第003話


第七章 ドッペルゲンガー




 ある日、
「契約者しょーすけ、今夜も弁当を作りにいくぞ」
 でみちゃんがいつものように、翌日の弁当を俺の作りに行くと宣言する。
 だけど――
「おいおい、んなこと言ったって大丈夫かよ、でみちゃん。ちょっと具合悪いんじゃねぇの?顔、赤いよ」
「そんな事はない。私は大丈夫だ。今日こそ、デモゴルゴンに引導を渡してやる」
 強気の発言とは裏腹に今にも倒れそうだ。
 無理すんなと言いたいが、言い出したら聞かないからなぁ……
「ふっ、デミウルゴス。風邪気味の貴様に勝っても自慢にならん。勝負はまたにしても良いのよ」
 言い方はあれだけど、でもちゃんも心配する。
 いがみ合ってはいるようだけど、何となく二人はわかり合っている。
 そんな気がするんだよな最近。
「敵の情けは無用だ。今夜待っている」
「……わかった」
 今夜、俺の頭の中での対決を約束して、でみちゃんはそのまま、早退した。
 ――大丈夫かな?

 その夜、昼間のヘロヘロ状態が嘘のように元気な姿で、でみちゃんが待っていた。
「契約者庄助、心配かけたな」
「庄助?」
 俺は首を傾げる。
 いつもは【契約者しょーすけ】だからだ。
 【契約者庄助】という言い方ではない。
 でみちゃんもでもちゃんも俺のことを【契約者しょーすけ】と呼ぶはずだ。
 やっぱりまだ、調子が悪いのかと思ってしまう。

 心配していると、やがてでもちゃんもやってきた。

「調子はどうだ、デミウルゴス?」
「ご心配なく。全然平気よ」
 でもちゃんの心配にどうと言うことはないと言った表情で答えるでみちゃん。
 何だか別人みたいだ。
「明日の献立は五目ご飯にする。オカズは唐揚げとウインナ、ほうれん草に、ジャガイモとカニのサラダにうさちゃんリンゴをつける」
 でもちゃんが弁当のメニューを宣言する。
 それで、でみちゃんも――
「……ねぇ、そんな事よりも彼を賭けて戦わない?お弁当のメニューなんてどうでも良いでしょ?」
 ?……
 でみちゃんの言葉とは思えない言葉が発せられた。
 やっぱり熱でおかしくなっているのか?
 俺はそう思った。
 だけど、でもちゃんは――
「お前、デミウルゴスじゃないな……誰だ、お前?」
 と言った。

 と言われても何処からどう見てもでみちゃんにしか見えないんだけど……。
 というのは俺が外見しか見ていなかったという事だった。

「あら、バレちゃった?私の名前は小島 妙子(こじま たえこ)。コードネームはドッペルゲンガーよ。よろしくね」
「ドッペルゲンガー……」
 ドッペルゲンガーって言えば、都市伝説かなんかで、本物そっくりな人間でそれを見たら死んじまうとかっていうあれか?
「メデューサとセイレーンとお友達って言えば解るかしら?」
 !あいつら関係か。
 俺の頭を狙っている奴が他にもいたってことか。
 何人いるんだ、いったい。

 どうやら本物のでみちゃんは熱でダウンしているみたいだな。
 それを見越して、でみちゃんのふりをして乗り込んで来たってわけか。

 だとしたら――

「んじゃ、俺は、今回、でもちゃんにつくぜ。それで良いよな?」
「契約者しょーすけ……」
「よろしくな、でもちゃん――っつっても俺はいつもあんまり勝負に参加してないんだけどな」
「……仕方ない、契約者しょーすけ。今回はお前と手を組もう」
 って事で、今回は俺はでもちゃん側に立って勝負を見守ることになる。
 相手は見た目がでみちゃんなんで、何か裏切っているみたいで後味が悪いんだけどな。

