第004話


第十一章 木曜日の助っ人 琥珀(こはく)




 今日はしゃこさんがお休みです。
 なんでも、即売会というイベントに参加なさるようで、今日は有給休暇を取っています。
 代わりに琥珀(こはく)さんが担当されます。
 それでは、よろしくお願いします。


「おはようございます」
「いらっさいまさ……間違えた、いらっしゃい……ませ」


 さっそく、こはくさんの特徴が出て来てしまっていますね。
 彼女がレギュラーの看板娘じゃない理由――
 それは、言葉を間違えるという事にあります。
 当店は特別注文店ですので、特殊な言葉が飛び交います。
 その看板娘が、度々言葉を間違えるのはちょっと問題なんですよね。
 ですので、彼女もすいしょうさん同様に非常勤にまわってもらっています。
 度々間違えられてはお客様が混乱なさりますからね。
 それでも大分、直って来たみたいですが、それでもたまに、間違えてお客様に情報をお伝えしてしまうことがあって、まだまだ、レギュラーの看板娘はお任せ出来ないんですよね。
 めのうさんも大分、怪しいですけどね。
 彼女はギリギリ許容範囲という事で。
 何でもない事なら良いのですが、重要な情報を間違えてお伝えしてしまうと、大変な事にもなってしまいますからね。
 とにかく、彼女には、間違えたら、すぐに修正する癖をつけて話してもらっています。
 では、今回のお客様、エイリアンのスーザンさんへの対応をチェックさせていただきますね。


「あの、実は――私、火星から地球に引っ越そうと思っているんですけど、何か良い物件ってないですか?」
「すみませぬ、いえ、すみません。スーザンさんは食人生命体ですので、地球圏へのお引っ越しはいろいろと宣言、いえ、制限がありますよ」
「そうなんですか?」
「はい、むやみやたらに人間を食されますと人間は騒ぎますので、それなりの秘境へのご安心いえ、ご案内となりますが」
「でも、私、偏食で、人間はあまり好きじゃないんですけど。どちらかというと魚の方が好みと言いますか」
「そうなんですか?でも、火星と地球では環境が違いますからね。食生活も変わってしまうかもしまうま、いえ、しれませんが?一度、適正剣玉、いえ、適正検査を受けて見てはいかがでしょう?」
「そうですね。人間って不味いと思っているんですけど、冥王星から火星に来た時も、果物から、魚に好みが変わりましたからね。今回もあるかも知れないですね」
「離れの方に、地球圏のエリアに合わせた空間が養子、いえ、用意してありますので、そちらでまず、試していただきます、いえ、いただいてはいかがでしょうか?」
「そうね、じゃあ、念のため……そっちの方で……」
「出刃、いえ、では、ご案内いたします」
「よろしくお願いしますね」
「はい、よろぴく、いえ、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ――あの……よくかまれますね」
「すみません。ショベル、いえ、しゃべるの苦み、いえ、苦手で……」
「そうですか、大変ですね」
「看板息子じゃなくて、娘なので、なめなくちゃ、じゃなくてなれなくちゃとは思っているんですけどね」
「頑張って下さい」
「ありがとうごま、いえ、ございます」
「いえいえ」
「小島、いえこちらです」
「はい」


 うーん……それにしても見事なくらいよく間違えますね。
 お客様も、なれないとよくわからないのではないかと心配してしまいますね。


「こんにちは」
「いらった、いえ、いらっしゃいませ」


 今度のお客様はノンフィクション作家のアリー様ですね。
 ご本人様はノンフィクションを書いているおつもりなのですが、何分、私達関連の事を書かれるのでよく、フィクションだと誤解されていらっしゃるのですが、ノンフィクション作家です。
 アリー様は見た目は人間そのものですが、実は蝋人形生命体であられます。
 禁術師ルドルフ様の最期の作品と呼ばれた生命体でもあります、あの方は、私共の店に訪ねて来られるお客様をテーマに小説を書かれています。
 人間界でも出版されているのですが、扱いはフィクション作家という事にされています。
 何度も、これはノンフィクションだと訴えておられるようですが、全く相手にされてないと嘆いておられました。
 今回もどなたかを取材されに来られたのでしょうか。


