起001話

おるおさんの新宇宙世界挿絵1話

01 おるおさんは大忙し


「じゃから、違うと申しておろう。
 うむ。
 うむ。
 うむ。
 そうではない。
 うむ。
 うむ。
 そうじゃ。
 24の宇宙世界はクアンスティータ様のものじゃ。
 それは芦柄 くあん様に変わろうとも変わらぬ。
 何?
 それでは、クアンスティータ様の後継者様が持つべき宇宙世界が無いじゃと?
 そんなものは一から作れば良かろう。
 世界他外(せかいたがい)からダウンサイジングして持ってくればスペースは確保出来るはずじゃ。
 後の中身は所有者が作れば良かろう。
 うむ。
 うむ。
 それで頼むのじゃ。
 よしなにな」
 電話で会話中なのは【ファーブラ・フィクタ】の世界において最強の存在とされるクアンスティータ様の乳母(うば)にして摂政(せっしょう)でもある古き者、オルオティーナ様です。
 オルオティーナ様――おるおさんはいつも忙しそうです。
 クアンスティータ様のお世話係として、クアンスティータ様が所有するとされる24の宇宙世界の管理をしています。
 クアンスティータ様が芦柄 くあんとして引退した今はクアンスティータ様の代わりに24の宇宙世界を管理、統括しています。
 さて、電話でも持ち上がっていた問題――クアンスティータ様には【クアンスティータの後継者】と呼ばれる次の主となる存在の候補が挙がっているとされていて、クアンスティータ様の持つ力などの後継をどうするかで、おるおさんの所に質問等が舞い込んで来ているのです。
 クアンスティータ様の後継者はクアンスティータ様の特別な力を引き継ぐとされていますが、クアンスティータ様には様々な力以外にも【宇宙世界】を24も所有しています。
 その24の宇宙世界をクアンスティータ様の後継者に引き継ぐかどうかで今、問題になっているのです。
 【宇宙世界】の上の単位である、【世界他外(せかいたがい)】、更に上の単位である【偉唯位場(いゆいば)】、そのまた更に上の単位である【何抜違至(かぬいし)】の引き継ぎは決定しています。
 ただし、クアンスティータ様の部屋とも言うべき、【宇宙世界】の引き継ぎだけは決定していませんでした。
 普通の存在でも何とか耐えられるレベルである【宇宙世界】は、その上の単位である【世界他外】以上と違い、他者との交流を主体に置いている場所です。
 クアンスティータ様の【宇宙世界】はクアンスティータ様の部屋の様なものなので、クアンスティータ様のものであるとおるおさんは主張しています。
 対して、おるおさんの後を継ぎ、クアンスティータ様の後継者の乳母と摂政を務める予定のティーオルオナ――てぃーおちゃんはその24の【宇宙世界】もクアンスティータ様の後継者のために頂戴と言ってきています。
 それに対して、てぃーおちゃんの母親でもあるおるおさんは待ったをかけました。
 【宇宙世界】は自分の部屋の様なもの。
 それを後継者とは言え、他者に渡す事などあり得ない。
 自分の部屋が欲しいなら自分で作れ――とそう言いたいのです。
 そこで用意されるのはクアンスティータ様の宇宙世界と同じ数の24の新しい【宇宙世界】です。
 この【新宇宙世界】は他の宇宙世界と違い、【世界他外】の一部から加工して持ってきているために、少々条件が異なります。
 そこで、名称を【宇宙世界】や【新宇宙世界】というのではなく、区別するために【世界混宇宙連(せかいこんうちゅうれん)】と名付けました。
 規模としてはクアンスティータ様の【宇宙世界】とほぼ同等の大きさです。
 ただし、クアンスティータ様の宇宙世界と違い、中に何もありません。
 空っぽです。
 所有者が中身を入れないと何も無いままとなっています。
 そこで、中身を作れる存在として、【趣味の存在】と呼ばれる存在達が候補として挙がりました。
 それにクアンスティータ様の後継者が所有する事になる【世界混宇宙連】の中身を作ってもらおうという事になりました。
 それが後継者の一名であり、【クアンスティータの子?】である【クエニーデ・クアンスティータ】、
 永遠の妹キャラと呼ばれる【ニズ・クォトヌァール】、
 最強の引きこもりと呼ばれる【稀生 踊詩(きにゅう ようし)】の三名でした。
 【クエニーデ】ちゃんは13の【世界混宇宙連】、
 【ニズ】ちゃんは7つの【世界混宇宙連】、
 【踊詩】君は4つの【世界混宇宙連】を担当し、その新たな宇宙世界を彩る事になります。
 ただ、【クエニーデ】ちゃんと【ニズ】ちゃんは謎が多く、おるおさんも簡単にはアポが取れません。
 そこで、残った【踊詩】君に【世界混宇宙連】の中身を飾るプレゼンテーションをしてもらうと言う事になったのです。
 ただし、【踊詩】君は引きこもりです。
 【マイスペース】という自分だけの空間を作り、そこに引きこもっています。
 その【マイスペース】を作る能力こそが、【世界混宇宙連】の中身を作る才能があると認められた点なのですがなかなか本人に会うことは難しそうですね。
 そこでおるおさんは、【踊詩】君の関係者にコンタクトを取った様です。