 ドッペルゲンガーは、勝負の方法を三番勝負とした。
 先に二勝した方が勝ちだ。
 どうやら、短期決戦を望んでいるようだ。
 確かに、勝負を楽しんでやっているでみちゃんやでもちゃんはじっくり勝負をしたいだろうけど、侵略者であるあいつらにとっては勝負自体が馬鹿馬鹿しいのだろう。
 とっとと勝利をもぎ取って俺の頭の支配権を奪い取りたいってのが本音だろう。

 まず、最初の戦いは野球拳対決だった。
 脱げなくなった方が負けという対決だ。
 メデューサとセイレーンの仲間というだけあって、ドッペルゲンガーも卑怯な手を使ってきた。
 薄着であるでもちゃんに対して、何処まで着込んでいるといった感じのスタイルで勝負を仕掛けて来た。
 だけど、驚異的な運の強さを見せたでもちゃんが、どんどん、じゃんけんに勝利していった。
 結局、ドッペルゲンガーがすっぽんぽんになるまで負けてでもちゃんが勝利した。
 でもちゃんだったら素っ裸になるまでは脱げないだろうし、圧倒的な不利な勝負だった。

 ――にしてもこいつらに恥じらいってものはねぇのかと思ってしまう。
 でみちゃんの真似をしているから自分の裸じゃないってことで恥ずかしくないのかも知れないが、女の子ならもう少し恥ずかしがってもらわないと逆に萎えるぜ。

 続く二戦目。
 相手に後が無くなったにもかかわらず、ドッペルゲンガーは余裕の表情だった。
 二戦目はボードゲームだった。
 ゲーム名は【魔王ゲーム】――。
 より多くの城を落とした方が勝ちというダークサイドゲームだった。

 このゲームは相手をいかに上手く騙くらかすかで勝敗が分かれるゲームだ。
 正直言って、でもちゃんには不得意なゲームだ。
 でみちゃんも得意じゃないだろう。
 二人はバカ正直な所があるし、こういうゲームにはどちらも向いていない。
 だから、俺は二人を好きになったとも言えるし、俺はこのゲームが得意な女は好きじゃない。
 小細工を作るまでもなく、でもちゃんは面白いくらい、相手の罠に引っ掛かった。
 五分もしない内に勝敗は見え始め。
 三十分後には圧倒的大差ででもちゃんは敗北した。

「く、くやしい……」
「気にするなよ、でもちゃん。こんなゲーム得意な方が性格悪いと思うぜ、俺は」
「でも、くやしい」
「大丈夫だ、次に勝てば良いんだし」
 俺がでもちゃんを慰めていると――
「あら、【でも、くやしい】って洒落?あなたデモゴルゴンよね?略して【でも】、だから【でも、くやしい】ってこと?あら、おかしい」
 ドッペルゲンガーがからかってきた。
 明らかに性格の悪さでは向こうが勝っている気がする。

 そして、勝負の三戦目は巨大ゴーレム対決だ。
 それぞれが作ったゴーレムを戦わせ、動けなくした方が勝ちというガチンコ勝負だ。
 分かり易いんだけど、やっぱり、俺はでみちゃんとでもちゃんの対決の方が好きだ。
 二人の対決は見ていて楽しいけど、ドッペルゲンガーとの勝負は俺にとって全く楽しくない。

 でもちゃんは空飛ぶヒドラ型ゴーレムを作り出した。
 その一体に全てをかけた。

 対するドッペルゲンガーはサイクロプス型の巨人ゴーレムだ。
 二人がゴーレムを作った後、他に何も出来ない様に、それぞれ封印席に座って勝敗を見守る。
 勝敗が決するまでこれは取れない。

