第003話 王杯大会編その4


01 本戦トーナメント1回戦第6試合芦柄 吟侍VSステラ・レーター


 本戦トーナメント1回戦第6試合が開始されようとしていた。
 吟侍とステラによる闘いだ。
「ふーちゃんなんだろ?」
 吟侍は対戦相手のステラに尋ねた。
 【ふーちゃん】とは吟侍の幼馴染み依良 双葉(いら ふたば)の時のニックネームの事だ。
 双葉は幼くして病死している。
 その双葉が未来において生まれ変わった。
 それがステラだ。
 アピス・クアンスティータ戦の後、一度、話をしているからそれは確認していたが、今でもそれは信じられない感覚だった。
 死んだはずの幼馴染みが生まれ変わったと言われて素直に信じる気持ちにはなれなかったのだ。
 だが、双葉でしか知らない情報を彼女は数多く知っていた。
 未来の世界から来たのだから知っていてもおかしくはないのだが、双葉の情報が詳しすぎた。
 わざわざ双葉にしなくても別の人間の生まれ変わりだと言っても良いはずなのに、あえて双葉だと言っている事がより信憑性を増していた。
 双葉とはカノンと行方不明のはてなと共に、良くママゴトをしていた吟侍はそのママゴトの時の情報が詳しすぎるくらい知っていたステラが双葉の生まれ変わりだと信じざるを得なかった。
 ステラとどう話したら良いのか迷っているとステラの方も話し出した。
「吟ちゃん、私は確かに双葉の生まれ変わりだけど、その前に、私はネオ・エスクの戦士でもある。やらなければならない任務があるの……」
 とのこと。
「どういう事だ?」
「あなたは未来の世界において、クアンスティータに対抗出来たかも知れないという希望となった。だけど、実際の未来では、クアンスティータと戦っていない。それは、力を発揮する前に1番の化獣(ばけもの)ティアグラによって暗殺されたからよ」
「暗殺……?」
「そう、あなたは、【答えの力】というクアンスティータに対抗出来るかも知れない力を編み出す。だけど、それを披露する前に、暗殺された。私達の未来では、その【答えの力】に希望を持っている」
「殺されるのか、おいら?」
「本来の未来ではね。でも、私達が過去へ渡った事で、未来は既に変わっている。私達はあなたをサポートするために来ているのだから。だから、ティアグラに殺される前にあなたに【答えの力】を身につけてもらう必要があるの」
「【答えの力】……?」
「だけど、これは、危険な賭でもある。前倒しで、【答えの力】の切っ掛けとなる状況を作り出すので、吟ちゃんが、まだ、それを身につけるスキルを得ていなければ、それでアウト。あなたはそこで死ぬし、それだけでは済まなくなる。私としてはやりたくなかったけど、誰かがやらなければならないなら、せめて私がと立候補したの」
「何をするんだ?」
「それを説明する前に腕試しをさせて。私はあなたを殺すつもりで攻撃をしかける。それを見事、制して見せて。それが終わったら、その後、行う事を説明するわ。……お願い……死なないで」
 ステラは懇願するように吟侍を見た。
 殺すつもりで攻撃するのに、死なないでと言われても困る吟侍だったが、土の惑星テララに行っているはずのレッド・フューチャーのアリス達からもサイコネットを通じて通信が入り、その真剣さが伝わって来た。
「やるしかねぇみたいだな。んじゃ、来い、ふーちゃん」
「今は、ステラ・レーター、もしくは、コードネーム、ラ・エルよ」
「じゃあ、すーちゃんって事で」
 吟侍はスッと構える。
 ステラも続けて構えた。
 まずは、ステラによる腕試しが始まった。
 ステラも陸 海空と同じ数、七つ道具というものを持っている。
 この時代に来た時は、二つしか持ってこれていなかったが、今は、七つ全て持っている。
 彼女は七つ道具の一つ、七つの効果を持つ、ドリームレインボーソードで吟侍に斬りかかる。
 だが、吟侍はヒョイヒョイと余裕顔でその攻撃を交わす。
 ドリームレインボーソードは能力の無効化アビリティー・キャンセラーなどの効果を持っているとは言え、当たらなければ、何の意味もない。
 ステラもそれは承知の様で、七つ道具の一つ、【かかし】を召喚する。
 【かかし】とはその形状が田畑にあるかかしに似ていることからつけられた隠語で、正式名称は魔導合金兵器(まどうごうきんへいき)アバターもしくは、形状記憶異能合金疑似背花変(けいじょうきおくいのうごうきんぎじはいかへん)という名称が正しかった。
 言いにくいので【かかし】と呼んでいる。
 魔導合金兵器アバターは兵器としての名称で、形状記憶異能合金疑似背花変はその性質を示したものの名称だった。
 背花変(はいかへん)とは未来の世界において誕生しているクアンスティータの背中にある何にでもなると言う万能細胞をいう。
 【かかし】はその背花変を特殊な金属で真似た兵器なのだ。
 元ネタがクアンスティータだけあって、その力は絶大だった。
 圧縮ガンマレイバーストを次々と引き起こす【かかし】。
 それを間近で味わう吟侍にとってはたまったものではなかった。
 ステラは【かかし】やドリームレインボーソードなど七つ道具を使いこなすことによって、総合力で、グリーン・フューチャー最強の戦士と呼ばれるまでになっていた女性だ。
 七つ、道具が揃った状態のステラの攻撃は正に、そう呼ぶにふさわしい実力だった。
 吟侍も攻撃を交わすだけで、精一杯。
 やはり、本物のクアンスティータと戦った事のあるステラは凄く強かった。
 だが、戦いが長引くに従って、吟侍の方も大分、慣れてきた。
 アピス・クアンスティータ戦で行ったロスト・ワールド、ジェネシス・フィアスで手に入れた三大兵器やルフォス・ワールドで心・技・体、三つの核を合わせる事によって作り出した怪物や超兵器など、持てる力を駆使しながら、途中、その場を離れたと思ったら、別空間から新たな力を得てそれを早速攻撃に活かすなど、千変万化する攻撃スタイルをステラに対して示していった。
 ステラの方もどんどん、自分の実力に対応してくる吟侍に少し安堵の表情を浮かべ出した。
 闘っているのに安堵というのもおかしな話ではあるのだが。
 だが、これはあくまでも吟侍の実力を見るためのもの。
 本当の試練はこれからなのだ。
 吟侍のポテンシャルの高さを確認した、ステラは構えるのをやめた。
 それを見た吟侍も攻撃を中断した。
「テストは合格かな?」
 吟侍がステラに尋ねる。
「……ちょっと不安は残るけど、賭けるしかないわ。恐らく、この大会の参加者でこれに耐えられるのは私の見立てではフェンディナ選手だけ。今の吟ちゃんでも無理と思っているわ」
「そうか……」
「でも、不可能の一つや二つ……ううん、無数の不可能を可能に変えるくらいじゃないと【答えの力】は身につかないと思うの。無理だと思っているから、逆に、それを変える事が出来るかもしれない……そう思う」
「よくわかんねぇが、評価されたって事か?」
「……評価はしていない――それを覆して」
「やるしかねぇか」
『俺も覚悟を決めてるぜ、バッとやってくんな』
 吟侍もルフォスも試練を受けるつもりだった。
 その顔を確認したステラは
「これから説明するわ……」
 試練について語り出した。

