第006話 土の神姫巫女、フルテララ

タティー・クアスン編挿絵06

01 タティー・クアスンの足跡


 タティー・クアスンは元普通の女の子――ただの人間だった。
 いじめられたりもしたが、それはそれで自分なりにうまくやっているつもりでいた。
 だが、そんな彼女に突然、転機が訪れる。
 と言っても生まれて間もなく彼女の両親に名前をつけられたその日に運命は決まっていたようなものだったが。
 彼女は最強の化獣(ばけもの)であるクアンスティータのアナグラムとしての名前を授かってしまっていたのだから。
 彼女は【めがねさん】に見いだされ、惑星ファーブラ・フィクタに連れて来られてしまった。
 そして、彼女は役割を与えられる。
 偽クアンスティータとして、クアンスティータに仇なす存在を処分する特殊警察署長としての役割を。
 そんな彼女に不満を抱く者がいた。
 【クインスティータ・クェンスティー】という少女だ。
 彼女はクアンスティータが好きで好きでたまらないという根っからのクアンスティータファンで本名である【スウィート・ピュア】という名前を名乗らず、【クインスティータ】の名前で活動している。
 【クインスティータ】はただの1ファンであり、本来何の権限もないのだが、彼女の指導の下に業務が行われていた。
 そして、ある日、クアンスティータが誕生する予定になっている現界(げんかい)という宇宙世界では違法とされる【ステージ2】に迫る勢いの【ステージ2】もどきの力が闇ルートで売買されているという情報を得て、タティーは【クインスティータ】と共に、その疑いがある最大神殿の調査に向かう事になった。
 だが、メンバーが心許ないと思い、追加メンバーを増やす事にした。
 それで連れてきたのが、【クインスティータ】の紹介でもあった、【ヴェルト・ハウプトシュタット】と【リセンシア・アジュダンテ】だった。
 力自慢の【ヴェルト】は元恋人の【プライス・フィー】がタティーにご執心というのが気に入らなく、タティーに勝負を仕掛けて来たが彼女は自動防御能力により、彼女を制す。
 すると、彼女はタティーの子分となる。
 【リセンシア】はいわゆる腐女子。
 ボーイズラブ、ガールズラブが大好きな女の子だ。
 こんな凸凹チームが最大神殿の調査に向かった。
 それに合わせて動く二組が。
 一つは、タティーのお風呂を覗く事に人生をかけるドスケベ四人衆だ。
 メンバーは、タティーのお尻大好き【プライス】、
 おっぱい大好き【スコント・プレッツォ】、
 くびれ大好き【ベネフィス・フォルテュヌ】、
 足大好き【クリエント・カントラークト】だ。
 タティーの入浴シーンあるところにこの4人あり。
 彼らは男子チームを形成して、後を追う。
 また、もう一つは、【プライス】にこっぴどくフラれた悪女、【ヴィホヂット・ウボヒー】だ。
 彼女は【プライス】から、【ヴェルト】、【ヴェルト】からタティーへと逆恨みのターゲットを変えてちょっかいをかけてくる。
 【ヴィホヂット】はタティー達のチームを追いつつ、途中で、プロのコスプレイヤーとして生活していた【リーチェニー・パルフェーム】と者喰い王(ものぐいおう)の選手である【アイリーン・エイムズ】を自身の毒牙にかけ、手下としていった。
 タティー達は闇のコスプレ大会の優勝賞品である【ヴェール】と呼ばれる恐ろしい兵器の起動キーを【ヴィホヂット】に奪われ、彼女を追う事になる。
 そこで【エニグマ】領と言われる独立地帯を訪れる。
 そこで、【風来坊のえーちゃん】という男と知り合う。
 彼はドスケベ四人衆と共にタティーのお風呂を覗くという行為をしていて見つかったが、正体は【エニグマ】本人である。
 だが、その事はタティー達は知らない。
 そんな【風来坊のえーちゃん】は、タティーにラブレターを送る。
 時同じくして、【ミスターサカキ】と【カルメン・サイアーズ】もラブレターを送り、待ち合わせ場所がかぶるという事態になる。
 三人の内の誰を選ぶかという事になり、タティーは金に物を言わせる【ミスターサカキ】や、自信過剰の【カルメン】よりもましだという事でとりあえず、【風来坊のえーちゃん】を選んだ。
 タティーと【風来坊のえーちゃん】――ちょっとだけ近づいた二人だった。
 タティーの旅は続く。