 そして戦いが始まった。
 でもちゃんの作ったヒドラ型ゴーレムの性能は高く、サイクロプス型ゴーレムをあっという間に追い詰めた。
 トドメまであと、一撃という所で、思わぬ邪魔が入る。
 新たな、サイクロプス型ゴーレムが出現し、背後からヒドラ型ゴーレムを襲う。
 一転、逆にピンチとなるヒドラ。
 そんなバカな?
 新たにゴーレムを作る事なんて出来ないはずなのに?
 そう思った俺がバカだった。
 相手はメデューサ、セイレーンの仲間。
 今回だって、卑怯な手を使ってきていたのだ。
 封印席に座っていたドッペルゲンガーも本物に似せて作られたゴーレムにすぎなかった。
 本物は物陰に隠れて、ゴーレムを作り続けていたのだ。
 真似をするのを得意とするドッペルゲンガーならではの姑息な手段だった。
 俺は、本物を追いかけていって、ふん捕まえて封印席に座らせる。
 不正は許さねぇ。

 だけど、ドッペルゲンガーは四体のサイクロプス型ゴーレムを作り出してしまっていた。
 ヒドラゴーレム一体対サイクロプス型ゴーレム四体の戦いとなってしまった。
 卑怯にも程がある。
 そんなんで勝って嬉しいのかと思ってしまう。
 だけど、あいつらは魔女だ。
 卑怯な手を使うことなんてどうという事でもないんだろう。

 そうこうしている内に、ヒドラ型ゴーレムが傷つけられてどんどんひび割れて行く。
 もうダメだと思ったけど、でもちゃんは冷静だった。

 ヒドラ型のゴーレムの中から八本の首を持つ大蛇が顔を出した。
 八岐大蛇型のゴーレムだ。
 でもちゃんはあらかじめ、ヒドラ型のゴーレムの中に八岐大蛇型のゴーレムを作って隠しておいていたのだ。
 本体はヒドラ型ではなく八岐大蛇型ゴーレムなので、やられたことにはならず、八本の首が二本ずつ四体のサイクロプス型ゴーレムの頭を破壊した。

 首が無くなった事によってドッペルゲンガー型のゴーレムは全て動かなくなった。
 相手の虚を突いたと言う点ではでもちゃんの方が一枚上手だったようだ。
 慌ててしまった、俺が恥ずかしかった。

 勝負はでもちゃんが勝った。
 それによって、二勝一敗で俺達が勝利をおさめた。

「やった、やったよ、でもちゃん」
「契約者しょーすけよ。正義は最後に勝つのだ」
「やった。やった。」
「あの……下ろして……」
「あ、ごめん」
「バカ……」
 恥ずかしがるでもちゃん。
 可愛い。
 俺は嬉しさのあまり、封印席から抜け出したでもちゃんに高い高いをしてしまった。
 今、思えば、俺にしてはかなり大胆な事をしてしまったと、赤面してしまった。

 何にしても、俺達の勝利は揺るぎないってわけだ。
 ざまぁみろ。
 悪党は最後には負けるって相場が決まってんだよ。

 俺はあっかんべーをしてやった。

「やれやれ、負けちゃったね」
「しっぽ巻いて帰れ」
 俺はシッシッと犬でも追い払うように手を振った。
「今回は負けたけど、次はそうは行かないよ」
「次も来るつもりか?」
「次は私じゃないかも知れないけどね。闇の生徒会の刺客はまだまだいるからねぇ」
「闇の生徒会?」
 俺は聞き慣れない言葉を聞いた。
 【闇の生徒会】ってのは初耳だ。
 そんな組織があった事さえ知らない。
 そんな奴らが俺の脳みそを狙っているって事か、ひょっとして?
 冗談じゃねぇぞ。
 俺の脳みそは俺のもんだ。
 他の誰の物でもねぇ。
 俺は叫びたかった。






