第一話 マギスター・シード

01 フェリス

 マギスター・シード…超異能力を使えるようにさせる種子…
マギスターシード001話01 それを錠剤に変えた物だ…
 21名の科学者の手によってそれは偶然、完成され、生み出された。
 科学者達にも何故、成功したのか解らない。
 そういうものだった。
 再び、作りだそうと試みるがついには再び成功することは無かった。
 数を大幅に減らしてしまったマギスター・シードを巡って科学者達の奪い合いが始まった。




 (タイトル)助けて…
 助けてシェイク…
 追っ手に追われているの…
 誰が味方だか解らない…
 薬を飲まされたわ…
 多分、私の記憶は改ざんされる…
 明日の午後4時に例の場所に行くわ…
 私を助けて…私の特徴は…
 
 そこで途切れていた。
 ジェイクはメル友のフェリスからこんなメールを受け取った。
 ジェイクは【シェイク】というハンドルネームで何人かのメル友を持っていた。
 お互いの素性は知らない…
 ネットで知り合った友達関係…
 ただ、それだけだ。
 だが、その中でも【フェリス】とは特に気があった。
 彼女は女性で、科学者という事は解っている。
 【フェリス】とはハンドルネームで、本名は別にあるという事も解っているが本名は知らない。
 彼女の研究チームがマギスター・シードという種子を錠剤に変える実験に成功したという報告を先日受けたばかりだった。
 マギスター・シード…
 超人を生み出す種…
 これを使用すれば最高の力が手に入る…。
 彼女はこれで、困っている人を助ける超人達のスペシャルチームを作りたい…
 そう書いていた。
 会ったことは無いけど、ジェイクはそんな彼女の事が好きだった。
「一度くらい、オフ会で会っておくんだったな…」
 ジェイクは後悔した。
 記憶を改ざんされてしまったら、誰がフェリスだか解らないかも知れない…。
 そんな不安もあった…。
 何にしても例の場所…
 二人の共通の思い出の場所であるあの場所に行って彼女さえ来てくれれば、記憶の改ざんがあったとしても何とかフォロー出来る。
 そう考えたジェイクはイヤモン像の前に出かける事にした。
 イヤモン像は昔の待ち合わせ場所で、今は像も欠けてしまって、待ち合わせ場所にする人間はいない…
 バチコイ像が近くにあり、みんなそっちを利用するからである。
 イヤモン像はジェイクにとっては初めての遠出した時の、フェリスにとっては立ち寄った時に見たという思い出があった。


02 待ち合わせ場所に美女5人…

 ジェイクは待ち合わせ場所であるイヤモン像の前で1時間前の3時から待っていた。
マギスターシード001話02 フェリスは時間に正確だから4時か、それより少し前に姿を見せるはず…
 だけど、もし、フェリスが本当は男だったら…
 もし、来られなかったら…
 からかっただけなら…
 どうしよう…
 そんなことを考えながら、一時間を過ごした。
 その間、軽く小雨が降っていたが気にせず待っていた。
 やがて、雨もやむ頃、待ち合わせ場所に女性がやってきた。
「え…と、あのフェリスは…」
 ジェイクは思わず尋ねてしまう。
 それも無理はなかった。
 ジェイクの前に現れた女性の数は5人。
 これでは誰がフェリスだか解らない…
 そして、尋ねたジェイクに対して手を挙げたのは5人ともだった。
 一瞬、5人一役?とも思ったが、恐らく違う…
 残る4人は敵が彼女のふりをして近づいてきたのだろう…
 解らない…
 誰が、フェリスなんだか…
「あの、俺、シェイクです。本名、ジェイクって言います。すみませんけど、フェリスの特徴を確認したいので1人ずつ、自己紹介して貰えますか?」
 とりあえず、一人一人、聞いてみる事にした。
 まず、一人目…
「私はバルドーヌと言います。科学者をしています。研究しているのはマギスター・シードです」
 マギスター・シードの事を知っているという事は彼女がフェリス?
 そうも思ったが…
 二人目…
「私、クェリシア…私も科学者だよ。ジェイク君、昨日、誕生日だったよね。遅れたけどおめでとう」
 彼女は自分の誕生日を知っていた。
 去年、一度だけ伝えた誕生日を覚えていてくれた…
 彼女かも知れない…
 三人目…
「私はオリアーナ…私も科学者よ。君…身長10センチ鯖読んでたわね」
「あ、ご、ゴメン、つい調子に乗って…」
 彼女は10センチ自分が身長を高く報告していた事を知っていた…。
 彼女の可能性もある…
 四人目…
「セラフィーニです…私は科学者ではないのだけれど、マギスター・シードの実験にはつきあっていました。私が送ったシャツ、着て来てくれたんですね。嬉しいです…」
 彼女は科学者ではないと言った。
 だが、何分、メールでの事、ジェイクの様に背伸びして自分を科学者と言ってしまったのかも知れない。
 ジェイクがフェリスの送ったシャツを着てきたのに気付いたのも気になる所だ…。
 五人目…
「ラズティナ…私も科学者じゃない…エクスペリメンター(実験者)…この前送ってもらったリボン…ゴメン、混乱していて、なくしてしまったんだ…」
「いや…良いよ、気にしないでくれ…」
 彼女もジェイクとフェリスの二人しか知らない事を知っていた。
 五人ともフェリスの可能性がある…
 他の4人は恐らく、フェリスのメール等をチェックして彼女のふりをしているのだろう…。
 薬を飲まされたとあったのだ、その可能性は十二分にある。
 どうやら、5人とも同じ研究チームらしく口裏を合わせるのもそう難しくないものと推測出来た。
 とにかく、フェリスを襲うのは他の4人だけではない。
 科学者は他にもいて、その科学者達もフェリスの命を狙っているのだ。
 5人になってしまったが、匿わなくてはならない…
 誰が敵で誰が味方かも解らない危険なボディーガードだが…
 そう思うジェイクだった。