 吟侍達が受ける試練とはミニマムインフレーションとミニマムリバースインフレーションを引き起こす黒いエネルギーの塊【ブラックインフレーションボール】と【ブラックリバースインフレーションボール】をその身に受けるというものだった。
 【ブラックインフレーションボール】とは小規模なインフレーションを引き起こすエネルギーを固めたもの、つまり、宇宙が誕生した時のように無から急膨張をするエネルギーだった。
 そんなものをその身に受ければ、バラバラになったまま、新たに広がった宇宙にばらまかれるのがオチだった。
 【ブラックリバースインフレーションボール】はその逆で、広まった宇宙空間を無に戻す急縮小させるエネルギーを言う。
 クアンスティータは未来の世界において、いくつものインフレーションやリバースインフレーションを引き起こしている。
 力はどんどん増し、確認されているのは通常のインフレーションやリバースインフレーションを大きく超える、スーパーインフレーションやスーパーリバースインフレーションをも引き起こしている。
 もちろん、通常の宇宙空間で、そんなものを引き起こされたら、とんでもない事になる。
 例えば、通常の宇宙でリバースインフレーションが起これば、宇宙全てが一つに圧縮されて無になってしまう。
 そんなことがあれば、クアンスティータどころではない。
 それだけで、宇宙は終わりとなる。
 そうならないために、直接的なエネルギーを出来るだけ縮小させたのがミニマムインフレーションを引き起こす【ブラックインフレーションボール】とミニマムリバースインフレーションを引き起こす【ブラックリバースインフレーションボール】なのだが、元のエネルギーそのものは通常のインフレーションと全く変わらない。
 ガンマレイバーストの圧縮化の応用でインフレーションとリバースインフレーションの圧縮化に成功したのだ。
 吟侍は通常の未来において、クアンスティータが引き起こしたインフレーションの後に起こったビッグバンで生み出された新たな物質をヒントに【答えの力】を編み出したとされている。
 それはまだ先の事なのだが、それを本来の歴史より先に、身につけようというのが彼が受ける試練となる。
 【答えの力】の片鱗でも身につけられればこの試練は回避出来るだろうが、出来なければ、終わり――その究極の選択を迫られた。
 どのみち、現在の力だけでは偽クアンスティータにすら勝てそうもない。
 未来のためにはやるしかなかった。
 吟侍はステラから二つの黒い玉を受け取り、その身に吸収した。
 ルフォスのサポートがあるが、それでも、そのエネルギーは個人が受けるには余りにも膨大だった。
 一瞬にも満たない時間で一気に空間が急膨張し、すぐにビッグバンが起こった。
 その上で、ミニマムリバースインフレーションが起こり、元に戻った。
 それら全て足しても一瞬にもならない、もの凄く短い試練。
 周りの空間は一挙に広がり、一挙に縮んだのだが、それを理解出来る者は殆ど居なかった。
 ステラは固唾をのんで吟侍を見守った。
 吟侍は……
「へ、……へへ……確かに【答えの力】だな。言い得て妙だな。答えか……うん、なるほどね……」
 なんだか、納得した様だった。
「身につけたの?」
 ステラが心配そうに覗いた。
「わかんねぇ。ただ、何となく、イメージが出来た。クアンスティータの力ってのも何となく解るような気がしてる。昔、ティアグラとルフォスにテストされた事があって、瞬間移動の数を数えさせられた事があったんだけど、それが、なんで、クアンスティータと関係あるのかいまいち解らなかったんだけど、今は少し解る。不思議な力ってのは同じように見えて、たくさん違うものがある。その意味がようやく解った気がする。クアンスティータと向き合うって事はそういう意味を含むんだと思う」
 吟侍は自分の考えをまとめようとして、喋っているのだが、いまいち答えに結びつかない――そんなもどかしい感じだったが、それでも、【答えの力】の元になる何かを得たような印象だった。
 それだけ、吟侍は自信に満ちていた。
 試練を突破した事を確信したステラは、
「ステラ・レーター、降参します」
 と宣言した。
 正直、今までの吟侍だったら、この王杯大会エカテリーナ枠を優勝する事は難しかっただろう。
 だが、今の彼ならば、それも不可能ではない可能性を持ったという事になる。
 こうして、吟侍はステラを破り、2回戦に進出した。


