第003話 王杯大会編その1


01 ソナタのパワーアップ


「お、おそなちゃん、その力は一体……」
 吟侍は驚愕した。
 ソナタに吟侍(ルフォス)の世界の管理者、ウィンディスから預かった三つの錠剤を渡してから七日しか経ってない。
 夜、眠れないのか日に日にやつれていったソナタは七日目には逆に、信じられないくらいのレベルアップを果たしていた。
 今までのソナタのレベルで、このパワーはあり得ないと吟侍は思っていた。
 全く本気では無かったとは言え、力試しをした吟侍が力負けしたのだ。
「どーよ、すごいっしょ」
 鼻高々のソナタ。
「ど、どうなって……?」
 吟侍はどうなったのか理解出来なかった。
 が、考えられるとしたら、ウィンディスの錠剤が原因だ。
「へへ、教えてあげてもよくってよ」
 その言葉にドキッとする。
 ソナタはカノンの双子の姉だけあって、表情が近いからだ。
 好きな女の子に近い表情で微笑まれるとついドキドキしてしまう。
「その力は……」
「悪空魔(あくま)マーシモの力よ。カノンが女神御(めがみ)セラピアの生まれ変わりだったように、私も悪空魔マーシモの生まれ変わりだったって事ね。まぁ、悪空魔っていうのがちょっとひっかかるけどね」
「ぶったまげた……」
「ふふ、その顔が見たかったわ、吟侍。だけど、驚くのはまだ、早いわ。この後、更に私はもっともっとずっと強くなる。見てなさい。あんたを、あっと驚かせてあげるから。覚悟しておくことね」
 ソナタの自信はまだ、ためしていない三つ目の錠剤の事だ。
 二つ目の錠剤も命がけだったけど、それは乙女の根性で乗り切った。
 元々、女性は子供を産むのに命がけなのだ。
 命がけの一つや二つ、根性で乗り切れると思っていた。
 実際には全く違う事なのだが、思いこみの力は偉大というか、本当に乗り切ってしまった。
 三つ目の錠剤は全能者オムニーアの切り札と呼ばれる外宇宙へのアクセスの力を有するものだ。
 この力を得たら、本当に吟侍達とも渡り合える力を身につける事が出来るだろう。
 正直、吟侍は絶対者アブソルーターのアナスタシア城につくまでの短い期間ではソナタは王杯大会エカテリーナ枠に出場出来る程の力を手にする事は無理だろうと踏んでいた。
 彼女が得意としていたCV4は所有者の潜在パワーが大きく影響する力だ。
 CV4の声霊の入ったゴーレム達のレベルを見ていれば、とてもじゃないが、エカテリーナ枠には出場させられないものだと考えていた。
 だが、今の彼女が出すCV4のレベルを見ても解る。
 七日前とはまるで次元の違うパワーを秘めている。
 それも一つや二つを飛び越えたレベルではない。
 もっと途轍もなく飛び越えたのだ。
 錠剤によって完全に閉じていた扉を強引にこじ開けたという感じだろう。
 それで、現世では覚醒することは無かったはずの悪空魔マーシモの力を出せたのだ。
 今までは三銃士に守られる存在だったが、今は全く逆の立場になってしまっている。
 そういう意味では何がきっかけで化けるか解らないなと思う吟侍だった。

 ソナタがそうだという事はあの子もそうなるかも知れない……そう思う吟侍だった。
 吟侍が思う【あの子】とは一緒に偽クアンスティータと戦った、フェンディナという少女の事だ。
 およそ、戦闘向きではない、その性格ではあったが、10番の化獣(ばけもの)、透明の少年の姿をしたティルウムスがその力を発揮して戦っていた。
 だが、吟侍が感じた彼女の印象は違和感しか無かった。
 フェンディナという少女の切り札は本当にティルウムスだけなのか?と思った。
 ティルウムスは明らかに、その場にいた偽クアンスティータ以外の何かにも怯えていた。
 ティルウムスはフェンディナの脳に宿っていたので、本来であれば、フェンディナはティルウムスの操り人形の様になっているのでは、無いのか?
 だが、そんな様子は無かった。
 ティルウムスはフェンディナの両方の瞳から下を恐れていた印象を持った。
 恐らく、フェンディナの気弱な性格が邪魔をして、本来の力は出ていないが、フェンディナの隠れている何かは偽クアンスティータくらいのレベルであれば、超える力を持っているのではないか?という印象があった。
 それを証明するかの様に、ルフォスの世界のウィンディスはフェンディナに対して特別な感情を持っていた。
 全能者オムニーアの中でも特別な何かを持っているような感じの印象を持っているみたいだった。
 ウィンディスから10番の化獣ティルウムスが宿った少女が居ると聞かされた時から、吟侍とルフォスはフェンディナという少女に注目していたが、ウィンディスはそれ以上の注目をしていたような感じがしていた。
 まるで、こんなものではないとでも言いたげな表情だった。
 初めはティルウムスが神話の時代に生まれなかった特別な力を持っている化獣と聞かされていたからティルウムスを警戒していたが、実際にティルウムスとフェンディナを見てみると別の何かがある……そんな感じがしていた。
 今の所、クアンスティータの生け贄にされた全能者オムニーアの少女という印象しかないフェンディナだが、この子は奥に隠された秘密があり、それはとても重要な事なのかも知れない――そう考えていた。
 悩んでも答えは見つからない。
 王杯大会エカテリーナ枠に出場すれば、彼女も出てくるだろう。
 その時になれば、少しは彼女の事が解るかも知れないと思った。

 気になると言えば、ステラも気になった。
 幼くして亡くなった幼馴染みの双葉の生まれ変わりだと言っていたが、どことなく、その面影はあった。
 当時の吟侍達は病でやせ細って行く彼女に何もしてあげられなかった。
 今だったら、病を分解する事が出来るかも知れない、助けてあげることが出来たかも知れない。
 そう思うと切なくなる。
 彼女とも話したい事は山ほどある。
 当時はイヤイヤだったが、カノンと行方不明のはてなと四人でまた、ママゴトかなんかをしてみたいなと今では思える。
 ステラは未来の世界から来たと言っていた。
 未来の世界で、全てを破壊しつくしている本物のクアンスティータ。
 偽者にすら、全く歯が立たなかったクアンスティータと戦って来た歴戦の戦士。
 未来の超絶技術を持ってすらクアンスティータにかかったら一溜まりもないのかと絶望感を煽られる。
 だが、そんな地獄の様な未来から吟侍に会いにやってきてくれた。
 その事実は本当に嬉しかった。
 また、仲良く遊びたい。
 カノンにも教えたい。
 とにかく、ステラに対しては嬉しいことずくめだった。