03 誰もがフェリスに見える…

 ジェイクは両親と一緒に暮らしてはいない…。
 専門学校に入るために寮暮らしをしていたが、小火騒ぎがあり、一時的にアパートで暮らしていた。
 5人の美女達はジェイクの隣のアパートに暮らす事になった。
 ドキドキする生活が彼を待っていた。
 だが、フェリスは一人だけで、残る四人は敵かもしれないのだ。

 敵…そういう表現をするには訳があった。
 フェリスとはメールでのやりとりである実験をやったことがある。
 マギスター・シードの適合実験だ。
 本来は部外秘だという事だったが、フェリスは内緒でやってくれていた。
 その実験、エクスペリメンター・テストでの結果は1000点満点中998点という高すぎる結果をもたらした。
 そう、ジェイクはマギスター・シードとの適合率が他のエクスペリメンター(実験者)のそれを大きく上回っていたのだ。
 それでフェリス以外の四人は彼に近づいて来ているのだろう…
 彼をモルモットとして連れて帰るために…
 フェリスはそれに気付いたからこそ自分の元に来た。
 一緒に逃げるために…
 だが、彼には、フェリスが誰なのかわからない…。
 出来る事は彼女達と行動を共にして、今までメールでのやりとりを思い出しながら、フェリスをあてる事だった。
 ジェイクは5人に提案をした。
 5人と1人ずつ、デートがしたいと…。
 彼女達に対して、邪な気持ちがあっての事ではない…。
 彼にとってフェリス以外は敵かも知れないのだ…。
 フェリスが誰かという事を見定める事が必要なのだ。
 理由を説明すると5人は承諾し、次の三連休と翌週の土日を使ってデートをする事にした。
 くじで順番を決めて、その結果…
 一日目はバルドーヌ
 二日目はクェリシア
 三日目はオリアーナ
 四日目はセラフィーニ
 五日目はラズティナ
 という順番にデートをする事になった。
 本来ならジェイクがエスコートをするべきなのだが、今回に限っては彼女達の行動を見定めるという事もあって、デートコースは彼女達に任せる事にした。

 普通なら美女5人とのデート…
 浮かれる気持ちもあるだろう…
 だが、ジェイクにとっては敵と味方を判別するためのもの…
 正直、嬉しいという気持ちにはなれなかった。
 間違えたらアウトかもしれないのだ。
 死活問題になるかもしれないデートを楽しめという方が無理だった。


04 一日目 バルドーヌとのデート

 デート初日、ジェイクはバルドーヌとの待ち合わせで、彼女達と初めて会ったイヤモン像で待ち合わせをした。
「待った?」
マギスターシード001話03 バルドーヌは5分、遅刻をしてきた。
「いや…大して待っては…」
「ゴメンね、デートだと思うと支度に時間がかかってしまって…。でも遅刻は嫌いだから急いで来たんだけど、5分、遅れちゃったね」
 両手を合わせ、舌をペロッと出して、ウインクして見せた。
 そのしぐさが可愛らしかった。
 ちょっとドキッとした。
 これが女の子とのデートなのか…
 と一気に緊張が走った。
「ど、何処へ行くんだ…?」
 今日のデートコースはバルドーヌに任せる事になっている。
 今日一日、彼女を観察しなくてはならない。
「うん…初めてのデートだからね…まずは軽くお茶してショッピング…後は映画を一緒に見て終わりで良いかな?」
 彼女がデートプランを発表する。
 これは本来のデートではない…。
 あくまでも彼女の行動からフェリスか否かを見定めるためだけのもの…
 彼女と深い仲になるためのものでは無かった。
「い、良いんじゃ無いかな…」
 人となりを見るにはそれで適当かなと思うジェイクだった。
 早速、お茶をする二人…
 それにしてもバルドーヌは落ち着いていると思った。
 デートは慣れているのかな?
 他に付き合っている人とかいるのかな?
 嫉妬に近い感情がムラムラと沸き立ったが、すぐに考えを改めた。
 彼女がフェリスであるという可能性は1/5しかないのだ。
 4/5は偽物なのだ。
 ジェイクはバルドーヌとの会話をしたが、終始、彼女のリードで語り合った。
 何となく、情けない気持ちになるのだった。
 と言ってもフェリスは科学者…
 頭はジェイクの何倍も良いのだ。
 実際に付き合ったらこんな感じかな?と思うのだった。

 続いて、二人はショッピングに言った。
 バルドーヌはしばらくウィンドウショッピングをした後、宝石店に入った。
 まさか、何か買ってという気じゃとドギマギしたが、違った。
「はい、私を選んだら、これをつけてね」
 彼女の方が指輪をプレゼントしてくれた。
 科学者というだけあって、お金は持っているようだ。
 貧乏苦学生のジェイクとは雲泥の差だった。
 どんどん、惨めになる。
 だが、彼女と色んな店を見て回るのは悪い気はしなかった。

 最後に、映画を見た。
 恋愛映画…では無く、カンフーアクション映画だった。
 だが、泣けるシーンあり、クライマックスにはちょっとしたラブシーンありと充実の内容だった。
 最初のデートと考えるのならぴったりと言っても良い映画だった。

