吟侍外伝
1 吟侍とルフォス
『聞けよ、ガキが!』
「だから、その次元なんちゃらはもう良いよ…もっと楽しい話をしてよ…」
『楽しく話せばクアンスティータに勝てるのか?』
「クアンスティータもいいって…、もううんざりするほど聞いたから…」
『まだ、お前はクアンスティータのことは何もわかっちゃいねぇよ、だから説明してるんだろうが』
「あーうるさい」
『何だとぉ、こんガキャァ』
芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)は今日もルフォスと口論する。
と言っても、ルフォスは吟侍の心臓でもあるので、傍目には独り言を言っているようにしか見えない。
吟侍とルフォス…二人は共存関係にあった…。
少し前の話になる…
このセカンドアースに侵略者達が現れた。
侵略者達の力は強大で、人々は為す術もなく攫われ、時には殺された。
誰もが諦めていた時、吟侍だけが、侵略者達に立ち向かった。
だが、善戦虚しく吟侍は侵略者達のリーダーに心臓を一突きにされてしまった。
絶命すると思われたが、吟侍はルフォスの核を心臓に取り込み命を吹き返し、ルフォスの持つ強大なパワーを得た。
そのお陰で、侵略者達は退散し、幼いながらに吟侍は星を救った英雄とされた。
だが、ルフォスもタダで吟侍の命を助けた訳では無かった。
ルフォスは神話の時代、神御(かみ)や悪空魔(あくま)をも凌駕したとされる13核の化獣(ばけもの)の1核で、7番目に生まれた事から7番の化獣と呼ばれていた。
1番の化獣、ティアグラと互角の力を持ち、神話の時代、覇権を巡って争い、相打ちとなり力を失い果てたとされていた。
神御と悪空魔は残った2番〜6番、8番、9番の化獣を協力して倒し、人々に神として崇拝され、悪魔として恐れられるようになったとされている。
1核1核の力は強大だった化獣…
でも化獣同士協力する事の無かったため、力を合わせた神御や悪空魔に敗れ去ったという子供でも知っている神話にはそう記されている。
10番から13番の化獣は神話の時代、核のまま、ついには誕生することは無かったとされていて、特に、13番の化獣、クアンスティータが誕生していたら神御や悪空魔が勝利を掴む事はまず、無かったとされている。
絶好の時期を見定めて行動したという事でも神御や悪空魔の判断が評価されている。
が、同時に神話の時代においてもクアンスティータの存在は他の化獣とは別格だという事が描かれている。
ルフォスが最強の座という覇権を握るに当たってクアンスティータという存在は絶対に覆ることのない途轍もなく大きな壁だった。
神話には13核ではなく168核のコアが存在し、その殆どがクアンスティータのためだけに割り当てられた核だという説もある。
ルフォスにとって、ティアグラに勝つと言う自信はあるのだが、クアンスティータに対してはどうしようもない恐怖感を覚えていた。
人間には恐怖に打ち勝つ勇気というものが存在すると知ったルフォスはその時点で最も勇気を示した吟侍の心臓になる道を選んだのだ。
吟侍は生きるために、ルフォスはクアンスティータに対する恐怖に打ち勝つために共存関係が成立したのだ。
そして、ルフォスは吟侍に対し、まずクアンスティータがどれほど強大な存在かを教える事にしたのだ。
敵を知り己を知らば、百戦危うからず…
まずは、敵を知る事として…
だが、まだ、幼い、吟侍に難しい話をしても理解できないというのが現状だった。
ちなみに今回、ルフォスがしていた話は【次元干渉力】についてだった。
人は、(時間を入れれば四次元だが)三次元宇宙(縦、横、高さ)に生きていて、人の世界で、あるとされている次元は11次元までだという話から始まった。
そして、二次元(平面)の世界から三次元(立体)の世界を見ることが出来ないように、次元が一つ繰り上がると、小さい次元からは大きい次元は見ることが出来ないという話をした。
次に、化獣や神御、悪空魔は架空次元というものを持っていて、11次元以上のものを見ることが出来る。
神御や悪空魔は26次元、ティアグラやルフォスに至っては100次元のものを見て干渉することができるという話をした。
最後に、クアンスティータは、解っているだけで、9700極(ごく/10の48乗)次元以上の架空次元を持っている事が解っていてそれ以上は解らないと説明した。
ここまで来ると吟侍にとっては何を言っているのか全くの意味不明の世界の話になっていた。
吟侍は数字には強い方だが、それでも、単位があまりにも大きすぎて何を言っているのかさっぱり解らなかった。
ルフォスがクアンスティータの話をする時はいつも天文学的過ぎる数値を言うので吟侍にはついて行けないのだ。
ルフォスの話に寄れば、クアンスティータは生まれてもいないという…
生まれてもいないものを恐れてどうするんだというのが、吟侍の素直な感想だった。
最も、ルフォスの方もクアンスティータの力をかなり見誤っていたが…
実際にクアンスティータの干渉次元は数字としては表現困難なくらいで、数で現そうとすると、もっととんでもない数字が出てくる。