02 本戦トーナメント1回戦第7試合ディアマンテVSクリアス


 自分の控え室に戻る吟侍をソナタ達が出迎えた。
「あんた、どうしたの?何となく不思議な感じがする」
 ソナタが吟侍に訪ねた。
 吟侍は、
「うん、まぁ、何となく、びっくりするくれぇ強くなっちまったらしい」
 と答えた。
「何となくって何よ」
「おいらもわかんねぇよ。ただ、何となく、偽クアンスティータくらいなら何とかなりそうな力を持った感じだな」
「偽クアンスティータって……」
「心配すんなっておそなちゃん、あっ、そうだ、すーちゃんを改めて紹介するわ」
 と吟侍は一緒について来たステラを紹介する。
 ソナタもステラの前世、双葉とは幼馴染みの間柄だ。
 当時、カノンとお母さん役を取り合っていた双葉。
 対して、照れくささから吟侍とのママゴトになかなか参加出来なかったソナタ。
 吟侍の事をカノンと取り合っていた双葉を見ていたソナタはちょっとその自分の気持ちに素直な彼女が羨ましかった。
 実は私も吟侍の事が……と言いたかったが、今はその言葉を飲み込んだ。
 今は、素直に、幼馴染みとのちょっと変わった再会を喜ぼうと思ったのだ。
 吟侍達はつもる話はあるのだが、次の本戦トーナメント第7試合に注目した。
 第7試合には、ブルー・フューチャーの最強戦士、ディアマンテが出場するからだ。
 彼女もまた、未来から、吟侍と接触するためにやってきた存在なのだ。
 対する、クリアス選手というのはやはり、どんな存在だか解らない。
 が、大会本部のコメンテーターが彼女のプロフィールを読み上げて一同騒然となった。
 それほどのものだった。
 彼女は有名な研究者であり、最も有名なのは、粒子レベルから作り、人間と全く同じ機械人間を作り出す事が出来る科学力を持っている。
 普通に子供を産み、自分で考え、恋愛をし、失敗から学び、成長し子孫も残せる機械人間をだ。
 それを考え出した事で評価されているのだが、本当に特筆すべきはそれではない。
 【大宇宙秘匿特許(だいうちゅうひとくとっきょ)】というものがある。
 それは宇宙の歴史をも変えてしまうため、宇宙事態のレベルがその科学力に追いつくまでは秘匿するという事を決められている技術の事を言う。
 宇宙天気を操作する事だって可能としているのだ。
 知られてはいないが、宇宙天気予報は彼女の技術によって支えられているのだ。
 これは将来において、新風ネオ・エスクによって、運用される事にもなっている超科学情報だった。
 クリアス選手はその【大宇宙秘匿特許】の9割7分以上を保有しているのだ。
 その超科学力で作られたマシーンを多数同時に動かす。
 モニターには、架空のマスを配置し、チェスや将棋の駒ように、マシーンを配置する。
 前衛には歩兵型のマシーンを配置し、その背後で、1秒間に10体の歩兵型マシーンを作り出すマシーン製造機を100基配備。
 さらにその背後に特殊な力を多数装備させた、特殊特化マシーンを複数種類、全2000機を配置し、司令塔であるクリアス選手の周りには他のマシーンを遥かに凌駕するスペシャルマシーンを1000機配備。
 これを彼女一人で制御するというものだった。
 戦力で言えば、銀河の一つや二つ、1時間もあれば攻め滅ぼせる程のものだ。
 対する、ディアマンテの方は、クアンスティータによって壊滅状態にある未来の全宇宙
の連合組織、新風ネオ・エスクのブルー・フューチャー最強の戦士だ。
 異世界、パラレルワールドの超強力な力を持つ怪物たちと同化を果たしている。
 他の選手が一桁であるのに対し、彼女は16体もの超怪物と同化を果たしている。
 偽クアンスティータからの刺客、bRを自称するフェアトラークが四つの存在との掛け合わせだったことから考えてもその数はとても多い。
 存在超過割り当て/イグジスタンス・オーバー・アロットメントの手術ではないのだが、近い種類の手術をディアマンテは受けているのだ。
 彼女は常にへらへらしているが、それは自身が身に着けた力に対する恐怖を誤魔化すためでもある。
 自分だけ、突出して大きな力を持っている事への不安を常に抱えていた彼女だが、この時代へ来て、その不安は多少緩和された。
 それはそれだけ、強い反応が自分の他にもゴロゴロ確認されたからだ。
 安心した、ディアマンテは更に力を得る事に集中できた。
 ブルー・フューチャーでは過去へ渡ったディアマンテの力を極限まで上げるサポートをしてきた。
 過去へ渡った事により、クアンスティータ誕生より過去の時代への接触が可能となったので、彼女は宇宙が出来るより前の時間、虚数時間へのアクセスを可能とさせた。
 宇宙が出来る前なので、オリジナルで様々な物質などを作り出す事が可能となったのだ。
 ディアマンテは宇宙が出来るより前の時代へタイムリープして、様々なものを生成、それを自身の力と変えた。
 ディアマンテ、クリアス共に、人知を遙かに超える力を手にしている。
 が、未来から来たディアマンテの方に軍配は上がった。
 やはり、未来においては、クリアスの情報をも得ているディアマンテの方が勝負は有利に働いた。
 現時点でのクリアスの科学力の盲点をうまくついて、ディアマンテは勝利した。
 盲点とはクリアス自身の身体だった。
 鉄壁のガードと思われたが、ディアマンテは時間移動をして、一度、少し前に戻り、クリアスの居た位置に自分を移動させ、そのまま元の時間へと再び時間移動した。
 そのため、クリアスとディアマンテの存在が重なった。
 いかに、クリアスの超科学力であろうとクリアス自身は普通の人間でしかない。
 体の内部から同化されたのでは彼女は抵抗する術がなかった。
 超怪物との同化を経験しているディアマンテであれば、他の生命体との同化は訳なかった。
 逆に、クリアスの方は下手に抵抗すれば、どうなるかわからない。
 彼女に出来る事は降参を宣言する事くらいだった。
 彼女は自分の優れた科学力を世に広めるために参加したのだが、残念ながらあまりアピールにはつながらなかった。
 が、見る目のあるものは彼女の科学力が飛びぬけて凄いのは一目瞭然で解っている。
 彼女が評価されることは将来において十分にあり得ることだった。
 第7試合はディアマンテが勝利を収めた。


03 本戦トーナメント1回戦第8試合ストーン・マスターVS紗南架(さなか)