「どう…だった?」
 バルドーヌは上目遣いで尋ねた。
 ドキドキが増してくる。
 そう言えば、終始ドキドキしたデートだった。
「君だけでは何とも…」
 そう答えるのが精一杯だった。
 正直、フェリスかどうかは全然、解らなかった。
 意味あるのか、このデートに…?
 と疑問符さえ浮かんだのだった。


05 二日目 クェリシアとのデート

 二日目、今日はクェリシアとのデートの日だった。
「ご、ゴメン、遅れた…」
 今度はジェイクが遅刻してしまった。
 昨日、バルドーヌとのデートのドキドキで眠れないのに、朝、5時集合と言われ、寝不足だったのだ。
「おーそーいー。10分遅刻だよー」
 クェリシアはプンプン怒った。
 最初の印象からそうなのだが、この子は本当に科学者なのだろうか?
 何となく、雰囲気に幼さが目立った。
「ゴメン、ゴメン」
「あー何かバカにしてるなー」
 何となく、妹にしてやる気持ちになって、頭をなでてしまった。
 彼女にはそれが気に障ったらしい…。
 彼女は大人として扱って欲しいようだ。
「違うよ、ゴメンったら…」
「じゃあ、あれ買ってくれたら許したげる…」
 クェリシアが指したのは自動販売機だった。
 それくらいならとジェイクは彼女の頼むオレンジジュースを買ってあげた。
「それで、今日は何処に?」
 昨日のバルドーヌとは違い、何となく落ち着ける雰囲気だった。
 何となく、年下の女の子に見てしまい、保護者の様な気分になってしまう。
「へっへー、何処だと思う?実はね〜海なんだなこれが」
「海ったって、まだ、海開きしているような季節じゃないけど?」
「えぇ〜っ!!」
 クェリシアは驚いた。
 どうやら、海開きの季節を解っていないらしい。
 今の季節だとまだ、寒くて海には入れないのだ。
「海は止めてどこか他の所に…」
「えぇ〜せっかくおニューの水着持って来たのに…」
「いや、俺は水着なんて持ってきて…」
「シェイクの分も持ってきたのに…」
 シュンとするクェリシア…。
 まるで、捨てられた子犬の様だ。
 これを計算でやっているとしたら、恐ろしいと思うジェイクだった。
「じゃ、じゃあ、温水プールにでも…」
「ほんとぉ!」
 温水プールを提案するととたんに明るくなる。
 コロコロ良く表情が変わる少女のようだ。
 とは言っても、今は朝、5時を少し回った所。
 今の時間に温水プールがやっているはずも無かった。
 仕方なく、24時間やっている牛丼屋で時間を潰す事にした。
 バルドーヌの時と違ってとことん段取りが悪かった。
マギスターシード001話04 とは、言え、彼女が全く良いところ無しだった訳でも無かった。
 しきりに海に行きたがっていただけあって、水着に着替えた彼女は幼い顔に反してダイナマイト・バディーというやつだった。
 それを見たジェイクは思わず鼻の下が伸びた。
 それをクェリシアに知られないようにとぼけたのだったが。

 結局、クェリシアとのデートは牛丼屋、コンビニ、漫画喫茶、温水プール、ラーメン屋というものだった。
 彼女が最初に予定していた海に行けなかったので、予定が全く変わってしまってしまった。
 最後に彼女は
「あ、あのね、私はね、ホントはね、こんな予定じゃ…」
 と言っていた。
 失敗続きだったが、何となく好感が持てたジェイクだった。


06 三日目 オリアーナとのデート

 三日目はオリアーナとのデートだった。
 彼女のプランは図書館、植物園、水族館というコースを指定した。
マギスターシード001話05 「あの、よろしく…オリアーナさん」
「よろしくね…正直、デートというのはしたこと無くてね…とりあえず、私の行ってみたい場所をあげたわ」
「そ、そうですか…よろしくお願いします」
「さっきも言ったわよ」
「そ、そうですね…」
 何となく気まずい感じだった。
 科学者と言えば、研究でこもりがちな者も多い、人付き合いが苦手というのも頷ける。
 メールでは書けても、実際の会話はからっきしという人だっている。
 オリアーナはそんなタイプの様だった。
 図書館では何とか共通の話題を探そうと図書館にある参考書などを解説しようとするのだが、頭の方がそんなに優秀ではないジェイクには彼女の説明についていけるだけの許容量はなかった。
 だが、一生懸命、彼と打ち解けよう…
 そんな努力だけは解った。
 ここまで来て、思うのだが、バルドーヌもクェリシアもそうだったのだが、ジェイクと打ち解けようと必死なのはみんな一緒だった。
 本当に、彼女達の中にフェリスというハンドルネームを利用して、彼をモルモットとして連れて行こうとしている人間がいるのだろうか…
 ひょっとしたら、彼の思い過ごし…
 そんな風にも思えて来る。
 だが、フェリスに薬を飲ませ、彼女に成り代わろうとしていた者がこの中にいるかも知れないというのも事実だった。
 オリアーナは多くを語らない女性だったが、それでも、図書館、植物園、水族館とデートを重ねる内に、好奇心は旺盛で、それを研究に活かそうとしている研究熱心な女性であるという事だけは解った。
 不器用ではあるけれど、時折見せる、この花は実はどうだ、この魚はどうだという解説をする時の表情は愛おしくも感じる事が出来た。
 そして、オリアーナはデートの最後にジェイクのおでこにキスをして…
「で、デートの最後はキスをするものなのだろう…?」
 と照れ隠しに顔を背けて言った。
 彼女も恥ずかしいんだ…
 そう思うと、ジェイクは少し親近感を覚えた。
 彼は、恥ずかしいのはずっと自分の方だけだと思っていたからだ。
 彼女達もデートをする時は気持ちがドキドキしているんだ…。
 それが解っただけでも収穫だった。

