序章 解放者達
ここは、最強とされる十三番目の化獣(ばけもの)、クアンスティータの二番目の側体、クアンスティータ・ソリイントゥスが支配する宇宙世界、ソリイントゥス・ワールド。
二十四もあるクアンスティータの所有する宇宙世界の一つの中の物語である。
「よいか、絶対に解放者達をこの星に近づけさせてはならん」
「はい。解っております」
「存在に代えましても守護します」
ある星では隊長と思われる四本腕の戦士が同じく四本腕の部下と思われる戦士達に命令していた。
隊長の名はマブザ、部隊名は警備騎士団マブザ部隊という。
マブザ達は守護者として、ソリイントゥス・ワールドの秩序を守っている。
【解放者】と呼ばれる存在はソリイントゥス・ワールドの中では別名、【火種】とも呼ばれている。
ある存在を解放していく事から【解放者】と呼ばれる。
【解放者】達が解放していくのはソリイントゥス・ワールドでは脅威とされる存在だ。
それ故、危険視されているのだ。
ソリイントゥス・ワールドの外の世界では【封術館(ふうじゅつかん)】と呼ばれるものが存在する。
封術館は美術品の様な状態になって居る存在があり、それを存在解放(イグジスタンス リベレーション)カタログと呼ばれるアイテムを通して、解放させるというものだが、このソリイントゥス・ワールドにも似たようなものがある。
それが【禁存館(きんそんかん)】だ。
禁存館には、ソリイントゥス・ワールドの秩序を乱す可能性のある存在が封術館と同じ様な形で封じられている。
禁存(きんそん)と呼ばれる、禁じられた存在が封じられている建物が禁存館なのだ。
解放者達は禁存館から禁存を解放する術を持っている。
そのため、秩序を守る側からすれば、禁存館のある星自体を隔離し、解放者達を近づけないようにする事と、討伐隊による、解放者達の始末が使命となっている。
禁存自体は名前自体も封じられているので、本来の名前ではない。
複数の存在が隠されていて、その名称自体を【禁存】というくくりで閉じているのだ。
だから、【禁存】と言っても全てが同じではなく、解放されて初めて、その名前も表に出るのだ。
解放者達はその何が出てくるか解らないという所にも興味を持っている。
そして、出した何かを再び封印する。
その行為に喜び、快楽を感じているのだ。
傍目には愚か者に映るかも知れない。
わざわざ脅威となるかも知れない何かを解放して、また、封印しているという行為は一見、無意味にも感じる。
だが、解放者達はその衝動を抑えられない。
例え、それが、自らの身を滅ぼす愚かな行為だったとしても。
禁存館のある星に向かってきている、三名の解放者達――
彼女達もそんな愚か者に属していた。
ラエタリタ、ラエセンティア、ポステリタ――
その名を持つ、解放者達はルールを決めていた。
ラエタリタが解放した禁存はラエセンティアとポステリタが、
ラエセンティアが解放した禁存はラエタリタとポステリタが、
ポステリタが解放した禁存はラエタリタとラエセンティアが、
それぞれ、封印する。
解放した解放者は決して、手を出さない。
例え、仲間が消え去る事になったとしても。
仲の良い三名だったが、それだけは鉄則のルールだった。
ラエタリタ「お、あった、あった。この星じゃない?」
ラエセンティア「じゃあ、次は私が解放する番ね」
ポステリタ「早くぅ、早くぅ」
解放者である三名は目的の星を見つけた。
「待て、解放者達。我らが、貴様たちを始末する」
迎え撃つはマブザとマブザ部隊二千名。
だが、解放者達はどこ吹く風といった感じだった。
殆ど眼中にも入っていないという感じだ。
それを物語る様に、解放者達はマブザ部隊の猛攻をまるで無かったものにでもとらえているかの様にヒラリヒラリとかわし、ラエセンティアは封印を解く準備を進めて、あっという間に解放してしまった。
禁存館から解き放たれた存在──
それは、【横軸時間のワァミニツ】という存在だった。
通常の時間軸である、一、二、三、四……と続く時間以外にも…四、三、二、一、と続く逆の時間というのある。
さらに、それ以外にも、例えば三秒目の縦軸時間に通常の時間軸が全く動かない横軸時間も存在する。
ワァミニツはその横軸時間に動くことができるのだ。
全く通常の時間が動かない状況で自由に動くことができる。
通常の物語であれば、非常に厄介な存在だ。
それが、ざっと八千万以上の数が噴き出してきたのだ。
だが、それを確認した、解放者達の反応は違った。
ポステリタ「えl、またこれぇ?」
ラエタリタ「ハズレだな、これも……」
