体をサポートする側体(そくたい)の一つ、クアンスティータ・トルムドアと言った。
 クアンスティータは現在はまだ、誕生していない。
 彼女は少し未来から来たのだった。
 トルムドアはまめぽんのぬいぐるみを持って消えた。
 翌朝、カノンが起きて見るとまめぽんのぬいぐるみが無い。
 カノンはまめぽんのぬいぐるみが吟侍の元に旅立ったと言ったが
「けっ、これだからお姫様は…」
「無くしたんなら無くしたって言えよ」
「どうでも良いだろ、あんなぶっさいくなぬいぐるみなんて…」
 等とバカにされてしまった。
 だが、カノンは本気で信じていた。
 まめぽんが吟侍の元に届くと。

27 物語を彩る花−ウェントス

 吟侍とカノンは幼い頃、よくママゴトをして遊んでいた。
 お父さん役にいやいや参加していた吟侍。
 子供役にははてなと言う名前の年下の幼女。
 そして、お母さん役はカノンと依良 双葉(いら ふたば)という少女が交代でやっていた。
 お母さん役が出来なかった方はおばあさん役をやっていた。
 吟侍はママゴトが恥ずかしく、いつも出張に行くと言っては、ソナタ達と缶蹴りや馬跳び等をして遊んでいた。
 そんな幼い頃の思い出が吟侍にはあった。
 はてなは現在、行方不明。
 アブソルーター達に攫われたかどうかも定かではない…。
 双葉は身体を壊して亡くなってしまった。
 吟侍と同じ、孤児院育ちの双葉…。
 お墓は一番大きな桜の木の側にある。
 そんな双葉を前世に持つ少女が未来の世界にはいた。
 グリーン・フューチャーと呼ばれる未来の世界…。
 その世界において、最強の戦士ラ・エルとして転生していた。
0話029 普段の時の名前はステラ・レーター…。
 クアンスティータ・リステミュウムによって崩壊寸前にまで追い込まれる未来…。
 その未来を救うために、過去の世界に吟侍という名の勇者を連れ帰るという任務を受けてこの時代へとやってきた。
 だが、それだけじゃない…ステラには記憶があった。
 依良 双葉として過ごした前世の記憶が…
 グリーン・フューチャーという組織のためだけじゃない。
 成長した吟侍に自分自身が逢いたいのだ。
 吟侍にとってはわからないだろうが、未来から来た幼なじみ…それがステラだった。
 再会したら、話したい事は山ほどある…。
 そんなはやる気持ちを押し殺して、ステラは待機する。
 ファースト・コンタクトの権利はレッド・フューチャーにある。
 レッド・フューチャーから来た三人は吟侍と手合わせして彼の腕を確かめた後、吟侍の心配事の一つを無くすために、彼の兄、琴太のサポートに行く事を決めている。
 未来の世界において吟侍が亡くなっていたのは抱え込んだ問題が多すぎたということになっている。
 その内の一つが義兄、琴太を亡くしたという事だった。
 少しでも、吟侍の負担を減らさないといけない。
 吟侍と離れてしまうが、誰かがやらねばならないのだ。
 だが、それをしてしまうと、救世主である吟侍との接点はそのため、薄くなってしまう。
 レッド・フューチャーは、前世が吟侍の幼なじみだというステラのために身を引いてくれたのだ。
 だからこそ、ファースト・コンタクトの権利はレッド・フューチャーにある…
 そして、後から接触するステラ達も吟侍の成長の邪魔となる手伝いはしてはならない。
 今の敵のレベルならば、ステラ達なら簡単に片付けることができるだろうが。
 理想的な形で最強の勇者にしなくてはならないのだ。
 だから、ステラは時を待つ。
 最高の形で吟侍の手助けが出来るように…

