序章タイトル

 序章 ドリーム・ルーム

 ここは、最強とされる十三番目の化獣(ばけもの)、クアンスティータの一番目の側体、クアンスティータ・トルムドアが支配する宇宙世界、トルムドア・ワールド。
 二十四もあるクアンスティータの所有する宇宙世界の一つの中の物語である。

いちまるろくいちろく「お客様、本日もお越しありがとうございます。ドリーム・ルーム一万六百十六号店を預からせていただいています【いちまるろくいちろく】でございます」
 トルムドア・ワールドでメインの一つとなっている【ドリーム・ルーム】はこの宇宙世界の要所要所に点在していた。
 店長である【いちまるろくいちろく】がドリーム・ルーム一万六百十六号店を預かっている事からも他の店長の名前も数字の羅列であることが推測される。
 【ドリーム・ルーム】とはトルムドア・ワールドの特徴の一つであり、客は対価を払って夢を見る部屋【ドリーム・ルーム】で文字通り夢を見るのだ。
 ただし、この夢はただの夢ではなかった。
 【ドリーム・ルーム】で見た夢で得たものや経験値などはそのまま客のものとなる。
 仮に夢の中で死亡したら、そのまま死亡もする。
 夢であって夢ではない、実体験の夢を見る部屋でもあった。
 トルムドア・ワールドには他にも脅威となり得るものは存在する。
 この宇宙世界の中で生きていくには、【ドリーム・ルーム】のような他の邪魔が入らない環境で、スキルアップしていく事は必要な事でもある。
 基本的にクアンスティータの世界の住民達は現実の世界と比べるとあまり争いというものは好まない。
 だが、数が多くなれば例外というものは常に現れる。
 力を誇示するために、他者を傷つけるという者がいつ、現れないとも限らなかった。
 そのため、トルムドア・ワールドの世界の住民達の中で比較的、力の弱い者達は頻繁に【ドリーム・ルーム】に通って、力をつけて身を守るという事も必要だった。
 クアンスティータの世界の住民にとってのたしなみの一つとも言える行為だった。
 そういう姿勢でいるからこそ、仮に他の世界から邪な心を持っている存在が入ってきたとしても強者として、速やかに排除することができるのであった。

 今回、いちまるろくいちろくの管理する【ドリーム・ルーム】の一つに来店したのはロゼロという少年だ。
 彼は、トルムドア・ワールドで生まれ育った少年で、クアンスティータより年上だ。
 クアンスティータの所有する宇宙世界はクアンスティータが誕生する前から存在する。
 そのため、宇宙世界を支配するクアンスティータよりも年上という事は決して珍しい事ではない。
 最も、クアンスティータの深層に入っていけば、年齢という概念も簡単に崩れるが。
 どっちが年上、年下という考えも無意味と化す。
 ニナの母体からではあるが、あり得ないとされる完全なる真空から生まれ出でるクアンスティータという化獣(ばけもの)は人間の取り決めた事柄の外側にいる存在なのだ。
 人間はこういうものだと理解できればある程度、言葉にすることができる。
 だが、クアンスティータという存在は突き詰めれば、言葉にすることができない状況、力などでも構成されている。
 そのため、クアンスティータを調べていけば、新しい言葉を考えて、それで代用していかなければ表現できないものも多々あるのだ。
 もちろん、それでも、言葉にできないものもたくさんある。
 それは、どうやっても、目で知覚することも表現する事すらできないものだ。
 そういうものが当たり前のように内在されているのがクアンスティータである。
 それが本体であるとか側体であるとかは関係ない。
 側体もまた、そういうものを内在させたクアンスティータなのである。
 他の存在にとっての最脅威であることに変わりはない。
 そんな側体の所有する宇宙世界もまた、広大かつ強大なパワーを秘めている。

