第一章タイトル

 第一章 アイアファイスの秘術


 母であり姉でもあるアンジェリーヌを残してフェリクス・セドリックは宛のない旅に出た。
 これからどんな出会いがあり、どんな冒険が待っているかはまだ見えてこない不安な旅となった。
だが、確実に、彼の知らない所で物語りは動き出していたのだった。

「追えー」
「草の根かき分けても探し出せ」
「こっちにも居ない、そっちはどうだ?」
「ダメだ、あっちだ」
「必ず生け捕りにしろ」
 男達の怒号が飛ぶ。
 脱走した少女達を探しているのだ。
 これで、一人も見つけられなかったら、彼らは失敗の責任を取らされ殺される。
 だから、必死で探していた。
 だが、もはや後の祭り状態。
 脱走した少女達の行方は解らなくなった。

 彼らはある組織の構成員だった。
 彼らが探していた少女――それは0型から9型までの名称が割り当てられた十名の少女達だった。
 では、この十名の少女達は一体何者なのか……
 それは、フェリクスの父、万能師(ばんのうし)と呼ばれた男、バティストが関係していた。
 彼が生み出した数々の秘術は、世界中の国が欲しがるものだった。
 それこそ、その秘術を巡って戦争が起きる程のものだった。
 バティストの家族が持っている秘術を別とすれば、バティストは生前、秘術を守るため、秘術の中でも特別視していた百八の秘術を封印した。
 封印された秘術は、【イオナの封印】と呼ばれた。
 多くの者はバティストの共同研究者の名前がイオナ博士という名前だったので、その名前をもじっての【イオナの封印】だと思っているが、実際には封印には0番から107番までの番号が振られているため、最後の107番からもじったのが【イオナ(107)の封印】という名称の由来だ。
 【イオナの封印】は調整者(ちょうせいしゃ)と呼ばれる、108人の少女がその封印を解く鍵とされている。
 【イオナの封印】で封じられている秘術はその数字の数が少ない程、凄い秘術とされている。
 特に一桁、0番から9番までの秘術は【君臨する支配者の秘術】とまで呼ばれていた。
 現に、その次の数字である10番の秘術は現在、様々な国が所有する最大戦力を生み出している秘術だった。
 なので、その現最高戦力の上の力を持つとされる0番から9番までの秘術を封じている十名の少女はどの国も喉から手が出る程、欲しがる人材だった。
 現在、調整者の少女達は次々と組織に捕まり、封印を解かれていって、各地に戦争の火種がばらまかれている。
 逃げ出した十名の調整者以外にも11番から19番の調整者と、他にも十何名の調整者が未だ、行方不明となっている。
 調整者の少女達は組織から逃げる事を宿命付けられていた。
 組織に捕まれば、封印を解かれ、再び封印されないように殺されてしまうという残酷な運命が待っている。
 彼女達が生きている限り、それは続く。
 英雄バティストが残した影の歴史がここにもあったのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ……こ、ここまでくれば、大丈夫かしら……」
 一人の少女がボロボロの衣服で人里離れた山奥で一息を着く。
 少女の名前はアウローラ・クラウディア。
 この名前は偽名だ。
 本当の名前は【七型】だ。
 7番の秘術の調整者――それが彼女の正体だ。
 両親に捨てられ、バティストによって、調整者としての運命を与えられた少女。
 それが、彼女だった。
 【七型】という名前は好きじゃない。
 まるで、番号で呼ばれているみたいだからだ。
 だから、彼女は偽名を名乗る事にした。
 【アウローラ・クラウディア】とは彼女が調整生活を受けていた頃、唯一、読んでいた小説のヒロインの名前から取っていた。
 小説の中でのアウローラは自由気ままに生きていて、その頃の彼女が望んでも叶わなかったものを全て持っていた。
 自分もそうなりたい。
 そう常に思って生きてきた。
 彼女はその後、1年がかりで、他の一桁番号の調整者達と脱走計画を練り、ついに実行した。
 まとまって逃げると捕まる恐れがあるから、バラバラに逃げたが、他の調整者達の事も気がかりにはしていた。
 共に脱走した調整者達も無事に逃げられたことを切に願うアウローラだった。
「バティスト・セドリック……いつか……殺してやる……」
 万能師バティストが既に故人となっている事を知らない彼女は自分にこのような運命を押しつけた彼を殺すつもりでいた。
 彼女がバティストの息子、フェリクスと出会う事になるのはもう少し、先だった。
 彼女はまだ、【十型】の少女が管理していた超兵器、【兵宮(へいきゅう)】から生み出される鉱兵(こうへい)から逃げ切ってはいないのだから。