第八章 闇の生徒会




 次の日、俺は生徒会室に呼び出しをくらった。
 理由はわからなかった。
 生徒会とは全く接点なんかねぇし、呼び出される理由もわからなかった。
 生徒会室にはたった一人の女生徒が待っていた。
 俺には縁もゆかりもない雲の上の人、生徒会長 我妻 甘奈(あがつま かんな)さんだった。
 容姿端麗、成績優秀、文武両道の才媛で、二年生だけど、一年の時から生徒会長を務めている超天才さんだ。
 そんな人が何の用だろう?
 俺には皆目見当もつかねぇな。
 まぁ、何にしても話してみなけりゃ何も始まんねぇか。

「あ、あの……俺に何か用っすか?」
 俺は恐る恐る聞いた。
 だが、生徒会長の反応は俺の予想を大きく外れていた。

 頭を下げたのだ。
 俺はてっきり怒られるのかと思ってきたんだけど、逆に頭を下げられてしまった。
 意味がますますわからねぇ。

「あ、あの、すんません、頭上げて下さい。何なんすか、いったい?」
 俺は動揺した。
「そうですね。何も説明しないとわかりませんよね」
 生徒会長はにっこり笑った。
「俺、あなたに頭下げられる覚えないっすから」
「あなたになくても私にはあるのです。あの……姉がご迷惑、おかけしているみたいで」
「姉?」
「はい、双子の姉の我妻 蘭菜(あがつま らんな)です」

 聞いたことがあった。
 我妻 蘭菜――生徒会長、我妻 甘奈の双子のお姉さんだ。
 向上心が高く、この甘奈さんと生徒会長の座を競って負けた人だ。
 甘奈さんを天才とすれば、蘭菜さんは秀才と言った感じの人だ。
 俺に言わせれば、天才も秀才もどっちも羨ましいって感じなんだが、お姉さんである蘭菜さんは甘奈さんに負けたのがよっぽど悔しかったのかその後、不登校になったと聞いたんだけど、それが、何で俺に関係あるんだ?

「あの、それが何ですか?」
「闇の生徒会……聞いた事ないですか?」
 【闇の生徒会】?
 それ、昨夜聞いたばかりだ。
 まさか……

「闇の生徒会長、バハムートは姉の蘭菜です。お恥ずかしい……」
「えぇ?」
 俺は仰天した。
 生徒会長から俺の夢の中の話があるとは思っていなかったからだ。
 俺の頭の中はパニックだった。
「どう思ったのか、姉はあなたの頭の中を支配したら、私に勝てると思ったらしく、魔術といいますか、そのようなものにはまってしまって……」
「えぇ……、えぇ……?」
「実は私、夢を渡る力がありまして……姉にも……。それで、姉が、闇の生徒会のメンバーに命令している所を目撃してしまって」
「どっどどど、どういう……」
「最初はこんなの夢の中の話だけだと思っていたんですが、どうやら、デミウルゴスさんにデモゴルゴンさん……でしたっけ?、お弁当、作って来ているみたいですし、現実に影響があるのであれば、問題かなと……」
「は、はぁ……」
「姉には止めるように言ったのですが、私の言うことには反発して来ますので、何とも出来なくて……その……ごめんなさい」
「た、たまげた……生徒会長さんからそんな言葉を聞くなんて……」
 俺達の世界にあの生徒会長が入って来たという事に俺はただただ、驚いた。
 どうなってるんだ、この世界は?
「私が動くと姉は逆にムキになりますし、先に、あなたにお詫びする方が先かなと思いまして。あの、変な人と思わないでいただけますと、嬉しいんですが。おかしいですよね、夢の中のお話をするなんて」
 いえいえ、十分、今の俺には説得力のあるお話ですから。
「す、すんません、その闇の生徒会って何人いるんですか?」
「はい……姉も合わせて十三人いる見たいです。姉以外はコードネームで呼び合っていたみたいですので、残念ながら、私には誰だか解りません。本当に何てお詫びしたらいいのか……」
「十三人ですか……」
「一応、コードネームだけは起きてすぐに書き取っておいたんですけど、ご覧になりますか?」
「え、そうですね。一応、見せて下さい」
「はい。本当に申し訳ありません」
「い、いえ」
 俺は生徒会長から渡されたメモを見た。
 それには緑川 麻衣、関山 美保、小島 妙子のコードネーム、メデューサ、セイレーン、ドッペルゲンガーもあった。
 まとめると
 闇の生徒会長がバハムート(我妻 蘭菜)、
 闇の副会長がドラゴン、
 闇の書記がフェンリル、
 闇の会計がフェニックス、
 後は平会員で、
 メデューサ(緑川 麻衣)、
 セイレーン(関山 美保)、
 ドッペルゲンガー(小島 妙子)、
 ラミア、
 スキュラ、
 ケルベロス、
 キマイラ、
 バジリスク、
 グリフォン、
 という構成員になっているらしい。