02 関係者への交渉


「まさか、【化形】と話をする事になるとはな。
 お主は元々、第14側体クアンスティータ・フィーニス様の勢力となっている。
 その認識はあるのか?」
 ――おるおさんは、【踊詩】君の関係者として彼が大事にしている【化形の少女】に目を付けたようです。
 【化形の少女】――【化形】とは元々、第14側体クアンスティータ・フィーニスが取り扱っている存在の一つです。
 宇宙の初めから終わりまでを記録する存在というのが本来の存在理由ですが、この【化形】とは、もう一つの存在である【ぬいこっと】と共に、【クアンスティータのお友達】と呼ばれる存在でもあります。
 クアンスティータ様に名前を付けられる事を至上の喜びとしている存在なのですが、どうやら、この【化形の少女】は、クアンスティータ様の後継者としての最有力候補である【クエニーデ】ちゃんに名前を付けてもらいたがっている様ですね。
 どの様な経緯で、【踊詩】君に引き取られたのかは不明ですが、彼を【ご主人】と呼び、彼の【マイスペース】で、お掃除などを担当して過ごしている様です。
 彼が出てこないので、外の様子を見に来た【化形の少女】を捕まえて、おるおさんは仲介役になってもらおうというつもりの様です。
 おるおさんは、
「まだ、名前はないのであろう?
 お前の事はどう呼べばよいのかのぅ。
 【化形】では他の【化形】と区別出来んしな……」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「私の事は【化形の少女】とお呼びくださいな。
 私はそう呼ばれていますので、それでなれてます。
 ところであなたはどちら様ですか?
 私、ご主人の所に戻らないといけないのですが。
 出来たら戻していただきたいのですが……」
 と言いました。
 おるおさんは、
「まぁ、少し話をさせてもらえんか?
 実はお主に頼みがあってな。
 【稀生 踊詩】――奴をスカウトしたい。
 聞けば、あの【芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)】の弟弟子だそうだな。
 才能は【芦柄 吟侍】のそれすら大きく上回ると聞く。
 実は妾は【芦柄 吟侍】の生体データを持っていてな。
 あやつの力を強化した【超吟侍】に【世界他外】を探らせたが、ほとんど戻っては来なかった。
 じゃが、【稀生 踊詩】は【世界他外】で自分の空間を作り出し、自由気ままに暮らしていると言う。
 【芦柄 吟侍】も高く評価していた。
 よって、そやつと交渉したいと思うておる。
 それでじゃな。
 そなたから【稀生 踊詩】に口利きをしてもらいたいのじゃ。
 是非、【稀生 踊詩】の力で、新たな【宇宙世界】を作って欲しいと――
 そう伝えて欲しいのじゃ。
 どうじゃ?
 頼まれてくれるか?」
 と言いました。
 おるおさんは娘のてぃーおちゃんから、【世界混宇宙連】4つの創造を彼に任せたいと言われています。
 娘の頼みとは言え、おるおさんは【踊詩】君のプレゼンを聞いて、それから彼に【世界混宇宙連】4つの創造を頼むかどうか判断したいのですが、それにはまず本人に出てきてもらわなければなりません。
 その説得を【化形の少女】に頼みたいと思って声をかけたのです。
 【化形の少女】は、
「それはご主人の趣味の世界を【宇宙世界】で展開しても良いという事ですか?」
 と聞きます。
 おるおさんは、
「妾は、娘から推薦を受けただけなので、任せても良いかどうかの判断は【稀生 踊詩】のプレゼン次第じゃが、問題が無ければ新たな宇宙世界――【世界混宇宙連】の内、4つを任せても良いと思うておる。
 どうじゃ?
 悪い話では無いと思うが?」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「ご主人の趣味が展開出来るのであれば多分、ご主人は喜ぶと思いますけど、問題はあると思いますよ。
 私が言うのも何ですけど、ご主人、性格面で色々と問題ある方だし……
 あなたが思っている様な人材じゃないですよ」
 と言いました。
 おるおさんは、
「邪悪な性格をしておるのか?」
 と聞きます。
 【化形の少女】は、
「ある意味、邪悪かも知れませんね。
 ご主人、オタクだし、エッチだし。
 ザンネンな性格をしてますよ」
 と言いました。
 【ご主人】に対してあまりの言いようですね。
 おるおさんは、
「【芦柄 吟侍】の弟弟子というから安心しておるのだが、性格面に難ありということか……
 うむ。
 【世界混宇宙連】は、いずれはクアンスティータ様の後継者となられる方が管理する場所じゃ。
 邪悪な者が作った所など認められんが、まずは会ってみん事には何とも言えぬな。
 とりあえず会わせてもらいたいのじゃが?
 可能か?」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「ご主人は可愛い女の子が大好きなので、そういう方にお願いされたら多分、コロッといくかも知れませんよ。
 ただし、採用になったとして、ご主人が作ったものはよく暴走したりしますので、ご期待に添えるものを生み出せるかどうかはわかりません。
 それでもお会いになりますか?」
 と言います。
 自分の主をなんだと思っているのでしょうね。
 おるおさんは、
「とにかく会わせてもらいたい。
 話はそれからじゃ」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「わかりました。
 頼んでみます。
 そちらは可愛い女の子を用意してください。
 それで釣りますので。
 それで良いですか?」
 と言いました。
 どうやら、交渉成立ですね。
 こうして、おるおさんと【踊詩】君は会う事になりました。