02 同盟


 タティーにフラれた【カルメン】は自宅に戻り悔しがった。
 【カルメン】は、
「何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ……」
 と【何故だ】を連呼する。
 何故自分がフラれたのだという事が納得いかないようだ。
 その自宅には、監禁されている女性達が、
「出してよ」
「ここから出して……」
「出してください」
 とつぶやいていた。
 そう、【カルメン】は犯罪者。
 主に、闇コス大会での優勝者をメインに監禁しているのだ。
 彼女のコレクションとして。
 この秘密が【エニグマ】領の領主にバレたら、彼女は処罰されるだろう。
 その弱味につけ込む悪女がいた。
 【ヴィホヂット】だった。
 【ヴィホヂット】は、
「こんばんは。【カルメン・サイアーズ】さんだったかしら?お邪魔させてもらっているわよ」
 と言った。
 【カルメン】は、
「だ、誰だ?」
 と言った。
 誰も侵入出来ないはずの自宅に侵入者がいたからだ。
 当然、不法侵入者という事になる。
 だが、それを罰してもらうことは出来ない。
 彼女も犯罪者だからだ。
 【ヴィホヂット】は、
「あなたには私と同じ匂いを感じたから。ちょっと家捜しというか調べさせてもらったわ。これ、バレたらあなたおしまいよねぇ」
 と言う。
 【カルメン】は、
「き、君こそ、不法侵入がバレたら……」
 と言うも、【ヴィホヂット】の
「あら、不法侵入の罪と拉致監禁の罪……どちらが重いのかしらね?」
 との言葉に沈黙を余儀なくされる。
「………」
 【ヴィホヂット】は、
「あら、だんまり?私はあなたとお話に来たのよ」
 との言葉に再び口を開く。
「何が狙いだ」(【カルメン】)
「そんなやり方、美しくないわ――とご忠告をしに……ね。美しい女の子は身も心も支配してこそ、真の使い道があるのよ。持っているだけじゃもったいないわよ」(【ヴィホヂット】)
「何が言いたいんだ?」(【カルメン】)
「私で良かったら手ほどきしてあげる――そう、言いたいのよ」(【ヴィホヂット】)
「それで、あんたに何の得があるっていうんだ?」(【カルメン】)
 との疑問も最もだった。
 【カルメン】は自らの得も無く近づく者など信用しない。
 必ず裏があると思っている。
 誰も無償で親切にする訳がない。
 そう、思うのは彼女が抱えている心の闇でもあった。
 だが、そんな心の弱さにつけ込むにあたっては【ヴィホヂット】は天才的な才能を発揮するのだった。
 【ヴィホヂット】は、
「あなたが手に入るわ、【カルメン】――私はあなたが欲しい。――正直、私のチームには毒が足り無くてね。今の手下二人は気が弱くて、あなたがしている様な仕事を頼んでも失敗ばかりなのよ。だから、あなたのような仕事が出来る女性が欲しい――というのじゃ駄目かしら?」
 と言った。
 【カルメン】は、
「そ、それを信用しろというのか?」
 と恐る恐る尋ねる。
 【カルメン】としては【ヴィホヂット】の出す条件を飲むしかないのだが、【カルメン】もある程度、それが善か悪かを見極める力はある。
 【ヴィホヂット】は間違い無く悪の側の女だというのがわかっていた。
 【カルメン】にとっては、善とはお人好しの間抜け、悪とは自分の欲望に素直な者ととらえていた。
 そういう意味では自分の悪行に素直な【ヴィホヂット】は【カルメン】にとっては信用出来る存在と言える。
 だが、悪が必ずしも自分の味方であるとは限らない。
 利害の一致こそが悪と手を結ぶ最低条件だった。
 その疑問がわかっているのか、【ヴィホヂット】は、
「まずは、少しずつ理解しあいましょ。まずは、私の手下、【リーチェニー・パルフェーム】と【アイリーン・エイムズ】をお貸しするわ。一緒にかわいがりましょう」
 と進めてきた。
 【ヴィホヂット】は【リーチェニー】と【アイリーン】を一緒にオモチャにすることで、【カルメン】の共通意識を得ようと画策してきたのだ。
「そ、それは……」
 と戸惑う【カルメン】。
 だが、【リーチェニー】と【アイリーン】の愛らしさが、彼女を惑わせた。
 共に、愛欲の夜を過ごした【カルメン】は、次第に【ヴィホヂット】に信頼をよせるようになり、【カルメン】が今まで拉致監禁してきた女の子達の始末をどうしたら良いのかを相談してきた。
 始末――殺してしまうしかないという犯罪者意識を持ち出してきたが、【ヴィホヂット】は、
「そんなもったいないこと言わないで【カルメン】……彼女達も私達の手駒に変えてしまえば良いのよ。幸い、彼女達は精神的に追い詰められている。落ちるのもすぐそこなのよ……」
 と悪役らしい台詞を吐く。
 【カルメン】は、
「で、でも、どうやって……」
 と戸惑ったが、【ヴィホヂット】は優しく語りかける。
「大丈夫、私が教えて、あ・げ・る・わよ……」
 と言った。
 【ヴィホヂット】の中では【カルメン】もまた、自分の手下として取り込むまでそう時間がかからないと考えていた。
 悪女を取り込む悪女。
 これによって、【ヴィホヂット】一味が凶暴性を増したという事になった。
 【ヴィホヂット】は時間をかけて、【カルメン】と【カルメン】にとらえられた女の子達を懐柔し、自分の手下とした。
 これは、クアンスティータが誕生していたらまかり通らない悪行と言えた。
 まだ、不完全――偽クアンスティータ達が取り締まっていた時代だからこそ、まかり通っていた悪事だった。
 クアンスティータが誕生していたら消滅どころでは済まされないような悪行と言えた。
 こうして、【ヴィホヂット】は【リーチェニー】と【アイリーン】と【カルメン】(と【カルメン】が捕まえてきた女の子達)という手下を得た。
 また、勢いがついてきたのだった。
 【ヴィホヂット】達は自分達の正義(と言う名の悪事)を突き進むのだった。