「今日は、九十九神の生態を題材に書こうと思って来たんだけど。お客さんで九十九神っていない?何か、九十九神関係でイベントとかなかった?」
「しょれ、いえ、それなら茶碗のチャッキー様と湯飲みのユリアン様がごこんにゃく、いえ、婚約されたと聞きましたよ」
「そうなの?」
「何でも、黒板、いえ、告白は当店のラウンジで攫われ、いえ、されたとか」
「それは良いわね。九十九神の婚約か。是非、アポを取りたいんだけど」
「申し訳ありがとう、いえ、ありません。今は、鍋ぶた、いえ、お二人は微妙なジキル、いえ、時期ですので、そういうのは落ち着いてからという訳にはいきませんか?」
「うーん……そうねぇ、私の取材で、破談になったら困るし……誰か他にいない?」
「転倒、いえ、当店の顧客リストにいらっしゃい、いえ、いらっしゃるお客様で九十九神のお方は家宝に、いえ、他に十六名いらっしゃいますが、シュナイザーいえ、取材を受けて果物いえ、くださる方は、象です、いえ、そうですね〜洗濯ばさみのハサミン様か、ガムテープのガープン様、銀食器のジョルジュ男爵様くらいですかね?」
「どんな方なの?」
「ハサミン様は世界で三番目に作られた洗濯機、いえ、洗濯ばさみの内の一つだそうです」
「三番目かぁ、……一番じゃないの?ちょっと素材としては弱いかな?」
「ガープン様は試作品の一つで、粘着力が強すぎたため、今まで使われずにおかれたそうですね。倉庫の気品、いえ、備品としてずっと眠っていらしたそうですよ」
「粘着力が強すぎるか〜例えば、どんな感じのエピソードとかあるの?」
「一度非道、いえ、人の肌についてしまうとなかなか取れなカッター、いえ取れなかったそうですよ」
「うーん、ちょっと保留にさせて。後、ジョルジュ男爵って方は?」
「はい、由緒正しい家系で使われていたそうで、家系にまつわる色んなエピローグ、いえ、エピソードをご存じだとか」
「なるほどね。でも、人のエピソードには興味ないわ。あるのは九十九神のエピソードだから。そうね、ガープンさんとアポを取りたいわ。連絡お願いして良いかしら?」
「はい、受け答え、いえ、承りました」
「……どうでも良いけど、あなた、よく、間違えるわね。大丈夫」
「大ジョッキ、いえ、大丈夫です」
「……そうなの?ホントお願いね」
「はい」


 うーん、アポイントメントは私の方でした方が良いかも知れませんね。
 頻繁に間違えた言葉を言われると先方も混乱してしまいますからね。


「ごめん」
「いらっしゃいまちぇ、いえ、いらっしゃいませ」
「今日は姫はお休みか?」
 姫とはしゃこさんの事ですね。
 あの子は色んな役になりきりますからね。
 その中の一つのプリンセスという役割の事ですね。
 今度のお客様は勇者トニー様です。
 しゃこさんの事を本当のお姫様だと思われている方ですね。
 情報を正した方が良いのか、正直困っています。
 事実を事実としてお伝えした方がよろしいんですかね?


「しゃこ姫はおやつ、いえ、お休みです。かわりに私、こはくがつとめさせていただいています」
「こはく殿か。よろしく頼む」
「はい鎧、いえ、よろしくお願いします」
「実は、ドラゴンスレイヤーを注文したくて参った所存」
「ドラゴンスレイヤーでしゅ、いえ、ですね」
「うむ。特注のアルファベット三二三型を頼む」
「アルファベット三二三ですね」
「そうだ、頼むぞ」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
「うむ」


