序章 フェラリス・ミシェオ
ここは、最強とされる十三番目の化獣(ばけもの)、クアンスティータの三番目の側体、クアンスティータ・ファムトゥが支配する宇宙世界、ファムトゥ・ワールド。
二十四もあるクアンスティータの所有する宇宙世界の一つの中の物語である。
外様(とざま)モンスター──それはクアンスティータに絶対の服従を誓って特殊能力を与えられた外から来た存在だ。
が、外様モンスターは基本的にクアンスティータの信頼は得ていない。
なかなかできることではないが、絶対の忠誠を誓った後で心変わりする場合もあるからだ。
それより上位に位置するのは研修願者(けんしゅうがんしゃ)と呼ばれるやはり外からの存在だ。
外様モンスターとの違いは研修願者はクアンスティータに貢献しているという事もある。
そのため、研修願者は外様モンスターよりは信頼を得ている。
そして、クアンスティータの世界に入れる可能性があるのは研修願者のみとされている。
クアンスティータの世界ではクアンスティータに害をもたらす可能性のある存在を認めていないからだ。
が、稀に、研修願者の資格持った外様モンスターがクアンスティータ・スペースワールドに入り込むことがある。
その存在はクアンスティータ・スペースワールドから疎まれ、排除されるという道をたどることにはなるのだが……。
牛虎狼(ぎゅうころう)三兄弟もそんな、研修願者の資格を持つ外様モンスターだった。
長男、野牛丸(やぎゅうまる)、次男、遊虎吉(ゆこきち)、三男、余狼彦(よろうひこ)からなる荒くれ者たちだ。
一度は、クアンスティータに忠誠を誓ったものの、最強の宇宙世界、クアンスティータ・スペースワールドの一つに入り込めたという高揚感から、忠誠というタガが外れた存在だった。
ファムトゥ・ワールドはこうしたイレギュラー的存在が他のクアンスティータ・スペースワールドよりずっと多く存在した。
それは、この宇宙世界の主、クアンスティータ・ファムトゥが好戦的なクアンスティータであるという事が最大の理由だった。
つまりは、わざと引き入れているのだ。
そういう意味では決してイレギュラーという訳ではなかった。
ファムトゥ・ワールドで、育った反逆者達をクアンスティータ・ファムトゥ自らが摘み取る。
そのために外様モンスター達はファムトゥ・ワールドで存在できるのだ。
牛虎狼三兄弟以外にも多数の反逆者達はいたが、クアンスティータ・ファムトゥに挑み、戻って来た存在は皆無だった。
ほとんどが、クアンスティータ・ファムトゥにたどり着く前に現れた障害に阻まれ消え去っていった。
牛虎狼三兄弟の前にも壁となる存在の名前が出てきた。
フェラリス・ミシェオ──穢れ(けがれ)、不吉なことを混ぜるという意味を持つ謎の存在が立ちふさがろうとしていた。
ファムトゥ・ワールドには数多くの壁が潜んでいるが、最も多くの外様モンスターをつぶしたとされるのが、このフェラリス・ミシェオだった。
フェラリス・ミシェオは複数存在するが、その名前の語源になったのは、フェリスラ・ミオシェという褐色の肌で白髪の美女だという。
フェラリス・ミシェオはフェリスラの劣化コピーであるとされている。
では、そのフェラリス・ミシェオ(フェリスラ・ミオシェ)とはどのような存在なのか?
それは、クアンスティータ・ファムトゥが自身のライバルとなるべく存在として生み出した存在だ。
外様モンスターは直接、クアンスティータ・ファムトゥと戦うことはない。
その前に、フェラリス・ミシェオ達に力を奪われ、消え去る運命にある。
クアンスティータ・ファムトゥは外様モンスター達に力を分け与え、それを外様モンスター達が自身の野望のために力を増大させていく。
それをフェラリス・ミシェオ達が摘み取り、様々な外様モンスター達の中で昇華されていった力を混ぜ合わせて自身の力とする。
そして、十分に育った時、フェラリス・ミシェオ達はクアンスティータ・ファムトゥに挑戦していくのだ。
つまり、闘いの連鎖による循環作業がここで行われているのだ。
より強い力を求めるクアンスティータ・ファムトゥのために、外様モンスターがあると言ってよかった。
だが、ファムトゥ・ワールドの中も決して一枚岩という訳ではなかった。
その循環機能に異を唱える存在もまた、少なからず存在した。
ファムトゥ・ワールド育ちの少女、カウェアとアヌブイはそれにあたる存在だった。
彼女達は仲良くしていた外様モンスターをフェラリス・ミシェオに殺されたという過去を持つ。
その外様モンスターは下心があったからカウェア達に近づいたのだが、そんな事は知らない彼女達にとっては、知り合いを殺されたという事実だけが残っていた。
そのため、仇であるフェラリス・ミシェオを追っていた。
その途中で、始末されるはずだった牛虎狼三兄弟を救ったのだ。
野牛丸「すまなかったな女達よ」
遊虎吉「ほんま、助かったで」
余狼彦「なぜ、俺たちを助けた?」