 【兵宮】とは、材料となる鉱物などを取り入れるとそこから、命令で動く鉱物兵器を生み出す力を持っている。
 鉱兵はその中でも最下級兵器に当たる鉱物兵だ。
 将棋で現すなら歩、チェスで現すならポーンと言ったところだろう。
 その鉱兵は【兵宮】を通して遠隔操作で動かす事も出来る。
 【兵宮】を所有する組織の一つが、鉱兵を使って、逃げたアウローラ達を追っているのだ。
 アウローラは泥水をすすった。
 喉が渇いたからだ。
 が、とたんに咳き込みむせる。
 濾過されていない泥水は死ぬほど不味かった。
 だけど、贅沢は言っていられない。
 生きて、バティストに復讐するためには細菌混じりの泥水だろうが、すすって生きてやる。
 両親からもとっくに見捨てられている彼女にとっては、バティストへの復讐心は生きる上で必要なエネルギーをくれるものであった。
 彼女はその執念に縋るしか、生きる希望を見いだせなかったのだ。
 彼女は近くの町を見る。
 そこには、綺麗な格好をした女の子が父親にプレゼントを買ってもらって喜んでいる光景が映った。
 それは彼女が望んでも手に入らないものだった。
 幸せそうにしている女の子の首を絞めてやりたいと思った。
 彼女が逃げている立場でなかったら、実際にやっていたかも知れない。
 それほど、気持ちが荒んでいた。
 世の中のもの全てが憎い。
 そんな感情に支配されていた。
 心が荒んでいた。
 彼女は薄汚れてしまった顔を泥水で洗い、その場を後にした。

「あんっ、くすぐったいよぉ〜、あ、そこは、だぁめ……」
 カップルがいちゃついている。
 それを旅で立ち寄ったフェリクスは見ていた。
「何、見てんだ、てめぇ、見せもんじゃねぇんだよ。あっち行け」
 視線に気づいたカップルの男がフェリクスに怒鳴る。
「あ、そんなつもりじゃ……」
 フェリクスは慌てて否定した。
 が、視線は服をはだけているカップルの女の方に向いていた。
 父、バティストの愛情は得られなかったが、万能師であったバティストの稼ぎは相当なもので、お坊ちゃん生活をしていた彼にとって、人の目を避けてとは言え、外でじゃれ合っているカップルを見たのも殆ど初めてだったので、ビックリして凝視してしまったのだ。
「あっち行けって」
「あ、うん……」
 カップルの男が手でシッシッとフェリクスを追っ払う。
 この男は弱そうな男だったら、金をせびるつもりだったが、フェリクスは気弱な性格に反して、厳つい顔をしているので、怒らせるとヤバいと思われたのか、追っ払うだけですませたようだ。
 一人旅などしたことのない彼は、何をどうやったら良いのか勝手が全くわからず、右往左往していた。
 すでに、ここに来る前に何度も騙されかけていたので、疑心暗鬼にもなっていた。
 それでも騙されずにいたのは父バティストの残した秘術の応用で、騙そうと思って近づいて来る人間の持つ違和感を彼は何となくだが、気づくことが出来た。
 そのため、この人間は嘘を言っているくらいであれば、彼は会話などから察知する事が出来た。
 残念ながら、未熟である彼は何処がおかしいという所まではわからないが、嘘の危険度くらいは察知出来た。
 そのため、危ないと思ったら、事前にその場を離れる事が出来ていた。
 認めたくはないが、父の知識のお陰で今まで無事だったとも言えた。
 何となくだが、自分がどう動けば、どういう展開が起きるかというのがほんの少しだけ見える――
 それが、彼の特技のようなものでもあった。
 なので、本来であれば、足を踏み入れないであろうこの場所にもなんとなく、こっちの方が良いという感覚に従ってこの地に来ていた。
 ――そう。
 彼は、この感覚により、運命の出逢いを果たそうとしていた。

「あの……大丈夫?」
 フェリクスはうずくまっている女性を見かけ声をかける。
 女性は、
「大丈夫です……、ちょっとそこまで行けば……手を貸してもらえますか?」
 と言ってきた。
 フェリクスは、
「え?えぇ、大丈夫です。手を貸します」
 と言って女性に肩を貸した。
 女性は、フェリクスが油断している隙に財布を抜き取って逃げた。
 突然の事にフェリクスは呆然と立ちつくした。
 女性はそのまま逃げ去った。
 逃げた女性の名前はアウローラ。
 フェリクスの父、バティストに怨みを持つ、7番の秘術の調整者の少女だった。
 身寄りのない彼女は生きるために、スリをして生計を立てていたのだ。

