第七弾 プハンタシア・クアンティタース 外伝集

第七弾外伝集挿絵

01 準主人公 描堂 沙玲(びょうどう しゃれい)
02 終主編ヒロイン エクシトゥス
03 恭精編ヒロイン 殺陣模 まどり(たても まどり) 
04 踊詩編ヒロイン ニズ・クォトヌァール(似ず 異なる)


01 準主人公 描堂 沙玲(びょうどう しゃれい)


 最強の化獣(ばけもの)クアンスティータを引退へと導いた少年、芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)の冒険は終わった。
 クアンスティータに影響を及ぼす存在など居ないと思われていたが、吟侍はその固定観念を覆した。
 クアンスティータを変えた。
 その事は誰もが驚いた。
 実現不可能。
 それを可能としたのだから。
 そんな彼は惜しまれつつ、クアンスティータ同様に引退への道を選択した。
 彼には芦柄 くあんとなったクアンスティータとその姉となった芦柄 くあす(クアースリータ)を芦柄 カノンと共に面倒を見るという仕事がある。
 これからはそれに専念したいと最強の英雄の座を降りた。
 クアンスティータの乳母(うば)にして摂政(せっしょう)を勤めていたオルオティーナはクアンスティータと共に彼の事も惜しんだ。
 クアンスティータの後継者を求める動きがあり、芦柄 吟侍もまた、自身のフェイバリットアビリティーである【答えの力】を使って同じく後継者を用意した。
 クアンスティータには――
 【成り上がるクアンスティータ】、
 【天下るクアンスティータ】、
 【クアンスティータの子?】、
 という3種類の後継者が考えられており、それを受け継ぐための名前も用意されている。
 芦柄 吟侍も――
 【未知御 終主(みちお しめす)】、
 【海城 恭精(かいじょう きょうせい)】、
 【稀生 踊詩(きにゅう ようし)】、
 という3名の後継者が選ばれ、【答えの力】で彼らへの【手紙】が用意された。
 だが、オルオティーナは不安に思っていた。
 この3名に吟侍の後釜が本当に勤まるのか?――
 と。
 【終主】と【恭精】については吟侍よりもかなり格下の器だと評価している。
 唯一、吟侍よりも格上だと判断される【踊詩】に至っては自分の世界に籠もってしまっていて出てこない。
 いわゆる引きこり状態だった。
 こんな3名では吟侍の後継者は無理なのでは?
 そんなオルオティーナの不安を解消させるため、吟侍は複数の【手紙】の【追伸】を用意する。
 3名の後継者に不安を覚えるのであれば、その補填として、彼女達を後継者予備軍として指名する。
 吟侍は【答えの力】を使って【追伸の手紙】を【芦柄 吟侍の準後継者】達に送るのだった。
【追伸bP4
 拝啓、描堂 沙玲(びょうどう しゃれい)殿
 貴女を私の準後継者に指名します。
 後はよしなに
 芦柄 吟侍】
 ずいぶん、簡潔な内容だ。
 何をどうするかが全く書かれていない。
 ただ、自分の後継者に指名するとだけ書かれた【手紙】――
 これでは何をどうすれば良いのか全く解らない。
 だが、【描堂 沙玲(びょうどう しゃれい)】はこの手紙を確かに受け取った。
 沙玲とはどの様な存在なのか?
 【追伸bP4】という事は少なくとも他に13通の【追伸】が存在するのだろうか?
 それも解らない。
 とにかく情報が少なすぎる。
 ただ、【描堂 沙玲】という名の少女が【芦柄 吟侍】の準後継者に指名された事は確かだった。
 準後継者に選ばれた――
 それは、彼女の物語がはじまるという事でもあった。

 年老いた翁(おきな)――描堂 利圏(びょうどう りけん)は寿命が迫っていた。
 老い先短い彼の寿命がもう、間もなく尽きようとしていた。
 だが、未練は無い。
 ひ孫が――沙玲が、あの最強の英雄と言われる【芦柄 吟侍】の後継者予備軍に選ばれたのだから。
 ひ孫はちょっと抜けた感じのする女の子だ。
 どこかぼーっとしていて、見た感じ頼りない少女だった。
 そんな彼女を利圏は鍛えるだけ鍛えた。
 自分が叶わなかった最強の勇者という夢をひ孫に託すために。
 心を鬼にして鍛えた。
 だが、彼女には戦闘は向いていなかった。
 読書好きの文系少女。
 戦うよりも本を読むことの方が好きな眼鏡をかけた女の子。
 それが彼女だった。
 だから、利圏は他の後継者を探した。
 探したが見つからなかった。
 寿命も迫り、諦めかけたその時、沙玲のある才能に気づいた。
 彼女の特性に。
 彼女は本来の性格のままでは全く役に立たない。
 勇者としては無能と言っても良い。
 だが、仮の性格を設定すれば――
 何かを演じれば――
 彼女は無類の強さを発揮した。
 沙玲は演じる事によって実力を発揮するタイプだったのだ。
 それに気づいた利圏は、考えた。
 彼女を最強の勇者とするための案を。
 考えに考え抜いた末、ある結論に達した。
 沙玲はそう――【女優】だ。
 【女優】なのだ。
 何かの役割を与えてそれを演じる事によって、彼女は最強の勇者となる力を得ることが出来る。
 ならば、鍛えるべきは彼女ではない。
 彼女に演じさせるための【役】を用意するのだ。
 それが彼女を最強へと押し上げる。
 それから、利圏は自身と最強の作家集団を集めて、彼女に演じさせる様々な【役】を作った。
 どんな状況にも対処出来る様に、様々な【役割】を。
 これらの【役】を演じる事によって、彼女はどのようなクエストもクリア出来るだろう。
 彼女はそう、育ったのだから。
 自分はいずれ、死んでしまう。
 寿命が迫っているからだ。
 だから、自分の代わりに沙玲をコントロールする役を持った者が必要だ。
 利圏はそう考え、彼女に【役】を指示する自分の後継者、【脚本家】も探した。
 そして、その【脚本家】候補も何名か見つかり、【役】もあらかた用意出来た。
 彼女に演技指導する【監督】候補も見つけた。
 後は、後継者達に指示を出し、沙玲を最強の勇者にするプロジェクトを立ち上げてもらえば良い。
 自分に出来る事はもう、後、僅か。
 だが、心配は無い。
 ひ孫はあの【芦柄 吟侍】の【追伸】をもらったのだから。
 後は黙っていても彼女のサクセスストーリーは出来あがっていく。
 そう思うと笑って死んでいける様な気がした。
 利圏は、
「だれか……
 沙玲を。
 沙玲を呼んでくれ。
 最後に話したい」
 と言って、愛すべき、ひ孫を呼ぶ様に指示を出した。
 間もなく、沙玲が、
「ひいおじいさま。
 お呼びでしょうか?
 沙玲です。
 お加減は大丈夫ですか?」
 と心配そうにして入って来た。
 利圏は、
「おぉ……
 我が愛するひ孫よ。
 その顔をよく見せておくれ。
 お前は私の希望。
 果たすべき夢の結晶だ。
 私にとって何より代えがたい存在。
 愛しておるよ。
 誰よりも。
 何よりも。
 大切だ。
 だから、私の夢を叶えておくれ。
 私の代わりに。
 これから、お前に話しておきたいことがある」
 と言った。
 自分の死期が近いと悟った利圏は、最愛のひ孫に話しておくべき事を全て話す事にした。
 これが終われば悔いは全く無い。
 喜んで天に召されよう。
 利圏はそう思った。
 沙玲は、
「ひいおじいさま。
 どうなさったのですか?
 何か変ですよ」
 と言った。
 状況が解ってないのだ。
 曾祖父がもう少しで他界するという事を。
 もう、何も思い残す事が無くなり、力尽きる事を。
 ただ、大好きな曾祖父の話があるというのであれば素直に聞く。
 それだけだった。
 曾祖父は昔話も交え、ひ孫に聞かせた。
 4時間37分――
 曾祖父が思いを込めた話にかけた時間だ。
 その時間で曾祖父はひ孫へ伝えたい話を話しきった。
 そして、そのまま、
「ありがとう。
 後は頼んだよ……」
 と言って息を引き取った。
 残された沙玲は、
「ひいおじいさま、
 ひいおじいさま……」
 と言って曾祖父が息を引き取ったのを悲しんだ。
 利圏は逝った。
 後はひ孫――沙玲が曾祖父が叶えられなかった夢を引き継ぐのだった。
 描堂 沙玲の物語がはじまる。