 バルドーヌ、クェリシア、オリアーナ…
 フェリスと同じ科学者はこの三人…
 デートしてみたが、誰が、フェリスなのかは全くわからなかった。
 

07 四日目 セラフィーニとのデート

 四日目はセラフィーニとのデートだった。
 彼女は科学者ではない…
 立場で言えば、ジェイクと同じ、エクスペリメンターという事になる…
 だからと言って無視するという訳にもいかなかった。
 もしかするとエクスペリメンターにも一人、味方がいるかも知れないからだ。

 エクスペリメンターとは自らの身体を使って、臨床実験を行う者達の事を言う。
 強制的にではなく自由意志で参加しており、見返りとしては臨床実験で得た能力を所有する事を許可されるという者である。
 命を対価としているだけに、得られるものも大きかった。
 それだけに、エクスペリメンターと科学者の間には深い信頼関係が成り立っていた。
 フェリスにも一人、お抱えのエクスペリメンターがいた。
 5、6回ではあったが、フェリスのふりをして、ジェイクとメールでやりとりをした事があった。
 もちろん、フェリスも承知での事だった。
 後で、フェリアというハンドルネームに変更した。
 つまり、セラフィーニとラズティナもフェリアという名前の味方かも知れないのだ。

 セラフィーニとのデートはただひたすら食事…。
 それだけだった。
 朝から焼き肉レストランでカルビやロースをたらふく食べた後、ラーメン屋でチャーシュー麺特盛りと海鮮つけ麺と餃子10人前、カレー専門店ではチキンカレーとビーフカレーの大盛りを注文していた。
 そして、今はそば屋で、月見そばと肉うどんの大盛りを頼んでいた。
 一体、どこにそんな量が入るのか謎だったが、付き合っているジェイクは見ているだけで胸焼けがしそうだった。
「たびぇにゃいにょ(食べないの)?」
マギスターシード001話06 「た、食べてからしゃべろうね…」
 しかし…よく、食べるなぁ…と感心してしまった。
 もぐもぐもぐ…ごっくんと食べきった後続けた。
「…次は何処行く?」
「…そ、そうだね、食後の運動とかした方がよさそうだから…。何かスポーツの出来る…」
「…今日はデート…運動をしにきたんじゃない…」
「そ、そぉ?じゃあ、何かを見に…」
「あ!あれが良い」
 そういうセラフィーニが指したのは向かいのカニ料理専門店だった。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ、確かに君に任せるとは言ったけど、食べてばかりじゃないか」
「そう、これは私を知ってもらうためのデート。だから、私はよく食べるという事をアピールしたい…」
「もう解ったから、たくさん食べるのは。だから、他の所行こ、ね。」
「そうか…それは残念。まだまだ入るのに…」
 まだ、入るのか…と思うジェイクだった。
 それにしても変な子だな…というのがセラフィーニに対する印象だった。
 その後はゲームセンターによってゲームをして遊んだのだが、セラフィーニはエクスペリメンターであるだけあって、ジェイクも驚く運動神経を見せた。
 力比べをしたら負けるなとも思ってしまった。
 そして、デートの終わりに右手を差し出し…
「ん!」
「え?何?」
「友達から始めましょう…」
「え?…えぇ、あぁ…そうだね。よろしく」
「よろしく」
 最後まで、ペースのつかめない子だったという印象を受けた。


08 五日目 ラズティナとのデート

 最終日、五日目は最後の一人、ラズティナとのデートだった。
 彼女もセラフィーニに負けないくらい不思議な女性だった。
 まず、待ち合わせ場所に居なかった。
 待てども待てども来ないので、どうしたかと心配して戻ろうとすると落とし穴がほってあり落ちてしまった。
 何なんだと思ってはい上がると通りすがりのおばあさんから封筒を手渡された。
 封筒には数枚の写真と共に、手紙が一枚入っていた。
 手紙には…
 【さて、ラズティナは何処にいるでしょう?】
 という一言があった。
 数枚の写真をヒントにラズティナを探し出せというものだろうが、意表を突かれてしまった。
 推理物が得意でないジェイクには写真だけでは何処にいるかは解らず、途方に暮れるとそこに更なるヒントが置いてあったりした。
 そして、彼女を見つける頃にはお昼になってしまっていた。
 彼女の元に着くと彼女はすでに自分の分とジェイクの分のランチを頼んでいた。
 出てきた物はジェイクの好物だった。
 なんだか、まるで、彼女の手の上で踊らされているような気分になってしまった。

「楽しかった?」
「楽しいっていうか、君を見つけるのに必死だったよ…」
「そう?ラズティナは楽しかったけどな」
「これは、君を見させてもらうデートなんだからさ」
「だから見せているじゃない。これがラズティナよ。面白い事をするのが大好きなの」
「面白いって…」
「だめぇ?」
「いや、だめじゃないけどさ…」
「ふふ、さあ、食べて、お店の人にお願いして、この中の一つは練りわさび入りなの。一気に食べてね」
「わさびって…」
「ふふ、楽し!」
 ジェイクは緊張してランチをし、わさび入りのシュウマイを食べてしまい、つーんと来てしまった。