03 【エニグマ】領から【五将】領へ


 【ヴィホヂット】が勢力を増やしている頃、タティー達は、五将とのもめ事に発展していた。
 五将は、【エニグマ】主導の下、勢力地を増やしたいと考えていたが、当の本人――【エニグマ】自身はそんな事に全く興味が無く、のらりくらりと軍議をボイコットしていた。
 それが、タティーのせいだと考えた五将はタティー達に国外退去を命じたのだ。
 だが、タティー達にとっては、【ヴェール】の起動キーを取り返すまでは国外退去に従う事は出来ない。
 【ヴェール】を野放しにすれば危険だという事がわかっているからだ。
 だが、五将は【ヴェール】の力も欲しかった。
 勢力拡大のためには【ヴェール】の力は願ってもないものだと考えていたのだ。
 そんな五将にもしも【ヴィホヂット】が【ヴェール】の起動キーを売り込みに言ったらと思うとゾッとする。
 利害が一致した場合、手を組む恐れもある。
 そうなったら、タティー達の立場は危うくなる。
 その事をタティーの入浴シーンを覗きに来た【風来坊のえーちゃん】は知り、真顔になって反発した。
 こうして、勢力を拡大したい五将と、タティーとの愛を貫きたい【風来坊のえーちゃん】の間で大きな確執が生まれたことになった。
 【風来坊のえーちゃん】のこれまでの行動に不満を持っていた五将はついに謀反を起こしたのだった。
 知らない内に、【風来坊のえーちゃん】イコール【エニグマ】と五将との対立に関わってしまったタティー達は、訳もわからない内に五将軍とそれが率いる五将軍と戦いを繰り広げていたのだ。
 そして、ついに【風来坊のえーちゃん】が自分が【エニグマ】で実は腹心の五将達と対立してしまった事をタティー達に打ち明けたのだった。
 タティーは、
「きゅ、急にそんな事を言われても……」
 と少々戸惑ったが、元はと言えば、タティーにも原因があることだったので、【エニグマ】について戦う事にしたのだった。
 ドスケベ四人衆も【エニグマ】は同好の士として、共に戦う事を決意したので、抗争が激化していた。
 【エニグマ】領の配下も【エニグマ】支持派と五将支持派に別れて分裂し、【エニグマ】領全体を巻き込む抗争となってしまっていた。
 だが、【エニグマ】派3に対して五将派は5と多く、次第に【エニグマ】達は敗走を余儀なくされていた。
 【ヴェール】の力さえあれば、逆転出来るとは思っても、それは今は無い事。
 すなわち無いものねだりに過ぎない。
 タティーの自動防御によって、敵もある程度までしか攻撃出来ないという状態とは言え、これ以上戦えば、いたずらに【エニグマ】支持派の貴重な命を散らせることになる。
 なので、【エニグマ】が決断する時が来たようだ。
 彼は領主として、この争いを終息に向けて行動しなくてはならない。
 これ以上の勢力減退は、【エニグマ】領の力を激減させる事になる。
 そうなれば他の領主に攻め込まれる可能性だってあるのだ。
 惑星ファーブラ・フィクタの領主は【エニグマ】だけではないのだから。
 者喰い王頂上戦の発祥の地として、滅びの道をたどる訳にはいかないのだ。
 【エニグマ】は正式に領主の座を降りた。
 もはや、領主ではない。
 ただの【エニグマ】だった。
 領土を治めるつもりの無い【エニグマ】がこれ以上領主の座に居座っても不満が募るだけだ。
 ならば、領主の座を降り、五将の誰かに領土を任せた方が良策だと考えたのだ。
 【エニグマ】は、
「これからは、領主、【エニグマ】じゃねぇ。ただの【えーちゃん】だ。改めてよろしくな」
 とタティーに言った。
 領主となることよりもタティーへのアプローチを選択した男の笑顔に思わずぽっとなるタティーだった。
 自分のためにそこまでしてくれたというのが正直、うれしかったのだ。
 だが、彼はまだ、タティーの入浴シーンを覗くという悪い趣味がある。
 まずは、これを改善してもらわないと正式に付き合う事など考えられなかった。
 だが、【エニグマ】は、
「悪い、それはおれっちは譲れねぇな。覗くなと言われても体が勝手に……な」
 と言った。
 【エニグマ】がタティーのハートを射止めるのはまだ先の事になりそうだった。
 【エニグマ】が領主の座を退くにあたって出した条件が一つ――それは、【ヴィホヂット】一味の国外退去命令を出す事だった。
 それならば、【ヴェール】の力が【エニグマ】領で悪用される事もないと考えたのだ。
 【エニグマ】領は【五将】領へと名前を変え、五将は約束通り、【ヴィホヂット】達に国外退去命令を出した。
 これにより、【ヴィホヂット】達も【エニグマ】領改め、【五将】領を退去するしかなく、舞台は【五将】領から別の地に移る事になったのだった。
 とりあえず、【エニグマ】はドスケベ四人衆と行動を共にする事になった。
 タティーの体目当てという点では共通しているからだ。
 タティー達は【ヴィホヂット】一味が【五将】領を出たという報告を受け、後を追う様にこの地を後にした。
 ドスケベ四人衆プラス1もそれに付き従うことになる。
 こうして、タティー達は新たな場所にすすむのだった。
 舞台は次の地へと移る。


04 超謎考目(ちょうめいこうもく)と離反心夢(りはんしんむ)


 【五将】領を後にしたタティー達は【ヴィホヂット】一味を追って、次なる地、【クアンスティータ学の里】にたどり着いた。
 ここまで来ると、最も近い土の最大神殿まで目と鼻の先とまでも言わないまでもかなり近い位置まで来ている事になる。
 ここから、もう1、2時間も進めば最大神殿の目印ともなる巨大な女神像が小さく見えてくるのだ。
 惑星ファーブラ・フィクタが現界の宇宙世界よりも広い事を考えるとかなり近い距離まで来たと言ってもいいだろう。
 この【クアンスティータ学の里】は文字通り、【クアンスティータ学】を最初に研究した者達が開拓した里であり、民家が数百と、惑星ファーブラ・フィクタの規模から考えるとかなり小さな里ではあるが、【クアンスティータ学】が学べるところとしては有名だった。
 【クアンスティータ学】はクアンスティータとは関係無いのだが、【ヴェール】の基礎原理は【クアンスティータ学】から来ている。
 つまり、何らかの情報を得ることが出来るかも知れないと思って立ち寄ったのだ。
 タティーが偽クアンスティータだとわかると里長(さとおさ)がクアンスティータ学について話してくれた。
 タティー達が興味を持った話は、いろいろあった。
 クアンスティータ学では、いろいろエネルギーを貯める方法が研究されていて、それらは【超謎考目(ちょうめいこうもく)】と呼ばれているという事がわかった。
 クアンスティータ学で発見されるクアンスティータに関する新たな知識等を総称して【超謎考目】と呼ぶという。
 ここでは語られる事は無かったが、【クアンスティータ数】という数の表現やカノン・アナリーゼ・メロディアス第七王女が発見した新金属類の【カノニウム】も【超謎考目】に含まれており、現界の至るところで研究されている。
 【クアンスティータ学】では何が発見されるかわからないので、超越した謎を考えて出てきた品目類を略して【超謎考目】と呼ぶと定義されている。
 クアンスティータの研究者、オタクはもの凄く多く、発見された【超謎考目】は天文学的な数があるとされていて、その殆どが、習得と呼ぶにはほど遠い、成果となっているという。
 その【超謎考目】の中に【離反心夢(りはんしんむ)】という考え方がある。
 これはクアンスティータ学で発見された幻のエネルギーとされている。
 知的生命体に対して当てはまるもので、人間を例に例えれば人間が産まれて死ぬまでの一生に考えたものや夢を全て足したものが作り出すエネルギーが【離反心夢1】と数える事になっている。
 存在すべての一生をエネルギーに変える事は通常、不可能なので、幻のエネルギーとされているが、クアンスティータ学においては不可能とされていない。
 【ヴェール】とは人の噂話を吸収してエネルギーと変える力があるとされている超兵器だ。
 もしかしたら、この【離反心夢】の考え方に近いものがあるかも知れないと思うのだった。
 ――と、この様に、【クアンスティータ学】は奥が深そうな学問であるという事を確認したものの、【ヴェール】に関する深い情報は得られなかった。
 ただ、クアンスティータとはその存在があるだけで、学問まで出来てしまう存在なのかと改めてクアンスティータの凄さを認識するのだった。
 【クアンスティータ学の里】では特に問題も無く過ごせたが、脅威という点ではクアンスティータに対しては自分にとってその超存在は雲の上どころの存在ですらないんだなぁ〜と改めて思うのだった。
 そんなクアンスティータの偽者に認定されている自分って一体何なんだろう?と自分の存在意義に疑問を持つタティーだった。
 さしたる問題は無かったが、悩んだ滞在となったのだ。
 だが、あまり、のんびりもしていられない。
 最大神殿はもう少しのところまで来ているのだ。
 【ヴェール】の起動キーだけにかまって居る事は出来ないのだ。
 少しでも早く調査をしなくてはならない。
 確か、【ステージ2】もどきの力が流出している疑いがあるんだったっけ?
 と改めて、タティーは、自分の任務について自己確認するのだった。