02 終主編ヒロイン エクシトゥス


 【成り上がるクアンスティータ】――その候補に選ばれた女性が居た。
 何度も改名を繰り返し、とうとう、【ケレファ・トゥムリメ777】という名前も経て、【ルウァラ・トゥルオス】という【成り上がるクアンスティータ】の一つ手前の名前まで到達した。
 数々の実績を示し、オルオティーナに【成り上がるクアンスティータ】として認められたのだ。
 だが、【ルウァラ・トゥルオス】という名前を使うのに少々時間が必要という事になっていたため、彼女は現界基準時での1年――地球時間でいうところの1年1ヶ月と24日分の暇を与えられた。
 その間は彼女は【ケレファ・トゥムリメ777】でも【ルウァラ・トゥルオス】でも、【成り上がるクアンスティータ】である【トゥルフォーナ】でも無い。
 彼女は改名を繰り返す前の誕生した時、両親より授かった名前――【エクシトゥス】に戻り、当ての無い放浪の旅に出ることにした。
 宇宙世界(うちゅうせかい)の各地を周り、様々な事柄を目に焼き付けておこうと思ったのだ。
 時代は宇宙世界から一つ上の単位、世界他外(せかいたがい)の視点へと移ろうとしている。
 その前に彼女は懐かしき故郷を見て回りたいと思ったのだった。
 そんな彼女だったが、周りは放っては置かなかった。
 なにせ、【成り上がるクアンスティータ】の正統候補者様だ。
 他の二つの後継者である【天下るクアンスティータ】と【クアンスティータの子?】は宇宙世界の存在にとってかけ離れすぎている存在だ。
 だが、【成り上がるクアンスティータ】は下の存在から成り上がった後継者だ。
 言ってみれば三つの名前の内、最も取っつきやすい名前でもあるのだ。
 これを周りが黙って見過ごす訳が無かった。
 彼女に取り入ろうとする者は後を絶たない。
 また、彼女の存在を疎ましく思う存在もある。
 その代表格が【シュストゥムヴィーノ】だ。
 【シュストゥムヴィーノ】とは、クアンスティータの後継者問題が絶望視されていた時に用意したクアンスティータの代わりの主だった。
 だが、【シュストゥムヴィーノ】はクアンスティータの後継たる資格が無い。
 クアンスティータたる品格が無い。
 クアンスティータの後継者たる力が無い。
 クアンスティータの名を継ぐ資格が無い。
 クアンスティータの名を汚す存在。
 等々散々な言われようだった。
 【シュストゥムヴィーノ】は偽クアンスティータと比べてさえ、劣る部分もあり、クアンスティータの後継者として認めない存在がほとんどだった。
 そこへ来て、正統(?)――かどうかは置いておくとして、オルオティーナに正式にクアンスティータの後継者たる【トゥルフォーナ】への道の門戸を開いてもらえた女性が現れたのである。
 心中穏やかでは無いのは無理の無い事だった。
 もし、【トゥルフォーナ】に選ばれてしまったら、自分の地位が奪われる。
 そう不安を感じ、彼女を亡き者にしてしまおうという考えを持っても仕方なかった。
 そもそも、自分の地位を脅かされるくらいで暗殺に踏み切ろうとする考え自体がクアンスティータの後継としてふさわしく無いのだが、【シュストゥムヴィーノ】はそれに気づかない。
 ただ、自分の地位が脅かされる事に恐怖し、抵抗を試みるのみだった。
 旅を続ける【エクシトゥス】に向かい、刺客を差し向ける。
 【問装(もんそう)】という力を使う刺客を。
 【問装】とは一体何なのか?
 それは【成り上がるクアンスティータ】候補になろうとしている【エクシトゥス】にあてつけた力だった。
 彼女は【謎装(めいそう)】という力を用意している。
 それは、クアンスティータの候補としての力だ。
 第五本体クアンスティータ・リステミュウムの持って居る【謎の力】に対抗するために生まれたとされる【芦柄 吟侍】の【答えの力】――
 そう、クアンスティータの力と【芦柄 吟侍】の力にはその様な因縁めいた関係もあった。
 クアンスティータの後継者として選ばれた【エクシトゥス】にもその様なものがあっても不思議では無かった。
 【成り上がるクアンスティータ】に対する【芦柄 吟侍】の後継者、【未知御 終主】が持った力は【答装(とうそう)】と呼ばれる力だ。
 その【答装】とライバル関係にある力こそ、【謎装】だった。
 ちょうど、【答えの力】と【謎の力】に対する関係の様に。
 逆に考えれば、【未知御 終主】は【答装】を身につけたから【芦柄 吟侍】の後継者に選ばれ、
 【エクシトゥス】は【謎装】の力を身につけたからクアンスティータの後継者に選ばれたとも言えるのだ。
 【天下るクアンスティータ】と【クアンスティータの子?】の候補者と違い、【成り上がるクアンスティータ】の候補者はどうしてもクアンスティータとの共通点が求められる。
 それは絶対的な力を示せる前者二つの候補者と違い、質も量も【成り上がるクアンスティータ】の候補者は劣るからだ。
 力の足りない後継者はどうしても、何らかのクアンスティータの後継者たる基準が必要なのだ。
 それで、オルオティーナにも示したのが、【謎装】という力だった。
 クアンスティータの後継者としては落第点を出されている【シュストゥムヴィーノ】はもちろん、この力も示せなかった。
 示せなかったのだが、作る力はある。
 それはもちろん、紛い物ではあるのだが。
 後出しじゃんけんとして【シュストゥムヴィーノ】は【謎装】に対して別名【迷装(めいそう)】とも呼ばせている【問装】を作り出したのだ。