 名前の解っているバハムート、メデューサ、セイレーン、ドッペルゲンガーから考えると構成員は全員美人揃いかも知れない。
 つまり、この学校の美人が怪しいという事になる。
 後、性格がちょっとアレな女の集まりかも知れないな。

 美人に言い寄られるのは悪い気はしないが、性格が悪い女は俺は願い下げだ。
 何にしてもこれから作戦会議だ。
 構成員の数とコードネームが解っただけでも収穫だ。
 さっそく、でみちゃんとでもちゃんと打ち合わせをしないとな。
 でも、でみちゃんは療養中だから、でもちゃんに頼るしかねぇ。

 訳わかんねえ女達に狙われるって事か、俺は。

 でもちゃんに相談するとメンバーの一人に心当たりがあると言われた。
「ホントか?誰なんだ?」
「キス魔の高田 萌(たかだ もえ)よ。彼女とキスをすると必ず、お腹を壊すの。コードネームはバジリスクに違いないわ」
「何なんだ、それは。そんな根拠があるのか?」
「間違いない。勝負を挑みましょう」
 俺は、でもちゃんと連れだって、高田 萌に会いに言った。
 もちろん、半信半疑でだ。
 高田 萌の噂は俺も聞いた事がある。
 この学校でキスをした人間は結構いて、その全員が腹を壊した事があるというので、死に神とか呼ばれていた様な気がしたが。
 だからと言って、そんなのが、闇の生徒会ってのも……
 と思っていたのだが――

「あら、よく解ったわね。そう、私、高田 萌こそが、闇の生徒会バジリスクのコードネームを拝命した……」
 あっさりと認めやがった。
 確かに美人だし、性格もちょっとアレだけどさぁ。
「なんで、闇の生徒会なんかに入ったんだよ?」
 と聞く俺に
「あんたの頭の中には最高のエクスタシーが隠されているからよ。それ以外にあんたなんかに価値なんてないでしょ」
 だとさ。
「うっ、うっ……」
 落ち込む俺に
「大丈夫だ、契約者しょーすけ。君の頭の中は最高の創作環境なんだ。魔女の言うことなど気にするな」
 と、でもちゃんが言ってくれた。
 でも、それ、俺の頭の中の事で、言っている事、高田と変わんねぇじゃん。
 俺の価値って、頭の中にしかねぇのかよ。
 俺は二人の美人にダブルパンチをくらったようなショックを受けた。

「メデューサ達が世話になったみたいね。私も挑戦させてもらって良いかしら?グリフォンを誘って行くから、貴女たちもお二人でどうぞ」
 二人でというのは俺は含まれていない。
 でもちゃんと、そして、病気でダウン中のでみちゃんの事だ。
 どうやら、でみちゃんが病欠だと解っていていってやがるなこの女。