無量大数(むりょうたいすう/10の68乗または88乗)の遙か先、1不可説不可説転(ふかせつふかせつてん/10の37澗(かん/10の36乗)乗以上のとんでもなくでかい数字)というのを用いることになるからだ。
それでも、表現しきれず、1不可説不可説転の1不可説不可説転乗×1不可説不可説転の1不可説不可説転乗×〜…と続き、一分後には聞いている方は…
「…もう、いい…」
となってしまうだろう。
最もそれが、丸一日続こうが、一年、いや、百年続こうが終わらないくらいでかいのだ。
無限大次元と言った方が早いだろう…。
計測可能次元を遙かに大きく上回る架空次元を余裕で使いこなすポテンシャルをもっているために、ルフォスは本能的にクアンスティータを恐れているのだった。
その途方もなくでかいクアンスティータに立ち向かうために吟侍の持つ勇気がどうしても必要だったルフォスは戦力となる実力をつけさせるために日々、吟侍に試練と知識を与え続けていた。
2 特訓
「ぜぇぜぇ…」
『おい、生きているか?』
「な、なんとかね…」
吟侍とルフォスは今日も特訓を重ねる。
特訓場所はいつもルフォスの作り出す世界だった。
13核の内、1番の化獣ティアグラ、7番の化獣ルフォス、12番の化獣クアースリータ、13番の化獣クアンスティータの4核は独自の異世界を所有しているとされている。
無数の星があり、人や怪物が住み、街があり、森がある世界を丸ごと1つ所有しているのだ。
クアンスティータについては1つでは無いがルフォスも世界を1つ持っていた。
最も、神話の時代のティアグラとの戦いで、殆ど壊滅状態にはなってしまっているが、全盛期にはルフォスを敵に回すという事は世界をまるまる一つ敵に回す事を意味していた。
今は、そんな強大、広大だった世界は見る影もなかった。
そんな壊れかけの異世界が吟侍の修行場だった。
吟侍だけではない。吟侍の幼なじみ達もルフォスの異世界で個別に修行を積み、力をつけていた。
全ては、侵略者達に奴隷として攫われていった友達を救い出す力を得るためにである。
殆ど残っていないとは言え、全部がない訳では無かった。
力の元のようなものは残っていて、それが、ルフォスの世界の各地に散らばっていた。
力の元はコアと呼ばれ、心核(マインドコア)と技核(スキルコア)、体核(ボディーコア)という大きく分けて三種類のコアが存在する。
この三つを合わせることによって一つの生命体となり、吟侍達の修行の相手となる怪物等が生まれるのだ。
このコアは他の生命体や機械、鉱物、能力などと合わせる事も出来、外の世界から取り込んだ何かと合成させて、新たなる生命体を作り出すことも出来る。
外の世界の強い力をルフォスの世界に取り込む事で、ルフォスの世界の増強を図ることも出来る。
だが、それには、吟侍が外の世界で敵を倒して取り込まなければならない…
残念ながら、吟侍にその力はまだ、無い。
今は、ルフォスの世界の中のコアだけで、生み出した生命体と特訓を重ねて力をつけている最中だった。
もし、吟侍がルフォスの力を使いこなしたら世界そのものを動かす戦力を持つという事になるが、今は、無力なただの子供だった。
『てめぇ、やる気あんのか!』
「あるよ!」
『じゃあ、なんだ、そのザマはぁ!!』
「しょうがないじゃん、おいら、まだ、子供なんだから…」
『クアンスティータもガキだ』
「クアンスティータってまだ、生まれてないんだろ?じゃあ、子供でもないじゃん」
『へりくつこねるな、クソガキがぁ!』
「べー〜だ!」
『くたばれ!…って、本当にくたばるな!』
「死んでないもんね〜」
『てめぇ、死んだふりしやがったな!』
「作戦、作戦!」
『敵の数を十倍にしてやる』
「にげろ〜」
…前途多難な感じだった。
3 ティアグラ
『やぁ、吟侍君…今日も元気だね…』
特訓中の吟侍に声をかける影が一つ現れた。
「やぁ、ティアグラさん、今日もよくわかんない感じだね、元気?」
影の正体は第一の化獣、ティアグラだった。
ルフォスのライバルとして、毎日、吟侍の成長ぶりをチェックしに来ているのだ。
正体は不明で、吟侍の近くに住んでいるということしか解らない。
『ティアグラぁ、てめぇ、今日もぬけぬけと!!』
ルフォスは威嚇する。
それも当然である。
神話の時代には殺し合った中なのだ。
今はお互い力の大半を失ってなりを潜めているが虎視眈々と復活のチャンスを狙っているのだろう…。
『もっとクールにいこうよ、ルフォス君。今はお互いこのザマだ。全力とはほど遠い今の状態で争っても仕方ないじゃないか』
『ここは俺の世界だ!てめぇの来る所じゃねぇ』
『おー怖い、怖い…良いじゃないか、別に何をする訳でもない…生まれ変わったルフォス君、君の成長を見に来ているだけだよ…』
『ずる賢い、てめぇの事だ、何か企んでやがんのはわかってんだよ!』
『…ここでは何もするつもりはないさ…ただ、確認に来ているだけだよ』
『俺はてめぇなんかにゃ負けねぇ!もう、てめぇなんざ眼中にねぇんだ!俺は、クアンスティータに勝つためにだなぁ…』
『ぷっ…くっくっく…その割には僕の事、随分、意識しているじゃないか…』
『俺は一番になるんだ。てめぇなんぞに足ひっぱられてたまるかってんだ!』
『一番ねぇ…無理だと思うけどねぇ…。僕や君とクアンスティータちゃんとの力の開きは想像出来ない程大きいと思うんだけどねぇ…。一番になる事よりも一番の力を取り込む事の方が簡単だと思うけど?』