 あらまぁ、後半は間違えずにお伝え出来てますね。
 ちょっと慣れてきたのかも知れませんね。


「おまたせ住ませたいえ、しました」


 あらまぁ、残念、そんなに簡単に直らないみたいですね。
 まだまだ、お話の訓練が必要みたいです。


「これが、ドラゴンスレイヤーか」
「はい、アルファベット三二三タイプガンマになります。タイプアルファとベータは現在、清掃、いえ、製造中止になっていますので、アルファベット三二三と言いますと、この型に鳴り申す、いえ、なります」
「なるほど、して、これはスライムにも利くのか?」
「いえ、ドラゴン専用ですので、スライムにはあめ、いえ、あまり……」
「困ったな……」
「どういたしまして、いえ、どうかしましたか?」
「実は、私はスライムが苦手なのだ。あのぷにょぷにょした姿を見ると全身にじんましんがな……」
「ドラゴン討伐はどのようなルーレット、いえ、ルートで?」
「きりきりまい山ルートをと思っている」
「それでしたら、ふんばりの谷ルートをおすまし、いえ、お奨めします」
「ふんばりの谷ルート?」
「はい、ふんばりの谷ルートには土壌汚染が進んでいて、モンスターはあまりいません。ヘドロ型の生物がいるだけですが、スライム自体は居留守、いえ、いません」
「私はヘドロ型の生物自体がダメなのだ」
「では、ぽぽぽい高原ルートをお奨めしましゅ、いえ、します」
「あそこか?たしか、通常のより、レベルの高いモンスターが出現するとか」
「はい。でしゅ、いえ、ですが、スライムもヘドロ型の生物もいません。ただ、気をつけていただきたいのはそこには、主毎の勢力争いが乱発しています」
「うむ、だが、相手にとって不足はない」
「出刃、いえ、では、ドラゴンスレイヤーにあわせて、こちらもどうですか?」
「何だこれは?」
「モンスター避けのアミュレットです。悪戯っ子いえ、悪戯に体力を減らさずに進めますよ」
「よし、それももらおうか」
「ありがとん、いえ、ありがとうございます」


 言葉はしょっちゅう間違えますが、それでも会話は成立しているようですし、これはこれで、良いという事でしょうかね?
 これが、こはくさんの個性とも言えますしね。
 間違えないに越したことはありませんけどね。
 まずは滑舌をしっかりとする練習をしてもらって、それからおいおい、言葉の間違えを正していってもらいましょうかね。




第十二章 金曜日の看板娘 真珠(しんじゅ)2




「おはようございます」
「あら、いらっしゃい」
「しんじゅさん、今日もお綺麗ですね」
「あら、そーお?今日は気分が良いから特別にサインあげてもいいわよ」
「ありがとう。でも、この前ももらったから、今日は良いです。あまり多くサインを書いてしまうと価値が下がってしまうわよ」
「そ、そうね、私のサインは貴重だものね」


 今回のお客様はイソギンチャク山脈の固有種、珍獣のチョメ様です。
 彼女はモデルさんをやっています。
 しんじゅさんにとっても憧れの職業についておられます。


「今日は、水着を買いに来たの」
「そ、そうなの?」
「うん、私、ほら、山育ちだから水着とか持ってなくて。小動物系の水着って置いてないかしら?」
「そうね、サイズを測らせて貰って良いかしら?」
「あ、それならサイズを言うわ、なの五九二でお願い」


 【なの五九二】とは珍獣用の水着のサイズの事ですね。
 細かく、スタイル毎に別れていますのでその種類は数千億種類にもおよびます。
 チョメ様はあらかじめ計られていらっしゃったようですね。


「変ね、私の見立てだとなの五九六か七あたりじゃない、あなた?」
「う……わかっちゃった、やっぱり?」
「まあね、これでも女優志望だから。サイズにはちょっとうるさいわよ」
「そうなの、実はフルツの実が美味しくて、つい食べ過ぎてしまって」
「ダイエットしかないわね」
「やってるんだけど、なかなか効果が出なくて……」
「多分、セニダイエットをやっているんじゃない?」
「解る?全然、効果ないのよね」
「あれは、タニマチ星人だけに効果があるのよ、あなたには、絶対、ピンチョロリン・ポコピンダイエットがお奨めよ」
「えぇ、あれ?」
「恥ずかしがってちゃダメよ。それじゃいつまでたっても痩せないわ」
「だけど、私、恥ずかしくて、ピンチョロリン・ポコピンダイエットしているなんて言えないわ。もう少し、格好いいネーミング無かったのかしら?」
「しょうがないでしょ、ピンチョロリンとポコピンってのが考えたダイエットなんだから。ピンチョロリンとポコピンに失礼よ」
「そうだけどぉ」
「痩せたいの?痩せたくないの?どっち?」
「う……痩せたいです」
「ならやる。文句言うな」
「わかりました」