ラエセンティア「がっかりだわ。無駄な時間ね」
ラエタリタ「めんどくさいな。ハズレなんて入れておくなよ、紛らわしい」
ポステリタ「これもう、飽きたぁ〜」
ラエセンティア「とりあえず、後片付けよろしくね」
ラエタリタ「はいよ、あぁ、もう、ちょろちょろすんな、面倒くせぇ」
ポステリタ「はいはい、みんなおうちに戻ってねぇ」
ラエセンティア「八千万ちょっとしかいないから、余裕でしょ」
まるで、大したことないような態度だった。
それを証明する様に、ものの二十秒足らずで、残らずワァミニツ達を禁存館に戻した。
ワァミニツの力は見飽きている。
わざわざ使わせることもないのだ。
部屋を散らかしたから片付ける。
そんな感覚で復元した。
禁存館には、必ずしも、解放者達が求めるドキドキする何かが封じられているわけではない。
むしろ多くの禁存館は彼女達の言う【ハズレ】──どうという事もない存在がダミーで封じられていて、カモフラージュで、マブザ部隊のような存在が守護しているふりをしているのだ。
今回はマブザ部隊は解放者達から禁存館を守れなかった。
が、解放者達も禁存館に、理想とする存在は隠されていなかった。
結果的にみれば、痛み分けだった。
どちらも望む結果は得られなかったという事だ。
ラエセンティア「それではみなさん、お騒がせしましたぁ」
ラエタリタ「見回りご苦労さん」
ポステリタ「じゃあねぇ〜」
解放者達はマブザ部隊に挨拶をして去っていった。
この解放者達にとって、禁存館を守護する者たちを傷つけるのはマナー違反と考えている。
マブザ部隊はソリイントゥス・ワールドの秩序を守るために守護しているのだ。
悪意を持っているわけではない。
そういった者たちを傷つけるのは解放者達の美学に反するものだからだ。
だからこそ、解放者達は守護者たちの攻撃をかわしながら、禁存館の封印を解いて回っている。
守護者達は禁存館を守り、解放者達は禁存館から、禁存を解放して回る。
それはこれからも変わらない。
00 クアンスティータ・ソリイントゥス
この世界を支配するクアンスティータで、二番目の側体。第2本体クアンスティータ・ルーミスの従属の存在。
クアンスティータが所有する24の宇宙世界の一つ、ソリイントゥス・ワールドを所有している。
この物語はソリイントゥス・ワールドの中の出来事でもある。
01 ラエタリタ
ソリイントゥス・ワールドで自由気ままに行動している解放者の1名。
3名で行動をしていて、1名が解放して残る2名が封印するというスタイルを取っている。
解放するのは禁存館(きんそんかん)に封じられている禁存(きんそん)で、禁存は種族などを表した言葉ではなく、封印を解くまで、それが何なのかは不明とされている。
そのため、それらを総称して、仮に禁存という名称でまとめているにすぎない。
02 ラエセンティア
ソリイントゥス・ワールドで自由気ままに行動している解放者の1名。
3名で行動をしていて、1名が解放して残る2名が封印するというスタイルを取っている。
解放するのは禁存館(きんそんかん)に封じられている禁存(きんそん)で、禁存は種族などを表した言葉ではなく、封印を解くまで、それが何なのかは不明とされている。
そのため、それらを総称して、仮に禁存という名称でまとめているにすぎない。
03 ポステリタ
ソリイントゥス・ワールドで自由気ままに行動している解放者の1名。
3名で行動をしていて、1名が解放して残る2名が封印するというスタイルを取っている。
解放するのは禁存館(きんそんかん)に封じられている禁存(きんそん)で、禁存は種族などを表した言葉ではなく、封印を解くまで、それが何なのかは不明とされている。
そのため、それらを総称して、仮に禁存という名称でまとめているにすぎない。
04 マブザ
ソリイントゥス・ワールドの秩序を守る4本腕の隊長。
実力不足から解放者達に良いようにされている。
05 横軸時間のワァミニツ
禁存館(きんそんかん)に封じられていた禁存(きんそん)ではあるが、解放者達からはハズレとされる力の弱い存在。
それでも、通常の時間軸である、一、二、三、四……と続く時間以外にも…四、三、二、一、と続く逆の時間というのある。
さらに、それ以外にも、例えば三秒目の縦軸時間に通常の時間軸が全く動かない横軸時間も存在する。
ワァミニツはその横軸時間に動くことができる。
通常の世界で言えば、非常に厄介な力の持ち主でもあるが、ソリイントゥス・ワールドのレベルからすると大したことはない。
雑魚とも呼べる存在として扱われ、禁存館に大量のワァミニツが封じられている。