ティアグラは何か含んだ言い回しをしていた。
何かを企んでいるのは明らかだった。
クアンスティータの力は恐れられてもいるが、また、喉から手が出る程、欲しい力でもあった。
ティアグラはその力を狙っているのだろう…。
ルフォスはクアンスティータの力を超える事を願い…
ティアグラはクアンスティータの力を利用する事を考えている…。
それが、二大化獣の考え方の違いだった。
「まぁまぁ、二人とも、少しは仲良くしなって…」
火花がバチバチ散っているティアグラとルフォスの仲裁をはかる吟侍。
子供である吟侍にはティアグラという化獣についてもルフォスという化獣についても解っていなかった。
相容れない存在同士であるということを知らなかったのだ。
『じゃあ、これ以上こじれない様に退散しようかな?』
そう言うとティアグラは姿を消した。
『吟侍、塩、持ってこい、塩!』
ルフォスは人間に影響されているのか、妙に人間臭い所がある化獣だった。
4 カノン
「はい、お塩だよ、だけど、何に使うの?」
ティアグラと入れ替えで少女が一人ルフォスの世界に入って来た。
吟侍の彼女、カノンだった。
ティアグラは何故か、カノンの前では姿を現さなかった。
ティアグラが消えたのもカノンの気配を察知したからだろう。
カノンは女神御(めがみ)の化身という運命を背負って生まれた少女で、吟侍の住むメロディアス王国の第七王女でもあった。
侵略者に攫われかけたのを吟侍に救われた事もある。
それ以来、吟侍はカノンのお気に入りとなり、何となく、付き合っているような感じにもなっていた。
とは、言え、まだ、子供、キスもまだだが…。
女神御の力が覚醒しかかっているカノンには瞬時に発明をする能力を身につけていた。
塩もその能力で作りだしたのだ。
また、小さいながら、歌姫としても活躍し、侵略者を撃退した英雄(吟侍)とは理想のカップルとされていた。
「お花ちゃん、来ちゃ駄目って言ったじゃん」
「ちょっとくらい平気だよ。はい、吟ちゃん、差し入れだよ〜」
「また、倒れちゃうって…ほら、戻って…」
カノンの事を心配する吟侍。
【お花ちゃん】とは吟侍がカノンにつけたニックネームで【カノン→花音→お花ちゃん】という図式でそう呼んでいた。
女神御の化身であるカノンにとって化獣であるルフォスの世界は毒になるのである。
だから、カノンは他の仲間の様に特訓をしにルフォスの世界に入る事は出来なかった。
居るだけで無意味に体力を削ってしまうからだ。
そのため、ルフォスの世界にはカノンは出入り禁止という事になっているのだが、異世界に移動出来る装置を発明をして、時々、激励にやってくるのだ。
吟侍達が無事に友達を救出する力を身につけたとしても、カノンは吟侍と同じ冒険に出ることは出来ずに別々の星に行くことが決まっている。
カノンは反対しているのだが…
二人は付き合っているが、必要最低限の接触しか許されていないという微妙な間柄なのだ。
二人が普通に付き合い、結婚するためにはカノンがルフォスのパワーに抵抗出来る力を身につけるか、吟侍がルフォスの力を放棄するしかなかった。
だが、ルフォスの力を放棄するという事は吟侍の死を意味するのでそちらの選択は無かった。
『ほら、ガキんちょ、入り口開けてやるから、とっとと帰れ!』
「ぶぅ〜っルフォスちゃんも私を追い出そうとしてる〜」
『てめぇの体の心配してやってんだよ!』
「優しいね、ルフォスちゃんは」
『…吟侍、送ってってやれ、どうもこいつといると調子が狂う…』
「まぁ、照れちゃって」
『照れてねぇよ!』
「おいら、ちょっと焼き餅だな…」
『色恋はてめぇらだけでやってろ、俺は興味ねぇ』
「ルフォスちゃんにはこれおいておくね、後で食べてね〜」
『食わねぇよ!持って帰れ』
「美味しいのに…これは、草餅と言って、焼き餅ではないんだけど…」
『早く、帰れ!』
「ばいばーい、またね〜」
『………』
吟侍はカノンを連れて、元の世界に戻った。
彼は、現実の世界とルフォスの世界を行ったり来たりの二重生活を続けていた。
5 ティアグラの世界にて…最深淵について…
一方、自分の世界に戻ったティアグラは数少なくなった配下、その内、4体の怪物に迎えられていた。
ティアグラの世界の各地の支配を任されたいわゆるボスキャラというやつである。
ボスキャラの一体、リオン・マルクが口を開く
『ティアグラ様、お帰りなさいませ。どうでしたか?』
『そうだねぇ…まだ、全然、お話にならないくらいレベルが低かったかな…』
ティアグラは吟侍の事をそう評価した。
彼のライバルとしては全くの力不足という所だった。
『ティアグラの旦那ぁ…何故、スパッとやっちまわないんですかぃ?』
そう質問するのはレザール・マルク。トカゲ面の見るからにガラの悪そうなボスだった。
『レザール、我々はティアグラ様に黙って従えば良い…本来なら、我々ごときが口をきけるようなお方ではないんだぞ。口を挟むな』
『だがよぉ、リオンの兄貴…』
『良いよ、良いよ、少しなら説明をしよう』
『ティアグラ様…』