05 土の最大神殿へ


 タティー達は、【クアンスティータ学の里】を後にした。
 出発前にタティーはひとっ風呂浴びて、ドスケベ四人衆プラス1が覗き、【クインスティータ】に捕まり、【ヴェルト】に突き出され、お尻百叩きの刑、【リセンシア】に突き出され、【地獄の仲人】の刑といういつものイベントが行われた。
 ドスケベ四人衆プラス1による、
「「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」」」」」
 という悲鳴を聞きつけた里長が、
「な、何事ですか?」
 と駆けつけてきたが、【クインスティータ】は、
「あ、いつもの事ですわ。お気になさらずに」
 と言った。
 里長は、
「お、お気になさらずにと申されても、ただならぬ悲鳴でしたが……」
 と言ったが、【リセンシア】が、
「あ、全然平気。しばらくすると全員、ケロッとしてまたやるから」
 と言った。
 里長は首をかしげ、
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
 と聞いたが、【ヴェルト】が、
「バカは死んでも直らない。ただ、そんだけのことだよ、じっちゃん」
 と言った。
 里長としては納得するしかなかった。
 現に悲鳴を上げていた5名(ドスケベ四人衆プラス1)は、本当に何事も無く旅の準備をしていたので、納得せざるを得なかった。
 ――というエピソードがあった。
 これはタティー達一行にとってみれば、今日も絶好調という所だろう。
 旅支度も整い、タティー達一行とオマケのドスケベ四人衆プラス1の一行は、最大神殿を目指して進んだ。
 一、二時間も進むと、遠方に何かが見えてきた。
 土の最大神殿の上空にある巨大な女神像だ。
 【クインスティータ】は、
「ほら、ちょっと見えて来ましたわ。あれが、土の最大神殿の目印ともなっている巨大女神像ですわ。まずは、土の最大神殿から調査しますわよ」
 と言った。
 タティーは、
「土の最大神殿から調査するんですか?」
 と聞いたが、【クインスティータ】は、
「何を言っていますの?タティーさん、あなた、一応、責任者でしょ?どこへ向かっているか今まで認識していらっしゃらなかったの?」
 と聞き返してきた。
 タティーは、
「だって、【クインスティータ】さん、目的地、教えてくれなかったから……」
 と言うと、【クインスティータ】は、
「まぁ、呆れましたわ。私にお聞きになれば良かったじゃないですの」
 と言った。
 タティーはあなたに下手に質問するとあなたと【ヴェルト】さんがつっかかってきて、喧嘩になるかもしれないから迂闊には、聞けなかったんですよ――と心の中で思いつつ、
「そ、そうですね、うっかりしてました」
 と言った。
 こういうのが無難だろうと判断したのだ。
 【クインスティータ】は、
「しっかりしてくださいまし……」
 と言うと、【ヴェルト】が、
「姉さんを侮辱する気か、【クインスティータ】?」
 とつっかかってきた。
 【クインスティータ】は、
「なんですの?やりますの?」
 と言い、【ヴェルト】は、
「上等だ、表出ろ」
 と言った。
 一触即発状態になる。
 タティーは、慌てて、
「そ、そんな事やっている暇はありませんよ。目的地までもう少しなんですから、ほらっ」
 と話題をそらす。
 あぁ、もう……こうなるのが嫌だから、質問しなかったのに――と思うタティーだった。
 本来チームワークの無いタティー達だが、ドスケベ四人衆プラス1がタティーの入浴シーンを覗く事によって、連帯感が生まれ、彼らのお仕置きを通して今まで、一緒に行動してきたのだ。
 そういう意味ではドスケベ四人衆プラス1の存在も全く無駄という訳ではないのだろう。
 誰でも何かしら役に立つこともあるんだなと思うタティーだった。
 一悶着はあったが、一行は着々と進み、土の最大神殿の巨大女神像も結構、大きく見えるようにまで近づいてきた。
 ここまで来ると、【ヴェール】の起動キーを持ち去った【ヴィホヂット】一味の事は後回しになる。
 まずは、土の最大神殿の調査という事になった。
 土の最大神殿に近づくに従って、女神像の巨大さにびっくりした。
 後ろにそびえ立つ山脈と比較してみると明らかにむちゃくちゃでかかった。
 後ろの山脈がだいたい1万メートル級の標高だと仮定すると、女神像の大きさは、ざっと2、300万メートルはありそうだ。
 ちょっとした小規模な天体クラスの大きさを持っている。
 元、人間であるタティーはどうやってこんなもの彫り上げたんだ?と驚きを隠せなかった。
 これほどの大きさで、精巧に彫り上げる技術というのはどう考えてもタティーの知っている人間の科学力では無理な話だ。
 人ならざる神の領域の力が働いているとしか思えなかった。
 タティーは、
「ひょえ〜、おっきぃ〜」
 というと、【クインスティータ】は、
「この距離で見るのが一番見やすいと言われていますわ。近くまで行き過ぎると何がなんだかわからないみたいですしね」
 と言った。
 タティーは、
「へぇ〜そうなんですかぁ〜」
 と言うと気をよくしたのか【クインスティータ】は、続けて、
「この土の最大神殿の女神像が最大で、他の最大神殿の女神像は土の最大神殿の10分の1以下の大きさしかありませんの?なぜだかおわかりになりますの?」
 と言った。
 タティーが、
「さぁ?」
 と答えると、そうでしょう、そうでしょうと言わんばかりに鼻を高くした【クインスティータ】が自分の知っているうんちくを語る。
「それは、女神像が土の属性要素で出来ているからですわ。土の最大神殿としては、自分達の最大神殿をアピールするのにこれ以上ない素材と言えますわね。他の最大神殿の女神像も土の最大神殿の協力のもと、作っていますが、やはり、ご自分達の最大神殿は他の最大神殿とは違うという事を主張したいようですわね」
 と。
 タティーは、
「なるほど……確かに、自分達の仕事ですよと主張したい気持ちもわからなくはないですね」
 と納得した。
 【クインスティータ】は、
「ですが、大きすぎるという意見もありますの。これでは近くまで行って女神像を拝むというありがたみが無いとして批判されてもいますわね。一番よく見えるのがこの距離では遠すぎますもの。まだ、しばらく進まないと土の最大神殿には着きませんわ」
 と言った。
 確かにそうだ。
 大きすぎるというのも考え物だ。
 【クインスティータ】は、
「なので、入り口には100メートルクラスの別の女神像も建ってますの。初めから、それだけあった方が良いのでは?という意見もよく聞きますわね」
 と付け加えた。
 【クインスティータ】による、最大神殿の情報も聞いたところで、更に進む。
 そして、ついに土の最大神殿の入り口についた。
 【クインスティータ】の情報通り、100メートルクラスの女神像が建っていた。
 この100メートルクラスの女神像も近くで見ると圧巻の迫力だった。
 ついに、着いたのだ。
 最大神殿の一つに。