 本戦トーナメント1回戦の最終試合となる第8試合はストーン・マスターと紗南架(さなか)の闘いだ。
 両者とも吟侍は面識がない。
 全くの謎に包まれた選手同士の闘いだった。
 ストーン・マスターと呼ばれる選手の方は、見た目はただの老紳士のように見える。
 手には数個の石のようなものを持っている。
 それで、ストーン・マスターというのもおかしな話だ。
 恐らく、他に何かあるのだろう。
 対する紗南架選手は地球の和服とは少し違うように見えるが、パッと見た目は和装のように見える服装の美女だ。
 どちらもあまり、強そうには見えない。
 だが、この王杯大会エカテリーナ枠の出場最低条件は星一つを破壊できる力を持っていることだ。
 恐らく、双方、何かあるのだろう。
 両者ともに、相手を見据える。
 まもなくして、試合が開始された。
 ストーン・マスターは手に持っていた、石を宇宙空間に配置し、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
 どうやら、持っていた石は何かの召喚用の石だったようだ。
 そして、唱え終わったストーン・マスターの背後に太陽の数十倍の大きさはあるであろう、巨大な惑星が姿を現す。
 吟侍の控室では物知りのウィンディスが吟侍の心臓から顔を出し、
「まさか、あれは……」
 とつぶやいた。
 どうやら、これについても何か知っているようだ。
「何、あれ?」
 ソナタが聞く。
 ウィンディスは、
「あれは、……」
 説明を始める。
 彼女によると、ストーン・マスターの背後にある、超巨大な星の様に見えるものは【ふしぎ星】と呼ばれる幻の天体だと言う。
 【ふしぎ星】は全宇宙の中で度重なる特殊で強大な力、エネルギーの放出現象──
 つまり、闘いなどによって放出されたエネルギーなどの事を言うのだが、そのエネルギーが行き場を失ってある一点にエネルギーが集約されていってできた結晶が集まって出来た天体が【ふしぎ星】と呼ばれるものだという。
 力の垂れ流し現象が多い、この宇宙に出るべきしてできたものであるのだ。
 不思議なエネルギーがもとになっているので、その結晶は不思議な力を発生させる塊そのものであるという。
 【ふしぎ星】は宇宙に無数散らばっているが、ストーン・マスターの背後にあるような結晶は見た事がないくらい大きなものだという。
 その【ふしぎ星】の所有者がこのストーン・マスターだという事になる。
 これまた、途轍もない逸材の登場となった。
 対する、紗南架の方は、別格化粧(べっかくけしょう)と呼ばれる化粧をしている。
 ファーブラ・フィクタ星系において伝わっている化粧法(けしょうほう)の一つだ。
 その化粧方法に従って化粧をするとその存在の力を実力以上に発揮させる事が出来るとされている化粧法だ。
 その方法は極秘中の極秘とされていて、実在する化粧方法なのかどうかも怪しまれている方法だったのだが、それが、披露された。
 だが、確かに別格化粧はそれをすることによって、普通の人間でも星を半壊させる事が出来る力を得るとされているのだが、この怪物揃いのエカテリーナ枠の中ではいまいちインパクトの面で足りないという印象がある。
 正直、だから何だ?という感想になる。
 期待外れ……そう思われたが、彼女の正体はとんでもなかった。
 彼女が手にしている小さな鱗、一つから途轍もないパワーを吟侍は感じた。
 この感覚は吟侍も覚えている。
 偽クアンスティータのものと同じだ。
 紗南架は名前を入れ替えると紗架南(さかな)で、魚。
 魚の力を取り込んだ偽クアンスティータである、クィントゥム・メンダシウム・クアンスティータ、ピスキス・クアンスティータの鱗を持っていたのだ。
 蜂の力を持ったアピス・クアンスティータや毒蛇の力を持ったセプス・クアンスティータは巣の中の働き蜂だったり、脱皮した皮一枚が意思をもったりして、独立した生命体となったが、ピスキス・クアンスティータの場合は鱗一枚が所有者の力を極端に上げるアイテムとして、使われているという事になる。
 偽クアンスティータの力を保有している以上、彼女も偽クアンスティータ配下のクアンスティータ・ファンクラブの一員だと思われる。
 しかも、ピスキス・クアンスティータの鱗一つを所有することを許されている事からもフェアトラークのような末端の刺客ではなく、幹部クラスと言ってよかった。
 ピスキス・クアンスティータの鱗をかざした紗南架の力は圧倒的だった。
 それだけで、ストーン・マスターの【ふしぎ星】の不思議な力は無効化された。
 ストーン・マスターは訳もわからず、敗北宣言をすることになった。
 こうして、第8試合は紗南架が勝利した。
 1回戦の8試合が終了した事により、
 第1試合勝者 エカテリーナ・シヌィルコ
 第2試合勝者 陸 海空
 第3試合勝者 フェアトラーク
 第4試合勝者 レズンデール
 第5試合勝者 フテラ・ウラ
 第6試合勝者 芦柄 吟侍
 第7試合勝者 ディアマンテ
 第8試合勝者 紗南架
 の8選手が揃った。
 この8選手による更なる抽選が行われ、次の2回戦での対戦が決まる事になる。
 誰と当たっても苦戦は必至。
 初めて8選手が抽選会場に揃った。
 誰もかれも曲者揃い。
 誰が優勝してもおかしくない面子だ。
 抽選の結果、2回戦は以下のような対戦が組まれた。
 第1試合 陸 海空VSレズンデール
 第2試合 エカテリーナ・シヌィルコVSフテラ・ウラ
 第3試合 フェアトラークVS芦柄 吟侍
 第4試合 ディアマンテVS紗南架
 吟侍とディアマンテはそれぞれ、偽クアンスティータの刺客と闘う事になる。
 超激戦が予想された。
 その超激戦に花を添えるように、ゲストで来ていたアレマ(ニナ・ルベル)のコンサートが始まった。
 そのアレマの姿を再確認した吟侍は、
「今なら解る、あの子……」
 とつぶやいた。
 ソナタは、
「なによ、吟侍、あんな子が好みなの?」
 と言った。
 もちろん、嫉妬心からだが。
「違うよ、あの子、クアンスティータ産むぞ」
 と吟侍は答えた。
 だが、見たところお腹も膨れていないので、
「は?一体、いつ産むのよ?」
 と聞き返した。
「多分、もう少しでだ」
「何言ってんのよ、吟侍。全然、お腹膨れてないじゃない。早産も良いところよ、完全な未熟児として誕生するっての?」
「クアンスティータは人間の常識で測れるような存在じゃねぇ。臨月近いぞ、あれは」
 焦りだす吟侍。
 ソナタは何を訳のわからないことを言っているんだとばかりの表情だ。
「だからね、吟侍、女性が子供を産むっていうのは……」
「違う──おいらには何となく答えのようなものが見えてる。あいつ(怪物ファーブラ・フィクタ)は何か企んでると思っていたけど、違った――企んでいるとかじゃねぇ。生まれるのをただ待っていただけなんだ。あいつの準備はすでに終わってた。やべぇぞ、あれは……」
 映像は宇宙のトップアイドルの歌が流れている。
 トップアイドルというだけあって、そうとうな歌唱力だ。
 だが、それだけだ。
 そう、周囲は思っているのだが、吟侍だけが焦っている。
 まるで、緊急事態が近いかのように。
 だが、アレマには怪物ファーブラ・フィクタがぴったりとついている。
 さすがの吟侍といえど、迂闊には手を出せない。
「熱でもあるの?」
 ソナタは心配そうに吟侍の顔色を窺う。
 吟侍の心配をよそに王杯大会エカテリーナ枠は2回戦の試合が行われようとしていた。


04 本戦トーナメント2回戦第1試合陸 海空VSレズンデール


 超実力者揃いのトーナメント2回戦の第1試合は、封印術の達人、陸 海空対宇宙外生命レズンデールだ。
 封印術には定評のある海空だが、レズンデールには通常の法則は一切通じない。
 別宇宙の法則で生きているレズンデールに対抗するためには、レズンデール用に新たに封印術を組みなおさないといけない。
 そこが勝敗の境目と思われていたが、海空には切り札が別に用意されていた。
 対クアンスティータ用に用意していた秘策が。

 海空の生まれた星ではクアンスティータ信仰があり、クアンスティータを神とあがめている者がほとんどだった。
 実は海空も熱心な信者だった。
 当然、海空もクアンスティータとは存在するものだと思って生きて来た。
 そんな信心深い海空だったが、ある時を境に彼の身の回りに不幸が襲った。
 彼の一族郎党全てが、クアンスティータの生贄だとして皆殺しにされたのだ。
 それは、クアンスティータの威光を利用した悪意のある者達の贅沢をさせるための事だった。
 やがて、それは、偽クアンスティータをはじめとするクアンスティータ・ファンクラブの知るところとなり、その悪意のある者達は残らず、惨殺された。
 後には対象者を失い、怒りのやり場のなくなってしまった海空だけが取り残される事になったのだ。
 やがて海空はクアンスティータの信奉者からクアンスティータを憎む存在へと変わっていった。
 怒りのやり場をクアンスティータに持っていくしか彼は平静を保てなかったのだ。
 表向きはクアンスティータ・ファンクラブの目もあるので、行動しなかったが、彼はコツコツとクアンスティータを倒すために力を集めて行った。
 それこそ、執念というものだった。
 その力を収集する事に固執した時の表情は正に鬼のようであり、彼は、気さくな感じの僧侶としての姿と力を求め続ける鬼のような姿の二面性を持つことになった。
 吟侍と茶飲み友達になった時もその鬼の一面を隠し通し、親切な男という印象を持たせていた。
 が、裏では力を得るためなら虐殺も良しとする顔も隠していたのだ。
 そうやって、生活して手に入れた切り札は次元崩壊札(じげんほうかいふだ)と言った。
 次元崩壊(じげんほうかい)とは時空が一つ以上破壊される事を意味していた。
 例えば、時間も入れて四次元時空で生活している者が全て三次元時空に押し込められたら、全ての存在が死に絶える。
 それを引き起こす次元崩壊札はあってはならない事の一つとして考えられている事を実行する札でもある。
 それを所有しているのだ。
 いかにレズンデールが通常とは異なる法則で生きているとは言え、次元が1つ以上破壊される現象を食らったらただでは済まない。
 もちろん、観客としている吟侍達も含め、宇宙全てが破滅の危機にさらされる。
 海空もそれは解っているので、それはクアンスティータにぶつけると決めている。
 今回の闘いでは、実際にやる前の実験のつもりだった。
 強力すぎる結界を作り、その中で疑似的に同じような構成で小規模に調整した次元崩壊札もどきを使用してその効果を試すつもりでいた。
 だが、実際には、その結界を破壊し、宇宙崩壊の振動である次元破壊が進行してきた。
 小規模であろうが、何だろうが、次元破壊のエネルギーはそれほど、凄まじかった。
 だが、その破壊は、2名の存在によって未然に防がれたのだった。
 控室で見ていた吟侍ともう一名は怪物ファーブラ・フィクタだった。
 吟侍は【答えの力】によって、事前に宇宙崩壊の予兆を予測、そのまま、次元崩壊札の力を外に逃がす答えを導き出していた。
 が、それでもまだ答えの力を完全に使いこなしていない吟侍の力は不完全。
 そこから漏れるエネルギーがかなりあった。
 それをフォローしたのは怪物ファーブラ・フィクタだった。
 残りのエネルギーを無効化させたのだ。
 彼としては宇宙を滅ぼすのはクアンスティータでなくてはならない。
 他の存在に宇宙を崩壊させるのは本意ではないという事だった。
 吟侍と怪物ファーブラ・フィクタの行動は秘密裏に行われたので、海空がやらかした大失態に気づく者はいなかった。
 ただ、対戦相手のレズンデールは間近で起きた事なので、ダメージをある程度追って、気絶し、勝利は海空が収めた。
 吟侍は、
「あっぶねぇ奴だな……」
 とつぶやいた。
 何事もなかったように控室に戻ったが、彼らが対処していなかったらこの時点で宇宙の歴史は終わっていた。
 一歩間違えばという状況だったが、試合は海空の勝利という事で決着がついた。