『ファーブラ・フィクタと魔女ニナの間に生まれた僕達13核の化獣(けもの)の中でも僕とルフォス君、クアンスティータちゃんを合わせて三大化獣と呼ばれているのは知っているよね』
『はい。ティアグラ様が過去、ルフォスのバカが現在、クアンスティータが未来を司ると…』
『そう、だから過去の僕が未来のクアンスティータちゃんとお近づきになるには現在のルフォス君を通って行かないと行けないんだよ…』
『…はぁ…そう、ですか…』
『はは、…ゴメン、ゴメン、君達に冗談は通じ無かったかな?でも、あながち的外れな事ではないんだよ…』
『あの、どういう…』
『クアンスティータちゃんの力を求める僕と、クアンスティータちゃんを超えようと思っているルフォス君…彼女はどちらに気を許すと思う?』
『それは、もちろん、ティアグラ様です。クアンスティータに悪意を持って近づくルフォスなんぞが…』
『…僕は違うと思うよ…悪意というのならそれはむしろ僕の方…純粋に勝ちたいと思っているルフォス君の方を彼女は信用すると思うよ。僕の下心なんて簡単に見抜くからね、彼女は…』
『そう…なんでしょうか…』
『だから、僕はルフォス君というフィルターを通して彼女と接しようと思っているんだよ。少なくとも、今、消えてもらう訳にはいかないんだよ』
『ですが、認めたくは有りませんが、奴はティアグラ様に手傷を負わせた力を持っています…野放しにしておくのは危険かと…』
『ははは、ルフォス君じゃないけどね、僕も彼の力に興味はないんだよ。彼を倒して嘘っぱちのbQになることなんてこれっぽっちも思っていないよ』
『嘘っぱちだなんて…我々は信じています…』
『嘘っぱちさ…化獣の中だけでも、クアンスティータちゃんの双子のお姉さん、12番の化獣クアースリータちゃんがいる…間違いなく、彼女も僕やルフォス君より上だよ…それに、化獣が最強の存在でいられるのはクアースリータちゃん、クアンスティータちゃんの姉妹が属しているからだよ。後の11核はたまたま持っていた(世界や集団を持つ等の)収納能力を過大評価されているだけに過ぎないよ。僕やルフォス君を超える力を持つ者なんてゴロゴロいるからねぇ…』
『そんな存在がいる何て聞いたことも…』
『…殆どがクアースリータちゃんのロスト・ネット・ワールドに隔離されているからね…知らないのも無理はないよ…』
『そんな…』
リオン・マルク達はティアグラの言葉に驚愕した。
自分達の知らない強者がたくさん存在するという事に…
それに、口には出さなかったがティアグラは更にこのことも知っていた。
神話の時代、13核と表現されている核の数…実は168核存在し、ティアグラの前にも60核もの化獣が生み出されていたという事、クアンスティータには96核もの核が使われているという事もだ…。
クアンスティータ…不動のbP…
彼女の力を利用しようと言う者はたくさんいる…
だが、ルフォスの様に彼女を超えようと思う者はいない…
少なくともティアグラの知る中には…
クアンスティータの事を知る者はルフォスの事をバカにするだろう…
絶対に無理だ。超えることはおろか近づく事すら出来ないと…
だが、ティアグラはもしかしたら…そう思っていた…
だから、ルフォスは殺せない…。
ルフォスより力を回復して絶好のチャンスである今も…
…見てみたいのだ。
ルフォスがクアンスティータを超える所を…
6 ちょっかい
《認めへん…認めへんで…わいは…》
ティアグラの世界では、ルフォスに対し、強い殺意を覚えるボスが存在した…
カエル面の怪物、グルヌイユ・マルクだ。
ティアグラへの強い信奉者でもある彼はティアグラよりも強い者はクアンスティータだけだと思っていた。
だから、ティアグラの自分より強い者はゴロゴロいるという言葉がショックだった。
絶対に認めたく無かった。
そして、それはルフォスがいるからという責任転嫁で気持ちを落ち着けた。
ルフォスなど居なくなれば良い…
そう、思った。
だが、相手はティアグラと引き分けた程の力を持つ化獣…まともに向かって行っても返り討ちにあうのが目に見えていた。
そこで、せめて、ルフォスを困らせてやろうと、彼の戦力をそいでやろうと悪巧みをした。
自分が行ったらパワーが大きすぎて目立ってしまう…
それだとティアグラにバレてしまう…
そのため、グルヌイユ・マルクは自分の最下級の配下を使い、吟侍の暗殺を企てた。
今ならば、吟侍とルフォスのシンクロ率は限りなく0に近い…
絶好の好機と考えた。
グルヌイユ・マルクの配下100体の怪物達が外の世界に解き放たれた…。
狙いは吟侍と彼の周りにいる子供達…
将来においてルフォスの戦力となりそうな可能性の排除だった。
怪物達は吟侍の住むセント・クロス孤児院を襲った。
セント・クロス孤児院…ジョージ・オールウェイズ神父が教会と兼ねて孤児達を育てている場所だ。
吟侍も他の子供達と同じ様に神父に育てられていた。
カノンも姉のソナタと共に王家の政の一環で、孤児院を訪れた事がきっかけで、吟侍達孤児との交流が始まっていた。
少し前に他の星から来た絶対者…アブソルーターと呼ばれる侵略者達に攫われた子供の多くがこの孤児院で暮らしていたのだ。
残った、吟侍達孤児院の仲間は攫われた友達を助けるためにルフォスという化獣の力を借りて日々、力をつけていた。
絶対に家族を取り戻す!