「心配ない、契約者しょーすけ。私一人で、片付ける」
「二対一じゃ不利だよ。でみちゃんに何とか助けてもらえないか?後方支援とかだけでもさ」
 俺はでもちゃんと相談した。
 解っているけど、病気のでみちゃんにも頼らないといけない俺は何も出来ない。
 ただ、戦う場所を提供するしかないんだ。
 我ながら、情けねぇ。
 夢を渡れる生徒会長に助けてもらおうとも思ったけど、彼女が出ると多分、闇の生徒会長も動くだろうし、迂闊には助けてはもらえない。
 だからと言って、このまま、俺の頭の中を占領されたくねぇし、どうしたもんか。

 なやんでいる時間は無かった。
 何の解決策も思いつかず、そのまま、夜を迎えてしまった。
 コーヒーとかいっぱい飲んで、何とか寝ないようにしてたんだけど、俺、寝付きが良いんで、コロッと寝ちまったんだよな。

 んでもって、俺の頭の中に行くと三つの影が俺を待っていた。
 一つはでもちゃん。
 二つ目はでみちゃんだった。
 風邪気味なのに心配して来てくれたみたいだ。
 三つ目は生徒会長だった。
 夢を渡れるという話は本当の事だったみたいだな。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
 ペコペコ生徒会長が頭を下げる。
「いや、良いっすから、頭を上げてください」
「でも、私、何も出来なくて」
「このデモゴルゴンがいれば問題ないわ」
「いや、このデミウルゴスが加勢すればすなわち勝利の女神が……」
 でみちゃんは言いかけてふらつく。
「でみちゃん、あんま、無理すんなって」
 というような事を言い合っていると向こうから、影が二つ、いや、三つ近づいてきた。
 おいおい、バジリスクとグリフォンじゃないのか?

 身構える俺達に対して、魔女達がフードを取り、自己紹介を始める。
「こんばんは。高田 萌、バジリスクでーす」
「真田 美知恵(さなだ みちえ)グリフォンよ」
「坂本 妃華利(さかもと ひかり)キマイラさ」
 言ったことを守らねぇのはこいつらの専売特許だとは思ったけど、三人で攻めてくるとはな。

「なんだよ、二対三でやろうってのか?こっちは病人もまじってんだぜ」
 俺が代表してしゃべる。
 こんな時くらいしか俺の見せ場がねえからな。
「いや、二対四だ」
 その言葉に反論したのはでみちゃんだった。
 【四】?
 俺はその言葉の意味が解らなかったが、
 でもちゃんが生徒会長に向けて攻撃を放つ。
 生徒会長はフッと笑い、攻撃を交わし、バジリスク達についた。

 まさか、裏切り?
 俺はそう思った。
 だけど、違った。
 生徒会長はドッペルゲンガー、小島 妙子がなりすましていた姿だった。
 生徒会長はここには来てはいなかった。

 何とも汚えやり口だな。
 二対四な上にこっちは体調不良が一人いる。
 俺はこんなの認めねぇぞ。
 こんな勝負は無効だ。

「こっちは二人ずつペアを組んでやるわ。二対二対二でやりましょう。それなら文句ないでしょ?」
 バジリスクが提案する。
 ふざけるな。
 どうせ、お前ら裏で協力するに決まっているじゃねぇか。
 そんないかさま臭プンプンな勝負に誰が挑むか。
 と思っていたんだが……

「降りかかる火の粉は払うべし。問題ない、契約者しょーすけよ」
 自信たっぷりのでみちゃん。
「足をひっぱるなよデミウルゴス」
 でもちゃんもやる気だ。
 どうして、いつもこの二人は状況が把握出来ないんだ?
 良く言えば、純粋なのかも知れねえけど、悪く言えばバカなのか?