 その気になる二人と会える切っ掛けをくれたエカテリーナにも感謝したい所だった。
 そのエカテリーナだが、先日、お礼の連絡が鏡を通して来ていた。
 こちらとしては、もし、基準に達していたら、ソナタもエカテリーナ枠で出場させて欲しいという一応のお願いをしたかったのだが、エカテリーナからもお礼を言われた。
 なんでもエカテリーナ枠に耐えうるであろう強者達が集まって来ているというのだ。
 正直、エカテリーナ枠は吟侍、エカテリーナ、ステラ、フェンディナの四強での小規模な大会になると思っていたが、どうやら、そうでもないらしい。
 強者と言われても、偽クアンスティータに認められるようなレベルの猛者がそんな簡単に集まるのだろうか?という疑問は残る。
 それは、他の絶対者アブソルーター達ではつとまらないだろう。
 彼らはエカテリーナを恐れて、エカテリーナを通常の王杯大会から外したような輩なのだから。
 だとしたら、絶対者アブソルーター以上のレベルの強者が風の星ウェントスに集まって来ているという事になる。
 ルフォスとしては、惑星ファーブラ・フィクタに余計な影響を与え、クアンスティータ誕生の刺激になってしまうのではないかという不安が残るが、ルフォスの世界で戦うという提案をする事だって出来る。
 ルフォス・ワールド内でのバトルならば、悪戯に、星に悪影響を及ぼすこともないだろうし、クアンスティータへの刺激も少なくて済む。

 王杯大会は殺し合いじゃない。
 スポーツの様なもの、オリンピックの様なものなのだ。
 安全面に配慮する提案ならば受け入れて貰えるだろう。
 だから、心配する必要はないと思っていた。
 だが、エカテリーナから出場者は二桁になったと聞いた。
 つまり、十名以上が参加するという事だ。
 十名居れば、どんな変な奴が居てもおかしくない。
 そこにソナタも加わるのだ。
 彼女に危険がないように気を配らないといけない。
 念には念をいれて、色々準備しておいた方が良いなと思う吟侍だった。

 吟侍達一行は目的地までの距離の3分の1までを通過した。


02 出会い


「吟侍、ちょっと休んで行かない?」
 ソナタが休憩を提案する。
 どうやら、思ったようにはスキルアップが上手く行っておらず、少しでも時間を稼ぎたいような様子だった。
「珍しく弱気だな、おそなちゃん。おいらは別にかまわないけど」
 まぁ、たまには休憩も必要かなと思う吟侍だった。
 三銃士もソナタの言う事には反対しない。
 誰も反対する者がいないという事で、一行は、近くの茶屋に立ち寄る事にした。
 茶屋には先客が一名いた。
 見ると、この星での僧侶の様な格好をしている。
「旅行ですか?」
 ソナタが尋ねる。
 風の星、ウェントスは他の四連星、土の星テララ、火の星イグニス、水の星アクアと比べて奴隷に対する締め付けは厳しくない。
 奴隷という立場は変わらないが、それでも、何かしらの結果を残すという条件の下、一定の期間、旅をすることくらいは許可をされている。
 ソナタはこの僧侶の格好をした人物が何か使命を持って旅をしているんだと考えていて、その助けに少しでもなれたらと思って声をかけたのだ。
「これはこれは、美しいお嬢さん。拙僧は陸 海空(りく かいくう)という生臭坊主です。旅行というよりは腕試しですよ」
「腕試しですか?」
「さよう。拙僧は少しばかり、腕に自信がありますのでね。この星で王杯大会なるイベントがあると聞いて参加させていただこうと思って、受付に向かって軽く小旅行をしている所ですよ」
 陸 海空と名乗ったその僧侶はにっこりと笑った。
 見たところ、それ程、強そうにも思えない。
 恐らく、通常の王杯大会に参加するのだろう――そう思った。
 だとすれば、三銃士達のライバルという事になる。
 それを聞いた吟侍が周りを警戒していた三銃士達に声をかける。
「おーい、ロック、ニネット、カミーロ、おめえさん達のライバルのようだぞ。挨拶とかしたらどうだ?」
「何だと?吟侍、それは本当か?」
 とロック。
「私達のライバル?」
 とニネット。
「王杯大会の参加者?」
 とカミーロ。
 吟侍達5人はすっかり海空が通常の王杯大会に出場するものだと思っていた。
 だが、彼は――
「いえね、参加すると言っても、もう一つの大会の方なんですよ」
 と言った。
「え?」×5
 吟侍達は疑問に思った。
 確かに雰囲気として強さを感じるが海空のレベルは明らかに通常の絶対者アブソルーターと戦える程度のレベルのもの――
 決して、吟侍やエカテリーナの参加する途轍もないレベルのエカテリーナ枠で戦えるものでは無かった。
 そもそも、このレベルなら参加さえさせてもらえないのでは?と思えるものだった。
 だが、次の瞬間、吟侍は悟った。
「……自己封印……」
「えぇ。そうです。参加者は強豪揃いだと窺ったもので、大会参加前から自らの力を解放させているのは良くないなと思いましてね。能ある鷹はじゃないんですが、念には念を入れましてね」
 にっこりと笑うその僧侶の自己封印の数を見て驚愕する。
 体中に貼り付けた札が全部封印だとするとどれだけ力をおさえこんでいるんだと思った。
 海空は普通の人間じゃない。
 何かある。
 それなのに、少なくとも、吟侍達は安心して、彼に近寄った。
 彼がその気なら、油断していた吟侍達の寝首をかくことも出来た。
「大会前にあんたと、出会えて良かった。おいらは、大会のレベルを見誤っていた。油断してっと、一回戦負けになるな、こりゃ」
「それはこちらも同じ事です。あなたは相当な力を隠し持っておられる。恐らく、あなたはもう一つの大会の方に参加されるのでしょう?」
「そうだけど……」
「まぁ、身構えないで下さいよ。ここでお会いしたのも何かのご縁。今は茶飲み仲間で宜しいじゃありませんか」
「……そうだな……」
「出会いを記念して、ここは一つ拙僧に奢らせてくださいな。このおまんじゅうが絶品でね」
「あ、ありがとう」
 吟侍達は毒気を抜かれた。
 強大な戦闘能力を隠し持った者が現れたが、戦闘の意思は無し、まんじゅうを勧めてきたからだ。
 風の星ウェントスへは人命救助をしに来ている吟侍達は戦闘やむなしという姿勢で常に動いている。
 だけど、こんなタイプの強者との出会いもあるんだとは夢にも思っていなかった。
 話して見ると海空は気さくないい人物だった。
 たわいのない話から趣味の話までを色々と話し、仲良くなったところで別れの時間となった。
「それでは拙僧は寄るところがありますのでこれで」
「まんじゅう、ありがとう。美味かったよ」
「ありがとうね、おじさん。私も美味しかったよ」
「美味かった」
「美味しかった」
「美味でした」
 海空は吟侍達五人と別れ、別方向に進んだ。
 別れてしばらくした後、鬼の形相をした僧侶が暴れ回ったという噂が、海空の進んだ先で噂された。
 が、吟侍達はそれを知るよしもない。
 陸 海空とは何者なのか?
 それはまだ、解らない。

 海空と別れてしばらくした後、新たなる出会いが吟侍達を待っていた。
 性別は女性――
 だが、そこに居た三名は明らかに容姿が人間のものとは異なっていた。
 見るからに普通じゃない。
 赤、青、緑の身体をしている。
 三名は何やら言い争いをしているようだった。