03 【稀生 踊詩(きにゅう ようし)】の人柄


 そして、【踊詩】君とおるおさんが会うときが来たのです。
 おるおさんはクアンスティータ・ファンクラブの中から選りすぐりの美女達を連れて待っています。
 そんな中、【踊詩】君が居る【マイスペース】の入り口が開いたかと思うと、
【♪ずんずんずんずんずんずんずんずん
 ズンズンズンズンズンズンズンズン
 誰が呼んだか謎の戦士
 望むの誰だ謎の騎士
 俺は【んーこ】だ。
 【んーこ】な男だ。
 はいせーつせ・ん・し〜
 【んーこまん】だ。
 ブリブリッチワー
 へいっ♪】
 という的外れな歌と一緒に奇妙なお面を付けた男性が現れました。
 ポーズを取っています。
 どうやら、【んーこまん】の決めポーズの様です。
 おるおさんは、
「………」
 と絶句しました。
 おるおさんの後ろの美女達もどう反応したら良いのかわかりません。
 反応がないのを見たのか、【踊詩】君は、事もあろうか、
【♪ずんずんずんずんずんずんずんずん
 ズンズンズンズンズンズンズンズン
 誰が叫んだ超越戦士
 不思議な男謎の騎士
 俺は【んーこ】だ。
 【んーこ】なまことだ。
 はいせーつせ・ん・し〜
 【んーこまん】だ。
 ブリブリッチュワー
 へいっ♪】
 と二番らしき歌を歌ったのです。
 おるおさんは、
「な、なんじゃこの男は……?」
 と戸惑っています。
 【踊詩】君の後から出てきた【化形の少女】は、
「だから止めた方が良いと申したのですよ。
 【んーこまん】の歌が女性に受けるというのはガセネタというものですよ。
 そもそも、女の子がそんな下品な作品のファンな訳ありません。
 あの時、テレビで特集していたのは特殊な嗜好の持ち主って説明してたじゃないですか。
 都合の良い所だけ見てたんですか?」
 と言うと、【踊詩】君は、
「そ、それじゃ、おいらっちの努力は……?」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「【んーこまん】の歌を覚えてお面を取り寄せただけじゃないですか。
 そんなの世間様では努力と呼ばないんですよ」
 と冷たく突き放します。
 おるおさんは、
「ど、どうやら、来るところを間違えたようだ。
 帰るぞ」
 と言って引き返そうとします。
 それに気づいた【踊詩】は、おるおさんにすがりつき、
「ま、待ってください。
 これは何かの間違いです。
 そうだ。
 【んーこまん】のエンディングも覚えたんですよ。
 聞いてください。
 ♪べんべんべんべんべんー
 べんべんべんべんべんー
 べべべべべんべんべんべべーん
 べべべべべんべんべんべべーん
 べべべんべべべんべべべんべべべんべべべんべべべんべべべんべべべん
 べべべべべべべべーんで
 とやっ♪
 って言うんです。
 あぁ、待って。
 帰らないで……
 そ、そうだ。
 騙されたんですよ。
 詐欺にあったんです。
 おいらっちはもっと……」
 と言いました。
 見るからに言い訳がましい台詞です。
 おるおさんは、
「えぇい、離せ。
 離さぬか。
 百歩譲って騙されたとしても、そんな見え見えの嘘に気づかぬ様なマヌケな奴になど【世界混宇宙連】を任せる事は出来ぬわ」
 と言いました。
 最もだと思います。
 続けて、
「だいたい、【んーこまん】とは何じゃ?」
 と言いますと【化形の少女】が、
「ご存じ無いんですか?
 溜まったものを吐き出す孤高のヒーローです。
 げりげりぴー帝国の野望を阻止するため無人島から都会に憧れてやってきた青年で、妻子持ちの……」
 と言ってきたので、おるおさんは、
「もう良い。
 聞きとうないわ。
 そんなくそ話は」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「そうですか?
 ローカル放送で子供達に大人気だと聞いたのですが?」
 と聞き返します。
 おるおさんは、
「子供はそういう下品な話が好きだというだけじゃ。
 大人が見る様なものでは無かろうが」
 と言いました。
 確かにその通りだと思います。
 【化形の少女】が言っていた性格がザンネンだというのはこういうことだったんですね。
 【踊詩】は、
「こ、これには訳があるんですぅ〜
 世にももの悲しい訳がぁ〜
 聞いてくれますか〜
 おでーかんさまぁ〜
 後生ですから〜
 後生ですから〜」
 と泣いてすがりついてきた。
 【踊詩】君は見た目は二枚目ですが、性格は完全に三枚目以下の様ですね。
 おるおさんは、
「その訳とやらで、さっきの醜態が取り消せるというのか?」
 と聞くと、【踊詩】は、
「もちろんですよ、おねーさん。
 聞いてください」
 と言って話し出します。
「おいらっちは前に番組をやっていたんですよ〜。
 13曜日毎日アシスタントの女の子を交代して色んなコーナーを立ち上げて……
 アシスタントの子達はおいらっちのファンからおいらがオーディションで選んだ子達で可愛い子達ばかりでした。
 あれ買って。
 あれ欲しいという要望にもおいらっちは答えて、アシスタントの子達との仲は最高でした。
 ところが、ところがですよ。
 気づいたらその子達全員、他に男作って逃げたんですよ〜。
 ねぇ悲しいでしょう?
 辛いでしょ?
 よよよよよ……」
 と言いました。
 おるおさんは、
「それは貴様が単にマヌケだっただけではないのか?
 どこがもの悲しいのじゃ?」
 と言いました。
 その通りです。
 【踊詩】君は、
「だって、アシスタントの子達はみんなおいらっちの事が大好きだって言ってたんですよ。 だからおいらっちは1分の1フィギュアまで作ってあげたのに。
 なのに、なのに、あの子達、おいらっちを裏切って……