「では、勝負を始める」
 高らかに勝負開始を宣言するでみちゃん。
 俺があれこれ悩んでいる内にいつの間にか勝負が成立していた。
 でみちゃんもでもちゃんもやる気だ。

 絶対的な不利な状況でも敢然と立ち向かう姿は男らしいというか何というか。
 男として、完全に負けてしまっている感じがした。

 バジリスクはグリフォンと組み、キマイラはドッペルゲンガーと組んで一応戦うつもりらしいが、あいつらの事だ、途中で手を組むに違いないんだ。
 俺はそういうの許さねぇからな。
 見つけたら必ず指摘してやる。




第九章 VS二対四




 勝負は一応、五戦行われる事になり、先に三勝したチームが勝利となる。

 一戦目の戦いはディメンションレース対決だ。
 でもちゃんからの説明では、二人でペアを組み、一人がカートを動かし、もう一人がカートが走る道を造っていってゴールを目指すという勝負だ。
 チームプレーが試される勝負だ。
 道を造る方は障害物があらかじめ用意されているコースなので、障害物を避けて道を造っていかなくてはならない。
 一方、カートを運転する方は運転しながら相手チームの妨害も考えなくてはならない。
 妨害しなくては、すぐに道が造られて、ゴールまで一直線だからだ。
 二人のコンビプレーが試される一戦だ。

 レースは滞りなく行われ――

 魔女共は揃ってフライングをしてレースを始め、でみちゃん、でもちゃんペアは追う形でレースが始まった。
 でもちゃんがカートを運転して、でみちゃんが道を造るという役割分担だ。

 相手チームはバジリスクが運転して、グリフォンが道を造るのとキマイラが運転してドッペルゲンガーが道を造るという役割分担をしていた。

 体調が万全ではない、でみちゃんは道を造るだけで精一杯だったため、でもちゃんが奮闘する形となった。
 二チームを相手に一歩も引かず、二チームの妨害をして、抜き去り、見事一勝目を上げた。

「ちっ」
 舌打ちをするグリフォン。
 他の三人も同じ表情だ。

 続く二戦目は、シャッターゲームだ。
 もの凄いスピードで動くモデルキャラをカメラで撮るというゲームだ。
 さらに、ルールがあって、複数のモデルキャラを撮してはいけないというものだ。
 撮した写真に二体以上のモデルキャラが写っていたら無効になる。
 一体だけを写真におさめた数を競うというものだ。

 勝負は、白熱し、六人の美少女がカメラでパシャパシャ撮しまくる。
 そして、勝負は、でみちゃん、でもちゃんペアが八十一枚。
 バジリスク、グリフォンペアが百二枚。
 キマイラ、ドッペルゲンガーペアが二枚だった。
 何だよ、二枚って。

 汚ぇ。
 絶対ぇ、あいつら、裏で写真を渡しただろうが。

 続く第三戦は分身かくれんぼだ。
 一人、百体の分身を作り、隠れさせる。
 そして、プレイヤーである本体が一斉に探し始めて、最後まで見つからずに残っていた分身を持っていたチームが勝つというものだ。
 これも予想通り、あいつらは四人がかりででみちゃん、でもちゃんの分身を探していた。
 三チームのチーム戦だから、バジリスク、グリフォンペアがキマイラ、ドッペルゲンガーの分身を見つけても良いはずだし、その逆もまたありのはずだ。
 だけど、あいつらは、お互いのチームの分身は決して見つけ出さなかった。
 示し合わせて見つけないようにしていたんだろう。
 結局、でみちゃん、でもちゃんチームは二人で四百の分身を見つけなくてはならないし、あいつらは四人で二百の分身を見つければ良い。
 幸い、バジリスク、グリフォンペアの分身二百体は先に見つけたので、このペアに二勝目は持たせないで済んだが、キマイラ、ドッペルゲンガーペアの二百体目を見つける前に、でみちゃんとでもちゃんの分身が全て見つけられてしまった。

 これで、キマイラ、ドッペルゲンガーペアも一勝となって一対一対一となって、勝負は振り出しに戻ったと思ったが、卑怯な手はあいつらの十八番。
 汚い手を使って来た。

 なんとあいつら、ペアを変えたんだ。
 今まで組んでいた、バジリスク、グリフォンペアとキマイラ、ドッペルゲンガーペアを解消して、バジリスクとキマイラが組み、グリフォンとドッペルゲンガーが組みやがった。