いちまるろくいちろく「確認がとれました。ロゼロ様ですね。いつもありがとうございます。ご利用のドリーム・タイプはいつもの【インフィニ・ア】でよろしいですか?」
ロゼロ「あ、はい。お願いします」
いちまるろくいちろく「承りました。では、ごゆるりと」
ロゼロ「ありがとうございます」
 少年ロゼロは【ドリーム・ルーム】の中で夢の世界へと入って行った。
 【ドリーム・ルーム】の夢はいくつかに分類される。
 彼の選択した【インフィニ・ア】は、仮想キャラクタータイプに分類される。
 要は、夢の中に入るのは実際の本人か、そうでないかの事で、彼は後者にあたる。
 【インフィニ・ア】は彼が夢の中で行動する時に使う仮の身体という事になる。
 また、仮想キャラクターでもオーダーメイドの特注キャラクターもあるのだが、【インフィニ・ア】の場合は、複数の存在が、一つのキャラクターを使用する共有タイプに属する。
 オーダーメイドタイプは入る存在が基本的に一名での使用なので、キャラクター固定されやすいが、共有タイプの場合は複数の存在が、一、キャラクターを演じるので、個性が混ざるという特徴を持つ。
 どちらの方が良いとは言えないが、ロゼロの様に、あまり、強い個性を持たない存在は他の存在との共有タイプを選んだ方が良いと言える。
 理由は、同じ共有タイプを使用している他の存在の個性も手に入るからだ。
 共有で、使っているため、経験値などは均等になってしまうという点はあるが、多くの存在がそれを使う事によって、経験値は増えやすいという特徴はある。
 オーダーメイドタイプより、成長が早いので、弱い時は共有タイプ、ある程度、成長したら、オーダーメイドタイプで、個性を磨くというスタイルが一般的となっている。
 だが、ロゼロは当分、共有タイプから変更する予定はない。
 それは成長がまだまだというのもあるが、実は他に理由がある。
 彼は女の子になりたいのだ。
 男の子の身体である自分が嫌なのだ。
 オーダーメイドタイプだと、どうしても、同姓のキャラクターという事を選択するのが普通だという風潮がある。
 逆に、共有タイプは一時的というのが、一般的なイメージだから、それが、異性のキャラクターを選択していたとしても、手っ取り早く成長するために自分に合った共有タイプを選択したという言い訳が立つからだ。
 本当はオーダーメイドタイプで女の子の仮想キャラクターを選択したいのだが、彼にはそれを実行する勇気がない。
 ロゼロはこの世界では珍しく、他者を気にして、自分の思い通りに行動が取れない気弱な少年だった。
 彼にとって、自身の成長はどうでも良かったのだ。
 ただ、女の子の身体で自由に動き回りたい。
 それだけだった。
 【インフィニ・ア】はその条件の中で一番なりたいと思っている女の子キャラクターだった。
 あまり成長したくない、成長してしまうと【インフィニ・ア】に執着する理由が無くなってしまう事を恐れて、彼が操っている時は仮想の敵の攻撃をかわす事だけに集中していた。
 そのため、共有タイプの使用仲間の間で、【逃げのロゼロ】とか、【エスケープ・ロゼロ】と呼ばれていた。
 だが、それだけに集中して極めて行けば回避もそれなりにものになっていった。
 彼の回避能力は共有タイプの中では突出していて、ロゼロの回避能力も自身のステータスに加えたいと思う存在は結構存在していた。
 そのため【インフィニ・ア】を使えるギリギリの百名が埋まっていた。
 ギリギリの数が百なのは【ドリーム・ルーム】で決められたルールでもある。
 共有タイプとは言え、あまり多くのユーザーが使用すると【カオス・ブレイク】という状態になる。
 それは多くの個性が混ざりあい、共有タイプのキャラクターが個性を保てなくなり、崩壊するという現象だ。
 そのため、上限を一キャラクターにつき百名までと決められているのだ。
 このように、自由な夢を見られる【ドリーム・ルーム】にもある程度のルールは存在する。
ロゼロ「ありがとう。今日も楽しかった。また、来るよ」
いちまるろくいちろく「ご来店、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
 【ドリーム・ルーム】各店ではこうした事が日常的に毎日、行われている。





 

キャラクタータイトル

 00 クアンスティータ・トルムドア

 この世界を支配するクアンスティータで、一番目の側体。第1本体クアンスティータ・セレークトゥースの従属の存在。
 クアンスティータが所有する24の宇宙世界の一つ、トルムドア・ワールドを所有している。
 この物語はトルムドア・ワールドの中の出来事でもある。


01 いちまるろくいちろく

 トルムドア・ワールドでドリーム・ルームと呼ばれる実体験の夢を見れる店で店長をしている存在の一つ。
 いちまるろくいちろくというのは10616号店を預かっていることからつけられている。
 ドリーム・ルームはトルムドア・ワールドの要所要所に存在する弱者を救済する店でもある。


02 ロゼロ

 トルムドア・ワールドに住む少年。
 気弱な性格で、この宇宙世界では弱者に分類される。
 スキルアップをしたいため、ドリーム・ルームを頻繁に訪れている。
 実は女の子になりたい衝動がある。
 ドリーム・ルームでのお気に入りは【インフィニ・ア】という少女キャラクター。
 【逃げのロゼロ】、【エスケープロゼロ】などの異名がある。

03 インフィニ・ア

 ドリームルームで試用されている仮想キャラクターの少女。
 複数の存在が共有する、共有タイプのキャラクターで、複数のユーザーの要素を統合することができる。
 特注キャラが個々の力のアップをするのに対し、この共有タイプはスキルアップをシェアするタイプである。



 

トルムドアイラスト

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