第0話 俺の視点



01 俺の目線


 …俺か?俺は冬山 秋彦(とうやま あきひこ)、2年だ。
 実は気になる女がいる。
 後輩のセーラだ。
 セーラ・G・スカイマリン…
 こいつと俺とはいわゆる幼馴染みというやつだ。
 こいつは学校一の美人という事になっている…。
 オマケに実家が大金持ちだ。
 言い寄ってくる虫は昔から多い…。
 俺はその度に露払いをしていたら、いつの間にかこいつに懐かれてしまった。
 俺にしてみればセーラは世話の焼ける妹みたいなもんだったんだが、何処へ行くにもくっついてくるようになっちまった。
 参ったぜ…
 って、別に本当は参ってなんか…いや…なんでもねぇ…
 とにかく、くされ縁だな、くされ縁…
 そういう事にしとけ…。


02 セーラ


 セーラのやつは名前からもわかると思うが外人だ…
 どこだったっけか、あいつの出身…
 わかんねぇから、とりあえず、アメリカにでもしとけ。
 親の都合で日本に来たあいつは髪と目の色が違うからよく苛められた。
 小さい頃来たから、あいつ自信、英語とかわかんなくて日本語しか喋れなかった。
 それで、外人のくせに英語がしゃべれないとかよくバカにされてたっけか…
 それが、なんとなくムカついたから苛めていた奴らをぶん殴ってたら、いつの間にかセーラの奴に懐かれてちまった。
 別にそんなつもりじゃなかったし、ただムカついただけだから、恩なんて感じる必要は全くねぇんだけどよ、あいつは律義に恩義を感じているみたいでよ…
 俺もどう対応して良いのか…困っちまってるんだよな。
 悪い気はしねぇけどよ…
 なんつうか…
 どう、反応したら良いのかわかんなくてよ…
 清花(さやか)の奴に相談したら、面白がってからかって来やがったし…
 ったくよぉ……困ったもんだぜ……
 俺んちは根っからの貧乏人……
 大金持ちのあいつの家とは釣りあわねぇってのは百も承知だ。
 俺と付き合ったってろくなことにはなりゃしねぇ……
 あいつには、俺なんかよりもだなぁ……
 その、なんつーか、エリートって言うのか……そういう奴の方がお似合いっつうかな……
 何しろ、あいつは学校一の美人なんだから、それこそ、相手なんざ、いくらでもいるしな…
「秋彦ちゃん、秋彦ちゃん……」
「な、なんでぇ、セーラ!【ちゃん】づけは止めろっつってんだろうが、いつも」
「ごめんなさい、秋彦ちゃん」
「もういい……で、何だ?」
 セーラの奴は何故か俺と行動を共にしたがってくっついてくるんだよな…。
 悪い気分はしねぇんだが、一緒にくっついてきて、恨めしそうにこっちを見ていやがるもやし共が鬱陶しいんだよな……
「あのね、清花お姉ちゃん達みたいに私達も部活を作ろうと思うの」
「へぇ……作りゃいいじゃねぇか」
「それでね、あの……秋彦ちゃんに部長さんになってもらいたいの……」
「何、言ってんだ、お前は……」
「清花お姉ちゃんは生徒会長と人間観察部の部長さんで忙しいし、他にこんな事、頼めるの秋彦ちゃんしかいないの……」
「頼み事なら春都(はると)の奴にでも頼めば……ってうるうるするな……俺が悪いことしているみてえに映るだろうが」
「春都おにいちゃんは清花お姉ちゃんが連れて行ったし、私はやっぱり秋彦ちゃんの方が良いもん……」
「う、……そんな目で見ても俺はやらんぞ」
「お願い……」
「な、泣くな……大体、何の部活だ?俺は帰宅部っつう部活がだな……」
 セーラのやつに泣かれると辛い……
「あのね、保健室委員会って言うの……クラスにね、あまり、身体が丈夫じゃない子がいるの……その子と一緒に何か出来たらって思って……先生に聞いたら何かあった時のために保健室で活動するなら良いって言ってくれたから……」
「そ、そうか、良いことしたな、褒めてやるよ」
 俺はセーラの頭を撫でた。
 その姿は、子犬みたいでたまらなく可愛い。
 思わず抱きしめてスリスリしたくなるくらいだ…