05 本戦トーナメント2回戦第2試合エカテリーナVSフテラ・ウラ


 続く、トーナメント2回戦第2試合はエカテリーナ対フテラ・ウラとの闘いだ。
 エカテリーナは1回戦でフテラ・ウラと対立していたカルン・ナーブを破っている。
 しかも、実力は隠したままでだ。
 対するフテラ・ウラの方はタワーとの闘いで切り札を使ってしまい、自身の力を半減させてしまっている。
 状況から見ても、エカテリーナ有利というのが、吟侍の予想だった。
 フテラ・ウラ自身もそれが解っているようで、カルン・ナーブを破ったエカテリーナには勝てそうもないと判断し、棄権しようと思っていた。
 勝てないと解っている勝負をするのは彼女の本意ではなかったからだ。
 だが、戦闘狂であるエカテリーナにとって、自身の闘いを減らされるという事は得をしたという事よりもむしろ損をしたという気分になってくる。
 そこで、
「妾はただ、良い試合がしたいだけだ。そこで提案がある。お互い、全能力を使わず、肉体のみの肉弾戦というのはどうだ?」
 と提案した。
 フテラ・ウラは、
「解った。勝負はそれで受ける。だが、敵の情けを受けて勝利することは私の美学に反する。だから、どのような結果であっても勝者はお前のものだ。それで良いのなら勝負は望むところだ」
 と言った。
 勝敗にこだわらず、ただ闘いを楽しむという事での同意が得られたと判断したら、
「貴様がそれで良いというのであれば妾はそれでかまわん。たっぷり楽しみあおうぞ」
 と言って笑った。
 この勝負はお互いの身長を合わせるために、フテラ・ウラは巨大化せずに、普通の人間クラスの大きさの圧縮体での参加となる。
 だが、小さくなったとは言え、フテラ・ウラは元々超巨体の持ち主である。
 攻撃一つ一つの重みは半端ではない。
 力比べではカルン・ナーブにも負けていたエカテリーナにとっては不利な状況での闘いとなる。
 だが、不利な状況であれば、あるほど彼女は燃える性格である。
 アピス・クアンスティータとの絶対不利な闘いも彼女は楽しんでいたふしがある。
 超巨大超空洞ビッグヴォイドでの肉弾戦が始まった。
 激しく殴り合う両者。
 能力はお互い使わないとの条件の下での激しいバトル。
 お互いのプライドのため、姑息な手段は使わない。
 使えばバトルでの勝利と引き換えに大恥をかくことになるからだ。
 それはどちらも望まない事だ。
 エカテリーナはカルン・ナーブ戦に続いて、二度目の肉弾戦になる。
 カルン・ナーブ戦では星を投げ合い、それでブラックホールが出来てしまう程の強大なパワーだ。
 異能力こそ無いが、それでも圧倒的な迫力の力と力のぶつかり合いがあった。
 双方、共に全く引かず。
 吹っ飛ばし吹っ飛ばされの一進一退の闘いが続いた。
 お互い傷だらけのまま、3日間闘い続けたが、最後までバトルにこだわったエカテリーナが辛くも勝利を収めた。
 実は、エカテリーナは化獣の力を持っているので、仮の身体を作りだし、それで戦う事も出来た。
 だが、本来の身体で闘い勝ってこそ、その意味があるとして、本体で闘った。
 有利な条件を無視してまで闘ったのだから、何としても勝ちを取らなかったら立つ瀬がなかったエカテリーナの執念はフテラ・ウラのそれを上回った。
 勝敗はその結果が出たという事でもあった。
 1回戦第4試合のレズンデールVSスィヴシュギ戦に続き、近年、稀に見る名勝負となった闘いはエカテリーナ勝利で決着がついたが、闘いは3日続いたので、それだけ、クアンスティータ誕生の時が近づいた事も意味していた。