06 待ち時間での一悶着


 タティー達は、早速、土の神姫巫女に会うべく、土の最大神殿内に足を踏み入れた。
 それまで移動してきたお皿型の浮遊装置は土の最大神殿の入り口から少し離れた所にある駐機場(ちゅうきじょう)に置かせてもらっている。
 駐機場とは飛行機を止めるところではなく、移動手段に使っている機械類は全てここに止めるという事になっている。
 つまり、徒歩で最大神殿内に入っていったという事になる。
 最大神殿は名前が【最大】とつくだけあって、敷地面積だけで、ロシアの三十万倍ほどある。
 当然、普通の人間には徒歩では移動出来ない距離だ。
 だが、タティー達はもちろん、人間ではない。
 タティーだけは、元・人間ですと主張したいだろうが、とにかく、彼女達は人間ではないのだ。
 100キロメートルくらいならばそれこそ、一足飛びで飛べるようなポテンシャルを持っている。
 関係無いと思えるところはどんどん飛ばしていけば良い。
 なので、徒歩での移動というのはそれほど、苦ではないのだ。
 あくまでも、お皿型の浮遊装置を移動手段に使っていたのはそれにお風呂がついているからなのだ。
 本来であれば彼女達であれば、飛んでいける距離なのだ。
 とは言え、ロシアの三十万倍も敷地面積がある最大神殿はそこだけで、一つの国家が形成されていると言っても過言ではなかった。
 その頂点に君臨する神姫巫女は国で言えば国王の様な存在と言える。
 同じ土系の神殿でも土の惑星テララの神殿の規模とはまるで違うのだ。
 土の惑星テララにいる土の姫巫女であるドゥナ・ツァルチェンは、この惑星ファーブラ・フィクタの土の最大神殿より、力の一部を授かり、絶対者アブソルーター達が運勢を見てもらうのに必要な星見の力を得ている。
 言ってみれば星見の力の総元締めというのが、この土の最大神殿であり、それを治める土の神姫巫女だった。
 土の姫巫女からしたらまさに神の様な存在であることから【姫巫女】の上に【神】とつけて【神姫巫女】と呼ばれていた。
 そんな姫巫女の神、神姫巫女に会うのは簡単ではなく、いろいろ手続きが必要だった。
 何のアポイントも取らずにいきなり押しかけたのだから当然と言えば当然なのだが、入り口の書類手続きだけで、ずいぶんと待たされた。
 待っている間にちょっとした事もあった。
 ドスケベ四人衆が口論になったのだ。
 そのもめた内容は――
「リーダー、見損なったぞ。おっぱい好きの風上にも置けん」(by【スコント】)
「俺はお尻好きだ。おっぱい信者になどなった覚えはない」(by【プライス】)
「じ、自分は、やはり、くびれだと思うんすよね」(by【ベネフィス】)
「何を言う?やはり御御足の魅力には勝てん……」(by【クリエント】)
 等々だ。
 こうして紹介するのもバカらしい内容だった。
 唯一の全身趣味である【エニグマ】が、
「まぁまぁ、彼女は全部が美しい。それの優劣を決めるなんてナンセンスだ。もっと全体を見ろよブラザー」
 と仲裁に入るが、
「それこそ邪道だ」(by【プライス】)
「恥を知れ恥を」(by【クリエント】)
「くびれの美しさを語る事が出来る親友だと思っていたっすのに……」(by【ベネフィス】)
「おっぱいのやらわかさが一番だろ?大きさじゃねぇ。形だ、美しさだ」(by【スコント】)
 と集中砲火を浴び、【エニグマ】は、
「優しくしてればつけあがりやがって、お前らに、おれっちが全身像の素晴らしさをたたき込んでやる」
 と言って、戦線に加わり、結局五つ巴の殴り合いに発展した。
 結局、見苦しい戦いに終止符を打ったのは、【ヴェルト】による、お尻千叩きの刑と【リセンシア】による【大地獄の仲人】の刑だった。
 いつもより、割り増しの刑に、5人の愚か者達は、
「「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、もうしません。しませんから許してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ……」」」」」
 といつもより割り増しの悲鳴を上げていた。
 その悲鳴を聞きつけ、
「なんだなんだ?」
「何?何があったの?」
「何、今の悲鳴は?」
「事件があったの?」
「何事なの?」
「誰だ、神聖なる最大神殿でバカな行為をしているのは?」
「どこの馬鹿たれ?」
「あれよ、あれ」
「何の騒ぎ?」
「罰当たりね……」
「阿呆だ……」
「まぁ嫌だわ……」
「何あれ?」
 等々言われた。
 騒ぎを聞きつけて野次馬が集まってきたのだ。
 それで、タティーは、
「は、恥ずかしい……穴があったら入りたい……」
 と言った。
 ――そう、ドスケベ四人衆プラス1が喧嘩していた原因はタティーの体の魅力についてだったのだ。
 まるで、素っ裸にされて大観衆の前に放り出されたような恥ずかしさをタティーは感じた。
 この人達とは無関係ですと言いたかったが、ご丁寧に【リセンシア】が周囲に説明し始めていた。
 周囲のギャラリー達は、
「なるほど、あの娘が……」
「へー、あの子が……」
「修羅場?」
 等と口々に言い、視線をタティーに集中させてきた。
 タティーは、
「か、帰りたい……」
 と言ったが、【クインスティータ】は、
「しゃんとしなさいと言っているでしょ。タティーさん、あなたは仮にもクアンスティータ様の使いなのよ。あなたの恥はクアンスティータ様の恥にもつながりかねないの。それだけは許しませんわよ」
 と言った。
 すると、【ヴェルト】が、
「お前こそ、姉さんに失礼な事するなっていつも言っているだろ【クインスティータ】、わかってんのか?」
 と言って、【クインスティータ】が、
「何ですの?やりますの?」
 と言い、【ヴェルト】が、
「やらいでか、表出ろ、こら」
 と言って、【リセンシア】が、
「どうせなら、観戦料取って、キャットファイトにしない?」
 と持ちかける。
 しっちゃかめっちゃか状態である。
 クアンスティータの威厳を示しに来たどころか、恥をかきに来たようなものだった。
 あぁ……誰か助けてください……
 タティーは天に祈った。
 だが、天に祈っても誰も助けてくれない。
 タティーは耐えるしかなかった。
 その後、書類手続きが終わるまでの間、タティー達は好奇の目にさらされ続けた。
 もめ事だけはなんとか収まった。
 発端であったドスケベ四人衆プラス1はタティーの魅力を更に語って、すっかり仲直りしたようである。
 だが、そのタティーへの褒め言葉も言葉責めを受けているような気がしていた。
 そう、まるで褒め殺し状態だった。
 聞いているタティーは恥ずかしさで気を失ってしまいそうだった。
 そんな永遠とも思える時間を過ごした後、ようやく、書類手続きも済み、奥への通行が許可された。
 【クインスティータ】は、
「ようやくですの?まったく、クアンスティータ様の使いを何だと思っているのかしら、これくらい顔パスで良いじゃありませんの」
 と文句を言った。
 タティーは、そんな事言ったって、偽クアンスティータである自分がこの地を訪れるのは初めてなんだし、承認まで時間がかかるのは仕方ないのでは?と思ったのだが、言うと、【クインスティータ】の反撃の言葉が、3倍になって返ってくるだろうし、そうなるとまた、【ヴェルト】との喧嘩、【リセンシア】があおり、また、もめるとわかっていたので、
「そ、そうだね……」
 と心にもない返事をした。
 この人達と一緒にいると疲れる――とはおくびにも出せなかった。