 よよよよよ……」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「多分、実物の女性達よりスタイルも肌質も顔も良くしたのが原因だと思いますけどね。
 ご本人達、大分怒ってましたから。
 プライド、傷つけちゃったんですね。
 誰だって、自分より美しい複製を作って渡されたらそりゃ、怒りますよね。
 ご主人はそういうの全然気づかない方ですから」
 と言いました。
 おるおさんは、
「貴様に人望が無いというのはよぉ〜く、わかった。
 ほんとに【芦柄 吟侍】の弟弟子か?
 あの男はかなり人望があったぞ?
 それこそ、おなご達は奴を取り合ったくらいだ。
 聞いておると貴様は真逆な様な気がするが?」
 と聞きました。
 【化形の少女】は、
「ご主人は、女の子は大好きですけど、女性不信なんです。
 察してあげてください。
 ご主人はただ、女の子にモテたいだけなんです。
 ちやほやされたいんです。
 でも、女の子は、ご主人のもとから去っていきます。
 ――というお話をご主人のお友達から聞いたことがありますが、そのお友達もご主人と同じ感じの方なので、どこまで本当の話かわかりません」
 と言います。
 おるおさんは、
「貴様は【芦柄 吟侍】より優れた【答えの力】を持っていると聞いたぞ。
 なのに、おなごの気持ちもわからんのか?」
 と尋ねると、【化形の少女】は、
「奴は確信犯なんです」
 と力説しました。
 おるおさんは、
「【奴】?
 【ご主人】はどこ行った?
 確信犯とはどういう事じゃ?」
 と【化形の少女】に尋ねます。
 【化形の少女】は、
「ラッキースケベというのはご存じですか?
 偶然、女の子と接触したりして、男の子が美味しい思いをするあれです。
 奴は、ご主人は――【答えの力】をラッキースケベだけのために使用しているのです。
 どの位置に立ち、どのような姿勢を取れば、偶然を装い、女の子とタッチ出来るか、奴は全て計算しているのです。
 奴は確信犯なんですよぉ〜
 くそ下郎なんですよぉ〜
 女の子の敵なんですよぉ〜」
 と言いました。
 おるおさんは、
「大丈夫か?
 お主、キャラ崩壊しておるぞ。
 【化形】は持ち主の影響を受けやすいと聞く。
 よっぽど、持ち主の性格が破綻しておるのじゃな」
 と呆れました。
 【化形の少女】は、
「お褒めにあずかり恐縮です」
 と言いました。
 どうやら、彼女もどこかズレている様です。
 おるおさんは、
「褒めとらん、褒めとらん。
 まぁ、今の説明で、何故、奴に人望が無いかがよぉ〜くわかった気がするのぅ」
 【化形の少女】が、
「ご主人の不幸は自業自得です。
 どうかお気になさらずに。
 ご主人は黙っていれば良い男子です。
 それだけは断言出来ます。
 黙って居ればの話ですけど」
 と言ったので、おるおさんは、
「……帰るか……」
 とつぶやくと、【踊詩】君は、
「待ってください。
 何でもします。
 何でもしますから〜
 どうか、見捨てないでぇ〜」
 と泣いてすがります。
 なんだかみっともないです。
 【化形の少女】は、
「ご主人はただ、趣味の世界を【宇宙世界】レベルで展開したいだけなんです。
 支配したいとかそんな気持ちはこれっぽっちも無くて、ただ、コレクションを愛でていたいだけなんです。
 そういう方なんです。
 そんなヘンテコリンな方なんです」
 と言うと、【踊詩】君は、
「ヘンテコリンは余計だ
 おいらっちはかっこいい男じゃなかったのか?
 さっき言ってたじゃないか」
 と言いました。
 そう言いながらもおるおさんの体を離しません。
 なんとなく、おるおさんとの接触を楽しんでいる様な気がします。
 おるおさんと言えば、泣く子も黙る強大な力を持つお方。
 その方をつかんで離さないという根性だけは大した物です。
 おるおさんは、
「ド阿呆じゃのぅ……」
 とつぶやくと【化形の少女】は、
「そうですね。
 否定はしません。
 事実ですからね
 でもそこが可愛くもあります。
 本人は大まじめですからね」
 と頷きました。
 【踊詩】君はまるで愛玩動物の様な瞳でおるおさんを見つめ、懇願する姿勢をとりました。
 その目は――
【美味しい話を取り上げないで。
 お願い。
 お願いします】
 と言っている様な雰囲気です。
 おるおさんは、
「わかった、わかった。
 妾も悪かった。
 確かにものを見ずに貴様の性格だけで判断するのは問題があったな。
 貴様のプレゼンを見てやろう。
 貴様の性格は考慮から外す。
 その上で判断する。
 とりあえず、やってみろ」
 と言いました。
 どうやら、おるおさんは見るだけ見てくれるようです。
 それを光景を見たのを確認してからか、
「ではお母様、彼のプレゼンを見てくれるのですね?」
 と声をかけた存在が。
 おるおさんの娘で、クアンスティータ様の後継者の乳母と摂政をする予定のてぃーおちゃんですね。
 どうやら、てぃーおちゃん。
 男性が苦手な様で、【踊詩】君も男性ですので、直接会えなかったのですが、彼のコレクションのファンでどうしても彼の趣味の世界を広めたかったようですね。
 おるおさんは、
「では用意もあるだろうから改めて日取りを決め、プレゼンをしてもらう。
 いつなら出来る?」
 と聞きました。
 【踊詩】は、
「一ヶ月ください。
 おいらっちの素晴らしき世界。
 それをご覧に入れますよ」
 と言いました。
 さっきまでの醜態はどこへやら?
 まるで出来る男でも演じている様です。
 ゴタゴタとなってしまいましたが、1ヶ月後、【踊詩】君によるプレゼンが行われる事になりました。
 書類などによるアピールをした後、後日改めて、書類審査を通貨した他の候補者と共に【モデルバージョン】のアピールタイムをして、最終的に決めるという事になります。
 つまり、彼のアピール次第で、【世界混宇宙連】で採用されるかどうかが決まるという事になりますね。