28 動き出す脅威達

「ティアグラ様…芦柄 吟侍達は四連星に着いたようです…」
「…そうか…引き続き様子を見張っておくれ…」
0話030 「はい」
 配下の怪物の報告を受け、一人の男がゆっくりと動きだす…。
 男の名は愛幕 天詩(あまく てんし)、別名、ティアグラと言う…。
 神話の時代、吟侍の心臓になったルフォスと引き分けた化獣である。
 過去を司る1番の化獣ティアグラ、現在を司る7番の化獣ルフォス、そして、未来を司る13番の化獣クアンスティータは三大化獣とされ、化獣の中でも特に恐れられている。
 勢力を持つとされている化獣だが、世界をまるまる所有しているのはこの3核の他には12番の化獣クアースリータしかいない…。
 それだけ、ティアグラとは特別な化獣だった。
 だが、ルフォスとの相打ちで、その力の大半を失っていた。
 ルフォスはクアンスティータを恐れ、その恐怖に打ち勝つために芦柄 吟侍という人間の心臓になることを選択した。
 一方、ティアグラはクアンスティータの強大すぎる力に魅せられ、その力を利用することを選択した。
 宇宙最大の組織、全能者オムニーアという存在を生け贄にして、偽物のクアンスティータを作り出す事に成功し、その力によって、かつての力以上の力を手にしようと企てていた。
 10体の偽クアンスティータが動き出す時、ティアグラもまた動きだす。
 だが、今はその時ではない…
 ティアグラはひっそりと暗躍する…

29 子供達を見守る神父

「そろそろ、あやつらは目的地に着いたころか…死んだら許さんぞ、バカ息子共…」
0話031 口は悪いが吟侍達の事をセカンド・アース、メロディアス王国で見守るジョージ神父だった。
 出来の悪い息子達への仕送りも考えている。
 どんなに悪ガキだろうと救出チームのメンバーは神父の大事な子供達、ただ、無事で有ることを祈るのだった。
 最高の魔導師と呼ばれていた地球時代が懐かしい…
 今は非力なただの年寄り…
 共に行っても子供達の足手まといになるのがオチだ…。
 だから、若い力を信じて、今はただ、待つのみ…。
 無事に帰って来ることを信じて…
 それが、年寄りに出来る仕事だから…。
 神父は、吟侍達の使っている部屋を見て回る。
 帰る場所を確保する…。
 それは待つ者の仕事だから…。

30 いざ、冒険の旅路へ

 吟侍、カノン、琴太、導造…
0話032 それぞれの主人公達はそれぞれの冒険の旅路へとついた。
 これから、数々の出会いと別れ…
 苦しみと喜びを経験するだろう…。
 冒険はまだ、始まったばかり…
 それぞれの物語は、まだ始まったばかり…。

それぞれの冒険へ進む。







登場キャラクター説明


01 クアンスティータ・リステミュウム(シルエット)

クアンスティータ・リステミュウムのシルエット ファーブラ・フィクタという物語全体のラスボスでその五番目の本体。
神話の時代においては、クアンスティータ全てをまとめて13番目の化獣(ばけもの)とされ、未来を司るとされる。
未来の世界において、全ての存在を恐怖に陥れた怪物。
全く意味の解らない【謎の力】を始めとする数多くの超強大かつ特殊な力を使う。
異常に高い戦闘能力を持つ怪物がゴロゴロいる世界を丸ごと一つ所有している。
(クアンスティータは7つの本体と17の側体を持ち、その全てが一つずつ極大世界をまるまる所有している)
現代においては生まれてさえいないが、その恐ろしさはこの世界にいるものは例外なく感じている。



02 テソロ(ブルー・フューチャー)

テソロ クアンスティータ・リステミュウムに壊滅寸前にまで追い込まれている未来の一つ、ブルー・フューチャーに生きる女戦士。
リステミュウムの力によりY染色体が破壊され男性が滅びていて、生きる者にとっては地獄すら生ぬるい最悪の未来を変えるためにチームを率いて過去に渡る事にした。
リステミュウムの影響で、時空に関わる力が制限されていて、何とか過去にいけることになったが、それまで、対リステミュウム用に力をつけたパワーが殆ど根こそぎダウンしてしまう。
それでも、最後の希望、芦柄 吟侍と接触するために行動する。
スーパーレジスタンス組織ブルー・フューチャーの作戦隊長でもある。






03 ディアマンテ(ブルー・フューチャー)