 フェリクスとアウローラ――
 二人の出会いはこれが初めてだった。
 決して、よい出会いとは言えないがどちらにとっても妙に印象に残る相手として映っていた。
 財布を失ってしまったフェリクスだが、バティストから授かった知識を利用して、手持ちの物を使って新商品を作り出し、それを売って、資金に変えていた。
 お坊ちゃん育ちではあるのだが、バティストの教育が微妙な形で次に為すべき事というのをフェリクスに判断させていた。
 ある程度、資金を得たところで、場所を移動し、姉の捜索を続けるのだった。
 客からの情報で姉に繋がるかも知れないヒントを一つ得ていた。
 【アイアファイスの秘術】――その秘術に姉が関わっている可能性がある。
 この秘術がどのようなものかは不明だが、それは【兵宮】に匹敵する程の秘術であるという噂があるのだ。
 調整者で、0番から9番と11番から19番の少女が捕まったという話しは聞いていない。
 だとすると10番の調整者から解放された秘術である【兵宮】に匹敵する秘術は【イオナの封印】の中にはない。
 【イオナの封印】にも入っていない秘術の中に【兵宮】に匹敵する秘術があるとは考えにくい。
 だとすれば、姉の誰かが、その秘術に関わっているという可能性があるという事だ。
 フェリクスは【アイアファイスの秘術】の情報を集めるために奔走した。
 彼にとっては情報を誰かに聞くという行為は非情に難しい事だった。
 本来、引っ込み思案な性格の彼が誰かに直接、情報を聞き出すというのは至難の業でもある。
 なので、彼は、人の集まりそうな場所――
 例えば、酒場などを周り、飲めもしない酒を飲むふりをしながら、そこに来ていた客同士のうわさ話に聞き耳を立てて情報を集めていたのだ。
 話の内容から【イオナの封印】やバティストなどの関連するようなキーワードを話す人間の近くに場所を陣取り、情報を集めた。
 運の様なものを見つけるのが上手い彼ならではの情報収集方法だった。
 その情報を集めてフェリクスは【アイアファイスの秘術】の信憑性について考えた。
 生前のバティストは常々言っていた。
 それは、本物の秘術を隠すために、たくさんの偽物の秘術をしのばせているという事をだ。
 木を隠すなら森の中。
 秘術を隠すには、たくさんの偽物の秘術の中に本物の秘術を隠して国などに提供したとバティストは言っていた。
 国に渡ったたくさんの秘術。
 が、その大半は偽物の秘術であり、その真偽を確かめないとその秘術が本物であるかどうかは解らない。
 つまり、無知のままでは秘術は使えないのだ。
 そうすることで万能師バティストは自身の秘術を上手く守っていた。
 仮に、彼の意図しない所に秘術が渡っても正しい秘術の使い方を知るものが居なければ、それは宝の持ち腐れ。
 何の役にも立たないのだ。
 フェリクスはこの【アイアファイスの秘術】は本物の秘術を隠すための攪乱用の偽秘術ではないかと思ったのだ。
 姉たちは父、バティストの事を軽蔑していた。
 その父の秘術を軽はずみに世に出すか?
 という事に疑問を持ったのだ。
 姉たちを捜すにはバティストの秘術をさがすのが一番の近道だとは思うが、それでも簡単に見つかるのなら、母、アンジェリーヌであれば、容易に見つけられたはずなのだ。
 母が見つけられなかった状況を考えると姉たちが、簡単に、自身が覚えた秘術を披露するという事は考えられない事だった。
 下手をすれば、調整者と間違えられて、情報を得た後、殺害されてもおかしくない行為だからだ。
 それだけ、バティストの秘術を披露するという事は命の危険と向き合う事でもある。
 披露した秘術によってはそれまでの勢力図が書き換わる場合だってあるのだ。
 秘術を狙う組織だって、それだけ真剣になる。
 どちらにしても人のうわさ話だけでは、真実にまではたどり着かない。
 事の真偽を確かめるためには、独自のルートで、【アイアファイスの秘術】を探し出すしかない。

 何にしても――
「お兄さん、私の事買わない?安くしとくよぉ〜」
「あら、良い男。私と一晩過ごさなぁい?」
 娼婦達が彼に声をかける。
 もちろん、彼の懐が狙いだ。
 彼がモテている訳ではない。
 見ると酒場の隅っこで行為をしているカップルも居る。