 【問装】は【問答(もんどう)】から来ている。
 【答え】に対しては【謎】ではなく、【質問】というものを用意したのだ。
 【シュストゥムヴィーノ】は、【答装】を兵器と考え、その兵器に対する兵器、【問装】を作り出したのだった。
 その辺がこの力に対して、はき違えているとも気づかずに。
 【問装】を作り出した【シュストゥムヴィーノ】は、さっそく、この力の実験を行うように配下に命令を下す。
 ターゲットは【エクシトゥス】だ。
 お前などいらない。
 お前など必要ないとでも言いたげに、【問装】の実戦テストの相手に【エクシトゥス】を指名した。
 【エクシトゥス】は【謎装】の力は使わない。
 使えないではなく、使わない。
 それは、まだ自分が、クアンスティータの後継者として正式に認可されてはいないという理由からだ。
 オルオティーナには地球時間での1年1ヶ月と24日の間、待って欲しいと言われている。
 だから、その1年1ヶ月と24日後までは彼女はクアンスティータの後継者候補ではない。
 ただの【エクシトゥス】だ。
 だから、己の立場をわきまえて、【謎装】は使わない。
 あれは、クアンスティータの後継者としての力だから。
 だから、例え殺されてしまっても使わない。
 そう決めているのだから。
 それこそが、クアンスティータの後継者としてふさわしい器と言える。
 だからこそ、彼女はクアンスティータの後継者の1名に選ばれた。
 この気持ちがわからないからこそ、【シュストゥムヴィーノ】は失格者としての烙印を押されているのだ。
 とは言え、無抵抗のままでは彼女は殺されてしまうのは時間の問題。
 その彼女を救い出した存在――それが、【未知御 終主】という少年だった。
 終主は今まで、かたくなに【答装】の力を使う事を拒否していた。
 何故ならば、その力はとても怖い力だから。
 欲望の赴くままに使えば彼は化け物になる。
 だから、例え酷い暴力を受けても使わなかった。
 使うべきではないと判断していた。
 絶対に使ってやるものかと心に決めていた。
 だが、彼女を見た時――
 【エクシトゥス】が【問装】に襲われていた所を見た時、彼は迷わずこの力を使った。
 一切、迷わずに。
 使うべき時は今だと確信したかの様に。
 自分に運命の時が来たのだ。
 彼はそう、確信した。
 助け出された【エクシトゥス】は、
「助けてくれた事には感謝します。
 だけど、私には関わらない方が良い。
 それはあなたのためでもあります。
 あなたは迷っている。
 そうでしょう?
 あなたはその力をとても恐れている。
 使わせてしまったのは申し訳ないと思っています。
 ですが、今一度、矛を収めてほしい。
 あなたにはその力を忘れて欲しい。
 それは、あなたに救われた私の願いでもあります」
 と言った。
 終主は、
「あなたの……
 あなたの名前を聞かせてください。
 その……気になるんです。
 あなたの事が。
 頭から離れそうもない。
 あなたのピンチを知った時、体が勝手に動いた。
 あれだけ拒否していた【答装】も使ってしまった。
 でも、不思議と後悔はないんです。
 それはあなたのために使えたから。
 だから、全く後悔していないんです」
 と言った。
 【エクシトゥス】は、
「助けてもらって名乗らないのも失礼な話でしたね。
 私の名前は【エクシトゥス】。
 今はそれ以上でもそれ以下でもないただの【エクシトゥス】です。
 だけど、この名前で居られるのは僅かです。
 私には使命がある。
 私に関われば、あなたも巻き込まれる。
 だから、忘れてください。
 私の事は忘れてください。
 あなたの勇気ある行動は忘れません。
 ですが、あなたは私の事を忘れてください」
 と言った。
 終主は、
「なんだか解らないけど……
 本当になんだかよく解らないけど。
 それは、その言葉は聞きたくない。
 僕自身はあなたと関わりたいと思っている。
 心の底からそう思っている。
 あなたはその気持ちを裏切れというのか?
 僕自身にそのつらさを味わえというのか?
 何故です?
 何故なんです?」
 と言った。
 【エクシトゥス】は、
「あなたを惑わせてしまったのはお詫びします。
 申し訳ありませんでした。
 ですが、忘れてください。
 あなたを不幸にしたくないという気持ちは私も抱いています。
 あなたはとても優しいから。
 それが解るから……
 だから……」
 と言って立ち去ろうとした。
 彼女の背中に、終主は、
「今は引き下がります。
 僕自身がごねることが貴女を困らせるようだから。
 だけど、僕自身は諦めません。
 それは貴女を見つけてしまったから。
 それはもう、消せない。
 消せない事実だ。
 僕自身の心には貴女という存在が刻まれた。
 だから、僕自身はきっと貴女を追います。
 例え離れても、また、貴女を追うと思います。
 それは覚えておいて欲しい。
 それが僕自身の気持ち――本心です」
 と言った。
 【エクシトゥス】は、
「……さようなら……
 出来ればもう、二度と会わないことを望みます。
 私には関わらない方が良い……」
 と言った。
 終主は、
「絶対にまた見つけますから……
 探しだしますから……」
 と叫ぶ。
 その言葉が【エクシトゥス】に届いていたかどうかは解らない。
 その時には彼女はもう、姿を消していたのだから。
 終主は、残された【問装】の残骸を見て確信する。
(これは夢じゃない。
 だから、また会える。
 会いに行く)
 と誓うのだった。