 硬派で通っている俺だが、実は小動物に目がねぇ……
 あのちっちゃくて可愛い生き物にすり寄られると俺は抱きしめたい衝動にかられちまうんだよな……。
 我ながら、かなり、みっともねぇとは思うんだが、我慢するのがきついくらい強い衝動が湧いちまうんだ。
 セーラのやつは俺が怒るとシュンと縮こまって、逆に、褒めるとはしゃぐまるで、子犬のような女だ。
 そう、俺はセーラのやつが大好きだ。
 出来れば持って帰りてぇくれえに。
 あいつも俺の事を好いてくれているのは解る。
 解るんだが、それに答える訳にゃいかねぇんだ。
 それだけは肝に銘じているんだが……
 あいつにふさわしくねぇ俺があいつの気持ちに答えちゃなんねぇと必死に我慢しているんだが、あいつにちょこんと服の端をつままれた時なんざ、ガバッと行きたくなる気持ちが俺を突き動かそうとしやがる。
 あいつに対する気持ちを抑えるのがいつも大変なんだ。
 そんな俺の苦労を清花のやつは笑い飛ばしやがるしよぉ。
「そんなの苦労でも何でもないわよ。大事なのは本人達の気持ちでしょ。んなこともわかんないのあんたは」
 だと。
 相談するんじゃなかったぜ。

「それで、秋彦ちゃん、部長さんになってくれる?」
「だから、何で俺が?」
「部員はみんな女の子だから…誰か頼りになる男の人に部長になって貰えればと言う事になって…」
「で、俺か?」
「うん、秋彦ちゃんなら、私から聞いてるからみんな良いかもって言ってくれたんだ」
「出来るか!」
「うぅ……」
「な、泣くな……だ、だがよぉ、女ばかりの所にだなぁ……俺が行っても浮いちまうだけだろうが……」
「大丈夫、秋彦ちゃんならみんな信用出来るって言ってたから……」
「お、お前、他のやつに俺の事なんて言っているんだ……?」
「凄く頼りになる人……って……」
「買いかぶり過ぎだ……俺には無理だ……」
「もう……みんなに言っちゃったもん……」
「言っちゃったって、何て言ったんだ?」
「秋彦ちゃんなら絶対にやってくれるって……」
「お前なぁ……」
「うぅ……」
「な、泣くな、考えてやるから……」
「ホント?」
「か、考えるだけだぞ、まだ、やるとは言ってない……」
「うん、私も秋彦ちゃんになるって言って貰えるように頑張る」
「お、おう……」
「男に二言はないって言ってたもんね……」
「そ、そうだな……だが、お前、ちょっと何処でそんな口車、覚えたんだ?」
「清花お姉ちゃんが教えてくれたよ」
「あいつか!あの野郎……」
「野郎って、清花お姉ちゃんは女の子だよ……」
「解ってんよ、あいつセーラに変な事教えやがって……」
「変な事って?」
「お前が今、使った口車の事だ」
「女の子の処世術だって清花お姉ちゃんが……」
「お前はそんなことしなくて良いんだ。前はそんなことしなかっただろう」
「うぅ……」
「な、泣くな……お前に対して怒ったんじゃない、清花のやつに対して怒ったんだ」
「清花お姉ちゃんも悪くないと思う……」
「解ったから、清花の奴も悪くない……俺が悪かった……」
「秋彦ちゃんも悪くないと思う……」
「そ、そうだな、みんな悪くない……」
「みんな、仲良しだもんね」
「そ、そうだな……はぁ……」
 ため息をつく俺。
 なんだかんだで、俺も春都の奴と変わらねぇな……
 セーラに丸め込まれちまった。
 情けねぇ……


03 活動に向けて…


「ところでよぉ……セーラ……」
「なぁに、秋彦ちゃん」
「保健室委員会っつうのは何をやる部活なんだ?」
「部活じゃないよ、委員会だよ」
「どっちでも似たようなもんだろ」
「そんなことないよ……」
「だがよぉ、お前、俺に部長になれっつったじゃねぇか……部長ってのは部活動の長って書いて部長じゃないのか?委員会じゃ委員長じゃねぇのか?」
「あ、ホントだ。全然、気付かなかったよ。さすが、秋彦ちゃん」
「さすがってなぁ……大丈夫か……そのぶか……委員会?」
「大丈夫だよ」
「で、何やるんだ?」
「それを会議で決めるんだよ。決めた事を後でやるんだ〜」
「何だそりゃ?」
「保健室で会議をやるから保健室委員会なんだよ」
「なるほどな……」
 聞いてると何か心配になってきた……
 セーラのやつは純粋培養の箱入り娘だからな。
 ちょっと一般人とは感覚がズレている所がある。
 こいつと波長の合うっていう委員会の友達も似たり寄ったりなんだろうな、きっと……
 小動物の群れみてぇなもんか……
 それは何とも……いや……
 危なっかしくて、見てないと何やるか解ったもんじゃねぇな、こりゃ……
 ったくよぉ、世話が焼けるぜ……
 仕方ねぇ……ここは一つ、一肌脱いでやるか……
「秋彦ちゃん……よだれが……」
「よ、よだれじゃねぇよ、何言ってんだよ、お前……」
「何考えてたの?美味しいものの事?」
「い、いや、その、何だ……何でもねぇ……気にすんな……」
 じぃ〜っと俺を見つめるセーラ。
 み、見るな……そんなまっすぐな目で俺を見ないでくれ……
 俺はやましい気持ちは……
 無い……そうに決まっている……
 俺は気を取り直して、保健室委員会とやらに参加しているセーラの友達の名前を聞くことにした。
 するとセーラは入部届けを見せてきた。