 初な彼には、この場所は刺激が強すぎた。
 顔を真っ赤にして早々に、立ち去るフェリクス。
 情報は集めるに良いだけは集めた。
 後は、行動するのみだった。

 【アイアファイスの秘術】を探して、各地を転々とするフェリクスはこの秘術の噂の出所が8カ所から出ているところまでつきとめていた。
 後は虱潰しに回って、一つ一つ、その真偽を確かめるだけだった。
 今は、その内の一つの真偽を確かめるため、情報の出所である土地アレックスタウンにまで来ていた。
 この土地での噂では――
 【アイアファイスの秘術】とは天候を操る秘術であるとされている。
 他の7カ所では別の種類の秘術とされている。
 バティストは本物の秘術も偽物の秘術を織り交ぜて発表する事で、秘術を奪われにくくするという事を姉たちにも教えている。
 なので、偽物がたくさんあるという事はその中に本物が混じっているという可能性も高いという事もある。
 それは、姉たちが父の教えを素直にやっていればの話にはなるのだが。
 天候操作術としての【アイアファイスの秘術】がもし本物だとすると【兵宮】に匹敵する秘術だというのも頷ける。
 だが、恐らく、これも偽物だろうとフェリクスは思った。
 天候操作術であれば、恐らく、逆に凄すぎる。
 【兵宮】の力よりもずっと強いものであると言わざるを得ない。
 【兵宮】に匹敵するというよりは、【兵宮】を超えると言うべき秘術となる。
 さすがの【兵宮】も自然の力には敵わない。
 それを操作するのだから、それはもっと上位の秘術となるはずだ。
 それに【アイアファイスの秘術】と並行して、【アーウィンスドの秘術】という秘術の噂も耳にした。
 紛い物の秘術――
 やはり、認めたくはないが、父は天才であると認めざるを得ないとフェリクスは思った。
 あっちへ行ってもこっちへ行っても偽物の情報が混じり合い、本物の情報へとたどり着かない。
 迷っていると新たな情報が入り、どれが本当の事だか全く解らなくなる。
 そういう時は全体を見ろ、
 その中の違和感を見つけろ、
 答えはそこにあるという教えをフェリクスは受けていた。
 一つ一つは偽情報の乱立で訳がわからなくなっているが、全体的に見てみると、ある一定の法則が見えてくる。
 その全体で見るというのにもコツがあり、それが大きすぎても小さすぎてもいけない。
 絶妙の距離感で見ると見えてくるというものだ。
 ある情報は活かし、ある情報は切り捨てる。
 その取捨選択をしていくと、バティストの意図も何となくだが、見えてくるのだ。
 これは、家族にしか解らない暗号のようなものだった。
 自分の家族にだけ、見えるようにした特殊なメッセージ。
 それが、なんなのかはよく解らないが、答えにたどり着く前に、フェリクスはその情報が本物であるか偽物であるか解った。
 答えにまでたどり着いてしまうと、その近くにある危険が迫る事になるが、答えの場所にたどり着く前に答えがわかると危険をある程度、回避出来て、偽物であるのならば、それを捨てて、次の答えを探しに行けるというのもフェリクスに与えられている特典でもあった。
 フェリクスは天候の秘術と言われる【アイアファイスの秘術】は違うと断定し、その真偽を確かめずに、次の情報の地に足を向けた。
 フェリクスがその情報に近づくと、彼を狙っていた組織と鉢合わせする可能性が高かったが、近づく前に引き返したので、ニアミスで、彼は危険を回避した。
 次の土地に移動した、フェリクスはそこで、アウローラと再会した。
「君は……」
 思わず、アウローラを見つめるフェリクス。
 彼女はコンビニでアルバイトをしていた。
「あ……」
 アウローラの方もフェリクスの顔に見覚えがあり、彼女は彼から財布を盗み取ったという過去があるので、どうしようかと思ったが、このバイトを放棄して逃げ出すと生活の安定が得られなくなるので、行動に迷いが生じているようだった。
「お、お客さん、ちょっと良いですか?」
 意を決したアウローラはフェリクスをコンビニの外に連れ出した。
「一度、会ったよね?」
 そう尋ねるフェリクスに、
「あ、あの時は悪かったと思っているわ。私も生きるのに必死で……お金は返すから、見逃して欲しいの。お願い、私にはやることがあるの。それまで捕まる訳にはいかないのよ。何でもするから」
 と見逃して貰おうと必死で懇願する。
 フェリクスとしては確かに財布を盗まれたのには腹を立てているが、彼にも姉を捜すという目的がある。
 彼女を警察に突き出すという事は彼の素性も少なからずバレる危険性がある。
 警察に組織の手が回っていないとも限らないので、面倒毎を避けたいという気持ちは彼も同じだった。
「いや、良いよ、財布さえ返して貰えれば……」
 と言ったが、生憎、アウローラの方はその財布の中身を使ってしまった後だった。
「か、返したいのは山々なんだけど、今は持ち合わせが……でも、必ず返すから。ホントよ。信じて」
「信じてって言われても……」
 本当ならすぐにでも立ち去りたかったが、そうも言っていられない状況のようだ。
「3日、それだけ待ってくれない?3日後、お給料が入るから、その時には必ず……」
「って、言われても、急いでいるし……」
「お願い。借りた分に利子もつけるから……」
 利子と言われても貸したのではなく、盗られたのだけどと言いたかったが、無い袖は振れないというのもあるだろう。
 彼女にも生活があるのだ。
 生活が滞る状態にしてまで金を返せとも言えない。
 ――が、彼女は信じるに足りる人物なのだろうか?
 生きるためだったとしても彼の懐から財布を抜き取って逃げたのだ。
 それは覆らない事実だ。
 だが、気の弱いフェリクスは、
「解った。3日だね。それだけは待つよ。だけど、それ以上は待てない。もし、逃げるようなら……」
 と言った。
「解ってる。逃げない、神に誓って」
「そう……」
 フェリクスとしては信じて良いのかどうかも解らず、守ってもらえるかも解らない約束をとりつけた。
 結果として、彼は3日間、この土地にいなくてはならなくなった。
 とりあえず、する事も特にないので、3日間、アウローラを見張る事にした。
 彼女としてもコンビニでのバイトがあるので、逃げ出せば、職を失う事になる。
 それは本意ではないだろう。
 彼女の人柄はバイトしている姿を見ていれば大体解るのではないか?
 そう思って、彼女を近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら観察していた。
 少なくともバイトをしている時の彼女は真面目に働いていた。
 その姿からはとてもスリをした女の子とは思えない。
 生きるために仕方なくしたというのもあながち嘘とも思えなかった。
 バイトが終わると、アウローラはフェリクスが居る喫茶店まで来て、少し会話をして帰宅するという形を取っていた。
 アウローラとしては、何とか、フェリクスとは穏便に済ませたいという気持ちが合ったのだろうが、彼としては何だか、バイト帰りの恋人と待ち合わせをしている様な気持ちにもなっていた。
 それはアウローラが可愛い女の子だったというのもある。
 財布を盗み取って行った時の彼女はどこか薄汚れた格好をしていた。
 だが、コンビニで働いている彼女はどこか少し、生き生きとしていて、生きる喜びを探しているような印象があった。
 真面目に働く事が楽しい。
 生まれ変わろうとしている。
 そんな印象があった。
 だが、それは人生経験の浅い、フェリクスが勝手に思っている事であって、彼女はバティストを殺すという秘めた憎悪を隠し持っていた。
 バティストの教えで考えれば、違和感に気づいてもおかしくはないのだが、フェリクスの恋心がその知覚を鈍らせていた。
 そう、フェリクスはアウローラに恋心を抱きつつあったのだ。
 彼女と話すのが楽しい。
 それが、例え、財布を盗んだことへの後ろめたさからだとしても。