そう決意を決めて…。
そんな子供達にまたしても侵略者達が襲いかかる。
今度はアブソルーターでは無い…ルフォスと同じ化獣、ティアグラの世界に住む怪物達だ。一体一体の力はあの時のアブソルーター達より上だった。
だが、今度はあの時とは違う!
子供達もルフォスの世界で力をつけたのだ。
簡単にはやられなかった。
力で劣る部分は子供達同士で力をあわせ、一体一体、怪物達を撃退していった。
特に、吟侍の義理の兄、琴太(きんた)と吟侍に対してライバル心を燃やすユリシーズ達七英雄、東 龍也(あずま りゅうや)、西川 虎児(にしかわ とらじ)、北島 武(きたじま たけし)、南条 朱理(なんじょう しゅり)等飛び抜けた力を示す子供もいて、怪物達はどんどん数を減らしていった。
みんな、吟侍に負けたくないとルフォスの世界で力をつけて来た子供達だ。
もはや、セント・クロスは為す術無く蹂躙される被害地域ではなく、難攻不落の鉄壁の要塞と化していた。
そう易々と侵略されたりはしなかった。
残る怪物は一体。
子供達は無事に孤児院を守りきれた…かに思ったが、残る一体はやられた99体の怪物達を束ねていた怪物だった。
今まで倒した怪物とは格が一つも二つも違っていた。
次々と子供達は傷ついていった。
『どうした?さっきまでの威勢はどうした?このキャピテンヌ様を倒すんじゃなかったのか?』
残った怪物、キャピテンヌは残忍な笑みを浮かべた。
なぶっているのだ。
殺そうと思えばいつでも出来ると言わんばかりの余裕面だった。
彼は吟侍がこの場に来るのを待っているのだ。
そして、カノンを城まで送っていって遅くなった吟侍が子供達の助けに入る。
「そこまでだ」
『…お前が吟侍ってガキか?待ってたぜぇ、お前の前で、仲間を切り刻むためにわざわざ一匹も殺さないで待っててやったんだぜぇ』
冷酷な表情のキャピテンヌはそのまま捕まえていた朱理の首を跳ねようとした。
だが、それより一瞬早く、吟侍は朱理を抱えて脱出した。
離れた場所に朱理を下ろし、吟侍はキャピテンヌを睨む。
「…みんなは下がっててくれ!こいつはおいらがやる」
「けっ良いところを持って行きやがって」
ユリシーズが悪態をつく。
だが、悔しいが、今は吟侍に頼るしか無かった。
もっとだ、もっとずっと強くなってやる…
そう心に誓うのだった。
7 大ピンチ、そして敗北
吟侍とキャピテンヌの一騎打ちが始まった。
キャピテンヌの力は子供達が倒した怪物よりずっと強く、その場で戦ったら、周りの被害は甚大なものになる…
そう考えた吟侍は一旦、キャピテンヌをルフォスの世界に取り込み、安全な場所に移動する事にした。
だが、それこそ、キャピテンヌの…いや、グルヌイユ・マルクの計算通りだった。
ルフォスとの生体リンクが完全でない今の吟侍がルフォスの世界の力を使ってしまったら、それだけで、体力が激減する。
現に、ちょこちょこ動き回るキャピテンヌを世界に取り込んだだけで、体力の半分以上を消耗して、肩で息をし始めていた。
仲間の安全を第一に考える吟侍ならそうするとふんでいたのだ。
だから、吟侍ではなく、吟侍の仲間を先に襲って危険性をアピールしたのだ。
自分達は人を襲うというアピールを…
ルフォスの世界に運ばれたとは言え、その世界に今の吟侍の思い通りになるもの等存在しない…。
あるのは、体力の削られた今にも倒れそうなガキが一人…
グルヌイユ・マルクの考えた作戦が上手くいきキャピテンヌは勝ち誇った。
余裕だ。
簡単にぶち殺せる…と。
だが、吟侍はただの子供では無かった。
言うとおりにならないルフォスの世界のものを使ってキャピテンヌを見事、追い詰めたのだ。
言うとおりにならないなら思うとおりにし向けてしまえば良い…
あれにこれを混ぜればどうなるか?
それにどれを混ぜればああなるかな?