 その後のデートは遊園地、自転車を借りてサイクリング、アスレチックというコースだったが、その行く先々に、ラズティナの仕掛けがあり、ドキドキ、ヒヤヒヤさせられっぱなしだった。
 だが、不思議と段々、楽しくなり、ジェイクはデートを楽しんだ。
 デートというよりは仲の良い友達と遊びに行くという感じのものだった。
マギスターシード001話07 最後に、ラズティナは首の後ろに手を回し
「楽しかったよ…」
 と言って抱擁した。
 最後に、ドキッとさせられた。

 こうして、5日間の休日を利用しての5人の美女とのデート…
 5人の美女を知るための観察デートを終了した。
 結果は、誰がフェリスで誰がフェリアか解らない…だった。
 解った事…
 それは、出会った時よりも5人の事を好きになってしまっている自分がいる…
 それだけだった。


09 5人との日常

 誰が味方で誰が敵かは解らない…
 そんな状態だったが、日を追う毎に、5人の美女とジェイクとの仲は親しくなって言った。
 どうやら、フェリスやフェリアの方も記憶が混乱しているらしく、フェリスとフェリアもお互いを忘れてしまっているらしい事が次第に解ってきた。
 ジェイクと同じ様に、フェリスとフェリアも誰が味方で誰が敵か解らない不安な状態でいる事も予測出来た。
 それは、デート中の会話から5人から自分(フェリスもしくはフェリア)以外にも仲間がいたような気がするけど、よく思い出せないという情報を得ていたからだ。
 フェリスだけでなくフェリアも情報操作のために薬を飲まさせているようだ。
 だが、ジェイクには5人の中に、悪い人間が混じっているようにはどうしても思えなかった。
 疑心暗鬼的な気持ちと交流を深めたいという気持ちの両方を抱えながらジェイクを交えた6人の日常は続けられた。
 次第に、5人同士も仲良くなった様に見えてきた。
 それを象徴するかのように…
「クェリシア、お醤油取って」
「はい、これ。あ、バルドーヌ、私はドレッシング頂戴」
「セラフィーニ、食べ過ぎ…」
「オリアーナがくれるといったから…」
「ラズティナもおかわり」
「せ、せまい…」
 朝ご飯は毎朝、ジェイクの部屋で食べていた。
 朝、集まって、今日の予定などを話会うためにだ。
 5人での情報交換などもその場で行われていた。
 そこではそれぞれの郷土の話などもあり、次第に親しくなっていった。
 もちろん、危険に対する情報交換も行われていた。
 バルドーヌ、クェリシア、オリアーナの3人は【マギスター・シード】を生み出した21人の博士の内の3人であるという事、セラフィーニとラズティナはそんな21人の博士の誰かと契約し、臨床実験を行うエクスペリメンターとなっている事などもそこでわかった。
 記憶を一部失っているフェリスとフェリア以外は元々交流が無かったのではないかという事も解ってきた。
 そして、【マギスター・シード】と呼ばれる謎の種…
 これは、独占すれば、世界の支配者になることも夢ではない超人を生み出す種である事が解った。
 今の所、【マギスター・シード】に関する出来事は起こっていない…
 だが、【マギスター・シード】は21の博士が己の利権にするために奪い合っているという物…
 仮に、この場に居る3人の博士が動かなくても他の18人の博士が全ての【マギスター・シード】の所有権を得るために刺客を送ってこないとも限らないのだ。
 そんな危険をはらみながらも6人は日々、少しずつ打ち解けていった。


10 【マギスター・シード】とは?

 5人の美女の影につきまとう【マギスター・シード】という言葉…
 【マギスター・シード】とは一体、何なのであろうか…
 【マギスター・シード】…
 それは…、飲んだ者が超異能力を使える様になるというとある種子を加工した錠剤の事である。
 品種改良を加えていく内にフェリスが偶然、生み出したものでそれに他の20名の博士が乗っかった形で実験が繰り返されて完成したものであり、フェリスは源となる元素は二度と起こりえない偶然によって生み出されたとメールに書いて来ていた。
 そのため、【マギスター・シード】の数は有限…限られている…。

 【マギスター・シード】の種類は40錠ずつ、108種類あるとされている。
 また、【マギスター・シード】と呼ばれるのはSSS(トリプルS)ランクに達したもののみで、その下にネクスト(次)・シード(SSランク、Sランク、Aランクの3つ)、レギュラー・シード(Bランク、Cランク、Dランクの3つ)サブ・シード(Eランク、Fランク、ランク外(Gランク)の3つ)があり、10段階になっている。
 能力の種類によって、上下はあるのだが、体力だけではかるのなら、サブ・シードのランク外(Gランク)は成人男性の1〜3倍の握力がつき、Fランクは5メートル前後の跳躍力がつき、Eランクは100メートルを4秒を切るスピードで走る事が出来る。
 続いて、レギュラー・シードのDランクは軽自動車と同じくらいのパワーがつき、Cランクは一戸建て(平屋)くらいなら持ち上げることが出来るようになり、Bランクに至っては橋を一撃で破壊出来るパワーがつく。
 ここまで来ると人間の能力を大きく超えているが、更に上にネクスト・シードが存在する。
 Aランクに至っては素手で温泉が掘れるし、Sランクに至っては小さな山なら削り取れるという。
 SSランクにまでいくと地図を書き換える程の力を手にするという。
 【マギスター・シード】はその更に上を行く力なのである。
 体力だけ見ても途方もない力を手にすると言う事が解った。
 また、【マギスター・シード】を飲めば、不死に近い生命力も得るという事が解っている。
 フェリスは偶然とは言え、そんな危険なものを生み出していた事を後悔もしていた。
 彼女自身はこの【マギスター・シード】を処分した方が良いと考えていた。
 彼女はGランクのサブ・シードさえ有れば、病気で体力を失っている人の体力補助として活かせるのではと考えていた。
 そのため、【マギスター・シード】自体の実験には興味が無く、積極的には実験には参加しなかった。
 だから、エクスペリメンターもフェリア1人だけだった。