 3日という日にちはあっという間に経ち、アウローラの給料日となった。
 彼女はATMでお金を下ろし、フェリクスに封筒を渡そうとする。
 これがフェリクスの手に渡れば彼女との関係もそこで終わり。
 そう思われたが、
 そうはならなかった。
「いたぞ」
 突然、その声が響いた。
 フェリクスは自分が追っ手に見つかったと思って、封筒を受け取る前に駆けだした。
 彼女ともそれっきり。
 そう、一瞬思ったのだが、アウローラも同じ方向に駆けだしていた。
 そう、彼女もまた、追っ手から逃げる立場なのだ。
 実際に叫んだのは、強盗に入り、指名手配されていた別の男がフェリクスとアウローラの近くをうろついていて、その指名手配の男がそれを追っていた、警察官に見つかったというだけの事だったのだが、お互い、逃げたという事で、どちらも追っ手から逃げる立場であるという事が何となく伝わった。
 今は逃げる必要が無いと解ったものの、お互いが逃げている立場だということが何となく自分も相手も気づいている事となったフェリクスとアウローラは何となく気まずくなった。
 フェリクスは財布とお金の入った封筒を受け取ったものの、アウローラの事情も気になるので、このまま立ち去るのもどうかと思うようになった。
「あの……」
「あの……」
「え?」
「え?」
 思わず、お互いの言葉がハモる。
 お互い相手が何かあると思いつつも、それを踏み込んで聞けない。
 そんな状態だ。
 だが、どちらも目立つ生活は出来ない立場にあるという事は解った。
「誰かに、追われているの?」
 思い切ってアウローラに聞いてみる。
「ううん……別に、何も……そっちは?」
 当然、はぐらかされた。
 さらに、フェリクスの事情も聞いてくる。
「いや、こっちも別に……」
 お互い何となく気になるとは言え、隠している事情を話す程親しくなっていないのでお互いの事情を聞くことは出来なかった。
 何処から逃げているという事もあるので、お互いが敵か味方かどうかも解らない。
 このままでは協力関係になって良いかどうかも解らない。
 お互い、相手に悩みがあることは解っていても助け合えない。
 それが、今の二人の関係だった。
 気にはなるけど、自身の安全を確保するために、離れなければならなかった。
 二人は相手に気持ちを残したまま、お互いの道を行くのだった。

 フェリクスは別の地に【アイアファイスの秘術】を探しに向かい、アウローラも敵か味方か解らないフェリクスに知られた地に居続ける事は出来ないとして、バイトを辞めて、別の地へ向かった。
 二人の二度目の出会い。
 それはお互いを意識し合う関係にさせた。

 フェリクスは移動を繰り返し、【アイアファイスの秘術】の候補も後、3つを残すのみとなった。
 今回の【アイアファイスの秘術】は自由に幻を作り出せるというものだ。
 蜃気楼に近い秘術と言える。
 これもガセネタ臭かった。
 幻を作り出せるだけでは、インパクトが弱いという理由でだ。
 偽物であると断定しているのだから、次の候補の場所へ移動するべきなのだが、アウローラと二度目の出会いを経験してからは、勘が鈍ったのか、決断力が鈍ったような状態となっていた。
 どうしても、アウローラの事が気になり、バティストの教え通りに行動出来なくなっていた。
 恋煩いと言ったところだろうか。
 アウローラはどうしているだろう?
 お腹を空かせてないか?
 誰に追われているんだろう?
 付き合っている人とかいるのだろうか?
 彼女はまだ、同じ地にいるのだろうか?
 気になるのは彼女の事ばかり。
 姉を捜さねばならないのに、姉達の事よりも彼女の事を考えてしまう。
 奥手な彼はそれが恋だという事がよく解っていなかった。