 さすが、しんじゅさんですね。
 事、美に関する事だと妥協がありませんね。


「こんにちは」
「あら、いらっしゃい」
「今日もナイスな感じだね」
「あら、そーお?今日は機嫌が良いから握手しても良いわよ」
「よろしくお願いします」
「はい、握手」


 今度のお客様は神霊のジョリー様です。
 元々は悪霊だったジョリー様は努力を怠らず、ついに、神霊の位にまで上りつめた努力家さんです。
 うちの看板娘達もこの方くらいに頑張れると良いのですが。


「今日も良い天気だね」
「そうね。良い天気ね。ところで、今日は何をしに来たのかしら?」
「今日はね、しんじゅちゃんに意見を聞こうと思ってね」
「何かしら?」
「実は、僕は、今度、守護霊として人につく事になったんだ」
「あら、良いじゃない」
「でも、その人、僕が昔、悪さをした人達の子孫なんだ」
「それで?」
「僕なんかが守護霊になって良いものかどうか、それを聞きたくて来たんだよ」
「ふーん。でも、あなたの中では答えは決まっているんじゃなくて?」
「……僕は、罪滅ぼしのためにもその人を守りたいと思っている。でも、僕に資格があるかと言われると」
「簡単じゃない……」
「え?」
「あんたが、その人を守りたいと思った時点で守護霊になる資格なんて十分にあるのよ。過去に何があったかじゃない。今、あんたは更正して、迷惑をかけた人の子孫のためになることをしたい、そう思った訳でしょ。十分じゃない」
「……ありがと。やっぱりしんじゅちゃんに相談して良かったよ」
「私はあんたの背中を押しただけ。答えはあんたの中にちゃんとあったのよ」
「ありがとう。本当にありがとう」
「道に迷ったらまたいらっしゃい、ほっぺたひっぱたいて、カツを入れてあげるから」
「ははは、その時はお願いします」
「気合い入れてやるのよ」
「そうだね。頑張るよ」
「困った時は神宝商店をよろしくね」
「その時にはまた来るよ」


 さすがはしんじゅさんですね。
 人生相談もしっかりしています。


「こんばんは」
「あら、いらっしゃい」


 今度のお客様は黒猫のキャットンさんです。
 お客様というよりは……


「うちの子達、来てますか?」
「ミャアとニャアなら居ないって言ってくれって言っているわ」
「あの子達ったら、また、神宝商店さんにご迷惑をかけて、後でたっぷり絞ってやらないといけないわね」
「聞いたら、別々の家にお仕えする事になったっていうじゃない。あのふたりはずっと一緒だったから離ればなれになるのが嫌で家出したのよ。他に頼るところがないからここに来たの。いじらしいと思わない?」
「でも、ご主人様との約束だから」
「そこを何とかしてあげるのが母親ってもんじゃないの?」
「……そうですね。私もちょっと厳しくあたってしまったかも知れません」
「頭ごなしに叱らないでふたりの話もちゃんと聞いてあげたら?」
「そうですね」
「ほんと?」
「絶対だよ」
「まぁ、あなたたち、そんな所に」
「怒らないって、約束よ」
「……そうでした。ほら、あなたたち、帰ってよく話し合いましょ」
「うん」
「わかった」
「一件落着ね」
「また、うちの子達がご迷惑をおかけしました」
「良いのよ、困ったら、いつでもいらっしゃいと言っているし」