 ――どれどれ……

 セーラ・G・スカイマリン
 金森 亜天音(かなもり あてね)
 土谷 琴海(つちや ことみ)
 木下 璃世(きのした りせ)
 水梨 玖礼緒(みずなし くれお)
 火島 更紗(かしま さらさ)

 セーラも含めて6名か……俺を入れれば7名……と
 意外に多いな。
 もっと少ないかと思った。
 俺はてっきり、2、3人かと思ってたからな。
 まあ、良い……ちっと気になる名前も混じってるが……

「じゃあ、セーラ、お前、副委員長な」
「え?私が?」
「そうだよ。何か文句あっか?」
「わ、私なんかにつとまるかな……」
「俺は、お前以外のとは面識がないからな。上手く橋渡しをする人間が必要だろ。お前、以外に誰がやるんだよ」
「そ、そうだね、が、頑張るよ」
「よし、その意気だ。頑張れよ」
「うん」
 ガッツポーズを取るセーラ。
 ったくよぉ……凶悪なくらい可愛いじゃねぇか。
 いかんいかん、つい鼻の下が伸びちまう。
 セーラの前じゃ良い兄貴でいねぇとな。

「んじゃまぁメンバーと面通ししておくか、案内してくれ」
「あ、ごめんね秋彦ちゃん、まず、先生にご挨拶に来てと言われてるの」
「せんこーに?」
「だめだよ、秋彦ちゃん、先生にせんこーだなんて言っちゃ。顧問になってもらうんだから、感謝を込めてお願いしなくちゃ」
「俺はせんこーは苦手なんだよ。あいつらすぐに俺を目の敵にしやがって」
「大丈夫だよ。丁寧にご挨拶すれば、先生もちゃんと答えてくれると思うから」
「お前にやられたらそうかも知れねぇが、俺はそうはならねーんだよ」
「だめだよ、秋彦ちゃん。やる前から諦めたら」
 はぁ……
 セーラの奴は過保護にし過ぎたのか、人の悪意に対して鈍感な所がある。
 純粋培養で育っちまて、いつか、傷つくんじゃねぇかと思っているんだが、俺が必要以上に守り過ぎちまったんだよな。
 これは俺の責任だと思っている。
 こいつに世間の意地の悪さってのをいつか教えねぇと大人になってからこいつが困る事になるからな。
 いつかは……とは思うんだが、こいつの愛くるしさを見ているといつも必要以上に守っちまうんだよな……。
 心を鬼にしてって決断が出来ねえんだ。
 ダメだな俺は……。

 俺とセーラは連れだって、せんこーの所に委員会設立の挨拶に行った。
 予想通り、せんこーは俺が委員長って事に反対しやがった。
 セーラが泣いて懇願したんで、渋々受けたが、気分は悪かった。
 せんこーも悪意のある同級生もそうだが、セーラの家の力に媚びているのがはっきり解る。
 セーラの実家の権力の後ろ盾がなかったら、こいつは真っ先にイジメの対象になって居ただろう事は容易に想像がつく。
 実際には天然なんだが、よく知らない奴が見ればこいつは、ぶりっ子に映るだろうからな。
 世間の荒波で生きていくにはセーラの精神は弱すぎるんだ。
 委員会とやらを通して、こいつを鍛え直さないといけねぇと俺は思っている。

 時には突き放してやらせないとな。
 俺はそう決めている。


04 委員紹介


「じゃあ、セーラ、とりあえずメンバーの面拝ませてくれ」
 とりあえず、俺は他のメンバーの紹介をセーラにしてもらうことにした。
「うん、じゃあ、まず、亜天音ちゃんから」
 俺は、セーラに連れられて一年の教室に向かった。
 そこで会ったのはいかにも【委員長】って感じのメガネっ子だった。
 いかにも生真面目って感じだ。
 俺とはとても気が合うとは思えない。