04 【化形の少女】によるプレゼン


 【踊詩】君が【世界混宇宙連】を作るのにふさわしいかプレゼンをする事になりましたが、【世界混宇宙連】の創作者候補は彼一人ではありません。
 【クエニーデ】ちゃんと【ニズ・クォトヌァール】ちゃんは、ほぼ決定であるし、この2名と連絡がつきませんので、変更のしようがありません。
 あるのは【踊詩】君が受け持つ事になるかも知れない4つの【世界混宇宙連】です。
 それを受け持つのを誰にしようかとおるおさんは頭を悩ませているのです。
 大事なのは各【世界混宇宙連】のテーマです。
 例えば、クアンスティータ様の【宇宙世界】にはテーマの様なものが決まっていました。
 例えば、第一本体クアンスティータ・セレークトゥース様の【宇宙世界】、セレークトゥース・ワールドは【プリンセスと道化】それに【お店】がテーマとなっていました。
 同じ様に第二本体クアンスティータ・ルーミス様の【宇宙世界】、ルーミス・ワールドでは【レア・クリーチャー】と【解けない(はずの)パズル】というテーマが存在しています。
 同様に、第三本体クアンスティータ・レクアーレ様には【創造】、第四本体クアンスティータ・ミールクラーム様には【奇跡】等の様に各【宇宙世界】にテーマが決まっていました。
 第五本体以降や側体達の【宇宙世界】も同様にテーマが存在していました。
 他にもたくさんの存在が居ましたが、【宇宙世界】全体で大きなテーマというのは決まっていて、それが、各【宇宙世界】のキャッチフレーズの様になっています。
 よってプレゼンターとなる創作者候補達は【世界混宇宙連】の大きなテーマを示さなくてはなりません。
 基本的にはそのテーマに沿った何かがその【世界混宇宙連】で増えていくことになります。
 【踊詩】君以前にも複数名のプレゼンター達がおるおさんにプレゼンしましたが、ほとんどの者がどれも似たり寄ったりでした。
 ただ、クアンスティータの宇宙世界のテーマを真似て――
 【第一世界混宇宙連】のテーマは、【プリンセス】、
 【第二世界混宇宙連】のテーマは、【珍しい生き物】、
 【第三世界混宇宙連】のテーマは、【創造物】、
 【第四世界混宇宙連】のテーマは、【奇跡】がテーマとなりました。
 何のひねりもないクアンスティータ様の第一本体から第四本体までの劣化コピー――そんな印象でした。
 おるおさんにとって、クアンスティータ様の出来損ないを後継者とする訳にはいきません。
 後継者でなくともその後継者が使用する事になるであろう【世界混宇宙連】の創作者にもクアンスティータ様のする事をただ真似るだけの存在に任せたくないのです。
 【宇宙世界】の後継となる【世界混宇宙連】を取り扱う者として求められている資質は、【新しい事】――
 それに取り組める姿勢です。
 それが出来ないのであれば用はありません。
 書類審査を通過出来るか否かはこの【新しい事】が提案出来るかどうかにかかっています。
 クアンスティータ様の7核の本体のリメイクであるのであれば、【ニズ・クォトヌァール】ちゃんがやる予定なので、間に合っているのです。
 同じものであれば、【ニズ】ちゃんの方が優秀に決まっていますので彼女の方を優先させます。
 同じものしか出来ないのであれば速やかにお引き取りいただく他無いと思っていました。
 さて、そんな基準で選考していましたが、何だかんだ言って【踊詩】君の出番が近づいて来ましたね。
 彼はどんなプレゼンをするのか?
 おるおさんは、
「芦柄 吟侍の弟弟子――
 お手並み拝見と行くか……」
 とつぶやきました。
 プレゼン前の提出物そこには、――
 【第一世界混宇宙連】のテーマは、【代体(たいたい)――別の体】、
 【第二世界混宇宙連】のテーマは、【コレクションタワー、コレクションレイク――趣味の塔、趣味の湖】、
 【第三世界混宇宙連】のテーマは、【姫形(きぎょう)――貴重な人形】、
 【第四世界混宇宙連】のテーマは、【唯秘蔵物(ゆいひぞうぶつ)――大切な宝物】となっています。
 なんと全て、クアンスティータ様の【宇宙世界】とテーマが異なります。
 この説明だけではよくわかりませんが、これまで見た十把一絡げの候補者よりは期待出来ると思っています。
 彼は腐ってもあの【芦柄 吟侍】君の弟弟子なのです。
 やはり他の存在とはひと味も二味も違うという事でしょうか?
 その答えは【踊詩】君自らが証明してくれるはず……でしたが、彼は人見知りの引きこもりです。
 【化形の少女】が通信装置を持って現れ、彼女が彼の言葉を中継するようですね。
 【化形の少女】は、
「えー……
 私はご主人――【稀生 踊詩】氏の代理を務めさせていただきます【化形の少女】と申します」
 と自己紹介をしました。
 おるおさんは、
「それは知っておる。
 以前、会うたでは無いか。
 それよりも何故奴はこんのじゃ?」
 と当然の事を聞きます。
 【化形の少女】は、
「お答えします。
 それは、怒られたら怖いから、代わりに行って来て――とご主人は申しておりました。
 兄弟子さんと違い、ご主人は勇気がないのです。
 勇気があったらそもそも引きこもりなんてしていません。
 才能だけはあるのですが気持ちがそれについていっていない。