「私がbQよ」
「私だ」
「私だ」
 みんな【私】なので、何がなんだか解らないが、どうやらbQというのが自分だと主張したいらしい。
 こういうのは関わらない方が良いと吟侍は思っていたが、
「ちょっとあなた達、何を言い争いしてるのよ、私に話して見なさい。解決するかも知れないわよ」
 女悪空魔マーシモの力に覚醒して強気になっているソナタが声をかけた。
 吟侍はまずいなと思った。
 さっきの海空の時と同様にこの三名は力を隠している。
 理由は、今度は簡単に思いついた。
 さっきの海空もそうだが、近くにある惑星ファーブラ・フィクタに刺激が行かない様に、パワーを抑えているのだ。
 つまり、クアンスティータを意識している強者だという事だ。
 その事からも自分こそはクアンスティータに次ぐ、第二の実力者だと主張しているというのが推測出来る。
 今のソナタがどうこう出来るレベルの相手じゃない。
 下手にちょっかいをかければ殺されるかも知れない。
 案の定、敵意はソナタへと移り、それから吟侍に向けられた。
「私の名前はフテラ・ウラだ。私こそはクアンスティータに次ぐbQだ。そう思うだろう?」
 緑の身体にしっぽの生えた女が威嚇する。
「何を言うか。私の名前はテスタ・ファッチャ。私こそが、クアンスティータに続く第二の実力者だ」
 青い女が否定する。
「黙れ、私こそ、このカルン・ナーブこそが二番目に強いのだ。それは誰が見ても明らかだ。殺されたくなければ、ウンと言え」
 赤い女が負けじと声を荒げる。
 誰を選んでも他の二名に殺されるという危機的状況に追い込まれた。
「うっ……」
 力を少し解放したため、ソナタも事態の危険度に気づいたのか萎縮し始めていた。
 絶体絶命のピンチはそれ以上の脅威を持って一応は、救われた。
「随分、弱い、bQだねぇ。アタシはもっと強いのをたくさん見てきたんだけどね」
 突然の声。
 三名のbQを名乗る強者達は臨戦態勢に入る。
 吟侍はその隙に、ソナタと三銃士を連れて、距離を取る。
 現れたのは一人の女性――
 いや、違った。
 女性の上半身に下半身は蛇のようなものになっている。
 地球上で言うところのラミアとかに近い姿だ。
「な、なんだ、お前は?」
 カルン・ナーブが問う。
 が、相手の潜在力に多少萎縮している。
 吟侍は直感的にわかった。
 この絶対的な威圧感はついこの間、味わったばかりだ。
 忘れたくても忘れられない程の圧倒的パワー。
 あれしか考えられない。
「アタシはクアンスティータ。偽者のね」
 やはり、そうだった。
 蜂の偽クアンスティータだったアピス・クアンスティータと同じ様な存在感を醸し出しているこの化獣(ばけもの)は恐らく、蛇か何かとの融合をしているはずだ。
 一難去ってまた一難どころの騒ぎではない。
 何がどうなったら、また、偽クアンスティータと出くわすんだ?
「に、偽クアンスティータ」
「!あんたかい?アピスの奴がやりそこなった内の1人は?なるほど、強運そうな顔をしているな。アタシはクァルトゥム・メンダシウム・クアンスティータ。またの名前をセプス・クアンスティータ。毒蛇との混合の四番目の公式の偽クアンスティータ。その脱皮した皮の1つだけどね」
「な……」
 吟侍は驚いた。
 アピス・クアンスティータもそうだったが、目の前のセプス・クアンスティータは本体じゃない。
 いくつも脱ぎ捨てられた脱皮した皮の一つにすぎない。
 脱皮した皮でさえ、生命を持って、クアンスティータに仇なす者の始末に動くのだ。
 一体、本体の力はどれだけあるのか皆目検討もつかない。
「に、偽者の脱皮した皮だと……」
 フテラ・ウラがバカにするなとばかりに声を荒げる。
「皮風情でもあんた達に脅威に思ってもらえるだけの力はあるつもりだけどね」
 確かに、セプス・クアンスティータの言う通りだった。
 多分、フテラ・ウラとテスタ・ファッチャ、カルン・ナーブの力を借りられたとしてもこの脱ぎ捨てられた皮にすら勝てない。
 そんな気がした。
「おいら達に用があるのか?」
 吟侍は言葉を慎重に選んだ。
 戦いに来た、殺しに来たという単語は実際にそうなりかねないと思って避けた。
「そう、アタシはただの伝言係。残る三名にも同じように伝言が言っているよ」
 何てことだと思った。
 吟侍達はすでに偽クアンスティータ達に目をつけられていたのだ。
「用件は?」
「あんた達を見逃すには一つ条件がある。それは、王杯大会とかいう大会で優勝するという事だ。あんた達四名の中で誰かが、優勝できれば、クアンスティータ様に友好的な強者として認める事にした。クアンスティータ様には誰も勝てない。だが、その威光を証明するにはある程度の引き立て役の強者があった方が良い。アタシ達はそう判断する」
「王杯大会は絶対者達の大会だと聞いた。おめえ達には関係無いと思うが?」
「アタシ達、偽クアンスティータが出ても良いんだけど、それだと勝敗がはっきりするからね。代わりの選手を用意した。それに勝ったら存在を認めるよ。すでに、主催者のエカテリーナとかいう女の参加許可は取っている」
 吟侍は理解した。
 エカテリーナが出場者は二桁になったと言っていたのはこういう意味も含むのかと。
「その選手の名前は?なんていうんだ?」
「bQ……と言いたい所だけど、上には上がいると知っているからね、とりあえず、ヒントとして、bRと言っておこうかな……何せ、やたらとbQを名乗る者が多いのでね、皮肉を込めたbRと名乗るbQを狩る存在が無数存在するのさ。その内の一名でもある。所属しているのはクアンスティータ・ファンクラブの一つ」
 セプス・クアンスティータの口にした【クアンスティータ・ファンクラブ】というのは初めて聞いた。
「なんだそりゃ?」
「最強とされるクアンスティータ様にはファンクラブがいっぱいあるってことだよ。強い者に憧れるのは世の常なんだろう?だったら、最強であるクアンスティータ様に憧れる者が居ないわけ無いじゃないか。クアンスティータ様がご生誕されたあかつきにはそこいらにいるbQを遙かに上回る存在がうようよ出てくるのでよろしくな」
「聞けば聞くほどクアンスティータってのはとんでもねぇな」
「様が抜けてる、様が」
「一応、褒めてんだ、それくらいは多めに見てくれよ」
「一名くらいここで始末してもかまわないんだけど?」
「解ったよ。だけど、おいらの心臓のルフォスは7番の化獣で、13番の化獣クアンスティータの兄貴みたいなもんだろ?年下に敬語はないと思うが?」
「まぁ、良い、一応、クアンスティータ様の兄という事で多めにみよう」
「出来たら、命も助けて欲しいけどな」
「それは己でつかみ取れ」
「まぁ、そこまで甘くはねぇか」
「用件は伝えた。じゃあね」
「黙って帰ってくれて助かる」
「いつもこうだとは思わないことだな」
「りょーかい」
「よろしい」
 緊張感が半端無かったが、セプス・クアンスティータは立ち去ってくれた。
 絶対的な悪夢が立ち去って安心したのか、ソナタが口を開いた。
「あ、あんたのその、くそ度胸には頭が下がるわ」
「ありがと、おそなちゃん。褒め言葉としてうけとっとくわ。あ〜緊張した」
 その会話を見て、取り残されていたフテラ・ウラ、テスタ・ファッチャ、カルン・ナーブが近づいて来た。
「バカにしたな」
 とテスタ・ファッチャ。
「おいおい、おいらはあんた達も助けたつもりだけど?」
 と吟侍。
 確かに、吟侍が機転を利かさなかったら、全員、セプス・クアンスティータにやられていたかもしれない。
「この借りは王杯大会で返す」
 とカルン・ナーブ。
 その【借り】というのが何を指すのかは解らない。
 助けられたという屈辱を与えられた【借り】なのか――
 命を助けて貰った【借り】なのか――
 その意味合いによって180度違ってくる。
 どちらにせよ、王杯大会に関わる因縁は増えた。