03 恭精編ヒロイン 殺陣模 まどり(たても まどり)


「これが……」
 殺陣模 まどり(たても まどり)はつぶやいた。
「そう……これこそが、【絶対罰の衣(ぜったいばつのころも)】……
 何の力も持って居ないお嬢様育ちの貴女があの最強の英雄、【芦柄 吟侍の後継者の資格】を得るための唯一の手段。
 ですが、よろしいのですか?
 これならば、この衣がある限り、願いは叶えられる。
 ただし、叶えられた願いにはそれ相応の代償を払う事になる。
 それが【芦柄 吟侍の後継者の資格】ともなれば相当の代償を支払う事にもなるし、衣が破壊されて願いが成就せずに貴女は死を迎える場合だってある。
 衣の使用中は激痛が走る。
 そのまま発狂死する恐れだってある。
 叶えられる願いに対してリスクだらけのアイテム。
 完全な失敗作のアイテム。
 だから、誰も使いたがらない。
 それを貴女は使おうと言うのですよ?
 本当に良いのですか?」
 【絶対罰の衣】というアイテムを運んで来た魔道士はそう告げる。
 こんな馬鹿げたアイテムをまさか使おうとする者が現れるとは思っていなかったので、疑わしい目で、彼女を見ている。
 【絶対罰の衣】――
 このアイテムは願い事を叶えるためのアイテムとされている。
 だが、願い事が叶えられるのは絶えず襲ってくる激痛に耐えきった者のみ。
 願いを叶えられても必ず、その反則行為に対して【罰】が与えられる事から、【絶対罰の衣】と呼ばれている。
 衣が使い物にならなくなっても願いは叶えられない。
 それまでの行動、苦痛は水の泡と消える。
 このアイテムは使う者の体を二つに分ける事になる。
 一つは通常の生活をしていて、もう一つが【絶対罰の衣】を纏い(まとい)、願いを叶えるために自ら動く。
 このアイテムはあくまでも本人が願いを叶えるためのサポートをするアイテム。
 後は、二つ目の自分が願いを自分で叶えるしかない。
 例え、願いを叶えられても本来、為し得る力を持たない者がその犯則技を手にして行動したのだから、それに対するそれ相応の【罰】が発生する。
 願いが大きかったら大きかっただけ、【罰】の大きさも比例して大きくなる。
 例え、願いを叶えて大きな力を手にしても、それに対する対価として【罰】を受ける。
 そんなアイテムの力を借りようとする者など現れないと言われ放置されてきたアイテムだった。
 まどりはそんな使えないアイテムの力を借りようと思っていた。
 彼女が保護した【海城 恭精(かいじょう きょうせい)】という男のために。
 ずっと自分は必要の無い人間として生きてきた。
 両親からもお前は何もしなくて良いと言われて生きてきた。
 誰かの役に立ちたい。
 ずっと、そう思って生きてきた。
 そんな時、誰からも見捨てられた男が現れた。
 それまでの横柄な態度により、全身不随になった時、誰もが救いの手をさしのべなかった見捨てられた男性だ。
 それが、恭精だった。
 助けられるのは自分しかいない。
 自分だけが助けられる。
 彼女は瞬時にこう思った。
 助けられると思った時、生きている感じがした。
 自分も誰かの役に立てるんだ。
 そう思った。
 両親にも褒めてもらえる。
 そう思っていた。
 だが、違った。
 両親は恭精を助けた事を罵倒して非難した。
 こんなどこの馬の骨とも解らない男を助けるなど、どうかしていると言って、彼女の行いを否定した。
 友達もそうだった。
 何でこんな小汚い男を助けるの?
 と馬鹿にした。
 なんでなの?
 彼を――恭精を助ける事がそんなに悪い事なの?
 彼女はそう思った。
 その時、ずっと自分の行動を否定され、レールの上を歩かされて来た自分と彼の人生が重なった。
 彼女は、自分には両親を――友達を見返してやる力はない。
 ずっとお嬢様育ちで習い事以外、何もしてこなかったから何かをやる力は無い。
 だけど、彼ならば、やってくれるのではないか?
 自分が羽ばたけなかった外の世界に羽ばたいてくれるのではないか?
 そう、思った。
 彼の手助けは出来ないかも知れないけど、彼をなんとか元の自信たっぷりな男性に戻してやりたかった。
 そう、これは自分のエゴ。
 自己満足のためにやっている行為。
 だけど、自分が踏み出せない事でも彼ならやってくれる。
 そんな気がした。
 だから、彼のために礎になろう。
 これから出世していく彼の歴史の支えの一つになりたい。
 まどりはそんな夢を抱く様になった。
 まずは、彼の生活の面倒を見なくてはならない。
 全身不随なのだから、彼の世話をしなくては彼はこのまま死んでしまう。
 だから、彼女は仕事をする事にした。
 両親からのコネも期待出来ない彼女が選んだのは下着姿でイラストレーターや画家などが参考にする本を出してその印税などで収入を得るという事だった。
 幸い、容姿には恵まれていたので、それで彼を養おうとした。
 それが自分に出来るベストだったから。
 彼女は迷わず、それを選択した。
 習い事は色々やっていたけど、どれも身にならなかった。
 やる気がなかったというのもある。
 つまらないと思ってやっている事だったから、どれも様にならなかった。
 だから、出来る事と言えば体を売る事だけ。
 それでも、食べていけるだけの資金を稼ぎ出せた時は嬉しかった。
 その代わり、両親と友達の信用を失った。
 体を売る子供なんか知らない、友達じゃないと拒絶された。
 だけど、後悔は無い。
 だって、今、恭精を助けているという実感があったからだ。
 だが、恭精はいつまでも動けないままだった。
 仕方ない。
 だって、全身不随なのだから。
 だけど、このままでは、彼は羽ばたけない。
 羽ばたくまでの何かが必要だ。
 そこで彼女は調べた。
 彼を治す方法を。
 彼を動かす術を。
 まともなやり方では全く無かった。
 どんな手を試してもダメだった。
 調べても調べても見つからなかった。
 そこで、闇で出回っていたアイテムを探し出した。
 それで見つけたのが、【絶対罰の衣】だ。
 説明を受けてみると、体を二つに分けるので、通常の撮影の仕事をしながらでも使えるアイテムだという事が解った。
 さらに力の無い自分でも願いが叶えられる可能性があるという。
 これは便利だと思った。
 激痛や【罰】を受けるというペナルティーがあるらしいが、そんなの関係ない。
 これを使えば、私は彼の役に立てる。
 それだけは事実だった。
 彼女はそれを選択する。
 魔道士から【絶対罰の衣】を受け取った彼女はこの衣を自分に合った形のドレスに仕立て治す事にした。
 不得意な裁縫は魔道士にお願いして、自分に合ったデザインにしてもらう事にした。
 ドレスが良いな。
 まるで、ダンスを踊るかの様に華麗に願いを叶えるんだ。
 そう思うとワクワクしてきた。
 彼女は戦闘経験も無いお嬢様育ち。
 ダンスと戦闘の区別もついていないのだ。
 こうして、彼女は自分の願いを叶えるための力を得た。
 そして、恭精のために、ついに手に入れた。
 【ポテンシャル・アンサー・リスト】という【芦柄 吟侍の後継者の資格】を。
 それが元で彼女は呪われる。
 数年後には醜くただれるという運命が彼女に降りかかった。
 絶望的状況が彼女を縛り付ける。
 でも彼女に後悔は無い。
 だって、助けてあげたかった。
 力になりたいと思った男性の力になれたのだから。
 後悔はない。
 体中痛いけど。
 気を失いそうなくらい痛いけど。
 後悔は全く無い。
 私は彼の事が好きだから。
 彼のためになったのなら、私は――
 後悔なんかしない。
 してやるものか。
 彼女は恭精に笑いかける。
 私は大丈夫。
 だから、私の代わりに羽ばたいて来てという願いを込めて。
 そのために私は頑張ったのだから。