 それだけの話です。
 ――とそう申しております。
 ……え?
 そんなこと言ってない?
 余計な事は言うな?
 ――ご主人は黙っていてください。
 私に任せてもらえばバッチリです。
 え?
 言ってない事まで言うな?
 大丈夫です。
 ちゃんと忖度(そんたく)して、ご主人の気持ちをしっかりと紹介いたしますので」
 と言いました。
 どうやら、【踊詩】君との間の打ち合わせが上手く行っていないようです。
 【化形の少女】が【踊詩】君の意図しない言葉までしゃべってしまって、通信機の向こう側でなにやらもめているようですね。
 だったら、小さな女の子の影に隠れてないで、出てくれば良いのに……。
 ――と、そう思いますね。
 本当に彼は主人公にふさわしくない存在ですね。
 大丈夫ですかね、彼で?
 まぁ、こっちの事情はおいておいて、話を進めましょう。
 【化形の少女】のプレゼンは続きます。
「まず、四つの【世界混宇宙連】のテーマですが、
 先日お送りした資料に書きました通り、
 【第一世界混宇宙連】のテーマが、【代体(たいたい)――別の体】、
 【第二世界混宇宙連】のテーマが、【コレクションタワー、コレクションレイク――趣味の塔、趣味の湖】、
 【第三世界混宇宙連】のテーマが、【姫形(きぎょう)――貴重な人形】、
 【第四世界混宇宙連】のテーマが、【唯秘蔵物(ゆいひぞうぶつ)――大切な宝物】となっております。
 これだけだと何のことを指しているのかよくわからないと思いますので、1つずつご説明いたします。
 まずは、【第一世界混宇宙連】のテーマである【代体(たいたい)――別の体】についてです。
 これは簡単に表現すれば、【コスチュームプレイ】――【コスプレ】を主体としたテーマとなります。
 【コスプレ】は基本的に憧れているキャラクターの服装や髪型などを真似て、そのキャラクターになりきるというものですが、【代体(たいたい)――別の体】ではそのイメージにあった体を貸し出しております。
 つまり、なりたい存在とそっくりそのまんまの能力を持った体に入って実際に行動出来るというテーマになります。
 RPG風に表現するのであれば、誰でも勇者や僧侶などになれるし、ボスキャラとして君臨する事も出来るというものになります。
 もちろん、元の体は大切に保管させていただきます。
 契約さえ、しっかりなさってくだされば元の体を捨てて、新しい体で生活する事も可能となります。
 体の交換条件としては、ただでという訳にはいきませんので、その辺りの条件整備なども必要となりますが、自分が好きではないと言う方にはお勧めの企画では無いでしょうか?」
 と言いました。
 それを聞いたおるおさんは、
「ふむ。
 なかなかに興味深いテーマじゃな。
 正直、あの男のプレゼンだから、ろくでもないものが来るかと思うておったが、どうやら、まともそうなので安心したぞ」
 と言いました。
 それに対して【化形の少女】は、
「ただし、【代体(たいたい)――別の体】で提供される体の九分九厘が女性体となります。
 私は男女均等にした方が良いと申したのですが、ご主人は女の子以外の体は作りたくないと駄々をこねまして。
 何とか説得したのですが、九分九厘が女性体という事で何とか納得させました。
 男性体はテキトーに作る可能性があるので、監視体制が必要となりそうですが」
 と答えました。
 おるおさんは、
「少し褒めればこれじゃ……
 ならん。
 せめて三割は男性体を用意せよ。
 クアンスティータ様が産まれてから男の割合は少なくなっておる。
 それは未来の世界の可能性の一つとして、第五本体クアンスティータ・リステミュウム様がY染色体を破壊した事に起因する。
 完全では無くなったが、それでも影響はいまだに続いておる。
 つまり、男の存在は貴重じゃ。
 男女比をさらに広げる行為を認める訳にはいかぬ。
 良いな。
 九分九厘女性体などにしたらはり倒すぞと伝えろ」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「聞きましたね、ご主人。
 こっそり女性体を増やすのは止めてください」
 と通信で伝えました。
 その先では、
「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだよぉ〜……」
 と駄々をこねて寝っ転がってジタバタする【踊詩】君の姿が目に浮かびます。
 おるおさんは、
「ふむ。
 【第一世界混宇宙連】についてはとりあえずそれで良い。
 後で【モデルバージョン】を見せてもらうがそれは説明の後で良いとする。
 で、他の【世界混宇宙連】の方はどうなのじゃ?
 【モデルバージョン】を説明する前に、残り3つの【世界混宇宙連】の説明を先にしてもらおうか」
 と言いました。
 【化形の少女】は、
「わかりました。
 次は、【第二世界混宇宙連】のテーマである、【コレクションタワー、コレクションレイク――趣味の塔、趣味の湖】ですね。
 実はこれは代表的なものを何にするかで結構、悩んだテーマでもあります。
 他にも【大樹】や【隠し部屋】、【引き出し】や【洞窟】、【袋】に【鞄(かばん)】など、いくつも候補が挙がったんです。