カウェア「別に、大した理由じゃありません。私たちはフェラリス・ミシェオが気に入らないから邪魔をした。ただ、それだけです」
アヌブイ「私たちにもそれなりに理由があるだけです」
遊虎吉「なんやねん、あのえげつないバケモンは?」
アヌブイ「フェラリス・ミシェオです。さっきのは大元のモデルじゃないみたいですけど……」
牛虎狼三兄弟は戦慄していた。
クアンスティータに様々な力をもらい、無敵だと思っていた。
が、現実にはもっととんでもない化け物がいた。
牛虎狼三兄弟はかなりの数の特殊能力を持っていた。
が、その力の大半はフェラリス・ミシェオに吸い取られていった。
そして、吸い取られた力は二度と使えなかった。
特殊能力の使用権利が牛虎狼三兄弟からフェラリス・ミシェオに移ったのだ。
力を他者から完全に奪う力をフェラリス・ミシェオは持っていた。
つまり、フェラリス・ミシェオは外様モンスターと戦えば戦うほど、力を奪い取り、厄介な存在へと変わっていくという事だ。
弱点属性なども特に見つからず、理不尽に、力を奪われていく。
ただ、そんな感じの戦闘だった。
フェラリス・ミシェオはただ、攻撃を受けていた。
受けたうえで、力を奪っていった。
牛虎狼三兄弟が生きていたのはただ、単純に、力を全て失う前に、戦線離脱したことに他ならなかった。
力を全て失ったとき、それは最期の時を迎える時とカウェア達に教わったのだ。
それを知らなかったら、手ごたえのないまま、次々と攻撃し、全ての力がなくなったところで始末されるだけだった。
現実世界にいたところは無敵の強さを誇っていた牛虎狼三兄弟も、クアンスティータ・スペースワールドの中に至っては無力な存在でしかなかった。
クアンスティータ・スペースワールドの中に入れて正直、調子に乗っていた。
クアンスティータといっても所詮、赤子。
ちょろいもんだと。
だが、実際にちょろかったのはむしろ、自分達の方だった。
クアンスティータは七つの本体と十七の側体の二十四体あり、それぞれが別の行動をとると言う。
クアンスティータ・ファムトゥの場合は外様モンスターを受け入れ、利用するという方針だった。
ただ、それだけの事だった。
生まれる前から恐怖の対象となり不動の最強の座に君臨するクアンスティータをどうにかできると考える方が間違っていた。
圧倒的な力を示したフェラリス・ミシェオでさえも、ファムトゥ・ワールドのごく一部の事に過ぎない。
ファムトゥ・ワールドは広い。
まだまだ、彼らの知らない秘密が隠されているのだ。
そんな宇宙世界が二十四も所有しているクアンスティータ。
改めて、恐ろし過ぎる化獣(ばけもの)だと思った。
三兄弟はそれをかみしめるのだった。
00 クアンスティータ・ファムトゥ
この世界を支配するクアンスティータで、三番目の側体。第3本体クアンスティータ・レクアーレの従属の存在。
クアンスティータが所有する24の宇宙世界の一つ、ファムトゥ・ワールドを所有している。
この物語はファムトゥ・ワールドの中の出来事でもある。
01 フェラリス・ミシェオ
クアンスティータ・ファムトゥが用意した、自身のライバルとなるべく成長する存在。
クアンスティータ・ファムトゥによって、異能を与えられた外様(とざま)モンスターと研修願者(けんしゅうがんしゃ)がやがて、自身の野望のために、異能のスキルをアップさせていった時、その力を摘み取っていって、自身の力とする存在。
力をつけたフェラリス・ミシェオはやがて、クアンスティータ・ファムトゥに挑戦していくという。
フェラリス・ミシェオはフェリスラ・ミオシェという褐色の肌で白髪の美女の劣化コピーと言われていて、オリジナルはどこかに存在している。
02 野牛丸(やぎゅうまる)
一度はクアンスティータに忠誠を誓うも力におぼれ、野心をもった外様(とざま)モンスター。
本来はファムトゥ・ワールドには入れないが研修願者(けんしゅうがんしゃ)の資格を得て、入り込んでいる。
牛虎狼(ぎゅうころう)三兄弟の長男。
03 遊虎吉(ゆこきち)
一度はクアンスティータに忠誠を誓うも力におぼれ、野心をもった外様(とざま)モンスター。
本来はファムトゥ・ワールドには入れないが研修願者(けんしゅうがんしゃ)の資格を得て、入り込んでいる。
牛虎狼(ぎゅうころう)三兄弟の次男。
04 余狼彦(よろうひこ)
一度はクアンスティータに忠誠を誓うも力におぼれ、野心をもった外様(とざま)モンスター。
本来はファムトゥ・ワールドには入れないが研修願者(けんしゅうがんしゃ)の資格を得て、入り込んでいる。
牛虎狼(ぎゅうころう)三兄弟の三男。
05 カウェア
ファムトゥ・ワールド育ちの少女。
知り合いをフェラリス・ミシェオに始末された事から反感を持っている。
06 アヌブイ
ファムトゥ・ワールド育ちの少女。
知り合いをフェラリス・ミシェオに始末された事から反感を持っている。