 芦柄 吟侍
 エカテリーナ・シヌィルコ
 ステラ・レーター
 フェンディナ・マカフシギ
 陸 海空
 フテラ・ウラ
 テスタ・ファッチャ
 カルン・ナーブ
 謎のbR(クアンスティータ・ファンクラブ所属)

 これが、王杯大会エカテリーナ枠の方に出場する選手で解っているメンバーだ。
 全部足しても、9名。
 エカテリーナは二桁になったと言っていた。
 その時、ソナタの出場は確定されていなかった。
 つまり、後、最低でも1名は正体のわからない選手がいるという事だ。
 因縁渦巻く、王杯大会エカテリーナ枠は盛り上がりを見せ始めていた。

「吟侍、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「何だ、おそなちゃん?」
 突然のソナタの申し出に吟侍はちょっとビックリした。
 あれだけ、吟侍について行くと言い張っていたソナタが吟侍と別行動をしたいと言ったからだ。
 アナスタシア城で待ち合わせにして、それまでは別の道を行くとの事。
 ソナタの性格からして、しっぽ巻いて逃げ出すという事ではない。
 だが、吟侍と一緒だと彼に甘えてしまう。
 だから、吟侍と別に動いて、強くなるという決意だった。
 吟侍は渋ったが、ルフォスが行かせてやれと言ってソナタを後押しした。
 吟侍も自分と一緒に居ない方が危険も少ないと思って了承することにした。

 こうして、吟侍は単独行動を取ることになり、20日後、ソナタと三銃士達と再会するのだった。
 再会した時がソナタの出場を賭けたテストの時と言っていたが、吟侍はテストしなかった。
 再会した時のソナタの顔つきは傲慢さもない、澄み切った自信に満ちたものだった。
 王杯大会エカテリーナ枠で出場するのにふさわしい顔つきになっていた。
 これで反対するのは野暮というものだ。
 吟侍はソナタの参加を認める事にした。

 アナスタシア城での受付をすませて三日後、受付は終了した。
 エカテリーナ枠の参加者数は21名との事だった。
 思っていた数より、更に多かった。
 本戦の勝負は16名によるトーナメント戦だという。
 つまり、5名はトーナメント戦に出れない。
 これは、5名を落とすための5回の予備戦が行われるという事を意味していた。
 予備戦はランダムで対戦相手が決められる方式になっていて、フェンディナもそれに選ばれてしまった。
 幸い、吟侍との戦いでは無かったが、吟侍も予備戦に選ばれていて、彼の対戦相手はソナタだった。
 運命の悪戯か、よりによって、パーティーを組んでいた仲間同士が当たってしまうという不運。
 これが、この大会が荒れる事を予感させるものだった。
 ソナタに花を持たせることは出来ない。
 優勝しなくては全員、偽クアンスティータに殺されるかも知れないからだ。
 負けてやる訳にはいかないのだ。

 また、21名の選手の内、予備戦には10名が選ばれるが、11名は選ばれない。
 ステラとエカテリーナは選ばれない方に入っていた。

 エカテリーナ枠は通常の王杯大会が終わってから行われる。
 表向き、通常の王杯大会が正式な大会だからだ。
 間違ってもエカテリーナ枠の方が目立ってはいけない。
 重要な働き手である奴隷達が萎縮するからだ。
 エカテリーナ枠は恐らく、ひっそりと行われるだろう。

 吟侍とソナタはまず、三銃士の応援に回った。
 が、予備戦での戦いが決まっている二人の間には終始、微妙な空気が流れていた。


03 通常王杯大会


 とりあえず、吟侍とソナタは王杯大会エカテリーナ枠に出場するために手続きに向かった。
 意外だったのは通常の王杯大会とエカテリーナ枠は別会場で行われるという事だった。
 惑星ウェントスの王杯大会なので、どちらも惑星ウェントスで開かれると思っていたのだが、通常の王杯大会はウェントスで行われ、エカテリーナ枠はヴォイドと呼ばれる星のほとんど無い超空洞の宇宙空間にもうけられた特設会場で行われるらしい。
 吟侍がルフォスの世界を提供すると申し出たが、それだと、吟侍に有利に働く可能性が高いからと却下された。
 言われて見ればいちいち最もな話だった。
 吟侍が出る以上、世界を提供すると言われても平等とは言えなくなる。
 また、通常の王杯大会は奴隷などの人間も形だけとは言え見に来るのだ。
 エカテリーナ枠の選手が本気で戦うバトルを安全に見られる訳が無かった。
 バトルは1つの惑星内に収まるレベルでは無いのだから。
 ソナタも一気にその枠を飛び越えたからこそ、参加が認められたのだ。
 移動はテレポートシステムという瞬間移動装置があるから一瞬で済むので、通常の王杯大会を見学出来ると考えていたが、どうもそうでも無いらしい。
 ヴォイドで戦っても近隣の星の2、300位は簡単に吹き飛ぶくらいの予想が立てられたので、手続きとかが色々面倒で、現地にしばらく居ることになってしまったのだ。
 ルフォスとしては悪戯にクアンスティータの刺激にならないから、安心出来るのだが、通常の王杯大会に参加する三銃士は守るべき主、ソナタと離れてしまうので、文句があるようだ。
 だが、ソナタの異常なスキルアップには吟侍の師匠が一枚かんでいるらしい事が解ったため、それなら心配ないなと吟侍は思っている。