07 神託の間(小)へ


 ようやく中へ入る事が許されたタティー達は、土の最大神殿の建物内の説明を受けた。
 受けたと言ってもタティー達が進んで良い範囲だけについてだが。
 その説明によると、現在、土の神姫巫女は禊ぎ(みそぎ)の間で体を清めている最中との事。
 禊ぎの間で謁見する訳にはいかないので、神姫巫女とは神託(しんたく)の間でという事になっている。
 神託の間は、土の最大神殿の中には、大中小サイズの間があり、大は20、中は100、小は3000もあるという。
 それぞれの神託のスケールに応じて、部屋を変えるらしい。
 タティー達と会うことになったのは、小サイズの神託の間だった。
 【クインスティータ】はクアンスティータ様の使いと謁見するのに小サイズを使うとは何事かと憤慨していたが、話すだけならば、ばかでかい大サイズの神託の間ではなく、小サイズの神託の間で十分事足りるのである。
 小サイズと言っても軽く、ドームくらいの大きさはあるのだから。
 現地点から一番近い神託の間で会ってくれるとの事だが、その神託の間にいくまでに、3つの関所のような所を通過しないと行けないというのだから、土の最大神殿の大きさがいかに巨大であるかが伺い知れる。
 そもそも普通の存在が神姫巫女に謁見する事は許されておらず、クアンスティータの使いだという事がわかったからこそ、会ってもらえるという事になっている。
 それだけ、神姫巫女とは重要な存在であると言えるのだ。
 土の神姫巫女は土の力を司るとされていて、土の神姫巫女の前では現界において、土系統の力は通用しないとまで言われている。
 正に、七大属性原素の一つを象徴する存在と言えるのだ。
 いかに、偽クアンスティータと言えど、土の神姫巫女と敵対した場合、土系統の力は1割半減してしまうのだ。
 (9割は、クアンスティータ系の力として確立されているので、その9割の使用量はあるが、現界におけるもう1割の使用量が使えない様な状態となる)
 クアンスティータの力の強大さは置いておくとして、1割分の使用が出来なくなるという事は、それだけの大物という事になる。
 クアンスティータ以外の存在の土系統の力はその1割の中に含まれるのだから。
 だが、大物と言えども物怖じすることは出来ない。
 元々、どこかの最大神殿から、【ステージ2】もどきの力が闇ルートで売買されているという疑いが出たので、タティー達は調査に向かったのだ。
 つまり、タティー達は審問側になる。
 半分では敬いつつも、もう半分は疑ってかかるという事をしなくてはならない。
 そういう腹芸は当然、タティーはしたことが無かった。
 どうやって調査すれば良いのかわからないのだ。
 今まで先延ばしにしてきた問題がついにどうにかしてやらなくてはならない状況になってきたのだ。
 謁見が近づくにしたがってタティーは、
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……)
 と、どんどんうろたえて行く。
 タティーの心臓は早鐘の様にがんがん鳴り響いていた。
 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ……
 心臓のドキドキが止まらない。
 どんどん追い詰められていく気分だった。
 とても相手を問い詰める立場の存在とは思えなかった。
 関所も1つ2つと進んで行った。
 残す所関所も後1つ。
 そこを抜けると、いよいよ神託の間まですぐの所にくる。
 タティーは、
「ちょ、ちょっとお風呂に入って一息を……」
 と言ったが、【クインスティータ】が、
「バカ言わないでくださる?調査に来ている最中に入浴する存在がどこの世界にいらっしゃるというの?」
 と言った。
 ここに居ます。
 私はすぐにでも入って落ち着きたいです。
 とタティーは主張したかった。
 だが、タティー自身もわかる。
 そんな主張は決して通らないということを。
 タティーにとっては気分を落ち着けるのはお風呂が一番なのだ。
 だが、それは許されない。
 行くしか無いのだ。
 タティーは追い詰められた時、いつも人間だった頃を思い出す。
 今回は、学級委員に選ばれた時の事だ。
 目立ちたくない彼女はあまり仕事が無かった美化委員になりたかったのだが、誰かが、
「学級委員長はタティー・クアスンさんが良いと思います」
 と推薦した。
 あまりまじめなクラスでも無かったその時のクラスは、誰も学級委員長になりたがらなかった。
 つまり、面倒臭い仕事をタティーに押しつけたのだ。
 それを嫌ですと言えなかったタティーは、その後、一年間、やりたくもない学級委員長になり、主張が出来ない彼女は仕事面で不評を買い、使えない学級委員長という評価を受けたという暗い過去があった。
 好きでなったんじゃないもん。
 無理矢理、学級委員長にさせられたんだもん。
 とは言えなかった。
 そんな辛い過去を思い出す。
 あぁ、人間止めてもおんなじことやってるなぁ私……
 と涙ぐみながら、しみじみと思うのだった。
 そんなタティーも年貢の納め時――
 ついに、最後の関所を通り、神託の間に通された。
 中には数名の女性が待っていた。
 いよいよ、土の神姫巫女がタティー達の前に姿を現そうとしていた。