06 本戦トーナメント2回戦第3試合フェアトラークVS吟侍


 続く、トーナメント2回戦第3試合は吟侍が闘う事になる。
 対戦者はフェアトラーク。
 偽クアンスティータからの刺客だ。
 複数の存在がシェアしあう事によって大きな力を得ているフェアトラークには現在見えている姿の他にも何かが隠されている。
 以前の吟侍であれば、実力的に勝ち目のない闘いだっただろう。
 だが、片鱗だけとはいえ、今は【答えの力】のイメージを持っている。
 未来の戦士、新風ネオ・エスク達の希望とまでされた対クアンスティータ用の力、【答えの力】──その力を有している今の吟侍にとってはフェアトラークは敵ではなかった。
 最低でももう一名の刺客、紗南架クラスの力を持っていない限り、吟侍の相手は務まらない。
 クアンスティータに対抗できる力を得るという事はそういう事も意味していた。
 現に、1回戦でステラと闘う事になる前の吟侍ではフェアトラークの力はとても得たいが知れず、強大なパワーを感じていたが、今の吟侍にとってはまるで大した事ないように見えた。
 フェアトラークの受けた手術、存在超過割り当て/イグジスタンス・オーバー・アロットメントも今の吟侍からしてみれば、存在をダブらせてパワーを得ているだけのものにしか映らない。
 バトルが始まり、フェアトラークは様々な特殊能力を発揮したが、吟侍は大して気にもせず、ヒョイヒョイとその特殊能力を無効にしたり、受け流すような行動をとった。
 あまりにも簡単にやるものだから、傍目には、大した事が無いように映るが、実際にフェアトラークが攻撃に付随させている特殊能力はかなりのものばかりだった。
 それが全て吟侍には通じない。
 全て無意味に変えられてしまう。
「ば、馬鹿な……」
 フェアトラークは驚愕する。
 吟侍の力が信じられないようだ。
「もう、良いだろ。4分の1の人生じゃ、不憫だ。元に戻んな」
 と、吟侍は【答えの力】に近い力を使い、フェアトラークの身体を4つに分けた。
 決して、分離できないはずの、存在超過割り当て/イグジスタンス・オーバー・アロットメントの手術。
 彼は、その不可能を可能にして見せた。
 今までの吟侍は答えのないところから答えを持ってくるという力はあった。
 あったのだが、それは、構成している要素が全て現実にあるものを組み合わせて新しい要素として組み合わせて持ってきていた。
 だが、今の吟侍は違う。
 全くない要素を1から作り出し、それを新たな構成要素として組み込み、更に新しい要素を作り出せるようになったのだ。
 同じように見えてもこれは全く違う。
 全く限界がなくなったと言っても良い。
 フェアトラーク他、三名は元の存在に戻され、戦意を喪失。
 敗北宣言をした。
 それを遠くから見ていた偽クアンスティータ達は自身が指揮をとっていたクアンスティータ・ファンクラブから初の敗北者を出した事に驚いた。
 残る、もう1名の刺客、紗南架に本気でやれと命令するのだった。
 クアンスティータの名前を冠する関係者からの勝利。
 これは吟侍の大金星だった。
 クアンスティータに関わる組織は今まで全くの常勝無敗。
 そこに初めて土をつけたのだ。
 しかも、末端とは言え、関係者に圧倒的な実力差を示しての勝利だ。
 これはものすごい事だった。
 それを見た怪物ファーブラ・フィクタは
「それくらいやってもらわねぇと、こっちとしてもやりがいがねぇからな」
 とつぶやいた。
 怪物ファーブラ・フィクタにとっては同じ魂を持つ存在の吟侍が大きな力を得るのは予想の範疇の事だ。
 驚くほどのことではない。
 自分が同じ立場でも出来た芸当と言える。
 一方、新風ネオ・エスクであるステラやディアマンテ、遠くから衛星通信で見ていたアリス達は大歓喜した。
 彼女達は未来の世界でクアンスティータと名の付くものには敗北続きだったのだ。
 そして、希望を求めてやってきた過去の世界の勇者が、勝って見せてくれたのだ。
 嬉しくないはずがなかった。
 感動のあまり、大号泣した。
 ステラと一緒に観戦していたソナタやフェンディナ達はびっくりした。
 吟侍の勝利がそんなにすごいことなのかと思ったからだ。
 なんにしても、吟侍は勝利した。
 これだけは変らない事実だった。


07 本戦トーナメント2回戦第4試合ディアマンテVS紗南架


 本戦トーナメントの2回戦も次の第4試合、ディアマンテと紗南架の闘いを残すのみとなった。
 この王杯大会エカテリーナ枠もいよいよ佳境に差し掛かろうとしていた。
 吟侍に続けとばかりに張り切るディアマンテ。
 対するはクアンスティータ・ファンクラブの幹部、紗南架。
 ピスキス・クアンスティータの鱗を持つ、難敵だ。
 その闘いが開始されるまで後1時間半となったとき、吟侍の控室を中心に動きがあった。
 ピー……
 控室にいるステラが何かの音を察知し、
「ゴメン、ちょっと席を外すね」
 と言って控室を出ていこうとした。
 吟侍は、
「スーちゃん、悪い事は言わねぇ。やめとけ。残念ながら失敗するよ、それ」
 と言った。
 他の者は何の事を言っているかわからない。
 ステラは、
「な、なんのことかな、吟ちゃん」
 ととぼける。
「悔しい思いをするだけだ。やめとけ」
「何言ってんの?いくら吟ちゃんでも怒るよ」
「死ぬ事はないと思う……だけど……」
「い、急いでいるから、じゃ行くね……」
 吟侍との会話を断ち切り、そそくさと出ていった。
 ソナタが
「何なの?今のは?」
 と吟侍に質問する。
「スーちゃんはあいつ、ファーブラ・フィクタに挑戦しに行ったんだ。多分、仲間と一緒に──裏でいろいろ手を回してチャンスを狙っていたみてぇだけど、あいつには通じねぇ。何となくだけど、解る」
「どうすんのよ、吟侍?助けに行かなくて良いの」
「今のおいらが助けに行っても事が大きくなるだけだ。かえって被害を大きくするだけだ。今なら助かる命もそこで失うことになりかねない。だから、おいらは助けにいけねぇ。多分、スーちゃんはショックを受けて帰ってくる。幼馴染のおそなちゃんが慰めてやってくんねぇか?」
「それは、良いけど、幼馴染ってんならあんたも一緒でしょ?あんたに慰められた方が喜ぶと思うけど?」
「おいらはこれからやる事がある。だから、慰めてやれねぇかも知れねぇ。そんで、おそなちゃんにやってもらいてぇんだ」
「わ、わかったわ、あんたがそういうなら……」
 吟侍のいう事だから何か意味があると無理矢理納得するソナタ。
 吟侍は更に、
「それからみんな、話がある」
 と言って、控室にいる女の子達に声をかけた。
「まず、レスティー、あんたには頼みたい事がある」
 急に話しかけられ目をぱちくりするレスティー
「え?何?」
「調治士ってのは医者みたいなものなんだろ?おいらを直して欲しい」
「良いけど、見たところどこも悪く……」
「この後、おいらはボロボロの死にかけになって帰ってくるはずだ。だから、そこを治して欲しい」
「治すって言ってもまだ、あなたの事よく理解できてないから、まず、身体の構造を知って、それから……」
「解ってる。だから、あんたにも【答えの力】の感覚を一部渡す。それでおいらが帰ってくるまで頭の中を整理していてくれ」
「う、うん、わかっ……」
 「た」と言いかけてドキッとした。
 吟侍の額が自分の額に合わさったからだ。
 まるで、おでことおでこで熱を測っているかのようだ。
 一同、吟侍とレスティーを凝視する。
「ちょっと、あんた、何やって……」
 ソナタが声をかけるが、
「すまねぇ。これが一番早いんだ」
 と吟侍は言った。
「あ、あ、あああぁ……ああ、あ……」
 まるで喘ぎ声に近い声をあげるレスティー。
 だが、これは【答えの力】の片鱗が彼女の中に流れている事の証明でもあった。
 やがて、レスティーは倒れる。
 そのままうずくまり、何やらブツブツ言っていた。
 続けて、吟侍は
「那遠ちゃん、これで、ありったけのノートとペンを売ってくれ」
 と言って、地球屋の那遠に声をかける。
「お、お客さん、何か事情があるなら、これはサービスしますよ」
「すまねぇ。恩にきる。レスティーの頭が整理できたら、彼女にノートとペンを渡してくれ。何かまとめるものが必要なはずだから」
「は、はい、わかりました」
 吟侍の勢いに驚きながらも反応する。
 さらに、
「おいらはこれから余暇貯時間管理(よかちょじかんかんり)って力を使って、ロスト・ワールドで冒険を繰り返してくる」
 と言った。
 余暇貯時間管理とは吟侍がアピス・クアンスティータ戦で今は失われた世界に飛び、その中でジェネシス・フィアスという世界で、新たな力を身にみにつけて来た力の事を言う。
 吟侍は自分だけの時間を使って、成長して帰ってくることが出来るのだ。
 だが、【答えの力】の片鱗を身につけた今の彼にとって、どのロスト・ワールドでの冒険も瞬時に答えを見つけるので大して成長が期待できない。
 そこで、吟侍はあえて、【答えの力】を封印して、冒険してくるつもりだった。
 しかも1秒間に1つのロスト・ワールドとして、3分7秒、つまり、187のロスト・ワールドを冒険してくるつもりだった。
 回復の時間なども考えるとそれが限界と吟侍は考えていたのだ。
「あと、フェンディナ、あんたはおいらと一緒にロスト・ワールドに来てくれ。今のあんたでは、困る。もう少し、戦力になってもらいてぇんだ。最初の4、5個だけで良い、おいらに付き合ってくれ」
「は、はい」
 フェンディナもつられて返事をする。
 吟侍は常々、フェンディナ程の逸材をこのままにしておくのはもったいないと思っていた。
 余暇貯時間管理なので、吟侍にしか入れないのだが、フェンディナ程のポテンシャルを持っていれば、それは可能と吟侍は読んでいる。
 フェンディナと言えば10番の化獣ティルウムスを宿している。
 正直、7番の化獣であるルフォスは自身の宇宙世界の中にあるロスト・ワールドに他の化獣をいれるのは面白くないと思っているのだが、背に腹は代えられない。
 今は急成長するべき時なのだ。
 それはルフォスもわかっているから文句は言わなかった。
「時間が無い。んじゃ、みんなよろしく」
 と言って吟侍はフェンディナを連れて一瞬にして消滅した。