04 踊詩編ヒロイン ニズ・クォトヌァール(似ず 異なる)


 不思議な存在、キャラクターはどこの世界にも居る。
 存在する。
 普通の存在が理解出来ない存在。
 だから、その様な存在はどこにでも居る。
 100パーセント全てを理解する事など、例え万能の神でも不可能なのだから。
 【ニズ・クォトヌァール】――不思議な少女――
 いや、少女なのかも疑わしい。
 オルゴールの上部に陶器のバレリーナが踊っている。
 そのバレリーナから小鳥の様な、か細い声で、彼女はしゃべった。
【♪ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……
 ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……♪
 ……わたしのなまえは……ニズ……ニズ・クォトヌァール……
 ……あなたは……だぁれ?……
 ♪ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……
 ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……♪】
 オルゴールは止まり、回転が止まる。
 オルゴールが壊れた様だ。
 壊れた時、そのオルゴールは【ニズ・クォトヌァール】では無くなった。
 それはもう、ただの壊れたオルゴール。
 【ニズ・クォトヌァール】では無くなった。
 【ニズ・クォトヌァール】――無数――複数の不思議な何かを持つ存在(?)――
 どのような存在なのか?
 どこから来て――
 どこへ行く存在なのか?――
 それは解らない。
 ただ、今や【ニズ・クォトヌァール】は【クアンスティータの子?】に次ぐ謎めいた存在となっていた。
 不思議な存在。
 解っていることは、彼女はもうオルゴールでは無くなった。
 ただ、それだけの話だった。
 彼女がオルゴールだった頃の事を知る者の心の中にはリフレイン――木霊する。
【♪ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……
 ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……♪】
 いつまでも鳴り止まないメロディー。
 オルゴールの音色を聞いた者にはそれが刻まれていた。
 不思議な不思議な存在【ニズ・クォトヌァール】――
 彼女は何者なのか?
 それは誰にも解らない。
 そんな謎、不思議だらけの彼女を追う者がいた。