ディアマンテ テソロ率いるスーパーレジスタンス組織、ブルー・フューチャーの隊員。
組織の中では最強の力を持つ。
世が世なら全宇宙の支配者になってもおかしくない程の強力な超瞳力を使うが、それでも、クアンスティータ・リステミュウムには遙かに及ばない。
過去に渡るメンバーに選ばれていて、何とかしてくれる気持ちになれる吟侍の事を神のように憧れている。









04 エネミゴ(スペイン語/敵)(名も無き怪物)

エネミゴ クアンスティータ・リステミュウムに忠誠を誓い、恐ろしいほど強大な力を身につけた怪物。
外様モンスターであり、本来、リステミュウムの世界に住む怪物ではないが、忠誠心をしめしただけで、20もの特殊能力を得た。
エネミゴはテソロ達がつけた名称で本来は名も無きモンスターに過ぎない。










05 芦柄 吟侍(胸からとびだしたルフォスがかりかりやっているシーン)

吟侍 ファーブラ・フィクタという物語全体のメイン主人公。
7番の化獣(ばけもの)を心臓に宿し、それにより、世界を一つ所有し、数々の特殊能力を使う。
戦闘方法がパターン化しておらず、何もない所から答えを引っ張ってくる事に長けている。
そのため、クアンスティータ・リステミュウムの生まれる頃には生存していないが、未来の世界で苦しむ者達にとって、もし生きていたら…という希望として映っている。
現代においては、孤児院の仲間を中心に友達を助ける救出チームに加わろうとしている。
向かう先は風の星、ウェントス。





06 カノン・アナリーゼ・メロディアス第七王女

カノン ファーブラ・フィクタという物語全体のメインヒロインで、吟侍の恋人。
女神御(めがみ)セラピアの化身である彼女は力が未熟であるが故に、化獣の力を宿す吟侍と一緒にい続けると倒れてしまう。
そのため、吟侍と一緒に冒険をする事が出来ない。
発明を得意とし、歌姫でもある。
その二つを利用し、侵略者達に対し、交渉術で救出活動を行おうとしている。
失敗も多いが、その一生懸命さに惹かれ彼女を助けようとする者は多い。
セカンド・アースの三大国家、メロディアス王家の第七王女で、王位継承権は第2位。
救出作戦は水の星、アクアに参加する。





07 芦柄 琴太

琴太 吟侍と共に孤児院で幼少期を過ごした彼の義兄。
人名字典で自分の名前を決めたとき、吟侍と導造が同じ芦柄姓を名乗ったことから義兄弟となる。
吟侍の心臓に宿っているルフォスの所有する世界で修行を積み、土の星、テララでの救出作戦に挑む。
吟侍=ルフォスにはクアンスティータというあまりにも強大過ぎる壁がいる事を知っているため、少しでも義弟(吟侍)の負担を減らそうと露払い役を買って出ることが多い。
曲がった事が大嫌いで短気なのが玉に瑕。







08 芦柄 導造

導造 芦柄三兄弟の末弟。
カノンの事が大好きで、そのため、彼女の恋人である兄、吟侍に対して強いコンプレックスがある。
だが、他の人間に吟侍の事を悪く言われるのが嫌い。
臆病で騙されやすい所があるが、弱音を吐きながらも何とか、救出部隊の一員として頑張っている。
吟侍の心臓に宿っているルフォスの所有する世界で修行を積み、見えないトリガーという力を得た。
惚れやすく、女難の相がある。
火の星、イグニスの担当。






09 ジョージ・オールウェイズ神父

ジョージ神父 吟侍達、芦柄三兄弟を始め、数多くの孤児達を引き取って育てている神父。
正体は地球に居た時から名前や姿形を変えて悠久の時を生きてきた賢人。
地球からセカンド・アースに移り住む時の長い宇宙船の旅の時代に七番の化獣(ばけもの)ルフォスの核を持ち帰り、食堂に飾っていた。
運命の悪戯が、そのルフォスの核と吟侍の心臓の融合という形になってしまった。
宇宙船の旅の時代にルフォスやクアンスティータも含む神話を知り、孤児院の子供達に教訓として語っていた。
救出作戦には参加せず、セカンド・アースの守護を受け持つ。
吟侍達、特に導造の事が心配で仕送りをしようかと考えている。