 →【ファーブラ・フィクタ シークレット・ステージ】C001話に移動する場合

 5秒後、フェンディナは戻って来た。
 なんだかとても疲れたような表情だった。
 それを見たソナタは、
「ちょっと何があったのよ?」
 と声をかけた。
 フェンディナは
「凄いです、吟侍さん」
 と言った。
 ソナタは、
「だから、なんなのよぉ〜」
 と叫んだ。
 それから約三分後、吟侍は戻って来たが、正直、これが吟侍なのか?と思うほど、ボロボロになり、心臓であるルフォスの核も一旦、止まったが、レスティーが、
「私がやる。これからいう事をノートに書いて言って。オペを開始します」
 と言った。
 レスティーは頭の中を整理しながら、吟侍の手術をすることにした。

 一方、新風ネオ・エスクのグリーン・フューチャーとブルー・フューチャーの連合軍は、怪物ファーブラ・フィクタを誘い出し、罠をこれでもかと張り巡らせた疑似空間に彼を閉じ込めた。
 怪物ファーブラ・フィクタは、
「してやったりってとこか?」
 と言った。
 その表情は罠にはまってしくじったという顔ではない。
 負けるわけがないと確信している顔だった。
 ステラは、
「ここで終わりよ。観念なさい」
 と言った。
 この疑似空間では、ネオ・エスクの技術の全てをつぎ込んでいる。
 防げるはずはないと思っていた。
 だが、怪物ファーブラ・フィクタは、
「解ってねぇなぁ。お前ら、この世界に来てどれだけ、汗水垂らしたと思っているんだ?」
 ブルー・フューチャーの隊長テソロは
「私達がなんの努力もしていないとでも思っているの?お前の暗躍さえなければ、クアンスティータは……」
 と言った。
 怪物ファーブラ・フィクタは、
「違うんだなぁこれが。お前らが努力していたのは認めるよ。だから、俺には勝てないと言っているんだよ」
 と言い、水分の塊を見せた。
「これはお前らが流した涙。吟侍のやつが勝利した時、嬉しくてお前ら泣いたろ?これはそんときのやつだ。これをこうして……」
 とおもむろに小さな弓矢のようなものを生成し、
「せいっ」
 と掛け声をあげて、水分に矢を放つ。
 すると、
「うぐっ」
「がっ」
「かっ」
 ブルー・フューチャーとグリーン・フューチャー全員にダメージがあった。
 怪物ファーブラ・フィクタは
「俺は、一つの存在から出た細胞一つからでもその存在に関わる全てにダメージを与える力を持っている。つまり、殺そうと思えば、いつでも殺せんだよ。クアンスティータに抵抗するものが居た方が面白いから生かしているだけなんだよ。身の程くらい知っておけ。
んで、この罠なんだけどな、こんなのはどうだ?」
 と言って、念入りに用意した全ての罠を無効化させた。
 新風ネオ・エスクが裏で動いているのを知っていて、そのさらに裏から手を回していたのだ。
 完全に虚仮にされた新風ネオ・エスクのブルー・フューチャーとグリーン・フューチャー。
 怪物ファーブラ・フィクタ暗殺計画は失敗に終わった。
 続けて用意していた魔女ニナ暗殺計画も無意味となる。
 魔女ニナ暗殺は怪物ファーブラ・フィクタが存命だと意味をなさないからだ。
 計画は初めから破綻していた。
「残念だったな。なかなか面白い余興だったぜ」
 と言われたが、その言葉がさらに、新風ネオ・エスクを追い詰めた。
 ショックを受けるステラ達。
 怪物ファーブラ・フィクタにそのまま帰されるが、みんな呆然とした表情だった。
 吟侍の予想は的中したのだった。
 怪物ファーブラ・フィクタの攻撃は、ブルー・フューチャー関係で対戦中のディアマンテにも伝わり、彼女はなすすべなく、対戦相手の紗南架にやられたのだった。
 フラフラと吟侍の控室に戻るステラをソナタは優しく出迎えるのだった。
 吟侍は現在、治療中。
 クアンスティータに対抗するために、今は力をつけることに集中していた。


続く。






登場キャラクター説明


001 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)
芦柄吟侍
 ウェントス編の主人公であり、ファーブラ・フィクタのメイン主人公。
 子供の頃、故郷、セカンド・アースを襲った絶対者・アブソルーター達を追い払った事から英雄と呼ばれる。
 その時、心臓を貫かれるが、七番の化獣(ばけもの)ルフォスの核でそれを補い、以降、ルフォスの力を使える様になる。
 勇者としての格は他の冒険者達より上だが、それだけに、他のメンバーより、強い敵を引きつける。
 創作バトルを得意としていて、攻撃方法のバリエーションはやたら多い。
 敵からすると最も厄介な勇者である。
 ウェントスでの救出チームに参加する。
 しばらくソナタ達の成長を見守っていたがクアンスティータがらみで本気にならなくてはならない時が近づいて来ている。