「あっちゃあ〜また、逃げられちゃった」
 【澪 亜唯梨(みお あゆり)】はそうつぶやいた。
 彼女にはもう一つ、名前がある。
 【アユレディー・クォトヌァール】という名前が。
 彼女は第2四姉妹(だいによんしまい)の次女だ。
 妹を追ってやってきたのだ。
 妹とは【ニズ・クォトヌァール】の事を指す。
 本当の姉妹ではない。
 亜唯梨と他の2名と【ニズ】の4名で義理の四姉妹になろうと誓ったのだ。
 【第2】――【四姉妹】というのはどういう意味なのだろうか?
 それは――
「あ、【ニティナー】さん。
 どうも、です。
 あなたも【ニズ】ちゃんを追って来たんですか?
 私もです。
 同じ次女同士、気があいますね〜」
 と言って声をかけた。
 もう一名、【ニズ・クォトヌァール】が去った現場に現れたのだ。
 亜唯梨が言うにはその存在の名前は、【ニティナー】という。
 彼女も【ニズ・クォトヌァール】と四姉妹だ。
 ただし、長女でも三女でもない。
 四女は【ニズ】なので、次女となる。
 次女は亜唯梨の事ではないのか?
 そう、亜唯梨も次女だ。
 ただ、亜唯梨と【ニティナー】は別の姉妹なのだ。
 【ニティナー】の方が【第1四姉妹(だいいちよんしまい)】、
 亜唯梨の方が【第2四姉妹】なのだ。
 それぞれ、四名同士で義理の四姉妹になることを誓ったのだ。
 四女だけは共通して【ニズ】だ。
 だけど、姉3名だけは、そっくりメンバーが異なっている。
 魅力的な【ニズ】と姉妹になりたいという女の子はたくさんいる。
 今の時期、【ニズ】と同世代の女性にとっては、【ニズ】と姉妹になれる事が大きな夢の一つだった。
 だけど、たくさんの姉希望者達の妹になる訳にもいかない。
 そこで、決めたのだ。
 【ニズ】が四女だと言うのは変わらない。
 その代わり、姉三名だけは正式な手続きを取った者達だけがなれると。
 その厳しい手続きを終えたのが亜唯梨達3名だった。
 亜唯梨達は第2回目の手続きだった。
 【ニティナー】達は第1回目の手続きを終えている。
 亜唯梨達も【ニティナー】達も厳しい審査を勝ち残って【ニズ】の姉の地位を手に入れたのだ。
 【ニティナー】は、
「もう少しで第3回目がはじまる……らしいわよ」
 と言った。
 彼女が言う【第3回目】とは【第3四姉妹(だいさんよんしまい)】を選び出すための手続きだ。
 この【四姉妹選び】は【第4回】までしかない。
 泣いても笑っても【ニズ】と姉妹になれるのは後、2組しかいないのだ。
 選ばれるため、女の子達は死にもの狂いになって勝ち上がろうとするだろう。
 亜唯梨は思う。
 自分達が勝ち上がれたのは奇跡だった。
 これも、【フェアレディー】と【マイレディー】がいたからだ。
 二名には感謝しないと――そう思うのだった。
 【フェアレディー】とは亜唯梨の義理の姉――長女となった女性だ。
 【マイレディー】とは亜唯梨の義理の妹――三女となった女性の事だ。
 亜唯梨は【アユレディー】として【フェアレディー】と【マイレディー】の三名で力を合わせる事によって、【第二回審査】を勝ち抜いたのだ。
 【フェアレディー】も【マイレディー】も亜唯梨がそうである様に本名ではない。
 名前に【レディー】をつけて統一しようと決めて、3名で決めたチームでの名前だ。
 2名も亜唯梨の様に他に名前を、本名を持って居る。
 【ニズ】の姉妹としての顔以外の顔も持って居るのだ。
 【ニティナー】の場合も本名ではないらしい。
 【ニティナー】の方は――
 長女【クリスォツ】さんと、
 三女【イクィウツ】さんとのトリオとなる。
 三名も力を合わせて【第一回審査】を勝ち抜き、【ニズ】のお姉ちゃんという立場を手に入れたのだ。
 とは言え、【ニズ】は存在すら確定していない様な曖昧な存在でもある。
 姉妹達はそれぞれ、気まぐれに出現、消滅を繰り返す、手のかかる妹――【四女】を探して、あちこちを探し回っているのだ。
 オルゴールになっていたという情報を聞きつけ、駆けつけてはみたものの、すでに、【ニズ】はオルゴールを卒業――別の何かになるために姿を消していた。
 という状況だった。
 【ニティナー】達、【第1四姉妹】と亜唯梨達【第2四姉妹】はライバル関係にある。
 どちらも、【ニズ】に認められたいという強い気持ちを持って居るからだ。
 だけど、同じ、【ニズ】ちゃんのお姉さん。
 だったら、仲良くしたいと亜唯梨は思っていた。
 姉妹と言う訳にはいかないかもしれないけど、従姉妹(いとこ)の様なものではないかと彼女は思っていた。
 だから、同じ現場に遭遇したら、声をかける。
 貴女達には負けない――
 じゃなくて、奇遇だね――
 そう、気軽に挨拶する仲だと亜唯梨は思っている。
 【ニティナー】は言ってみれば姉妹を引っ張るエリート次女だ。
 対して、自分は姉妹の足手まといにもなりかねない平凡な次女。
 同じ次女という立場でも天と地の差がある。
 それは解っている。
 でも、同じ、【ニズ】ちゃんが大好きという気持ちは変わらない。
 それは同じはずだ。
 亜唯梨はそう思っている。
 【ニズ】ちゃんを思う気持ちだったら、【ニティナー】にも負けない。
 そう、思っている。
 だから、対等だ。
 同じ、次女という立場。
 何も遠慮する必要はない。
 向こうは【第一回審査】を勝ち抜いた先輩次女かもしれないけど、それくらいの差でしかないはずだ。
 だから、亜唯梨は誇りを持って宣言する。
「私は【ニズ】ちゃんのお姉ちゃんなんだぁ〜」
 と。
 その言葉が思わず出た亜唯梨は恥ずかしくなって赤面する。
 【ニティナー】は、
「言われなくても……
 解ってるわよ、そんなこと……
 貴女もちゃんとお姉ちゃんしてる。
 認めてるわよ……」
 と言った。
 そう、【ニティナー】も自分の事を認めてくれている。
 どうやら、彼女は自分に対して何故か劣等感を持っていて、自分の方がお姉ちゃんっぽい事をしていると思っているようだ。
 絶対に勝てないと思っていた【ニティナー】にそう思われるのはちょっとくすぐったかった。
 お互いがお互いに劣等感を持っている。
 それが、自分と【ニティナー】の関係だった。
 お互い尊敬し、尊重しあう関係。
 これはこれで良い関係なのかも知れないと思うのだった。
 亜唯梨は、
「私はこっちを探してみます。
 【ニティナー】さんはどっちに向かわれますか?」
 と聞いた。
 【ニティナー】は、
「私は……あっち……かな。
 じゃ、これで……」
 と答えた。
 亜唯梨は、
「また、会いましょう【ニティナー】さん。
 お姉さんと妹さんにもよろしくぅ〜」
 と言って手を振った。
 【ニティナー】は、
「……そっちもね……」
 と言って手を振り替えした。
 二組の四姉妹の関係はこんな感じだった。
 【ニズ】は捕まえられないが、お互い【ニズ】を巡って動いている。
 感覚としては、登山に行って、他の登山客に会う様なものだった。
 出会ったら、挨拶。
 そんな感じだ。
 【ニティナー】と別れた亜唯梨は、
「さてと……
 私はこっちを行きますか。
 次は何になってるのかなぁ〜【ニズ】ちゅわぁん。
 お姉ちゃんが今、見つけてあげまちゅからね〜」
 と言って、また動いた。
 次なる情報を求めて、再び動き出す。
【♪ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……
 ティンティリントゥンティンタントゥンティンタンティントット……
 てぃんてぃりんとぅんてぃんたんとぅんてぃんたんてぃんとととん……♪】
 【ニズ】が残したメロディー――
 聴いてみたかったなぁ〜と思う亜唯梨だった。
 姉妹と【ニズ】の追いかけっこは続く。
 【ニズ・クォトヌァール】――不思議な女の子。
 女の子達の憧れでもあり、年頃の女の子は彼女を知れば誰でも彼女のお姉ちゃんになりたがる。
 女の子達の永遠の妹――それが【ニズ】だった。
 彼女はどこから現れて――
 また、どこへと消えて行くのだろうか?
 それは誰にも解らない。
 彼女は気まぐれに現れ。
 気づいたら、また、どこかへと消えてしまうものだから。
 捕まえたくても捕まえられない女の子――
 次はどんな姿になっているか解らない。
 何も解らない。
 解らなくても魅力的な女の子。
 だれもが彼女に関わりたくなる。
 そんな女の子。
 それが、【ニズ・クォトヌァール】。
 不思議な不思議な女の子――
 小さな小さな女の子――
 大きな大きな力を持った女の子――
【♪トッティンタティンティンタティン……ティタティタティタ……
 とってぃんたてぃんてぃんたてぃん……てぃらてぃらてぃらてぃらてぃ……
 トッティンタティンティンタティン……ティタティタティタ……
 とってぃんたてぃんてぃんたてぃん……てぃらてぃらてぃらてぃらてぃ……♪】
 また、新たなメロディーが……ほら、そこに……