吟侍はそういう考えの持ち主だった。
使えるものは何でも使う。属性、その他は一切気にしない。
攻撃方法を想像して、オリジナル戦略、戦術で、相手を一気に攻め立てる。
それが、吟侍の戦い方だ。
攻撃パターンは一切ない。
いつも思いつきで行動するから…。
その時、思った方法が…イメージした作戦が最善の攻略法…。
だから、誰にも吟侍の攻撃パターンは読めない。
キャピテンヌの敗因は吟侍をすぐにひねり殺せる子供と侮った事だった。
『ぐ、ぐぞぅ…』
「悪さが出来ないようにあんたの力、もらうよ」
勝ちを確信した吟侍はキャピテンヌから能力を奪おうとしていた。
そこに子供故の吟侍の油断があった。
隠された悪意に気付かなかったのだ。
キャピテンヌの身体を突き破って無数の卵が飛びだした。
慌ててよけたが吟侍は深傷を負ってしまった。
「な、なんだってんだ、一体…?」
吟侍は状況が読めなかった。
殺さずに帰そうと思っていたキャピテンヌは絶命した。
殺したのは吟侍ではない…キャピテンヌの身体から卵が飛び出てきて破裂したのだ。
卵から孵る無数の新たな刺客。
キャピテンヌは始めから使い捨てられていたのだ。
「命を何だと思ってやがる…」
敵とは言え、無惨に殺されたキャピテンヌを思い、怒りの表情を浮かべる吟侍。
理不尽に誰かが悲しむのが許せないのだ。
『初めまして、芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)、そしてさよならだ』
キャピテンヌより上位の怪物達が吟侍に襲いかかる。
だが、怒った吟侍はさっきまでのふらふらの状態が嘘の様に怪物達を倒していった。
怒りが彼を更に急成長させていたのだ。
あっという間に敵を全て叩き伏せた。
だが、グルヌイユ・マルクは叩き伏せられた刺客達をベースに魔法陣をいくつも作りだし、そこから更に上位の刺客を無数、召喚した。
吟侍の体力を極限まで削るつもりだった。
「自分は安全な場所にいながら仲間を平気で切り捨てる…どこまで腐った根性だ…出てこいよ、ぶん殴ってやる!」
口では強がっていたものの吟侍の体力は限界だった。
それでも、声だけで自分は戦いの場に出てこないグルヌイユ・マルクに対して激しい怒りをあらわにしていた。
そんな吟侍も八回目の召喚でとうとう吟侍はやられ始め、九回目で一方的に攻撃されていた。
『クソガキがぁ、やった、とうとうやってやったわ』
勝ち誇るグルヌイユ・マルク。
ズタボロ状態の吟侍はもはや虫の息だった。
悔しいが吟侍の敗北だった。
「おいらはおめぇなんかにゃぜってぇ負けねぇ…」
『それが遺言か!いてまえ、いてこましたれや』
ティアグラの世界の片隅で、歓喜にうちふるえるグルヌイユ・マルク。
その後ろには…
『…やれやれ、彼に手を出すなと言っているのに…』
ティアグラが立っていた。
『ティ、ティアグラ様…』
驚くグルヌイユ・マルクの首根っこを掴み、ティアグラは一瞬にして、ルフォスの世界に現れた。
そのまま、グルヌイユ・マルクの顔をルフォスの世界の地面にこすりつける…
『ぐぇぇぇぇぇぇぇぇ…』
『言うこと聞けない子はお仕置きだよ…』
『かんにんや、ティアグラ様、ぎぃやぁぁぁぁぁ…』
グルヌイユ・マルクは吟侍がやられた刺客より遙かに上位の怪物だ。
そんな怪物をあっさりと始末した。
「ティアグラさん…何も殺す事は…」
『優しいね、吟侍君は…』
ティアグラはグルヌイユ・マルクを残忍に殺した者とは思えない優しい表情で吟侍を見た。
『ティアグラ、てめぇ…』
『何だ、ルフォス君、いたの?だったら助けてあげれば良かったのに…あの程度の相手だったら、君なら一瞬だろ?』
『ぬけぬけと…』
ルフォスが吟侍を助けに行けなかったのには理由があった。
外の世界からティアグラがプレッシャーをかけていたため動けなかったのだ。
ティアグラはグルヌイユ・マルクの悪巧みに気付いていた。
気付いていて放置していたのだ。
限界まで吟侍の成長を促すようにし向け、用済みになったため、始末したのだ。
そんな思惑を知らない吟侍は…
「と、とにかくありがと、ティアグラさん…助かったよ」
お礼を言った。
『こんな奴に礼なんて言うな』
「何で?」
『何でもだよ』
「変なやつ」
『変なのはお前だ』
いつもの憎まれ口を叩き合う吟侍とルフォス。
結果だけを見てみれば、吟侍の底力はまた、跳ね上がった。
ティアグラの狙い通りに…
8 クアンスティータに挑む資格
『無事に…一件落着というやつだね』
ティアグラはルフォスに声をかける。
『てめぇが言うな、てめぇが仕掛けたんだろうが…』
『僕は何もしていないよ、グルヌイユ君が勝手にやったことだよ』
『すっとぼけやがって、どうせ、全部てめぇの手のひらの上なんだろうが』
『別に良いじゃないか、結果的に君の吟侍君の力が跳ね上がったんだから』
『俺や、てめぇからすれば、何処が変わったんだかわかんねぇくらいの伸び率じゃねぇか!こんなんで喜べるか!』
『まぁまぁ、悪意があったとは言え、結果的に吟侍君の成長に協力出来て嬉しいよ』
『心にもねぇことをペラペラと…』