10 ソナタ・リズム・メロディアス第六王女

ソナタ 吟侍と共に風の星、ウェントスに向かう、メロディアス王家の第六王女。
カノンの双子の姉でもある。
一緒にいけないカノンの代わりに吟侍と同じチームになったという事になっている。
吟侍の事が密かに好きでもある。
CV4という特殊能力を使う。









11 ルゥオ・スタト・ゴォル

ルゥオ ジェンドと共に吟侍達が幼い頃、孤児院の仲間を奴隷として攫っていった絶対者、アブソルーター。
当時は、吟侍が身につけたルフォスの力に圧倒され退散したが、自らの弱さを知り研鑽を積み、今や、土の星、テララを支配する支配者となっている。











12 野茂 偲

偲 琴太と同じチームでテララの救出作戦に参加しているくのいち。
数多くの架空忍術を使う。
彼女には数奇な運命が待っている。
琴太の事を好き。












13 ジェンド・ガメオ・ファルア

ジェンド ルゥオと共に吟侍が幼い頃、孤児院の仲間を奴隷として攫いに来た絶対者、アブソルーター。
吟侍の心臓に穴を開け、絶命寸前に追い込んだ事がある。
その後、ルフォスの力を得た吟侍の力に圧倒され退散し、己の弱さを知り、ルゥオ同様に力をつけ、火の星、イグニスを支配するにまで至っている。










14 ヘスティア

ヘスティア 導造達が火の星、イグニスで出会った謎の女性。
何かを隠して、導造に近づいている。
騙されやすい導造をおだててまんまと一行に加わる。













15 ユリシーズ・ホメロス

ユリシーズ 吟侍達と同じ孤児院出身のはぐれ者だったが、カノンに諭され多少、改心する。
人攫いを相手に交渉するという無茶な事を言い出したカノンが心配で、彼女の担当する水の星、アクアに仲間と共について行くことにした。
カノンの事を大切に思ってはいるが、彼女の方針は認めておらず、常に反発する。
七英雄と呼ばれる不良グループのリーダー。
ライバルの吟侍(ルフォス)の世界で修行を積み、カノンの旅のサポートで参加する。






16 ハザード(ドクサ/神御)

ハザード カノンの中にいる女神御(セラピア)の事が心配でアクアに訪ねてきた神御、ドクサの化身。
表向きはカノンの姉、第四王女、シンフォニアの配下という事になっている。
老人に化け、彼女の考えが甘いという事を忠告する。












17 ドゥナ・ツァルチェン(土の姫巫女)

ドゥナ 土の星、テララの星見などを占う土の姫巫女であり、そのため、人間であるにもかかわらず、土の神殿での生存が許されている。
琴太の事を占い、彼に不吉な運命が迫っているとして、風の星への救援を要請する。












18 ブリジット・コルラード

ブリジット セカンド・アース出身でメロディアス王国とは別の国のスパイ。
今回、別の仲間と共にカモネギである導造のいるイグニスに来たがドラゴンが暴れ回ってしまってはぐれてしまう。
導造を誘惑して仲間に加わるつもりでいたが、ヘスティアという先客が居たので二の足を踏む。











19 クアンスティータ・トルムドア(カノンそっくりな第一側体)

クアンスティータ・トルムドア 少し先の未来からやって来たラスボス、クアンスティータの第一側体(だいいちそくたい)。
母を求めてやってきていて、そこで見つけたカノンの顔を写し取り自らの顔にした。












20 ステラ・レーター(ラ・エル/依良 双葉)

ステラ ブルー・フューチャーとは別の未来(並行世界)からやってきた少女。ラ・エルというコードネームを持っている。
前世の記憶を持っていて、現代においては故人となった吟侍やカノンの幼なじみである双葉でもある。
前世の記憶が残っているステラは希望の星が吟侍という事を知り、過去へ渡る決心をした。










21 愛幕 天詩(あまく てんし)/ティアグラ

ティアグラ 七番の化獣ルフォスと神話の時代で覇権を巡って争い、引き分けて相打ちとなった一番の化獣。
ルフォス同様に力の大半を失っており、現代においては天詩という名の人間に転生し、力の回復を図っている。
神話の時代には生まれなかった最強の化獣(ばけもの)クアンスティータの力に執着している。