 吟侍の師匠――

 その名はガラバート・バラガという。
 突然、ルフォスの世界に迷い込んだ、謎の存在だ。
 自らを【よそものの弟子】と名乗ったこの謎の男は自身の力を自在に変化させることが出来た。
 そのため、幼い頃の吟侍でも何とかまともに耐えうるだけの存在力だった。
 だが、ガラバートの実際の力は途方も無くどでかい。
 途方も無くでも全然足りないくらいのでかさだ。
 【よそものの弟子】の【よそもの】とはクアンスティータの奥にいるというとんでもない怪物の事だ。
 今の吟侍ではクアンスティータと戦えば、その【よそもの】は全く出てくる事なく、敗北するだろう。
 それほど、上の上の上のそのまた上の……存在だ。
 吟侍は幼い頃からガラバート・バラガとの修行をしているからこそ、他の冒険者よりも遙かに飛び抜けた力を持っていたし、クアンスティータに対する耐性もある程度あった。
 そのため、ガラバートから力の使い方、使い所を間違えるなと言われていた。
 自分が表に出るべき時と出るべきでない時があり、例え、味方のピンチでも出てしまったら、それ以上の悲劇が余所で起きる事もある。
 ガラバートにクアンスティータにはどうやっても敵わない。
 だったら、自分が他に何をすべきか考えろ。
 考えた先に答えは意外と簡単な所に落ちてるもんだと言われてもいる。
 ガラバートは人生の師匠でもあるのだ。
 そのガラバートがウィンディスに助言しているのだ。
 恐らく大丈夫だろうと思えたのだ。
 だから、ソナタの事は心配していない。
 心配する事があるならば、吟侍はソナタと戦った時、自分はどうやって、対処すれば良いのかという事だ。
 偽クアンスティータの条件としては、生き残るには、吟侍達が優勝するしかない。
 だが、その中のメンバーにソナタは入っていない。
 仮に、ソナタがメンバーに入っていて勝ちを譲ったとしても残りの選手を相手に勝ち残れるかという不安もある。
 それなら、まだ、フェンディナあたりに期待した方がまだ、可能性がある。
 殺されるような状況になったら、ガラバートが助けてくれる――そう思うことも出来るが、吟侍はそう思わなかった。
 恐らく、偽者のクアンスティータくらいならば、ガラバートは倒せる力を持っている。
 が、彼は、協力しないだろう。
 彼もまた、元々はクアンスティータに連なる者。
 それを除外しても彼は仲間だから助けるという感覚を持ち合わせていない。
 ただ、自分が正しいと思うことをするだけだ。
 例え、吟侍やルフォスが殺されようとも彼は別の場所を住処とするだけだ。
 彼はそういうドライな存在だ。
 道を切り開くのに必要な情報提供やサポートはするが、手を貸すことはない。
 それが解っているからこそ、吟侍は自分で何とかするしかないと思っている。
 恐らく、これは仲間と戦う事になったら、自分はどう判断して戦うんだというガラバートから見た、弟子の吟侍に対するテストでもあるのだろう。
 【よそもの】の孫弟子にあたる吟侍に間違った選択は許されない。
 意に添わない選択をしたら、ガラバートによって吟侍は殺されるかも知れない。
 また、仲間に情けをかけて負ければ、その後、大変な事になる。
 そうならないためにもどう戦うかを見極めていけというメッセージなのだろう。
 ソナタと戦う事が解ったからこそ、ガラバートはウィンディスに助言をして、ソナタのスキルアップに手を貸したのだろう。
 そう思うからこそ、ソナタの戦いも大切だと思うのだった。

 一方、ソナタの方は自分の想い人と戦う事になってしまってどうしようかと考えていた。
 倒すべきか、倒されるべきか。
 吟侍も彼女も手を抜くという事はしないタイプだ。
 手加減をするにしてもそれなりの対応をする。
 吟侍に認められたいから彼を倒してみたいし、そうなると吟侍はショックを受けるだろうから倒された方が良いのか?
 だが、勝ちたい理由はもう一つある。
 ソナタと吟侍は予備戦を戦うのであって、トーナメント本戦ではない。
 吟侍が勝ち上がってしまうと、そこには、少なくとも恋敵であるステラとエカテリーナが待っているのだ。
 下手をするとフェンディナも勝ち上がってくるだろう。
 敗退してしまうと、自分は蚊帳の外という事も考えられる。
 吟侍が他の女とイチャイチャするのは見たくない。
 なので、出来ることは他の女を吟侍に近づけないようにする。
 だけど、好きな男にバトルで勝ってしまうのは女としてどうか……
 理由こそ違えど、ソナタもまた、吟侍との戦いをどうすれば良いのか迷っていた。
 予備戦が行われるまでの間、吟侍とソナタは別室で待機となる。
 何せ、エカテリーナ枠は初めて開催されるのだ。
 何が起きるか解らないため、安全策を万全にしているのだ。
 待機している選手にはワープ中継として、個別に与えられたワープ回線が与えられるので、通常の王杯大会や他の番組を見ることが出来る。
 微妙な空気だったが吟侍と一緒に三銃士の応援が出来ないのがちょっと寂しいソナタだった。

 そんな、吟侍とソナタの思いを余所に王杯大会の通常大会が開会宣言をした。
 これにより、奴隷達に取っては形だけだが、絶対者アブソルーター達にとっては最大のお祭りが始まることになった。
 この大会の主催者は表向き、エカテリーナの親友である同じ上位絶対者アブソルーターのアナスタシアという事になっている。
 エカテリーナ枠ほどではないが、外部から強者を招き、選手として参加してもらい力の優劣を競う大会でもある。
 絶対者、アブソルーター達にとっては彼らの中の誰かの優勝を望んでいる。
 奴隷達も強制的にアブソルーター達の応援に回される。
 違和感たっぷりのオリンピック。
 それが、通常の王杯大会だ。
 だが、エカテリーナの目があるので、不正は許されない。
 それだけは評価に値する大会だった。

 三銃士の中で最初に登場したのは、カミーロ・ペパーズだった。
 カミーロは神形職人として、生計を立てていたがある時、自分の想い人を魔形666号に造り替えてしまった事から自らも777号の神形デウス・フォルマとなったという経歴があった。
 正直、ソナタはこんなに早く別れの時が来るとは思っていなかった。
 だが、その時は突然訪れた。
 カミーロは確かに、見た!、観客であった奴隷達の中に、魔形の姿を。
 彼が愛した女性のなれの果てを。
 666号は近くの奴隷達をこっそり殺していた。
 奴隷達は突然、理不尽に命を奪われる。
 命が静かに消えゆく姿を見つめながら恍惚の表情を浮かべる666号。
 カミーロはどこかで願っていた。
 殺戮を繰り返したのは何かの間違いであって666号、いや、彼の愛するコーサン・ウォテアゲという女性は幸せにひっそりと生きている。
 ただ、それだけを願っていた。
 だが、殺人という行為に快楽を覚えてしまっているかのような表情を浮かべる666号に人だった時の面影はない。
 更に死体となった奴隷をゾンビの様に操りパニックを起こそうとしていた。
 会場はパニック。
 絶対者達が対処におわれた。
 騒ぎを聞きつけ出てきたニネットとロックに
「ソナタ姫に伝えて下さい。私はここまでです。どうか幸せを掴んで下さいと」
 と言った。
「何、言ってんだよ、カミーロ」
「そうよ、私達、三人一緒にソナタ様を守ろうと」
 別れを予感したのかロックとニネットはカミーロに詰め寄る。
「姫は我々の力より圧倒的に上回るお力をご自身で身につけられた。もう私達が守る必要はない。あの方は強くなられた。私は安心して、私のやるべき事をすることが出来る。最後に姫の御成長が見れて良かったよ」
 だが、カミーロの決意は固い。
 彼は殺人鬼と化した666号の元に向かって行った。
 そして、過去の世界へと消えて行った。
 クアンスティータの誕生の影響でクアンスティータが誕生した後の時間に飛ぶ事は出来ないが、現時点より、過去の世界に飛ぶことは出来る。
 カミーロは666号を捕まえて向かったのはロスト・ワールドと呼ばれる今は失われた世界の一つグラン・ベルトと呼ばれる世界だった。
 グラン・ベルトと呼ばれる伝説のベルトを巡って数々の超伝説が生まれた世界だが、それも終焉に向かい、超伝説の立役者達はすでに過去の存在となっていた。
 カミーロと666号の立っているのは滅び行く、間際の僅かな時間。
 生命体は死に絶え、何も残らない、ただ、場所があるだけの世界だった。
 カミーロは666号が犯してしまった罪を一緒に被ろうと考えている。
 彼に出来る事は共に無に帰す事。
 二人だけとなったこの世界で共に最後の時を戦って過ごそう。
 そう決めたのだ。