08 土の神姫巫女(かみひめみこ)


 神託の間(小)で待っていた数名の女性は女従官(にょじゅうかん)と言い、神姫巫女の身の回りの世話をする役目の女官らしい。
 残念ながらまだ、土の神姫巫女は到着していないとの事だったが、もう間もなくお見えになるとの事だった。
 そわそわするタティー。
「【クインスティータ】さん、【クインスティータ】さん……」
 と【クインスティータ】にこっそりと質問しようとしていた。
 【クインスティータ】は、
「なんですの?こんな時に?」
 と聞いてきたのでタティーは、
「どうやって調査すれば良いのでしょう?」
 と質問した。
 【クインスティータ】は、
「はぁっ……」
 と嘆息し、続けて、
「この後に及んでまだ、そんな事をお考えでしたの?千角尾があるじゃありませんの。その尻尾はお飾りですの?」
 と言った。
 確かに、【クインスティータ】の言う千角尾であれば、探れるかも知れないが、土の神姫巫女に対して、疑ってますので探らせろなど言えないと思っているのだ。
 タティーは、
「そ、それはいくらなんでも失礼では……?」
 と言ったが、【クインスティータ】は、
「やましいことがないのなら平気なはずですわ。私はあなたに探られてもやましいことなんてこれっぽっちもありませんわ」
 と言った。
 それは、クアンスティータ一筋のあなたはそうでしょうけど、普通の存在はやましいことの一つや二つあるもので、千角尾はそれも探り出してしまうから……と言いたいのだが、【クインスティータ】は、
「神姫巫女とはやましいところが無い者がなる役職ですわ。千角尾での調査は当然、受けられるはずですわ」
 と言った。
 それは、人間の世界の常識では考えられない事だった。
 人間はどこかしらやましいところはどこかもっている生き物だからだ。
 つくづくタティーは自分は場違いな所にいるんだな〜と思うのだった。
 そうこうやりとりをしている間にただならぬ気配が。
 タティーが振り向くと、その視線の先に――

 コツコツコツ――
 と足音が響き渡り、女従官の一人が、
「土の神姫巫女、フルテララ様、お見えになりました」
 と言った。
 土の神姫巫女――フルテララ――そこでタティーは初めて、土の神姫巫女の名前を知った。
 ――そう、今まで、神姫巫女の名前も知らずに来ていたのだ。
 調査に来たのに調査対象の名前すら知らなかったとはずいぶんな話だった。
 タティーが、見た、フルテララ――
 それは、禊ぎを済ませた後というのもあるだろうが、恐ろしいほどの神々しさを感じさせる女性だった。
 本来、自分では目通りすらかなわないはずの雲の上の上の更に上の様な存在。
 それが、フルテララに感じた印象だった。
 クアンスティータの偽者という立場で無ければ近づくどころか見る事さえかなわない存在。
 それを目の当たりにして、タティーの緊張はマックス状態に達し、それを振り切った感じになった。
 あぁ……
 と言って、ふらつく。
 立って居るだけで足がガクガクする。
 場違いだ。
 完全に場違いだとタティーは思った。
 これから、この女性に対して、調査をしなくてはならないのかと思うと本当に気が遠くなりそうだった。
 そんなタティーの緊張を余所に、フルテララは、
「初めまして、皆様。私が土の神姫巫女、フルテララです。よろしくお願いいたします」
 と言った。
 そして、【クインスティータ】に小突かれ、タティーが、
「こ、ここ、こちらこそ、はじめましてん……私、タティー・クアスンと申される……べきでござる」
 と、もはや何がなんだかわからない言葉を発した。
 それを聞いた【クインスティータ】は、
「あぁ、もう、台無しですわ」
 と嘆いていた。
 そう言われてもタティーにはこれがいっぱいいっぱいだったのだ。
 あぁ、出来るものなら、ここから逃げ出したい。
 タティーはそう思ったのだった。


続く。



登場キャラクター説明


001 タティー・クアスン
タティー・クアスン
 ファーブラ・フィクタ/タティー・クアスン編の主人公で、元、ただの人間。
 両親にタティーという名前をつけられた事から彼女の人生は狂ってしまう。
 元いじめられっ子だったが、【めがねさん】に見いだされ偽クアンスティータとして惑星ファーブラ・フィクタに招かれ、クアンスティータに仇なす存在を取り締まる特殊警察の署長に選ばれる。
 クアンスティータとしての特徴である万能細胞、背花変(はいかへん)と自動攻撃尾である千角尾(せんかくび)を持つ。
 背花変はクアンスティータのものより少ない四つしかなく、中央のものは背花変として機能しないので、背花変としては3枚という事になる。
 三角形型の背花変。
 気が弱く、強く出られない。
 好きな男性といつか結婚し、姓が変わる事で偽クアンスティータという役職を寿退社するのが夢。