「あなたが秋彦さん?」
「お、おう、そうだ」
「何か思ってたイメージと全然違うけど、どういう事、セーラさん?」
 何だ?
 何か雲行きが怪しくなって来たぞ。
「そんなことないよ。とってもジェントルマンさんだよ、秋彦ちゃんは」
「私には素行不良の塊にしか見えないんだけど?」
「あ、秋彦ちゃんは正義の味方だから、風紀委員の亜天音ちゃんと絶対仲良く出来ると思うよ」
「……なるほど、ダークヒーローという訳ですね。法で裁けない者を裁くという」
 おいおい、何か、変な風に勘違いしているぞ。
「よろしく、金森 亜天音です。お噂はかねがね、彼女から、聞いております。お互い悪をくじくために頑張りましょう」
「お、俺はそんな大した者じゃねえって」
「ご謙遜を。聞いてますよ。悪を許さぬ、徹底した正義に生きるワイルドマンだとか」
 セーラ、お前、こいつに何言ってんだよ。
「違う違う。勘違いだってそれは」
「まぁまぁ、亜天音ちゃん、他の人にも紹介に行くからまた後でね」
「そうね、後でね」
「お、おい、セーラ、まず誤解を解かねぇと」
「良いから良いから、秋彦ちゃん、次行こう。次はねぇ、スポーツ特待生の琴海ちゃんね」

 俺はセーラに押されて誤解も解けないままに、次のメンバーを紹介された。

「君が秋彦君か。よろしく、ボクは土谷 琴海。琴海って呼んでくれ。まずは、走ろう」
 俺は元気が服を着ているような女となし崩し的に走る事になった。
 走ってみたら、スポーツ特待生だけあって、早ぇ。
 男であり、先輩でもある俺と同等近くのスピードで走ってきた。
 こう見えても俺は体力には自信があって、走るのにはかなりの自信もあったのに、この女との差は殆ど頭一つ分しかなかった。
「か、勝った……」
「負けたよ、秋彦君。さすがだね。認めるよ。君が部長だというのに異論は無いよ。よろしく」
 そう言う土谷は息一つ乱してない。
 逆に俺は息も絶え絶えだ。
 まともに勝負したら、多分、俺は負ける。
 男として自信がちょっとばかりぐらついてしまった。
「ささ、秋彦ちゃん、次に行こう。琴海ちゃん、またね」
「あぁ、また、勝負しよう」
 冗談じゃねぇ、二度とお前と勝負するか。

「次は璃世ちゃんと更紗ちゃんね。二人はいつも一緒なの」
 仲良しコンビってか?
 今度はどんなのが来るってんだ?
「おい、セーラ、……ひょっとしてあいつらか?」
「あ、うん、そうだよ。よく解ったね」
「出来れば違って欲しかった……」
 俺は、ガックリ来た。

 俺が違っていて欲しいと思っていたのは俺以上の問題児として有名な二人だったからだ。
 木下 璃世、火島 更紗――
 セーラに見せられた入部届けの時に、混じっていたこの二つの名前、俺は気付いたがあえて見なかったふりをした。
 が、やっぱりそうだった。
 俺と木下、火島の三人は呼び出しの常習犯だったからだ。
 紹介されるまでもなく、顔なじみだった。
 こいつらは独特の美学を持っていて、独特の世界観を持っている。
 制服を着てこないでいきなり手作りのドレスを着てきたり、百メートル走でローラースケートで走ったり、頭に城を作ったりとまぁ、やりたい放題だ。
 まさか、こいつらとセーラがつながっていたとは思わなかった。
「あ、アッキーだ」
「ホントだ、アッキーだ」
 そう、こいつらには俺は【アッキー】というニックネームをつけられている。
 こいつらにも懐かれているって事だ。
「二人とも知ってたんだね。じゃあ紹介の必要なかったね」
「せーりゃこそ、アッキー知ってたんだ?」
「教えてくれればいいのに」
「えー、教えたよぉ〜。秋彦ちゃんって言ってたじゃない」
「あー、あれ、アッキーの事だったんだ」
「気付かなかったよ」
 まずい、こいつらをセーラに近づけるのはまずい。
「せ、セーラ、つ、次行こうか」
「あ、アッキー何処行くの?」
「お前らの居ない所だ」
「酷い、アッキー」
 俺はそそくさとセーラを連れて離れた。