 →【ファーブラ・フィクタ シークレット・ステージ】B001話に移動する場合

 666号の作り出したゾンビの始末でカミーロを追えなかったロックとニネットは――
「バカ野郎が……」
「突然過ぎる……」
 涙を流した。
 別の場所で見ていたソナタも
「なんでよ、カミーロ……」
 悲しそうな表情を浮かべた。
 カミーロは初めから、時が来たらお別れする事になるかも知れないとはソナタに伝えていた。
 だけど、冒険は始まったばかり。
 彼が追っていた666号が出てくるのはもっとずっと先だと思っていた。
 何も恩返しが出来ないまま、お別れの時が来てしまった。
 吟侍も見ていて――
「ロックとの喧嘩の仲裁役、居なくなっちまったな……」
 とつぶやいた。
 惑星ウェントスでの役目である友人の救出はまだ、一人も成功していない。
 だけど、救出より先に別れが来てしまうなんて……
 運命の非情さを痛感するのだった。

 続いての出場はロック・ナックルだったのだが――
 カミーロが居なくなったというのがショックだったのか、王杯大会をやっている場合じゃないと考えたのか――
「ロック・ナックル、棄権し……」
 ――ます。と言いかけて、ニネットに殴られた。
「このバカ!」
「何すんだ、このアマ」
「私達はソナタ様を守る三銃士。カミーロが抜けた今、私達まで落ち込んでどうするの?姫も恐らく、見ていたはず。私達が三銃士ここにありと見せなくてどうするのよ」
「カミーロが居ないんじゃ、もう三銃士じゃ……」
「ありきたりだけど、カミーロは私達の心にちゃんといるでしょ。だったら、三銃士の解散は無しよ。彼だって解散するとは一言も言ってないでしょうが」
「屁理屈じゃねぇか、それ」
「屁理屈でもなんでも、ソナタ様を悲しませる事は私が許さない。それはあんたもカミーロも一緒」
「……つえぇな、お前は」
「伊達に三銃士のリーダーやってないわよ」
「何、言ってんだよ、リーダーは俺だ」
「私よ」
「俺だって」
「私だってのがわかんないの?」
 と言い合いを始めた。
 それを見かねた大会運営委員が
「それで、棄権なさるんですか、あなたは」
 と尋ねた。
「誰が、棄権するか。俺は出る」
 と言い換えたロックだった。
 対するは宇宙刑務所の元脱獄囚デスコード。
 死刑執行実に、数千回。
 全て、生き帰った超回復能力の持ち主だ。
 数万の星を殲滅した極悪宇宙人でもある。
「棄権しときゃ良かったって思わせてやんよ」
 睨みを利かすデスコード。
「………」
「おいおい、ビビッちまって、何も言えませんってか?チビッたか?、えぇ、おい……」
「喋ってほしけりゃ言ってやる。やられ役ってのはどうして、こう、似たようなタイプばかりなんだろうな?」
「やられ役ってのは俺の事言ってんのか?俺を誰だと思ってる?」
 ズドンッ
 拳を一発、デスコードの土手っ腹に放つロック。
 デスコードの真骨頂はここからの再生劇ではあるのだが――
「ノックアウト。ロック選手の勝ちです」
 やられ役の本領発揮か、大した見せ場も見せずにデスコードは昏倒した。
 ロックの拳は神聖拳。
 悪空魔の力を持ってしまったソナタとは対極の力になってしまったが、元々は神御(かみ)の加護を得ている力だ。
 本来ならば女神御(めがみ)セラピアの生まれ変わりのカノンに仕えるのが筋だが、ロック達は自らの意志でソナタに仕えた。
 悪空魔の生まれ変わりだろうが、それは変わらない。
 その想いの強さがデスコードの再生力を上回る一撃を与えた。
 不死身ごとき、吟侍の戦い方を見ていれば、大体倒し方は見当がつく。
 不死身という特殊能力そのものを破壊すれば良いのだ。
 この世界じゃ不老不死は珍しい存在じゃない。
 あちこちに存在する。
 当然、不死身の存在の倒し方も無数に存在する。
 ロックは、不死身の能力の核となっていた一点を拳で貫き破壊した。
 だから、デスコードの超再生能力は機能しなかったのだ。
 それでも、ロックが本気で殴れば、そのまま死んでいたが、彼の情けで、デスコードは死ぬことは無かった。
 今までの冒険では本当に美味しい所は吟侍に持って行かれていた。
 だが、これからは三銃士も前に出て行く。
 そう思うロックだった。

 そして、それはニネットも一緒だった。
 続いて登場したニネット・ピースメーカーの相手は卵神官(らんしんかん)エッグ。
 卵に関する怪物を集めている存在で、6番の化獣(ばけもの)ウオームが卵型の怪物と聞きつけ、コレクションに加えようとやってきた外の宇宙からの使者だ。
 だが、実力的にはエカテリーナ枠からもれたくらいなので、実際にウオームと出会ってもどうすることも出来なかっただろう。
 エカテリーナは2番の化獣フリーアローラを子宮に宿す絶対者アブソルーターだ。
 ウオームも同等の力があると見て良い。
 卵や繭、蛹などを収集するコレクターは宇宙には山ほどいるので、エッグ以外にも卵の収集家はあちこちに点在する。
 彼はその中でもかなりレベルの低いクラスらしい。
 ニネットの三つ目の瞳力(どうりょく)、神通力(じんつうりき)の前には何も出来ずに敗退した。
 ニネットは三つ目の妖怪だが、普段は額の三つ目の瞳は閉じている。
 三つ目の瞳を開けた時、本来の力を発揮する。
 吟侍達の故郷、セカンド・アースは地球からの移民者であるジョージ・神父達が開拓したが、その前に先住民が居た。
 それが、ニネット達、妖怪の先祖だった。
 地球人は図らずも、妖怪を追い出す形で住処を広げていったという歴史がある。
 交換留学生として、メロディアス王国に来たニネットだが、差別の目は彼女を苦しめた。
 だが、それを庇ってくれたのがソナタだった。
 だから、ニネットにとって、ソナタは絶対の女王。
 ソナタの恩に報いたい。
 それが、ニネットの強い意志。
 そのため、ニネットは帰化し、ソナタについて惑星ウェントスにもついてきたのだ。
 ロックも貧しい国で生まれ、ソナタにその力を認められて三銃士に選ばれている。
 ニネットにとってもロックにとってもソナタこそ真の女王なのだ。