完。







登場キャラクター説明

001 芦柄 吟侍(あしがら ぎんじ)

 【ファーブラ・フィクタ】の物語のメイン主人公だった男性。
 【ファーブラ・フィクタ】の最強のラスボス、クアンスティータを引退させたとして有名になった男性(カノン・アナリーゼ・メロディアス第七王女という彼女と共にクアンスティータに懐かれていたと言われている)。
 クアンスティータが芦柄 くあんとして引退したのに合わせて、吟侍もまた、その英雄としての立場を引退する。
 理由はくあす(クアースリータ)とくあん(クアンスティータ)の双子をカノンと共に育てるため。
 オルオティーナ達からその引退を惜しまれた彼は自身の代名詞ともなる力、【答えの力】という答えを見つける事が出来る力を利用して、吟侍の後継者3名に宛てた手紙を作成し、送信する。
 また、それでも心配だというオルオティーナを安心させるために追伸として準後継者に宛てた追伸の手紙も何通か作って送っている。
 後継者は男性三名、準後継者は女性複数名――一説によると14名以上と言われている。


002 オルオティーナ

 クアンスティータの乳母(うば)にして摂政(せっしょう)でもあった力のある女性。
 クアンスティータのための超大組織、クアンスティータ・ファンクラブを統括している。
 クアンスティータの後継者である三つの名称、【成り上がるクアンスティータ】、【天下るクアンスティータ】、【クアンスティータの子?】への該当者を探すために躍起になっている。
 【成り上がるクアンスティータ】の候補者としてエクシトゥスという少女を見つける事に成功している。
 追加業務として、吟侍の後継者を探すことも加える事にした。
 世界他外の研究などもあり、気苦労が絶えない。


003 未知御 終主(みちお しめす)

 吟侍によって選ばれた3名の後継者の1人で立ち位置は【成り上がるクアンスティータ】に対しての吟侍の代わりとして選ばれた少年。
 物事を悲観して見る癖があるようで、吟侍の【答えの力】に匹敵するとされる【答装(とうそう)】というものを手にするも使う事を酷く恐れている。
 【お兄ちゃん遊ぼう】という子供の夢を見る。
 その子供は何名なのか解らないが、その子供と遊ぶ事は自分の器では成功しない程の大きな運命が立ち塞がる事だと直感していて、それを恐れて【答装】を一度も使わずにいる。
 一度でも使えば運命がやってくるとして怯えている。
 吟侍の後継者としては、精神面では不安が残る少年。
 吟侍と違い後ろ向きな性格をしている。
 吟侍よりは格下の存在と言える。
 一人称は【僕自身】。
 【エクシトゥス】という運命の女性と巡り逢い、今まで使用を恐れていた【答装】を使い、彼女を追う様になる。


004 海城 恭精(かいじょう きょうせい)

 吟侍によって選ばれた3名の後継者の1人で立ち位置は【天下るクアンスティータ】に対しての吟侍の代わりとして選ばれた少年。
 元々、俺様的な態度を取っていた嫌われ者だったが、まどりという女性と出会い、改心する。
 一度は全身不随という状態に陥るも、まどりに生活の面倒をみてもらい、さらには吟侍の後継者となる【ポテンシャル・アンサー・リスト】を手に入れてもらう。
 そのため、彼女はペナルティーを支払う事になり、絶望的な未来が待っている事になってしまった。
 その返しても返しきれないまどりと共に幸せになるのが彼の夢である。
 【ポテンシャル・アンサー・リスト】の第一形態は力をつけるためのアイテムなどを記した【リスト・マップ】が記されているリストになっている。
 その冒険にまどりも連れて行こうとしている。
 一人称は【わしゃ】。
 口癖は【〜じゃ】。
 吟侍よりは格下の存在と言える。


005 稀生 踊詩(きにゅう ようし)

 吟侍によって選ばれた3名の後継者の1人で立ち位置は【クアンスティータの子?】に対しての吟侍の代わりとして選ばれた男性。
 趣味の人(?)と言われる様に多数の趣味を持ち、それを世界他外(せかいたがい)の中に【マイスペース】という空間の様なものを作りだし、趣味の産物を色々と飾っている。
 どこか浮き世離れした印象で感性が普通の男性とはズレている。
 時々、【マイスペース】に迷い込んだ存在に自分のコレクションを自慢したりするのが好きな事でもある。
 【愛裏女銘(アリメナ)シリーズ】という動くフィギュアの様な趣味を持って居たり、誰かが歌ったり演奏したりするのではなく、その場所が音を奏でたりする【歌曲音御/歌曲音々(かきょくねおん)】を集めて加工したりなど、普通の宇宙世界では無い様な趣味を多数持って居る。
 自分の事を【創作者】と呼んでいて様々な何かを作ったりするのが好き。
 自覚なく、侵入者を追い払う事が出来るなど、通常の存在よりも高度な存在である雰囲気を持っている。
 【マイスペース】の中は散らかっていて、それを【化形の少女】にたしなめられたりするが、彼が言うには散らかっていた方が創作意欲がわくとの事。
 一人称は【おいらっち】。
 侵入者をあっという間に記憶を操作して追い払うなどのポテンシャルの高さを示すが具体的にどのような力を使うか不明。
 吟侍よりは格上の存在と言える。
 【マイスペース】に引きこもり状態で、吟侍からの手紙もほったらかしにして読んでいない。
 運命の女性(?)であるかも知れない【ニズ・クォトヌァール】とはまだ出会えていない。
 依然として引きこもり状態。


006 描堂 沙玲(びょうどう しゃれい)

 芦柄 吟侍が後継者として用意した3名では不安が残るとオルオティーナに指摘された事で新たに用意した準後継者の1人。
 吟侍が【答えの力】を使って【手紙】の【追伸】を作り、彼女はそれを受け取った。
 【追伸の手紙】の冒頭に、【追伸bP4】と書かれていた事から、彼女以外にも少なくとも13名の準後継者がいると予想される。
 読書好きの普段、ぼーっとした女の子で戦闘向きではないため、自分の代わりに最強の英雄になって欲しいと願った曾祖父の描堂 利圏(びょうどう りけん)だったが、彼女は本来の性格ではなく、【女優】として【役】を演じる事によって無類の強さを発揮する事を発見、彼女のために【脚本家】数名と【監督役】の候補と【役】を用意して他界するが彼女はその運命を知らない。
 眼鏡をかけている。