 アウローラに会いたい。
 会って、これからどうするか相談したい。
 その事だけが頭をよぎっていた。
 それが原因による判断力の欠如が、彼にピンチを運んできた。
【兵宮】により生み出された鉱兵に囲まれたのだ。
 囲まれたというのは見つかったという事ではない。
 が、行ける方向全てに鉱兵が配置されてしまったのだ。
 鉱兵は【七型】を追っていた。
 【七型】とはアウローラの事だ。
 実はアウローラの方もフェリクスの事が気になり、近くまで彼を追って来ていたのだ。
 気にはなるけど、会うことは出来ない。
 だけど、せめて、様子だけでも窺いたい。
 その気持ちが彼女にフェリクスの情報を集めるための行動を取らせていた。
 その行動が、組織に見つかり、鉱兵が集まってきたのだ。
 アウローラの方はフェリクスと違い、危険に対する対処は素人だ。
 そのため、足がついたのだ。
 鉱兵の接近に気づいたので慌ててアウローラは逃げて難を逃れた。
 だが、近くにいたフェリクスはまともに、影響を受けたのだ。
 突然の事態に慌てるフェリクス。
 鉱兵が集まってきたのはアウローラが原因なので、彼からしてみれば、寝耳に水の出来事だった。
 何が起きているのか理解できないが、逃げ道が無いことに対して、どう対処して良いのか迷っていた。
 母からもこんな時はどうするという教えを受けていたのだが、アウローラの事を気にしすぎていたフェリクスは慌ててしまって対処が遅れた。
 結果としては鉱兵を操っていた者の不注意で見逃されることになったのだが、一歩間違っていたら捕まっていてもおかしくない程、急接近されていた。
 二人を追っている組織とは一体、どのようなものをいうのだろうか?

 現在、世界は大きく分けると十二の勢力が支配しているとされている。
 細かく分けると百以上になるのだが、組織同士の繋がりとかを考えると十二の勢力に分類される。
 その十二の勢力のトップ組織は全て【兵宮】を所有している。
 だが、【兵宮】は調整者である【十型】が既に死亡しているので、再調整が利かない状態になっている。
 そのため、【兵宮】の多くはそのポテンシャル全てを解放される事なく、最下級である鉱兵を生み出す事しか出来ない状態となっている。
 鉱兵の戦闘能力はかなりのもので、一体の鉱兵の戦闘力は戦艦一隻と同等とされている。
 【兵宮】が生み出せる鉱兵は材料さえあれば、際限なく生み出せるので、戦力としてはかなりのものになる。
 そのため、【兵宮】は世界の最大戦力と呼ばれるのである。
 十二の勢力は鉱兵以外の戦力を生み出せる【兵宮】を多数所有しているため、トップ組織として君臨している。
 下部組織には鉱兵しか生み出せない調整不十分な【兵宮】が割り当てられている。
 下部組織は鉱兵だけでは、十二の勢力の持つ【兵宮】の戦力には勝てないので、従っているという状態だ。
 だが、この勢力図もバティストの残した秘術の解放しだいでは簡単に塗り変わる。
 それだけ、バティストの残した【万能師の知財】は世界で重要視されていた。
 そのバティストの血を受け継ぐ家族や、一桁代の調整者はどの組織にとっても取り込みたい人材であると言える。
 フェリクスやアウローラが追われる立場であるのもそのためだった。
 お互い追われる身――
 そんなに簡単には、歩み寄れない立場だった。
 下手に近寄れば命の危険に見舞われるかも知れないのだ。
 気にはなるが、近づけない。
 付かず離れずの微妙な間柄。
 それが、現在におけるフェリクスとアウローラの関係だった。
 その後もお互いの事が気になり、お互いの情報を集めたりはするが、近づけずという様な関係が続いた。
 気にはなるが関われない。
 そんな距離感が余計にお互いを意識させた。

 フェリクスはその後も情報をかき集め、【アイアファイスの秘術】がガセネタだと結論付けた。
 本来の彼であれば、もっと早く結論づけることができただろうが、そこにアウローラを気にするという事を挟むとどうしても判断力が鈍ってしまった。
 彼女の事が気になって気になって仕方がない。
 これを解決するにはただ一つ。
 会いに行けばいい。
 それは解っている。
 が、その一歩がなかなか踏み出せない。
 それがフェリクスの行動を鈍らせていた。
 アウローラの方も何故か、不思議とフェリクスの事が気になってしまうという状態になっていた。
 スリをした相手──
 ただ、それだけの相手だと割り切りたいのだが、割り切れない。
 スリをした相手はフェリクス一人ではない。
 あの頃は他にも数人の財布を失敬した記憶がある。
 他の人間は正直、顔も覚えていない。
 フェリクスだけが、鮮明に記憶に残っている状態だ。
 フェリクスがアウローラの好みの男なのか?
 いや、違う。
 どちらかと言えば、フェリクスの様な顔は趣味じゃない。
 もっと、優しい顔立ちの男性の方が、彼女の好みだ。
 なのに、どうしても気になる。
 彼の事が気になって気になって仕方がない。
 彼女の内側のどこかの部分が彼を求めている。
 そんな感じがした。