 だが、欲に目が眩んだ、他の20人の博士はそれを良しとはしなかった。
 核になる部分の実験はフェリスにしか出来ないので、彼女が【マギスター・シード】実験に加わるように圧力をかけ続けた。
 そのストレスから彼女は思い悩み、気持ちを少しでも解ってくれる人を探してシェイクというハンドルネームにたどり着いたのだ。
 シェイクは彼女の大好物。
 ただ、それだけの事だったのだが、メールでのやりとりを続けていく内に、ジェイクは彼女の心の拠り所となっていき、彼女は彼に助けを求めるようにまでなったのだ。
 彼女が危険視する【マギスター・シード】…
 これを世に広めてはならない…
 広めれば、その力に魅せられ血迷った者達による戦争が起きる…
 起きてしまう…


11 動き出す博士達…

 欲に目が眩んだ20博士…
 その内の1人がマクレガー博士だった。
マギスターシード001話08 彼は、フェリアでは無い方、つまり、セラフィーニかラズティナをジェイクのもとに送り込んだ者でもあった。
 男である、彼がそのまま、ジェイクの元に行ったのでは怪しまれるだけ…。
 そこで、エクスペリメンターをしていたどちらかを送り込んだのだ。
「あいつからの報告はまだか…」
「はい、接触に成功…という連絡は受けましたが、その後は…」
「怪しまれるなよ…少しずつ虜にしてやれ…」
「はい、伝えて起きます…」
 どうやら、部下と会話をしているようだ…
 その会話を盗聴している者達がいた。
「…どうやら面白い事をやっているみたいね…」
「さて、どうやって近づこうかしら…」
 シリン博士とケイシー博士だった。
 二人も女性なので、フェリスのふりをしてジェイクに近づく事は可能だったが、出遅れてしまっていたようだ。
 世界を手にする力、【マギスター・シード】の力の虜となった博士達はお互いを牽制しつつ、密かに動き出す。
 マクレガー、シリン、ケイシーの三博士以外の博士も少しずつ様子を見ながら動くタイミングをはかっているようだ。
 博士同士の信頼関係はない…。
 隙あらば追い落としてやろう…。
 そんな気持ちでいる…。
 一緒に盗聴していた、シリン博士とケイシー博士も一時的に協力しているのであって、いつかお互いを出し抜いてやろうと考えている。
 博士達は刺客となるエクスペリメンター達を集め出した。
 目的は最高のエクスペリメンターとなりうるジェイクとフェリスの持つ【マギスター・シード】の強奪だ。
 醜い、【マギスター・シード】の独占を巡っての争いが始まろうとしていた。


12 刺客

 そして、ついにジェイク達の平和な時が破られる時が来た。
 刺客は突然、現れ、彼の日常を脅かした。
 バルドーヌとの夕ご飯の買い出しに行った帰り、そいつは現れた。
 表情はどこか虚ろで、明後日の方向を見ている…。
 両腕をだらんと下に下げており、前屈みの姿勢で近づいて来た。
 見るからに怪しい。

「がぁぁぁぁぁぁぁっ」
「うわぁ…」
 ジェイクは思わず飛び避けた。
 叫び声と共に突進してきたからだ。
 腕をぶんぶん振り回している。
 間接が外れているようだ。
 そんな状態で攻撃をしてきた。
 命令は恐らくジェイクの捕縛だろうが、刺客にそれを理解するだけの正気があるとはとても思えない。
「ジェイク君、そいつは恐らく刺客よ。気をつけて」
 バルドーヌも刺客と認識したようだ。
 ジェイク達も刺客に対して無策で待ちかまえていた訳ではない…。
 エクスペリメンターは【サブ・シード】を飲んでいるからボディーガードになる…。
 ジェイクも入れれば、エクスペリメンターはセラフィーニとラズティナを足して、3人、博士も3人…。
 敵かも知れないのだが、博士1人に対し、エクスペリメンターが1人ずつ、つけば、とりあえずフェリスに対してのボディガードにはなる。
 そのため、博士の外出にはエクスペリメンターが1人はついて来るという事になっていたのだ。
 ジェイクも【サブ・シード】を飲み、パワーを上げていて、買い物に出るというバルドーヌのお供についたのだ。
 とは言ってもジェイクが飲んでいたのは、身体を慣らすという意味も含めて、最下級のGランク。
 刺客がFランク以上の錠剤を飲んでいれば、苦戦は必死だった。
 ジェイクの身につけた特殊異能力は発火能力。
 と言っても少し強めの花火程度のもの…
 しかも一瞬で消えてしまう…
 目くらましくらいには使えるかも知れないが敵に与えるダメージはそう期待出来るものではなかった。
 対して、刺客の特殊異能力は身体を硬化させるものの様だ…
 正直、分が悪いと言えた。
マギスターシード001話09 「ぐるるるるるるるる…」
 うなり声をあげる刺客。
 ジェイクを威嚇しているようだ。
 だが…
「ジェイク君、これを飲みなさい!」
 オリアーナがセラフィーニと共にかけつける。
「ちょっと待って、私もいる、私も…」
 一歩遅れて、クェリシアとラズティナも現れた。
 それを見て、不利と感じたのか刺客は去っていった。
 状況を認識するくらいの知能は残っていたようだ。
 とりあえず、刺客は去ったが事態が動き出した事を感じるジェイクだった。
 その時、ジェイク達の住んでいたアパートあたりが爆発した。
 みんなが留守にしている間に別の刺客が現れたのだ。
 現場に行ってみると、ジェイクの住んでいた方は無事だったが、5人が住んでいた方のアパートは全壊だった。
 他の科学者がジェイクの側に住まわせないようにと5人の住むアパートを破壊したのだろう。
 途方に暮れるジェイク達…
 話し合った結果、他の科学者達と決着をつけない限り、不安はぬぐい去れないとして、科学者達のいるセントラル・ラボに向かうことにした。