『…お礼という訳じゃないんだけど、教えてくれないかな?君が吟侍君にこだわる理由をね。お世辞にも吟侍君が特別に強いという風にも見えないし、君が言っている勇気というものを示す人間なら他にもいっぱいいるしね…。まぁ、吟侍君の戦い方は個性的で、魅力的ではあるけど、それは、もっと強くなったら、意味が出てくるもので、現在の実力では、あまり意味は無い様にも見えるしね…』
ティアグラはルフォスに問いかける。
彼にとって、今回の事件は単なるオマケだった。
真の目的は借りを作り、ルフォスから、吟侍にこだわる理由を聞き出す事だった。
ティアグラに借りを作るなどもってのほかだと思っているルフォスはおそらく話すだろうとふんだからだ。
彼の予想通り、ルフォスは答えた。
『ふん、聞きたきゃ教えてやる。それで、貸し借り無しだ』
『そうだね。そういう事にしておこう』
『…確かに勇気だけで選んだ訳じゃねぇ…おい、吟侍、今から一分間、俺は場所を移動し続ける。瞬間移動を何回したか数えろ!』
『は?何で?』
『良いからやれ!いくぞ』
『はいはい、おいら疲れてんだから無理させんなよ…』
そういうとルフォスはあちこちの場所に一分間、現れては消え現れては消えるという事を続けた。
殆どの者はルフォスを目で追えないだろう…
逆に目で追えた者は数を数え間違えなければ1000回と答えただろう…
だが、吟侍の答えは…
「えー…っと、数え間違えて無ければ18回…かな?」
『へー…』
18回と見当外れな答えをした吟侍に対し、ティアグラは感心した。
ティアグラも18回だと思ったからだ。
『答えろ吟侍、何故、18回だと思った?』
「だって、瞬間移動だろ?…似たような事は1000回くらいやってたみたいだけど瞬間移動は18回だけじゃん…」
『…なるほどね…だから、吟侍君を選んだのか…』
「どういう事?」
『君が才能あふれる逸材だという事だよ』
「???意味わかんないんだけど…?」
吟侍は首をかしげた。
正解は18回、吟侍は当たっていたのだ。
ルフォスは18回瞬間移動し、残りは超スピードで移動する、位置設定を変更する、召喚する、場所を入れ替える、分身、錯覚させる、幻影を飛ばす、脳に間違った情報を送る、過去を書き換える〜等様々な方法で、瞬間移動の様に見せかけていただけだったのだ。
クアンスティータに挑むという事はクアンスティータの様々な特殊能力と向き合う事でもある。
能力について理解力の無い者が見れば彼女の力はよくわからない不思議な力を使っているとしか移らないだろう…。
だが、実際には異なる能力をいくつも使っているのだ。
能力の違いの区別すら出来ない者に彼女に挑む資格はない。
勇気をいくら示そうが、たった一つの能力を見ていたら、次の、更に次の能力にやられるのだ…
クアンスティータとはそういう相手だった。
能力の違いを理解する能力…これが、ルフォスが吟侍を選んだ最大の理由だった。
ティアグラもこれを見て、もしかしてという気持ちが強くなった。
『僕も君の成長を楽しみにしているよ、頑張ってね、吟侍君』
「はぁ…ありがと…?」
ティアグラはこれからも吟侍にちょっかいをかけるつもりになった。
彼の急成長が楽しみになったのだ。
9 一件落着
「た、ただいま…」
「ぎ、吟の字、どうしたんだ?お前、ボロボロじゃねぇか…キャピテンヌってのはそんなに手強かったのか?」
元の世界に戻った吟侍に琴太達が駆け寄る。
「いや、そいつは大したことは無かった…だけど、ちょっと…くかー」
よっぽど疲れているのか吟侍は話している途中で深い眠りについた。
「お、おい、しっかりしろ!導造(どうぞう)、ベッドまで運ぶぞ、そっち持ってくれ」
「う、うん…わかった琴兄」
吟侍の義兄弟二人が彼をねぐらまで運ぶ。
ティアグラに良いように利用されてしまったが、とにかく全員無事に生きている。
これで十分だった。
「こ、これは…どうしたんだお前達?何があった?」
出張から帰ってきたジョージ神父が心配した。
セント・クロスがボロボロだったからだ。
「何でもねぇよ、留守番、きっちり果たしたぜ!」
「何でも無い訳ないだろう。何があったか話なさい」
「悪い奴を退治してやっただけだよ。後は何もねえ!!」
「悪い奴?」
「そう、悪い奴さ!俺たちはぜってぇ強くなって仲間を取り返してやるよ!ぜってぇな!」
「お前達…」
強くなる宣言をする琴太達。
それを見て、子供達の成長を喜ぶ神父だった。
10 そして…
「痛てて…また負けた…強いねお姉さん…」
「…この辺り一帯を64立方メートル毎に…ランダムに重力は1G〜100Gまで変化させる…アイディアとしては面白いわね。でも、もっとずっと弱い相手には有効かもしれないけど、私には殆ど意味ないわね。64立方メートルというのが大きすぎるわ。枠はもっと小さくしないとね。私の身長に影響させるなら1立方メートル毎にするとかした方がいいわ」
「今はそんなに細かく出来ないって」
「まだまだ、未熟者って感じね。あまり細かすぎても効果はないけど、1立方センチメートル毎に重力の値を変えていって20万Gくらいまで、引き上げられれば私でも気持ち悪くなるくらいはなるかもね」