 ただ、共通しているのは自分の大切にしている物などを集めて一カ所に集めるというのが大きなテーマとなります。
 その代表格として仮に【塔】と【湖】が挙がったのですが、これは後で変更する可能性も無くはないです。
 作ってみた結果、変更するかも知れませんが、簡単に言ってしまえば、存在が大切にしている物を集めて一カ所に保管するのが大きなテーマとなりますね。
 コレクションルームや金庫みたいなものですね。
 男性は収集癖(しゅうしゅうへき)を持っている存在が多いと聞きます。
 この【第二世界混宇宙連】のテーマは宝物を集めて、収集する――そんな所ですかね?」
 と説明しました。
 それを聞いたおるおさんは、
「ふむ。
 それじゃと、第8側体クアンスティータ・ウルステーサ様の【宇宙世界】にテーマと多少、似ておるな?
 まぁ、ウルステーサ様は宝。
 お主達の方はコレクションという違いになるのかのぅ?
 似て非なるものとも言えるな」
 と言いました。
 ウルステーサ様の真似をしたのであればマイナス評価ですが、聞いてみるとウルステーサ様の宇宙世界のテーマとも微妙に異なるようですね。
 【化形の少女】は、
「続けますね。
 次の【第三世界混宇宙連】のテーマである【姫形(きぎょう)――貴重な人形】は文字通り、お人形さんですね。
 ご主人の趣味から行けば、どちらかと言えば、フィギュアなどに近いものになるのかも知れませんが、まだ、許可を得てから本格的に作るとの事なので、その辺りは未定ですね。
 お人形さんがテーマだと言えば良いですかね?
 私の様な存在――【化形】ともテーマとして近いですかね?」
 と言いました。
 おるおさんは、
「ふむ。
 そうじゃのぅ。
 人形系のテーマもクアンスティータ様の【宇宙世界】で無くは無いな」
 と言いました。
 ただ、【姫形】とついているからには何か変わった要素が加わっているのでしょう。
 その辺りが新しいと評価出来ると判断なさったようですね。
 【化形の少女】は、
「最後に、【第四世界混宇宙連】のテーマが、【唯秘蔵物(ゆいひぞうぶつ)――大切な宝物】ですが……」
 と言い始めると、おるおさんは、
「そう。
 それじゃ。
 そのテーマが一番わからぬ。
 何なのじゃ、それは?」
 と聞きました。
 【化形の少女】は、
「そうですね……クアンスティータ様を前にして、言える事では無いのですが、【一点物(いってんもの)】と言えば良いですかね?
 クアンスティータ様であれば、同じ様なものをご用意出来ると思いますが、それ以外の存在には作りようのない、唯一無二の逸品――それを集めた物と言えばよろしいですかね?
 そういう換えの利かない貴重なアイテムの事を指します。
 それが多く存在するのを【第四世界混宇宙連】のテーマとさせていただこうとご主人は申しております。
 いかがでしょうか?」
 と言いました。
 おるおさんは、
「うーむ……
 そなたのプレゼンを聞く限りでは何の問題も無さそうな気もするのじゃが、先ほどの【第一世界混宇宙連】のテーマの事もある。
 何か裏があるのではないのか?
 妾はそれを気にしておるのじゃが、何か申す事は無いか?」
 と聞きます。
 【化形の少女】は、
「そうですね。
 ご主人は【世界混宇宙連】の安定よりもご自分の趣味を優先させて作ろうとなさっております。
 なので、かなり偏(かたよ)った作りの【世界混宇宙連】になるのではないかと思いますが、現時点では何とも……」
 と言葉を濁しました。
 おるおさんは、
「ふーむ。
 奴の性格からして、創作は自分の趣味を優先させるという事じゃな。
 ならば逐一(ちくいち)、チェックする必要があるな。
 【世界混宇宙連】の着工には、妾も立ち会う。
 それで良ければ、次の【モデルバージョン】のプレゼン次第でじゃが、奴に4つの【世界混宇宙連】の創作を任せても良いと思うておる」
 と答えました。
 【化形の少女】は、
「そうですか。
 ありがとうございます。
 ご主人の代わりにお礼を言わせていただきます。
 もし、ご主人が不祥事を起こすようなら、ガツンとやってくださいまし。
 従者として、主のためなら心を鬼にしてお願いいたします」
 と言いました。
「お主、本当は【踊詩】を懲らしめたいだけなのではないのか?」
「いえ、滅相もございません。
 私はご主人の忠実なしもべでございます」
「そうかのぅ?
 結構、逆らっておる様に思えるが?」
「気のせいでございます」
「そういう事にしておこう」
「ほほほ」
「それは妾も笑えという事か?
 お主も悪よのぅ……とでも言って欲しいのか?」
「いえいえ、その様な事は……
 とりあえず笑いたくなったもので……
 ほほほ……」
「ふはは。
 これで良いか?
 どちらかと言えば、妾は奴よりお主の方の味方じゃ。
 奴は妾の体をベタベタさわりおって、痴れ者を無礼討ちをしてやろうかと思うたくらいじゃ。
 お主の方がいくらか好感が持てるぞ」
「それはありがとうございます」
「奴と四六時中共におれば、さぞやストレスが溜まるであろう?」
「それはノーコメントで」
「ふはは」
「ほほほ」
 ――と言うような事がありましたとさ。
 審査の続きはまた、改めて。