 名裁きと言った感じですね。
 見事です、しんじゅさん。




第十三章 土曜日の看板娘 まいかい2




「おはようっス」
「あの……いらっしゃい……ませ」
「相変わらず、可愛いねぇ」
「あ、ありがとう……ございます」


 今回のお客様は魔宝(まほう)商会の会長、サンタン十三世様ですね。
 魔宝商会は神宝商店のライバル店でもあります。
 お互い切磋琢磨してお店を大きくして参りました。
 神宝商店は神聖度七割、魔性度三割という品揃え、魔宝商会は魔性度七割、神聖度三割という品揃えで営業していまして、きっちりと棲み分けがされています。
 サンタン様のお店でも看板娘が売り子をしていますが、まいかいさんの事を気に入ってらしてうちで働かないかと誘われているんですよね。
 当店といたしましては土曜日以外であれば、彼女を拘束する必要はないのですが、あからさまに勧誘されるというのもちょっと困ってしまいます。
 まいかいさんは見ての通り、あまり、はっきりとしたことは言えないので、代わりに私が言って来なくてはと思っております。
 では、心配なので言って参りますね。


「おはようございます、サンタン様」
「おはよっス、ひすいさん、今日も綺麗だねぇ」
「うちの看板娘の引き抜きはご遠慮願いますか?」
「引き抜くつもりはないさ。ただ、土曜日以外にうちで働かないかとね」


 サンタン様にも困ったものです。
 ですが、まいかいさんには守護神がいらしゃいますので。
 ほら、噂をすれば――


「おうおうおう、このどさんぴんがぁ、俺の目の黒いうちはまいかいさんを余所にはやらねぇんだよ」
「おや、またきたのかね、天野君、君もしつこいねぇ」
「しつこいのはてめぇの方だよ、まいかいさんは神宝商店の看板娘だって決まってんだよ」
「そんなことないよね、ワシの店でも働いてくれるよね」


 あぁ、サンタン様、気の弱いまいかいさんに結論をもとめたら……


「うぅ……し、しつれい……します」
「あぁ、まいかいちゃん」
「てめぇ、泣かしやがったなぁ、表へ出ろい」
「ワシはそんなつもりじゃ」
「てめぇはまいかいさんの事を何もわかっちゃいねぇんだ」
「お客様方、おやめください。まいかいさんも困ってしまいますよ」
「あ、あぁ、すまねぇ」
「ご、ごめんよぉ」


 ふぅ、どちらもまいかいさんの事が大好きなんですけど、なんで、こう、仲が悪いんでしょうねぇ。


「こんにちは」
「いらっしゃい……ませ……」


 今度のお客様は十二代目悪魔神ルシ様です。
 悪魔様の神様ですね。
 少し、お気の弱い方で十二代目というプレッシャーに耐えかねているとお噂は聞いているのですが……


「あの……」
「……はい……」


 おふたりともご自分に自信が無い者同士です。
 なかなか会話も弾まないですね。
 他の曜日の看板娘の所に来て下されば、もう少し会話になるのですが、なんでも、まいかいさんは、初恋の女性にそっくりだとかで、ルシ様は土曜日に来られているのです。


「僕は、十二代目として何をしたら良いと思いますか」


 あらまぁ、人生相談なら金曜日に来て下されば、しんじゅさんがビシッと言ってくださるのですが、まいかいさんにそれを求めるのは酷というものです。
 どうしましょうか。
 私が言って来ましょうかね。


「お客様、いらっしゃいませ」
「あ、どうも、ルシです」
「はい、存じ上げております。失礼ながら、ご相談の件なんですが、まいかいさんにはちょっと……私が代わりにうけたまわってよろしいでしょうか?」
「あ、あの……また、来ます」
「あ……」


 あぁ、お帰りになられてしまいました。
 私、余計な事をしたのでしょうか?
 ちょっと後悔です。


「また、来ます。絶対来ますから」
「あ、はい、わかりました。ご来店、お待ちしています」
「あの……まいかいさんにも伝えてください」
「あ、そういう事ですね。解りました。伝えておきますね」
「ありがとうございます。じゃ」


 なるほど、ルシ様もまいかいさんの事が……
 モテモテですね、まいかいさん。


「あの……」
「……いらっしゃい……ませ……」
「し、しつれいします」
「………」


 あらまぁ、またまた、まいかいさんにホの字のお方が。
 あれは、オークのブッタン様ですね。
 まいかいさんには奥手の方がよくいらっしゃいますね。
 ブッタン様は毎回、話しかけてはそのままお帰りになられるお方です。
 もう少し、お話をして下さるとありがたいのですが。
 お客様に無理は申し上げられませんね。
 お話ができるようになられると良いですね。