 ソナタのために――
 ソナタに認められるようになるために活躍したい。

 その想いが強い二人は次々と強敵を倒し、快進撃を続けていった。
 だが、惜しくも、ロックは上位絶対者アブソルーターと当たったベスト16、ニネットは銀河勇者と当たったベスト32の時、検討虚しく敗北した。
 それでも、通常の王杯大会の参加選手の数は、12万名以上という事を考慮すると大健闘と言って良かった。
 大健闘だったのだが、その後に行われる、王杯大会エカテリーナ枠のレベルを考えると優勝、準優勝のワンツーフィニッシュを決められなかった二人は悔し涙を流した。
 だが、ソナタは――
「よくやったわ二人とも。十分、私の期待に応えてくれた」
 と拍手を送るのだった。
 力は吟侍やソナタに及ばないにしても彼らの健闘は戦っていた姿をみれば、よく解る。
 彼らは本当によく頑張ったのだ。
 外の世界からも客や選手を招いたという事もあって、通常の王杯大会は大いに盛り上がった。
 王杯大会のメインイベントはトーナメントによる1対1のガチバトルだが、障害物レースや歌謡祭、ファッションショー、スポーツ大会、大食い大会などのイベントもあり、四つの星(テララ、イグニス、アクア、ウェントス)の王杯大会では唯一盛り上がる大会と言える。

 そして、ある一定以上のレベルの者にしか伝えられない特別な大会――
 王杯大会エカテリーナ枠の戦いがまもなく行われようとしていた。
 エカテリーナ枠に出場する選手は出ているだけで、通常大会とは比較にならない猛者ばかり。
 特別な力を持った、特別な存在だけが参加を許される大会だ。
 最低基準は最低でも惑星を一撃で破壊出来る力を持っている事。
 それ以下の選手の参加は認められない。
 絶対者アブソルーターの中でもエカテリーナしかその参加資格はない。
 つまり、参加選手の21名は全員、そのクラスの実力者だという事でもある。
 大会規模としては、通常大会よりこぢんまりとしているが、その破壊力は通常大会の比ではない。
 そもそも、惑星を破壊できるかどうかのボーダーラインをうろちょろしている様な低レベルの参加者すらいないのだ。
 いずれも近くの惑星がまとめて吹き飛ぶようなパワーを持った猛者達なのだ。

 だが、吟侍達にとっての最大の脅威はやはりクアンスティータだ。
 クアンスティータクラスになれば、超銀河団の星々を使って砂遊びをするくらいのレベルなのだ。
 この比ですらない。
 クアンスティータが目覚めればエカテリーナ枠の参加者すら完全に霞む様な猛者がうようよ出てくる。
 クアンスティータ誕生による影響は全宇宙が巻き込まれるだろう。
 誕生する前からあれだけ恐れられているのだ。
 生まれてしまったら、どんな事が起きるか解らない。
 強気で勝ち気である7番の化獣ルフォスですら心の底から震え上がる13番の化獣クアンスティータ――
 その想像すら出来ない力を持った存在が産まれると言われている謎の惑星ファーブラ・フィクタ――
 旅を進めれば進める程、クアンスティータに関わって来てしまっているような気がする――

 クアンスティータの噂はあちこちで聞く。
 だが、未だに全く底が見えなかった。
 聞けば聞くほど、底なしの恐怖を感じる化獣。

 怖いのはクアンスティータだけじゃない。
 クアンスティータが誕生することによってそれに連なる数多の脅威が噴き出してくる。
 それだけは間違いない。
 ルフォスはクアンスティータに挑む勇気が欲しいと吟侍に望んでいる。
 だが、勇気だけで、クアンスティータ本体までたどり着けるのか?
 吹き出てきた連なる脅威だけで、押しつぶされてしまうのではないのか?
 現に、誕生する前から偽者のクアンスティータが存在し、クアンスティータに悪意を持つ者を排除して回っている。

 師匠のガラバートからクアンスティータは複数の本体を持っていると聞いている。
 その本体はそれぞれが特別な力を持っているとも聞いている。
 力の質も抱えている勢力、量も全く敵わない相手。
 そういう相手を前にした時、自分ならどうするかよく考えろと言われた。
 お嬢ちゃん(カノン)は既に自分なりの答えを持っている様だとも聞かされた。
 つまり、カノンにはクアンスティータに対する事のヴィジョンが見えているのだ。
 幼い頃、偉そうな事をカノンに言っていた吟侍だが、カノンに対して、大分出遅れているなと感じるのだった。

 思うことは色々あるが、まずは、この王杯大会エカテリーナ枠で優勝しなくては未来はない。
 戦いに勝っていく事だけを考える事にしようと思う吟侍だった。


 続く。




登場キャラクター説明


001 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)
芦柄吟侍
 ウェントス編の主人公であり、ファーブラ・フィクタのメイン主人公。
 子供の頃、故郷、セカンド・アースを襲った絶対者・アブソルーター達を追い払った事から英雄と呼ばれる。
 その時、心臓を貫かれるが、七番の化獣(ばけもの)ルフォスの核でそれを補い、以降、ルフォスの力を使える様になる。
 勇者としての格は他の冒険者達より上だが、それだけに、他のメンバーより、強い敵を引きつける。
 創作バトルを得意としていて、攻撃方法のバリエーションはやたら多い。
 敵からすると最も厄介な勇者である。
 ウェントスでの救出チームに参加する。
 しばらくソナタ達の成長を見守っていたがクアンスティータがらみで本気にならなくてはならない時が近づいて来ている。



002 ソナタ・リズム・メロディアス
ソナタ・リズム・メロディアス
 ウェントス編のヒロインの一人。
 吟侍(ぎんじ)の恋人、カノンの双子の姉であり、共に行けない彼女の代わりに吟侍と共にウェントスの救出チームに参加した。
 吟侍の事が好きだが隠している。
 メロディアス王家の第六王女でもある。
 王家最強術であるCV4という特殊能力を使う。
 CV4は4つの声霊、ソプラノ、アルト、テノール、バスを器に入れる事により、特殊な能力を持ったキャラクターゴーレムとして操る能力である。
 力不足を指摘されていたが、ルフォスの世界のウィンディス、ガラバート・バラガの助力により極端な力を得ることになる。
 第一段階として、女悪空魔(めあくま)マーシモの力の覚醒、第二段階として、全能者オムニーアの外宇宙へのアクセスという力を得ることになる。


003 ルフォス
ルフォス
 吟侍(ぎんじ)の心臓となった七番の化獣(ばけもの)。
 ネズミに近い容姿をしていて、最強の化獣である十三番、クアンスティータを異常に恐れていて、その恐怖に打ち勝つために、最も勇気を示した吟侍と命を同化する道を選んだ。
 ルフォス・ワールドという異世界をまるまる一つ所有していて、その世界のものは全て彼の戦力である。
 異世界には修行するスペースもあり、冒険者達の修行場として提供していた。
 異世界にある三つの核、マインドコア(心核)、スキルコア(技核)、ボディーコア(体核)を合わせる事により、新しい怪物等を生み出す事も出来る。
 ルフォス・ワールドはそれ以外にもロスト・ワールドという既に失われた世界をいくつも圧縮保存してある。
 ルフォス・ワールドには大物が隠れ住んでいる。