13 戦力分析

 シードの錠剤(【マギスター・シード】を含む10段階の錠剤)には特殊異能力の持続時間が予測されている。
 完成してからそれほど時間が経っていないのであくまでも推測の域を出ないが、一番下のGランク〜Eランク(サブ・シード)の錠剤の持続時間は一週間から一ヶ月、Dランク〜Bランク(レギュラー・シード)は約一年間、Aランク〜SSランク(ネクスト・シード)は二年〜十年間くらいと言われている。
 そして、SSSランクの【マギスター・シード】は半永久的と言われている。
 持続時間が長い程、力も上がるが、その分、生命を脅かす危険度は増し、効果の持続時間が長いと錠剤の毒性が抜けるまで、時間もかかる。
 ランクが上がる程、背負うリスクも増えるのだ。
 もちろん、複数のシードの錠剤を服用する事も可能だが、それだけ、危険度は増す。

 それをふまえた上での5人が持ってきているシードの錠剤は以下の様なものだった。
 (【マギスター・シード】は隠し持っているのか一つもでなかった)

 まずは、バルドーヌの所有しているシードの錠剤は…
 Gランク32錠、Fランク18錠、Eランク24錠、Dランク5錠、Cランク5錠、Bランク3錠、Aランク2錠、Sランク1錠、SSランク1錠だった。

 次に、クェリシアの所有しているシードの錠剤は…
 Gランク50錠、Fランク4錠、Eランク12錠、Dランク3錠、Cランク8錠、Bランク2錠、Aランク0錠、Sランク1錠、SSランク1錠だった。

 次に、オリアーナの所有しているシードの錠剤は…
 Gランク10錠、Fランク8錠、Eランク16錠、Dランク0錠、Cランク5錠、Bランク2錠、Aランク2錠、Sランク3錠、SSランク1錠だった。

 次に、セラフィーニが自ら服用するために持ってきているシードの錠剤は…
 Gランク9錠、Fランク6錠、Eランク8錠、Dランク6錠、Cランク4錠、Bランク2錠、Aランク2錠、Sランク1錠、SSランク1錠だった。

 最後に、ラズティナが自ら服用するために持ってきているシードの錠剤は…
 Gランク8錠、Fランク7錠、Eランク6錠、Dランク6錠、Cランク5錠、Bランク2錠、Aランク2錠、Sランク1錠、SSランク1錠だった。

 ちなみに、オリアーナがジェイクに飲ませたのはFランクで3秒間、空中に浮けるという能力付与のシードで、それは彼が服用したので、数から差し引いている。
 また、科学者3人に対して、エクスペリメンターも3人という戦力となる。

 対して、敵となる科学者達は18人いて、エクスペリメンターの数も科学者1人に対して、複数いると考えられている。
 誰がいつ裏切るか解らないという状況はジェイク達と一緒だが、共同戦線をはるという可能性もあるので、戦力的にはどのような状態になるか全くわからない…。
 そして、【マギスター・シード】は貴重だから、敵もそんなに簡単に使って来ないと思うが、恐らく、敵の方が数多く所有しているのは間違いないだろう…。
 敵同士がそれぞれ、独占欲を持ち、そのため、牽制し合っているから成り立っている状態で、仮に敵が、全員、協力してくると考えると、ジェイク達では一溜まりも無く全滅するのは確実だった。
 わかりきっている事だが、国の軍隊や警察はこの力を欲しているため、ジェイク達の味方をする事はないだろう…。
 彼らに出来る策は、敵がお互いを疑っている今の状況を利用し、上手く立ち回り、【マギスター・シード】を全て、回収する事にある。
 【マギスター・シード】さえ、回収してしまえば、敵はその力を恐れて手出しをするのを諦めるだろう…。
 【マギスター・シード】にはそれだけの力を秘めているのだ。


14 セントラル・ラボの異変

 ジェイク達は攪乱の意味も込めて、迂回を繰り返しながら、セントラル・ラボに向かう事にした。
 まともに行っても、一月半はかかる道のりとなる。
 あくまでも、まともに行けばの話ではあるが…
 予定より延びる可能性は大いにある。
 そのため、彼は学校を一年間、休学した。
 そのくらいはかかるだろうとふんだのだ。
 それだけ、彼は本気だった。

 一方、彼らの目指す、セントラル・ラボでは異変が起きていた。
 18人の科学者の内、三人の科学者が【マギスター・シード】を自ら服用し、圧倒的な力を手にしたのだ。
 そのため、科学者達はその三人を頂点とする、三つの派閥に別れようとしていた。
 【マギスター・シード】の力を手にした三人の科学者は…
 ガンディオルとエンリックという名前の男性博士とフォレーゼという名前の女性博士だった。
 残る、15人の博士達は保身のために次々と三人の博士(三強)に媚びを売ってまわった。
 博士達の勢力が三つにまとめられようとしていたのだ。
 他の博士達が所有している【マギスター・シード】も三強(ガンディオル、エンリック、フォレーゼ博士)の元へ集められようとしていた。
マギスターシード001話10 博士同士での上下関係がはっきりとし始めていたのだ。
 また、エクスペリメンター(刺客)達の増員も行われていた。
 戦力の増強を図るためだ。