 相思相愛というよりはお互いがお互いを求める、運命の鎖の様なものでつながれているような関係──
 それが、フェリクスとアウローラの関係だった。
 それは万能師であるバティストが関係していた。
 フェリクスの知る知財とアウローラの知る知財──
 その二つが引き合っているのだ。
 知財を受け継ぐ家族と調整者という違いはあっても二人はバティストの知財を通じてどこかでつながっているのだ。
 だが、その事は二人は気づかない。
 気にはなるけど、好意とも少し違う。
 この感覚はなんなんだ?
 自分の気持ちがわからないまま、相手の事をつい探ってしまう。
 お互いが歩み寄れない状況だったが、ある事件をきっかけにまた、二人は急接近するのだった。
 【十型】に生み出された、【兵宮】──
 そのほとんどは鉱兵と呼ばれる鉱物兵器を生み出すものだったが、ここへきて、鉱兵以外の鉱物兵器が幅をきかせてきた。
 その名は【ウェポンテイル】という。
 鉱兵より上位の鉱物兵器だ。
 基本的に鉱兵は【オーソドックススタイル】という別名があり、基本的な運動能力を強化した鉱物兵器だ。
 そのため、能力としては基準的な戦闘能力を持つ。
 【兵宮】で生み出される鉱物兵器はこの鉱兵、【オーソドックススタイル】と比べてどの部分が、優れているかというところをそれよりも上位の鉱物兵器の名称にしている事が多く、【ウェポンテイル】は鉱兵にはない、しっぽの様な部位を持つ鉱物兵器となっている。
 【ウェポンテイル】は【オーソドックススタイル】をベースに、戦闘能力の高いしっぽを取り付けた鉱物兵器となっているが、このしっぽも一本から九本まで取り付けが可能で、本数が多い程、凶悪な戦闘能力を発揮する。
 【ウェポンテイル】は【オーソドックススタイル】よりも一つ上のランクの鉱物兵器となる。
 ランクとしては高くないが、【オーソドックススタイル】でさえ、戦艦一隻と同等の戦闘能力があるという事からも、それよりも上のランクの鉱物兵器が出て来たという事は大きな問題となる。
 【ウェポンテイル】を使用したのは、第四組織の一つ、【紅蓮(ぐれん)】による暴走によるものだ。
 第四組織とは大きい方から数えて四番目の規模の組織の事を指す。
 第一組織が世界を支配している十二の組織であるから、それよりも3つ下のランクの組織であると言える。
 【紅蓮】は今まで、【オーソドックススタイル】を生み出す【兵宮】しか使用権利がなかった。
 が、代表支配者が代替わりをし、他の組織を襲撃し、【ウェポンテイル】を生み出す力を持つ【兵宮】を手に入れたのだ。
 【紅蓮】は他の組織と抗争を続けて、勢力を伸ばしてきている。
 【紅蓮】の行動が目に余ると思った第三組織の一つ、【マルヒ】が他の第四組織に【紅蓮】討伐の指示を出したのだ。
 ひょんな事からその抗争に巻き込まれたのがフェリクスとアウローラだった。
 それぞれ、打倒【紅蓮】のため、他の第四組織から新たな人材を求める募集があった。
 その頃、潜伏していたバイト仲間に誘われるような形で、アウローラは【紅蓮】の対抗組織に参加した。
 バイトはその対抗組織を応援する者達のたまり場ともなっていて、彼女は嫌とは言えなかったのだ。
 同じように、別の場所でも【紅蓮】の対抗組織の募集があり、それを普通のバイトと勘違いしたフェリクスは面接でそれが、抗争のための構成員の募集だと知るが、この募集を断るという事は、【紅蓮】に味方する事と同じだと言われ、断ったら何をされるかわからなかったので、対抗組織に参加する事になったのだ。
 フェリクスとアウローラは嫌々参加した、対抗組織の集会で再開する事になった。
「あ……」
「あ……」
 お互い同時に気づく。
 良く、出会う。
 これは運命なのか?
 とつい思ってしまう。
 だが、そんな事を気にしている余裕はない。
 素性がばれてしまったら、フェリクスもアウローラもただでは済まされないのだから。
 そんな緊張感の中での再会だった。
 対抗組織では【紅蓮】に対抗するために、チーム編成を組むことになった。
 まず、二人から五人で一つのグループとなり、十のグループをひとまとめにして、一班とする。
 それを二十班作って、一般から募集した兵隊となる。
 フェリクスとアウローラは二人で一つのグループとなることにした。
 他の誰かと組むより、お互いが組んだ方が良いと直感で判断したためだ。
 班への報告は定期的にしなくてはならないが、探索任務では二人だけで動けるという状態になった。
 なし崩し的にとはいえ、フェリクスもアウローラもずっと気にしていた相手としばらく行動を共にすることができるようになった。
「げ、元気だった?」
「あ、うん、そっちは?」
「こっちも、それなりに……」
「そう……」
「うん……」
「………」
「………」
 チームを組むのだからコミュニケーションをとっていろいろとこれからの事を相談しないといけないのに、双方共に、言葉が出てこない。
 自分が今、どんな感情で動いているのかよくわからないので、何をしゃべったら良いのかわからないからだった。