最終章 日曜日のパーティー




 おはようございます。
 今日も良い天気ですね。
 今日は日曜日なのでお休みです。
 ですが、月曜日に入っためのうさんの歓迎会も兼ねて、みんな集まってパーティーをする事になっています。
 親睦を深めるというのが主な目的です。
 看板娘達はみんな個性がある女の子達です。
 時には衝突することもあるでしょうが、基本的にみんな仲良しです。
 めのうさんも早く、みんなと打ち解ける事ができると良いですね。


「あのあの、ひすいさん」
「なんですか、めのうさん?」
「今日、みなさん、来られるんですよね?」
「そうよ、全員出席だから」
「あのあの、スピーチを考えたんですけど、聞いてもらえますか?」
「あら、どんなの?」
「天野様から、最初のつかみが大切だとお聞きしたので、軽くギャグを考えたんですけど」
「ギャグ?あまりあなたのキャラクターには合わないと思うけど」
「そうですか?ちょっとやってみて良いですか?」
「どうぞ」
「よろしくおねがいしまうま」
「………」
「あのあの、どうでしょう?」
「どうでしょうって言うか、こはくさんとネタがかぶるのでやめた方が良いと思うわ。彼女、しょっちゅう間違えているから、彼女をバカにしているとも取れるわね」
「えぇ、そうなんですかぁ?」
「そうね。残念だけど……」
「じゃあ、これはどうですか?通信教育で覚えた手品なんですが」
「普通にしていれば良いと思うけど?」
「でもでも、普通の烙印を押されたら一生普通だって、天野様が……」
「あの方の言うことを真に受けないように」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
「わかりました」
「あと、金オーナーと銀副オーナーもいらっしゃるからあまり、失礼のないようにね。お酒はまだでしょ。未成年だもんね」
「はい、まだです」
「じゃあ、みんなも待っているし、いきましょうか」
「はいです」


 私はめのうさんとパーティー会場に向かいました。


 皆様、神宝商店をどうぞ、よろしくお願いいたします。






登場キャラクター紹介

001 めのう
めのう
 主人公の女の子。
 ちょっとドジなところもあるけど一生懸命な女の子。
 特別注文店、神宝商店の月曜日担当の看板娘。
















002 ひすい
ひすい
 特別注文店、神宝商店の前の月曜日担当の看板娘で主任。
 ナレーションも兼任。
















003 天野 ジャック(あまの じゃっく)
天野ジャック
 神宝商店のお得意様の人間。
 数年前、神隠しにあって以来の常連客。
















004 きん
きんオーナー
 特別注文店、神宝商店のオーナー。
 ぎんとは双子の姉妹。
















005 ぎん
ぎん副オーナー
 特別注文店、神宝商店の副オーナー。
 きんとは双子の姉妹。
















006 さんご
さんご
 特別注文店、神宝商店の火曜日担当の看板娘。
 曲がった事が大嫌いな正確。
 さっぱりとしていて、適当と見られる事もしばしばある。
















007 るり
るり
 特別注文店、神宝商店の水曜日担当の看板娘その1。
 はりと双子のふりをしている。
 しっかりとした性格。
















008 はり
はり
 特別注文店、神宝商店の水曜日担当の看板娘その2。
 るりと双子のふりをしている。
 無邪気な性格。
















009 しゃこ
しゃこ
 特別注文店、神宝商店の木曜日担当の看板娘。
 独特の感性を持つ。
 自分で考えたキャラクターになりきってしまう。
















010 しんじゅ
しんじゅ
 特別注文店、神宝商店の金曜日担当の看板娘。
 女優志望。
 何事も一生懸命。
















011 まいかい
まいかい
 特別注文店、神宝商店の土曜日担当の看板娘。
 大人しく人見知り。
 意外とファンが多い。
















012 こはく
こはく
 特別注文店、サポート看板娘。
 看板娘が休みの時、臨時で入る。
 しょっちゅう、言い間違える。

















013 すいしょう
すいしょう
 特別注文店、サポート看板娘。
 看板娘が休みの時、臨時で入る。
 丁寧な言葉が使えない。