「それは無理だな…今はね」
「今は…か…合格よ、私の名前はウィンディスよ!よろしくね、おチビちゃん!」
「おいら別にチビじゃねぇって」
「あなたの力がまだまだ、全然弱いって事よ」
「そっか、まだよえーか…」
「…嬉しそうね…弱いって言ったのに」
「でも、1時間、逃げ切った。賭けはおいらの勝ちだよ」
「…そうね、じゃあ、約束通り、ルフォスの世界に住んであげる」
「サンキュー、ウィンディスさん」
「まだ、協力するとは言ってないけどね」
「出会ったばっかでそこまで期待はしてないよ。その内、助けてくれる気になるのを待つさ、気長にね」
あれから、吟侍は力をどんどんつけていって、強者をルフォスの世界に取り込むという事もはじめている。
今日も吟侍はウィンディスという少女をルフォスの世界に招き入れた。
彼女は全能者(オムニーア)の一人で、全宇宙で最大の組織に属していたと言う…。
誕生すらしていないクアンスティータに【全能者】という存在名称を奪われてしまい、クアンスティータの所有する世界に潜む、世界を彩るクリエイター達の名称に変わってしまったという。
生き残ったのは耐性を強く持っていたごく僅かな全能者達だけとなってしまったという。
元凶はティアグラだった。
彼は全能者達の存在名称をクアンスティータに捧げ、変わりにある資格を得たという。
まだ、生まれてもいないのに圧倒的な力を示すクアンスティータに驚く吟侍。
震え上がるルフォス。
この凸凹コンビが立ち向かう相手は想像だに出来ない程、恐ろしく強大だ。
だが、吟侍もルフォスも思っている。
こいつと一緒なら何とかなるかな…と。
登場キャラクター説明
01 芦柄吟侍(子供バージョン)
本編の主人公。
心臓にルフォスの核を持つ。
ルフォスは心臓に穴のあいた吟侍を助ける代わりに彼の勇気を欲しがる。
現在、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータに勝つために修行中の身である。
02 ルフォス
神話の時代より生きる七番の化獣(ばけもの)。世界をまるまる一つ所有しているが、ライバルのティアグラとの死闘が原因で、その世界は力の大半を失っている。
吟侍を宿主に決めたのは彼の持つ勇気と他に理由があるらしい。
03 ティアグラ(幻影)
七番の化獣(ばけもの)ルフォスと互角の力を持つ一番の化獣(ばけもの)。神話の時代の死闘が原因で力の大半を失っており、力をつけようと虎視眈々と狙っている。
吟侍には下心があって近づいているようだが…。
04 クアンスティータ(第一本体のシルエット)
数多くの最強の力を持つ最強の化獣(ばけもの)。13番という数字が割り当てられている。
神話の時代においてはついに核のままで誕生する事はなかったが、もし生まれていたら神御(かみ)や悪空魔(あくま)に勝利はなかったとされている。
05 ルフォスの世界のコアの説明(心核マインドコア 技核スキルコア 体核ボディーコア)
ルフォスの所有する世界のあちこちに点在する核(コア)。
大きく分けて、三つあり、魂を司る心核(しんかく)マインドコア、能力を司る技核(ぎかく)スキルコア、身体を司る体核(たいかく)ボディーコアの三つがある。
基本的にこの三つを合成させる事によりモンスター等が誕生する。
ただ、例外はいくつもあり、マインドコアを二つ持つモンスターやボディーコアの代わりに外の世界の怪物の死体を合わせた存在などバリエーションは豊富にある。
06 カノン・アナリーゼ・メロディアス第七王女(子供バージョン)
本編のヒロイン。女神御(めがみ)の力に目覚めつつある彼女は化獣(ばけもの)の核を心臓に持つ吟侍の側に長く居ると倒れてしまう。
07 リオン・マルク
ティアグラの世界に住むボスの一体。ティアグラの力が弱まったために幹部となった事を気にしている。
何体かいるボスの中ではリーダー格。
08 グルヌイユ・マルク
ティアグラを信奉するボスの一体。ティアグラの世界に住んでいるという事に誇りを持っている。
だからこそ、ティアグラより強い者はクアンスティータだけだと思っていたが、ティアグラの口からもっと強い者がゴロゴロいると聞かされショックを受ける。
それを無理矢理、ルフォスが悪いと思いこみ悪巧みをする。
09 キャピテンヌ
グルヌイユ・マルクの最下級の部下。その隊長格。
ティアグラにばれないようにするためにグルヌイユ・マルクが最も力の弱い部下であるキャピテンヌを使い捨てとして使われた。
10 ウィンディス(元 全能者オムニーア)
ティアグラがクアンスティータの力の一部を手に入れるために生け贄に出された宇宙最大の組織全能者オムニーアの元メンバー。
オムニーアという存在自体がクアンスティータの力の一部として取り込まれたために、存在意義を無くしてしまう。
数多くいた仲間も消えてしまい、力の強かった彼女を含め僅かな元オムニーアが残るのみとなった。
今回、吟侍と勝負をして、彼(吟侍=ルフォス)の世界の住民(戦力)となることを了承する。