002 めがねさん
めがねさん
 タティーを偽クアンスティータとして見いだした存在。
 その正体はよくわかっていない。
 普段はタティーがしている伊達眼鏡として存在しているが本来の姿は別にある。
 タティーのサポートが主な仕事。


003 クインスティータ・クェンスティー(本名スウィート・ピュア)
クインスティータ・クェンスティー
 クアンスティータの事が好きすぎるファン。
 偽クアンスティータになることを夢見ていろいろ努力するが慣れず終い。
 ポッと出の偽クアンスティータに対して強いライバル心を持っている。
 署員ではないのだが、特殊警察の人事権を掌握している。
 かなり気が強い性格。
 しゃべり方は【ですわ】口調。
 宣伝部長としての立場を取っており、クアンスティータのPRのために水着撮影会なども何度もこなしてきた。
 クアンスティータこそが全ての問題児その1。
 本名はスウィート・ピュアだが、本人はその名前を気に入っておらず、クアンスティータのオマージュの名前であるクインスティータ・クェンスティーと名乗っている。
 自分は高度な生命体と言っているがその力は未知数。


004 ヴェルト・ハウプトシュタット
ヴェルト・ハウプトシュタット
 力自慢の問題児その2。
 クインスティータに紹介されて、タティーの元に訪れるが、そこに元彼のプライスと鉢合わせをして暴れる。
 お尻フェチのプライスとは彼の理想とするお尻の形ではなくなってしまったために、プライスにフラれてしまうという不幸な女の子。
 変態のプライスの事をまだ好きでいる。
 タティーにやられてからは彼女の子分として行動し、彼女を【姉さん】と呼ぶようになる。


005 リセンシア・アジュダンテ
リセンシア・アジュダンテ
 頭が良い問題児その3。
 ドスケベ四人衆にとっては恐怖の【地獄の仲人】と呼ばれている。
 ボーイズラブが大好きな婦女子。
 とにかく本人の気持ちは全く無視で男同士をくっつけたがる。
 ボーイズラブの次にガールズラブが大好きなので、タティーにとっても決して無関係ではない。
 自分自身の恋愛には全くと言ってもいいくらいに興味が無い。


006 プライス・フィー
プライス・フィー
 ドスケベ四人衆のリーダー。
 お尻フェチの男。
 タティーの入浴を覗くことを生きがいとしている。
 何度も捕まるが全く懲りない男。
 ヴェルトの元彼でお尻が2ミリ後退しただけで、彼女をフッたある意味、非情な男。

















007 スコント・プレッツォ
スコント・プレッツォ
 ドスケベ四人衆の一人。
 おっぱいフェチの男。
 タティーの入浴を覗くことを生きがいとしている。
 何度も捕まるが全く懲りない男。






















008 ベネフィス・フォルテュヌ
ベネフィス・フォルテュヌ
 ドスケベ四人衆の一人。
 くびれフェチの男。
 タティーの入浴を覗くことを生きがいとしている。
 何度も捕まるが全く懲りない男。
 自分は〜でありますというしゃべり方をする。


















009 クリエント・カントラークト
クリエント・カントラークト
 ドスケベ四人衆の一人。
 足フェチの男。
 タティーの入浴を覗くことを生きがいとしている。
 何度も捕まるが全く懲りない男


010 風来坊のえーちゃん【エニグマ】
エニグマ
 タティーへの覗きに参加してきた謎の男。
 本人は【風来坊のえーちゃん】と名乗るが正体は【エニグマ】領の領主、【エニグマ】本人。
 タティーの全身をこよなく愛す、シルエットフェチでもある。
 自分の立場を捨てでもタティーと付き合いたいという気持ちを持っている。
 今回領主の座を捨て、ドスケベ四人衆に加わり、タティー達一行を追う事になる。













011 ヴィホヂット・ウボヒー
ヴィホヂット・ウボヒー
 ドスケベ四人衆のリーダー、【プライス】にフラれた経験のある性格の悪い悪女。
 【リセンシア】にあてがわれた女の子達を手下に持つ。
 あの手この手でタティー達に嫌がらせをしようと画策している。
 今回、盗賊を使って優勝賞品である【ヴェール】の起動キーを盗み出す。


012 リーチェニー・パルフェーム
リーチェニー・パルフェーム
 【ヴィホヂット】に勧誘されたプロのコスプレイヤーの少女。
 タティーと全く同じプロポーションをしているため、ドスケベ四人衆が揃って好みそうな体型をしている。
 アイドルの夢を捨て、プロのコスプレイヤーとして生きる道を選択した。
 今は、この仕事に誇りを持っているまっすぐな少女。
 【ヴィホヂット】の毒牙にかかり、悪の道を進もうとしているかわいそうな少女でもある。
 本家越えと呼ばれる人気者のレイヤーでもある。
 【ヴィホヂット】の悪巧みを実行しようとするも根が正直な彼女は失敗し、闇コスプレ大会を棄権する事になってしまった。


013 アイリーン・エイムズ
アイリーン・エイムズ
 【ヴィホヂット】の新たなる手下となる者喰い王(ものぐいおう)の選手。
 期待の新人とされていたが、本戦大会の最低出場条件である六大特殊属性原素(ろくだいとくしゅぞくせいげんそ)を最低10体ずつ吸収するという事が不可能であったため、夢を断念、もう一つの夢である最大神殿の神姫巫女(かみひめみこ)を目指そうとするも大会の司会者にケチをつけられ意気消沈。
 その弱った心に【ヴィホヂット】がつけ込み、手籠めにされた。


014 カルメン・サイアーズ
カルメン・サイアーズ
 レディーキラーと呼ばれるナンパ師。
 正体は女性だが、普段は男装している。
 美しい女性をコレクションとして自宅に監禁するという危ない趣味を持つ。
 タティーを落とそうとするも玉砕する。
 【ヴィホヂット】に弱みにつけこまれ、彼女の傘下に加わる事になる。














015 土の神姫巫女(かみひめみこ)、フルテララ
フルテララ
 土の最大神殿を統治する土の神姫巫女(かみひめみこ)。
 土の力を司り、現界においてはクアンスティータ属性の土系統が9割、フルテララ属性の土系統が1割とされている。
 彼女と敵対するという事はその1割の土系統の力を没収されてもおかしくないという事になる。
 タティーがおののくほどの神々しさをまとい、登場する。