004 ロック・ナックル
ロック・ナックル
 ソナタを守る三銃士の1人。
 神御(かみ)の拳、神聖拳を持つ。
 吟侍事をあまり信用していない。
 今回、守るべき主ソナタの急激なパワーアップで自身の力不足を感じている。











005 ニネット・ピースメーカー
ニネット・ピースメーカー
 ソナタを守る三銃士の1人。
 三つの目を持つ妖怪の少女、瞳力、神通力を使う。
 今回、守るべき主ソナタの急激なパワーアップで自身の力不足を感じている。












006 カミーロ・ペパーズ
カミーロ・ペパーズ
 ソナタを守る三銃士の1人。
 神形(しんぎょう)職人。
 自らが神形デウス・フォルマ777号となった。
 666号である魔形を追っている。
 主であるソナタの急成長を確認し、自分の役目が終わり、目指すべき別の役目と対峙することになる。












007 ウィンディス
ウィンディス
 元全能者オムニーア。
 吟侍(ぎんじ)と契約し、ルフォスの世界で管理者になった。
 ルフォスに依頼されて圧縮してあったロスト・ワールドという既に失われている世界の解凍作業をしている。
 様々な知識を持つ知恵者でもある。












008 エカテリーナ・シヌィルコ
エカテリーナ・シヌィルコ
 風の惑星ウェントスに君臨している絶対者アブソルーターの一人。
 2番の化獣(ばけもの)フリーアローラをその子宮に宿しているため、アブソルーターの中では最強と呼ばれている。
 戦闘狂であり、奴隷達の支配よりも強い相手との戦いを求める。
 突然のトラブルで出会った吟侍の事を気に入った。
 王杯大会エカテリーナ枠は彼女のための大会であり、彼女のレベルに合った参加者だけが参加できる。











009 フリーアローラ
フリーアローラ
 風の惑星ウェントスの絶対者アブソルーターのエカテリーナの子宮に宿っている女性型の化獣(ばけもの)。
 鏡と花畑をイメージした力を持ち、一枚一枚名前を持った花びらを求めてやってくる名前の無い超怪物達を支配する力を持つ。














010 フェンディナ・マカフシギ
フェンディナ・マカフシギ
 3名の姉(ロ・レリラル、ジェンヌ、ナシェル)達と別れて一人旅をしていた全能者オムニーアの少女。
 戦闘向きではない大人しい性格だが、自身のポテンシャルは姉たちをも遙かにしのぐ。
 また、そのポテンシャルの高さ故に脳に10番の化獣(ばけもの)ティルウムスを宿す事になる。
 心臓に7番の化獣ルフォスを宿すという吟侍を探していた。
 吟侍にティルウムス以外の何か秘密があると思われている。
 潜在している力が覚醒すれば、偽クアンスティータよりも上回ると推測されている。
 脳を支配している筈のティルウムスが、すぐ下の両方の瞳より下を異常に警戒している。






011 ティルウムス
ティルウムス
 全能者オムニーアの少女、フェンディナの脳に取り憑いた10番の化獣(ばけもの)。
 神話の時代には生まれていなかったが、その力は1番の化獣ティアグラや7番の化獣ルフォスをもしのぐと言われている。
 本棚のようなものを作りだし、その中の本に描かれている者全てを戦力とする。
 姿形は半透明の少年の姿をしている。














012 ステラ・レーター(ラ・エル/依良 双葉(いら ふたば))
ステラ・レーター
 未来の世界において、最強の化獣(ばけもの)クアンスティータと戦いを繰り広げて来た組織、新風ネオ・エスクの一員。
 新風ネオ・エスクは大きく分けて三つの組織があり、レッド・フューチャー、グリーン・フューチャー、ブルー・フューチャーに別れる。
 ステラはグリーン・フューチャーの一員で、かかしという超兵器を使う。
 また、若くして亡くなった依良 双葉(いら ふたば)という吟侍の幼馴染みの生まれ変わりでもある。











013 陸 海空(りく かいくう)
陸海空
 吟侍達が冒険の途中で会った謎の僧侶風の男性。
 王杯大会エカテリーナ枠に出場出来る程の技量を持ちながら、勘が鋭い筈の吟侍にすらその力を悟らせなかった程の実力者。
 気さくな性格のようだが、実際にはどうなのかは不明。
 別の場所では鬼と呼ばれていた。
 自己封印(じこふういん)という自分に、かける封印を幾重にもしている。
 それは、クアンスティータ対策でもある。
 実際の力は謎。











014 フテラ・ウラ
フテラ・ウラ
 自称、クアンスティータに次ぐ第二の実力者を名乗っている女性。
 しっぽが生えていて緑色の肌をしている。
 実力の程は定かでは無いが、成長前のソナタが萎縮する程の力を秘めている。

















015 テスタ・ファッチャ
テスタ・ファッチャ
 自称、クアンスティータに次ぐ第二の実力者を名乗っている女性。
 青色の肌をしている。
 実力の程は定かでは無いが、成長前のソナタが萎縮する程の力を秘めている。

















016 カルン・ナーブ
カルン・ナーブ
 自称、クアンスティータに次ぐ第二の実力者を名乗っている女性。
 赤色の肌をしている。
 実力の程は定かでは無いが、成長前のソナタが萎縮する程の力を秘めている。














017 セプス・クアンスティータ
セプス・クアンスティータ
 吟侍達が遭遇してしまった、偽者のクアンスティータの一名。
 偽者と言っても公式で認められた存在であり、本物のクアンスティータに対して悪意を持って接する存在を始末する役目を持っている。
 セプス・クアンスティータはクアンスティータとしての要素に毒蛇の要素を混ぜ合わせた力を持っている。
 地球で言えばラミアの様に上半身は女性、下半身は蛇のような姿形をしている。
 吟侍達が遭遇したのはいくつもの脱ぎ捨てた皮の一つに過ぎないがそれでも、アピス・クアンスティータの時と同様に圧倒的な力を秘めている。
 その場にいた吟侍や自称bQを名乗る者達をも圧倒する力をもっている。
 今回、刺客として、クアンスティータ・ファンクラブの中から、bRを名乗る存在を送り込む。
 吟侍達の生存条件として、このbRに勝って王杯大会で優勝する事という事を告げに来た。



018 アナスタシア
アナスタシア
 エカテリーナの親友の上位絶対者アブソルーターの一名。
 他のアブソルーターと違い押しに弱いところがある。
 が、エカテリーナの存在感が有りすぎていて、さらに、彼女がリーダーシップを放棄しているため、変わりにアナスタシアが絶対者達をまとめる存在となっている。
 王杯大会はエカテリーナが出場するため、運営はアナスタシアがやっている。












019 魔形(まぎょう)666号(コーサン・ウォテアゲ)
魔形666号コーサン・ウォテアゲ
 カミーロの元恋人で神形として生まれ変わった少女。
 ただ、神形職人だった、カミーロが失敗し、魔形(まぎょう)と呼ばれる様になる。
 カミーロの元を飛びだし、殺戮を繰り返していたが、カミーロが彼女を見つけ、共に失われた異世界、グラン・ベルトへと消えて行った。
 カミーロと共に生死不明となる。