007 描堂 利圏(びょうどう りけん)

 最強の勇者になりたかったという夢を持っていた男性で、描堂 沙玲(びょうどう しゃれい)の曾祖父でもある。
 愛するひ孫を心を鬼にして鍛えていたが、戦闘の才能が無いと一時諦める。
 他の後継者を探していたが、沙玲は【女優】として【役】になりきる事でその力を発揮する事に気づいて、【役】の創作と【役】を作る創作者である【脚本家】、沙玲に指示を出す【監督役】を用意して他界する。


008 エクシトゥス

【成り上がるクアンスティータ】となるために1233回目の改名した事によって【前々異名(ぜんぜんいみょう)】――【ケレファ・トゥムリメ】と呼ばれる様になった少女。
彼女は777番目だという事で、【トリプルセブン】とも呼ばれていた(本人はその呼ばれ方は好きじゃ無い)。
オルオティーナに世界他外の情報を持ち込んだとして、次の名前となる【ルウァラ・トゥルオス】と言う名前になる内定をもらう。
が、現界基準時における1年(地球時間での1年1ヶ月24日分)の猶予をもらう。
その間は、最初の名前であった【エクシトゥス】に戻り、冒険する事にした少女。
その力は【超吟侍】でさえ為し得なかった、世界他外の情報を複数持ってくるという事を実現したほど高い。
最強の存在となるべく頑張っているが、内心は不安だらけでもある。
クアンスティータで言う所の吟侍やカノンに当たる、クアンスティータの後継者にとっての精神的支柱を探そうとしている。
自分が受け持つ事になっている【成り上がるクアンスティータ】、【フォルトゥーナ】に対応した【芦柄 吟侍の後継者】、【未知御 終主(みちお しめす)】に助けられるも、優しすぎると感じた彼の関与を拒否する。
終主の持った【答装】に対して【謎装(めいそう)】という謎の力を持っている。


009 シュストゥムヴィーノ

 実現不可能とされるクアンスティータの後継者である【三つの名前】に代わり、クアンスティータの代理としてクアンスティータに擁立されているのがこの【シュストゥムヴィーノ】である。
 だが、7つの本体と17の側体を用意している所までは良いが、数多くの部分で、クアンスティータたる力が無いとされている。
 背花変(はいかへん)も円が1片だけしかなく、偽クアンスティータだったタティー・クアスン以下だと揶揄されている。
 また、千角尾(せんかくび)に至っては一本も生えていない。
 力量不足のため、【シュストゥムヴィーノ】自身もそれに従う立場の者も両者共に不満があるという状態になっている。
 【成り上がるクアンスティータ】の候補、【エクシトゥス】の登場により、自分の立場が脅かされるのを懸念して、彼女の持つ、【謎装(めいそう)】に対抗して【問装(もんそう)】という紛い物の力を作り出す。
 別名【迷装(めいそう)】とも呼ばせている【問装】は本来の意味を履き違えた力となっている。


010 殺陣模(たても) まどり

 恭精を立派な英雄にするために全てを賭けて尽くしている女性。
 下着姿で写真を撮られ、それがイラストレーターや芸術家などの資料として売られる事によって収入を得ている。
 恭精のために【絶対罰の衣(ぜったいばつのころも)】というリスクだらけの失敗作アイテムを使って無理をして【ポテンシャル・アンサー・リスト】を手に入れて彼に渡した。
 が、そのペナルティーとして数年後には醜くただれるという運命が降りかかった。
 元々は令嬢だったが、恭精の面倒をみるという事で両親から勘当され、職業によってそれまで親しくしていた友人達からも三行半を突きつけられて居る。
 恭精とはお互いしか頼る者が居ないという状態。
 彼女にとっての幸せは恭精が英雄となること。
 それが叶うのであれば死すらいとわないという強い気持ちを持って居る。
 恭精のために身を引こうとするも恭精からは、一緒に居たいと誘われる。


011 ニズ・クォトヌァール

 何から何まで謎だらけの女の子と思われる何か。
 女の子達の永遠の妹と呼ばれる小さな小さな女の子。
 大きな大きな力を持って居るとされる女の子でもある。
 複数の不思議の塊ともされている。
 オルゴールの上でまわっている陶器の人形として現れたが、そのオルゴールが壊れるとオルゴールでは無くなり、別の何かとなって去って行った。
 彼女には【四姉妹の四女】と呼ばれているため、彼女の姉になりたいと様々な存在が彼女と義姉妹になりたいと思っている。
 現在までに【第1四姉妹(だいいちよんしまい)】と【第2四姉妹(だいによんしまい)】が存在し、彼女はいずれも四女として在籍している事になっている。
 【四姉妹】は【第4】まで作られる予定となっている。


012 澪 亜唯梨(みお あゆり)/アユレディー・クォトヌァール

 本名は澪 亜唯梨(みお あゆり)という女の子。
 自分の事を何の特技もない普通の女の子だと思っている。
 長女【フェアレディー・クォトヌァール】と三女【マイレディー・クォトヌァール】と共に【アユレディー・クォトヌァール】という名前を手にする。
 その名前で謎の女の子【ニズ・クォトヌァール】を四女として【第2四姉妹(だいによんしまい)】となる厳しい審査を勝ち抜いた。
 明るい性格をしていて、人当たりが良い。
 【第1四姉妹(だいいちよんしまい)】の次女、【ニティナー・クォトヌァール】に対して劣等感を持っている。
 【ニティナー】も同じ様に彼女の事を思っているためお互い様。
 彼女が勝ち抜いた理由があるはずだが、それは現在の所不明。


013 ニティナー・クォトヌァール

 長女【クリスォツ・クォトヌァール】と三女【イクィウツ・クォトヌァール】と共に【アユレディー・クォトヌァール】という名前を手にする。
 その名前で謎の女の子【ニズ・クォトヌァール】を四女として【第1四姉妹(だいいちよんしまい)】となる厳しい審査を勝ち抜いた。
 人付き合いは苦手な方だが、姉妹を引っ張るエリートタイプ。
 【第2四姉妹(だいいちよんしまい)】の次女、【アユレディー・クォトヌァール/澪 亜唯梨(みお あゆり)】に対して劣等感を持っている。
 【亜唯梨】も同じ様に彼女の事を思っているためお互い様。
 彼女が勝ち抜いた理由があるはずだが、それは現在の所不明。