002 ソナタ・リズム・メロディアス
ソナタ・リズム・メロディアス
 ウェントス編のヒロインの一人。
 吟侍(ぎんじ)の恋人、カノンの双子の姉であり、共に行けない彼女の代わりに吟侍と共にウェントスの救出チームに参加した。
 吟侍の事が好きだが隠している。
 メロディアス王家の第六王女でもある。
 王家最強術であるCV4という特殊能力を使う。
 CV4は4つの声霊、ソプラノ、アルト、テノール、バスを器に入れる事により、特殊な能力を持ったキャラクターゴーレムとして操る能力である。
 力不足を指摘されていたが、ルフォスの世界のウィンディス、ガラバート・バラガの助力により極端な力を得ることになる。
 第一段階として、女悪空魔(めあくま)マーシモの力の覚醒、第二段階として、全能者オムニーアの外宇宙へのアクセスという力を得ることになる。


003 ルフォス
ルフォス
 吟侍(ぎんじ)の心臓となった七番の化獣(ばけもの)。
 ネズミに近い容姿をしていて、最強の化獣である十三番、クアンスティータを異常に恐れていて、その恐怖に打ち勝つために、最も勇気を示した吟侍と命を同化する道を選んだ。
 ルフォス・ワールドという異世界をまるまる一つ所有していて、その世界のものは全て彼の戦力である。
 異世界には修行するスペースもあり、冒険者達の修行場として提供していた。
 異世界にある三つの核、マインドコア(心核)、スキルコア(技核)、ボディーコア(体核)を合わせる事により、新しい怪物等を生み出す事も出来る。
 ルフォス・ワールドはそれ以外にもロスト・ワールドという既に失われた世界をいくつも圧縮保存してある。
 ルフォス・ワールドには大物が隠れ住んでいる。


004 ウィンディス
ウィンディス
 元全能者オムニーア。
 吟侍(ぎんじ)と契約し、ルフォスの世界で管理者になった。
 ルフォスに依頼されて圧縮してあったロスト・ワールドという既に失われている世界の解凍作業をしている。
 様々な知識を持つ知恵者でもある。









005 ステラ・レーター(ラ・エル/依良 双葉(いら ふたば))
ステラ・レーター
 未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
 新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
 ステラはグリーン・フューチャーの一員で、かかしという超兵器を使う。
 また、若くして亡くなった依良 双葉(いら ふたば)という吟侍の幼馴染みの生まれ変わりでもある。










006 ディアマンテ
ディアマンテ
 未来の世界の一つブルー・フューチャーから来た戦士で新風ネオ・エスクに所属する女性。
 吟侍の大ファンであり彼のマニア。
 16体もの怪物と同化している超戦士。
 ブルー・フューチャー最強。













007 クリアス
クリアス
 有名な研究者であり、最も有名なのは、粒子レベルから作り、人間と全く同じ機械人間を作り出す事が出来る科学力を持っている。
 【大宇宙秘匿特許(だいうちゅうひとくとっきょ)】という宇宙の歴史をも変えてしまうため、宇宙事態のレベルがその科学力に追いつくまでは秘匿するという事を決められている技術を9割7分以上取得する存在。
 後に、新風ネオ・エスクにその技術が渡る事になる。












008 ストーン・マスター
ストーンマスター
 宇宙に広まるエネルギーの塊の星、【ふしぎ星】と呼ばれる天体の所有者の老紳士。















009 紗南架(さなか)
紗南架
 偽クアンスティータによる組織、クアンスティータ・ファンクラブの幹部。
 ピスキス・クアンスティータの鱗を持っている。















010 陸 海空(りく かいくう)
陸海空
 吟侍達が冒険の途中で会った謎の僧侶風の男性。
 王杯大会エカテリーナ枠に出場出来る程の技量を持ちながら、勘が鋭い筈の吟侍にすらその力を悟らせなかった程の実力者。
 気さくな性格のようだが、実際にはどうなのかは不明。
 別の場所では鬼と呼ばれていた。
 自己封印(じこふういん)という自分に、かける封印を幾重にもしている。
 それは、クアンスティータ対策でもある。
 封印術を得意とする。








011 レズンデール
レズンデール
 宇宙外生命(うちゅうがいせいめい)。
 通常の攻撃は全く違った効果となって受け止められる。
 そのため、通常の攻撃が通じない。












012 エカテリーナ・シヌィルコ
エカテリーナ・シヌィルコ
 風の惑星ウェントスに君臨している絶対者アブソルーターの一人。
 2番の化獣(ばけもの)フリーアローラをその子宮に宿しているため、アブソルーターの中では最強と呼ばれている。
 戦闘狂であり、奴隷達の支配よりも強い相手との戦いを求める。
 突然のトラブルで出会った吟侍の事を気に入った。
 王杯大会エカテリーナ枠は彼女のための大会であり、彼女のレベルに合った参加者だけが参加できる。










013 フリーアローラ
フリーアローラ
 風の惑星ウェントスの絶対者アブソルーターのエカテリーナの子宮に宿っている女性型の化獣(ばけもの)。
 鏡と花畑をイメージした力を持ち、一枚一枚名前を持った花びらを求めてやってくる名前の無い超怪物達を支配する力を持つ。














014 フテラ・ウラ
フテラ・ウラ
 自称、クアンスティータに次ぐ第二の実力者を名乗っている女性。
 しっぽが生えていて緑色の肌をしている。
 太陽系程の巨体を隠し持っている。


















015 フェアトラーク
フェアトラーク
 偽クアンスティータによる組織、クアンスティータ・ファンクラブのメンバー。
 存在超過割り当て/イグジスタンス・オーバー・アロットメントの手術を受けている。
 これは複数の存在をダブらせる事により、大きな力を得るというもの。













016 フェンディナ・マカフシギ
フェンディナ・マカフシギ
 3名の姉(ロ・レリラル、ジェンヌ、ナシェル)達と別れて一人旅をしていた全能者オムニーアの少女。
 戦闘向きではない大人しい性格だが、自身のポテンシャルは姉たちをも遙かにしのぐ。
 また、そのポテンシャルの高さ故に脳に10番の化獣(ばけもの)ティルウムスを宿す事になる。
 心臓に7番の化獣ルフォスを宿すという吟侍を探していた。
 吟侍にティルウムス以外の何か秘密があると思われている。
 潜在している力が覚醒すれば、偽クアンスティータよりも上回ると推測されている。
 脳を支配している筈のティルウムスが、すぐ下の両方の瞳より下を異常に警戒している。





017 片倉 那遠(かたくら なえ)
片倉那遠
 地球屋(ちきゅうや)の少女。
 絡まれているところを吟侍に救われ、吟侍を地球屋のお得意様とすることになる。














018 レスティー
レスティー
 調治士(ちょうちし)の少女。
 調治士とは化獣(ばけもの)などの超越者達の医者のような存在を言う。
 患者に当たる患存者(かんそんしゃ)の構造を調べ、治療するという仕事。















019 怪物ファーブラ・フィクタ
怪物ファーブラ・フィクタ
 暗躍する神話の時代から生きる男。
 最強の化獣(ばけもの)クアンスティータの父でもあり、芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)の前世でもある。