 もちろん、その事はジェイク達も知らなかった。
 その事は、ジェイクやフェリス、フェリアを騙そうとしている博士やエクスペリメンター達に取っても寝耳に水の話だ。
 もちろん、知ったらの話だが。
 ジェイク達6人はその異変に気付かず、相手の戦力もろくに解らないまま、敵の本拠地、セントラル・ラボへ向かおうと考えていたのだ。
 彼らに有利な事と言えば、【マギスター・シード】の源を作り出したフェリスがいるという事。
 もう一つはエクスペリメンター・テストで殆ど満点に近い成績を出した、ジェイクがいるという事の二点である。
 後は、人数が少ないので、小回りが利き、身を隠すには好都合という点では有利に進められる可能性もある。


15 不安だけど…

「おばちゃん、これいくら?」
「あいよ、百万円だよ」
「ひゃ、百万円!?た、高くない?」
「クェリシア、百円の事よ」
「え?そうなの?おばちゃん、嘘言わないでよ」
「そうじゃなくて、冗談の通じない子だね〜」
「えぇ?どういう事?」
 世間知らずのクェリシアがみんなにからかわれた。
 ジェイク達一行はひっそりと旅を開始していた。
 彼らの狙いは時間を出来るだけ、引き延ばして、シードの錠剤に対する耐性をつけていく事だった。
 特に、ジェイクは服用したばかりで、すぐにシードの錠剤に身体は慣れていかない。
 テストで998点を出していても、身体の構造を丸ごと変えてしまう薬である。
 そんなに簡単に適応したりはしない。
 セラフィーニとラズティナはエクスペリメンターとしての経験から、ある程度の戦力にはなる。
 だが、ジェイクだけは戦力と呼ぶにはまだ、力不足だった。
 仲間のためにも早く、力をつけたい。
 頼られる男になりたい…。
 そう、思うのだった。

「ジェイク君、どうしたの?」
「ん、あぁ、なんとなく…さ、楽しいかなって…不謹慎かもしれないけどね…セラフィーニさんはどう思う?」
「…私も…楽しい…よ」
「みんなとずっと一緒だったら良いな…」
「そう…だね…」

 いつ、敵に襲われるか解らない旅ではあるけれど…
 いつ、裏切り者が出るか解らないのではあるけれど…
 不安ではあるけれど…
 全く、先の見えない旅ではあるけれど…
 ジェイクは五人の美女達との旅は楽しいと思えるものだった。
 そんな彼の目はまっすぐ先を見据えていた。
 それをフェリスとフェリアはじっと見つめるのだった。

 ジェイクとフェリスとフェリアはそれぞれ、味方が誰だか解らない…
 解らないけど、全員、味方だったら良いなと思うのだった。

登場キャラクター説明

001 ジェイク(ハンドルネーム シェイク)

ジェイク このお話の主人公。
 ハンドルネーム、シェイク。
 ひょんな事からフェリスと名乗る少女から助けを求められるが、フェリスが誰なのか解らない。
 マギスター・シードのエクスペリメンターとしての資質が高い。











002 バルドーヌ(フェリス?)

バルドーヌ このお話のヒロイン?=フェリス…かもしれない少女。
 男なれしているのか彼女とのデートでは彼女がリードをした。
 マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。 













003 クェリシア(フェリス?)

クェリシア このお話のヒロイン?=フェリス…かもしれない少女。
 本当に科学者かと思うほど幼い感性の持ち主。
 スタイルには自信がある。
 マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。












004 オリアーナ(フェリス?)
  
オリアーナ このお話のヒロイン?=フェリス…かもしれない女性。
 人付き合いが苦手でデートというものがどうすれば良いのか解らない。
 研究熱心。
 マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。











005 セラフィーニ(フェリア?)

セラフィーニ このお話のヒロイン?=フェリア…かもしれない少女。
 見ている方がお腹いっぱいになる程、よく食べる。
 デートでは殆ど飲食店だった。
 ジェイク同様にマギスター・シードのエクスペリメンターでもある。












006 ラズティナ(フェリア?)

ラズティナ このお話のヒロイン?=フェリア…かもしれない少女。
 デートなのに自分を探させたり等、独特の感性を持つ少女。
 サプライズ好き。
 ジェイク同様にマギスター・シードのエクスペリメンターでもある。












007 マクレガー

マクレガー マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。
 刺客としてセラフィーニかラズティナのどちらかを差し向けている。
 マギスター・シードの独占を狙っている。












008 シリン

シリン マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。
 マクレガーの所を盗聴していた。
 マギスター・シードの独占を狙っている。













009 ケイシー

ケイシー マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。
 マクレガーの所を盗聴していた。
 マギスター・シードの独占を狙っている。













010 ガンディオル

ガンディオル マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。
 マギスター・シードを服用し、三強にまでのぼりつめた。
 他の科学者達を支配下におく。













011 エンリック

エンリック マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。
 マギスター・シードを服用し、三強にまでのぼりつめた。
 他の科学者達を支配下におく。













012 フォレーゼ

フォレーゼ マギスター・シードを作り出した21人の科学者の1人。
 マギスター・シードを服用し、三強にまでのぼりつめた。
 他の科学者達を支配下におく。