続きます。






登場キャラクター説明

001 おるおさん(オルオティーナ)

おるおさん この話の主人公で、クアンスティータ様の【宇宙世界(うちゅうせかい)】の管理を任されているクアンスティータ様の乳母(うば)にして摂政(せっしょう)でもあるとっても偉いお方です。
 クアンスティータ様が引退し、芦柄 くあん(あしがら くあん)として生きていく事になったため、クアンスティータ様の所有していた【宇宙世界】をクアンスティータ様の後継者に渡すかで問題になり、【世界他外(せかいたがい)】という【宇宙世界】より一つ上の単位の場所の一部を切り取り、【新宇宙世界】→【世界混宇宙連(せかいこんうちゅうれん)】として、一から作ることになり、その創作者として13を【クエニーデ】ちゃん、7つを【ニズ・クォトヌァール】ちゃんに任せる事にして、残り4つを誰にするかで悩んでいます。


002 てぃーおちゃん(ティーオルオナ)

てぃーおちゃん おるおさんの娘でおるおさんの後を継いで、クアンスティータ様の後継者の乳母(うば)と摂政(せっしょう)をしようという女の子です。
 男性が少々苦手な様ですが、【踊詩】君の作品の大ファンであり、彼を【世界混宇宙連(せかいこんうちゅうれん)】の創作者に推薦します。


003 化形の少女(けぎょうのしょうじょ)

化形の少女 【踊詩】君の元にいる【化形(けぎょう)】と呼ばれる存在の少女です。
 元々は第14側体クアンスティータ・フィーニス様の勢力とされていて、宇宙の初めから終わりまでを記録する存在でしたが、どういう経緯か【踊詩】君の【マイスペース】でお掃除などを担当して生活をしています。
 【踊詩】君の事を【ご主人】と呼びお世話をしていますが、どこか不満があるのか、時折、【踊詩】君の事を【ご主人】では無く、【奴】と呼びます。
 【踊詩】君の代わりにプレゼンをしてくれます。


004 【踊詩】君(稀生 踊詩(きにゅう ようし))

稀生 踊詩 才能はあるけど、性格がとてもザンネンな男性です。
 【芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)】君の弟弟子に当たる存在ですが、彼と違い勇気も無く引きこもり生活を続けています。
 【世界他外】で【マイスペース】を作って生活するなど、しれっと高いポテンシャルを発揮します。
 女の子は大好きですが女性不信でもあります。
 マヌケな性格をしていますので、得る事よりも失う事が多いというのが彼の特徴でもあります。