 どうなっていやがるんだ、このメンバーは?
 一癖も二癖もありそうな奴ばかりじゃねぇか。
 残る一人も同じような奴じゃねぇのか?
 ため息が出るぜ。

「セーラ、残る一人は何処だ?」
 俺はさっさと挨拶をすまそうとセーラに水梨の居場所を聞いた。
「それなんだけど、秋彦ちゃん。玖礼緒ちゃんは身体が弱いから、あんまり刺激を与えないでね。ビックリして倒れちゃうかも知れないから」
 おいおい、それじゃ、木下と火島の方が危ねぇんじゃねぇか?
 あいつらは刺激が強すぎるだろ。
「大人しいって事か?」
「うん。元々、保健室委員会は玖礼緒ちゃんのために開いた委員会なんだ。玖礼緒ちゃん、あまり身体を動かせないから、楽しい事をして見せようと思って」
「それを先に言え、要するに、そいつがこの部活……委員会の要って事だろ。真っ先にそいつに挨拶に行くべきだったろうが。何で最後にしたんだよ」
「うん、だって、玖礼緒ちゃん、保健室で寝てたから」
「そ、そうか、身体が弱いって」
「うん。だから、最後にしたの。会うのも先生に聞いてからじゃないと……」
「み、見舞いって事か?俺、何にも買ってねぇぞ」
「お見舞いじゃないよ。出来るだけ普通に接して欲しいって本人も言っているし、それだと玖礼緒ちゃんが逆に気にしちゃうよ」
「そ、そうか、スマン、俺はこういうのになれてなくて」
「だけど、一番、玖礼緒ちゃんを紹介したかったんだよ。この人が秋彦ちゃんだってね。本当の気持ちを叶えてくれる私の王子様だってね」
「王子様って、んな柄じゃねぇよ。俺んち貧乏なのはお前も知ってるだろうが」
「お金の問題じゃないよ。私が言っているのは」
「じゃあ、どういう意味だよ?」
「頼りになる男性だっていう意味だよ」
「な、……照れるじゃねぇか。面と向かって……」
 セーラはにっこりと笑った。
 どういう意味なのか、正直、よくわからねぇが、まぁ頼りにされるのは悪い気持ちはしねぇわな。

「こんにちは、玖礼緒ちゃん、居ますか?」
 俺は、セーラと保健室にそっと入った。
「いるよ、セーラちゃん、おはよう」
「寝てたの?」
「うん、今起きたところ」
「ゴメンね」
「ううん、平気、どうしたの?」
「うん、玖礼緒ちゃんに秋彦ちゃんを紹介に、それと委員会の許可が下りたというお知らせに」
「ホント?どっちも嬉しいな」
「お、オッス、お、俺は冬山 秋彦ってもんだ、よ、よろしくな」
「よろしくお願いします。私、水梨 玖礼緒って言います。実は私、秋彦さんより年上なんですよ。年上の後輩ってちょっと変ですよね?」
「そそそ、そんな事ねぇって、いや、ないっス」
「私の方が後輩なんですから、普通に後輩に話すようにしゃべって下さい」
「お、おう、そうか、じゃあ、そうさせてもらうわ」
 年上の後輩って事は留年したって事か?
 多分、病気か何かで出席日数が足りないとかでだろうか?
 会社に勤めるようになったら居るのかも知れねえが、学生の内で年上の後輩には滅多に会わねぇ。
 オマケに病弱ってキーワードも俺にとってはどう反応して良いのかわからねぇ。
 金森 亜天音、土谷 琴海、木下 璃世、火島 更紗、そして、水梨 玖礼緒……。
 みんな、俺とは気が合いそうもないようなタイプだ。
 なんでまた、セーラは俺とこいつらを一緒に何かをさせようと思っているのか解らなかった。
 性格もタイプもみんなバラバラ。
 こんなメンバーでチームワークが取れるのかは疑問だが……
 とにかく、俺達は保健室委員会とやらを始める事になったんだ。

 続く。

登場キャラクター説明

001 冬山 秋彦(ふゆやま あきひこ)
冬山秋彦
本編の主人公。
面倒見の良い親分肌。
曲がった事が大嫌い。














002 セーラ・G・スカイマリン
セーラ・G・スカイマリン
秋彦の後輩。
幼馴染みの秋彦を兄の様に慕っている。
大金持ちの娘で学校一の美人。














003 金森 亜天音(かなもり あまね)
金森亜天音
秋彦の後輩。
クラス委員兼風紀委員。
規則至上主義。














004 土谷 琴海(つちや ことみ)
土谷琴海
秋彦の後輩。
スポーツ特待生。















005 木下 璃世(きのした りせ)
木下璃世
秋彦の後輩。
不思議ちゃんその1。















006 火島 更紗(かしま さらさ)
火島更紗
秋彦の後輩。
不思議ちゃんその2。















007 水梨 玖礼緒(みずなし くれお)
水梨玖礼緒
秋彦の年上の後輩。
病弱で保健室に籠もりがち。