 班の班長からは【ウェポンテイル】の危険性についての説明はあった。
 【紅蓮】の対抗組織の中でも二人が所属している【プレゼントーイ】は【兵宮】は三十機程所有しているが、いずれも【オーソドックススタイル】のみの生産能力しかない。
 【ウェポンテイル】の戦闘能力はしっぽ一本であれば、だいたい、【オーソドックススタイル】の戦闘能力の二倍程度だが、九本になるとその戦闘能力は二十倍になると言われている。
 単純計算して、九本のしっぽの【ウェポンテイル】を相手にするのには、最低でも【オーソドックススタイル】二十体必要となるという事になる。
 【ウェポンテイル】のしっぽは増えれば増える程、操作が難しくなると言われているが、材料さえあれば、作る事自体は難しくないとされている。
 【ウェポンテイル】の創作は【オーソドックススタイル】の創作よりも時間がかかるとは言え、いたずらに量産されたら、【プレゼントーイ】だけでは、止めるのは荷が重い。
 その不利な状況を打破するには、大元の【兵宮】自体を突き止めて、それを操作している人間を捕獲または、始末して、【兵宮】を奪う事が先決と言えた。
 残念ながら、第三組織以上の組織は、下級の鉱物兵器での争いには出てこない。
 わざわざ自分達が出てくるまでもないと思っているからだ。
 【紅蓮】の暴走は、第四組織の組織で解決するしかないのだ。
 だが、そんなことはフェリクスやアウローラにとってみれば迷惑な話でしかなかった。
 二人は素性がバレる前にいかにして、この争いから抜け出すかについて考えるしかなかった。
 フェリクスの姉たちの行方は依然として誰もわからない状態だ。
 気になっていた相手、アウローラと行動を共にすることはできるようになったが、それで安心という訳ではない。
 自分達の素性が解ってしまったら、何をされるかわからないという緊張感が常につきまとうのだ。
 【兵宮】が生み出す鉱物兵器での勢力争いは今も世界中で起こっている。
 いかに、高位の鉱物兵器を生み出せる【兵宮】を手に入れるかに組織は力を注ぎ、他の組織も、バティストの残した知財を解放して、どんでん返しを狙おうと虎視眈々と狙っている。
 周りは全て信用ならない者達しかいない。
 アウローラもどこまで信用していいのかわからない。
 頼りにしていた母とは今は別行動だ。
 頼れるのは自分自身しかいない。
 自分自身の決断如何によっては、事態は好転もするし、暗転もするだろう。
 先が全く見えない。
 不安しかない。
 でも、前に進むしかないのだ。
 姉たちも見つけたい。
 フェリクスは見えない未来をつかむため、知恵を絞るのだった。

 続く。



キャラクタータイトル

001 フェリクス

フェリクス  本作の主人公。
 偉大なる万能師(ばんのうし)バティスト・セドリックと一番上の姉、アンジェリーヌとの間に生まれた数奇な運命の少年。
 父殺害を切っ掛けにバラバラになった姉たちを捜す旅に出る事になり、万能師を継ぐ者として、父の知財を狙う者達に狙われる事になる。





002 アウローラ・クラウディア

アウローラ  本作のヒロイン。
 万能師(ばんのうし)バティストが家族以外に渡した知財の内、上位108種類の知財には調整者(ちょうせいしゃ)と呼ばれる少女達が知財解放の鍵であり、封印も司る存在となっている。
 108の知財には0番から107番までの番号が振られ数字が小さい程強大な力を秘めている知財だとされている。
 アルローラは偽名で、本名は【七型】と呼ばれていて、それは7番の知財の調整者であるという事を意味している。
 とらわれの身だったが、他の調整者達と共に逃げ出している。
 こんな運命にしたバティストを強く憎んでいる。


003 バティスト・セドリック

バティスト  フェリクスの実父。
 万能師(ばんのうし)と呼ばれ、彼の残した知財はあらゆる組織が狙っているとされている。
 自分の力を伝達させるために、男子が生まれる事を望んでいたが、女子ばかり産まれていたため、禁断の手段として、一番上の娘との間に子供をもうける。
 それで生まれたのがフェリクスで、それが切っ掛けで、他の娘達によって殺害されることになった。


004 アンジェリーヌ

アンジェリーヌ 偉大なる万能師(ばんのうし)バティストの一番上の娘であり、主人公、フェリクスの母となった女性。
 フェリクスにとっては半分母であり、半分姉であるという微妙な立場である。
 自分のせいで、妹達が父を殺し、家族がバラバラになってしまったと思い、フェリクスに妹達を捜して貰うように依頼する。





ダミーイラスト

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