 何が汚いって?
 それは、ペアを解消して組み直した事によって、勝ち星を移動させたからだ。
 それで、かたっぽのチームが二勝、もう片方のチームが〇勝という事にしたというのだ。
 しかもどっちのチームに勝ち星が移動したか言わねぇでやんの。

 これじゃ、次に勝った方のチームに勝ち星を移動したから三勝だと言えば済む事になる。
 どこまで、薄汚ぇんだ、こいつらは。
 次の試合では、どうせ、勝てないと思った方のチームはでみちゃん、でもちゃんチームの足を引っ張る事に集中するだろうし。
 絶体絶命っていうのはこういう状況を言うのだろう。
 元々、やり方が汚い、卑怯で不平等な勝負だったんだ。
 こんな八百長、受ける必要なんかなかったんだよ。

 そう悔しがる俺だったが、二人は――
 俺にとっての二人の女神は違っていた。
 追い詰められたとは思えない、清々しい表情をしていた。

 何でここまで追い詰められて、そんな表情が出来るんだ?
 俺はそう思ったが、同時に、
 女ってすげえ!
 女って格好いい!
 と思った。

 そして、四戦目はブロック対決だ。
 色違い形違いがたくさんある三十種類三十万個ののブロックを積み上げて、一つも余らせることなく、先に全部、何かを作り出した方のチームが勝ちという勝負だ。

 これは、物作りをメインとする、でみちゃん、でもちゃんの独壇場だった。
 四人の魔女が十分の一も作り終えない内に一つのブロックも余らせる事なく、二人はたくさんの作品を作り上げた。
 しかもそれが、全部関係して、物語をイメージさせるようなものになっている。
 全部で、一万以上のキャラクターが登場する大ジオラマのようなデザインだった。

 これで、勝負は二対二。
 次で勝負がつく。

 雌雄を決する五戦目の勝負は対戦型間違い探しだ。
 最初に一人十カ所ずつ、合計二十カ所、間違いの場所を作る。
 そして、同時に見つけていって、一カ所の間違いを見つけると相手チームに間違いの部分を一つ追加出来る。
 そして、最後まで間違いの部分を残していたチームが勝ちというゲームだ。
 これは、本来、二対二の勝負を三回やって勝敗を決めるものだが、でみちゃん、でもちゃんはそれを選択せず、二対二対二の形を取った。
 これで一気に決着をつけるつもりだ。

 これは敵のイラストが一セット増えるという事も意味していて、圧倒的にでみちゃん、でもちゃんチームが不利な状況になる。
 なんせ、同時に、二セットのイラストを見比べていかないといけないからだ。
 だけど、そんな圧倒的な不利な状況にもかかわらず。
 二人は四人の魔女を寄せ付けず、圧倒的な強さで勝利をもぎ取った。

 ――ったくよぉ、この二人は、いがみ合ってないで、こうやって協力すれば、無敵の強さを発揮できるんじゃねえの?
 改めて惚れ直すわ。

「きーくやしい」
 バジリスクが悔しがる。
「これで勝ったと思わないでね」
 キマイラが負け惜しみを言う。
 いや、勝ったんで。
「次は負けない」
 グリフォンがつぶやく。
 いや、思いっきり卑怯な手を使っておいて、負けないもくそもねぇだろ。
 悔しがるなら、初めから正々堂々勝負を挑んでこいよ。
「いい気にならないことね」
 ドッペルゲンガーが言う。
 いや、いい気になるとかの問題じゃなくて、お前らこそ、そんな姑息な真似して負けて恥ずかしくねぇのか?

「私はいつでも挑戦を受ける」
 でみちゃんが宣言する。
「私も負けない」
 でもちゃんも続く。
 いや、こいつらにそんな台詞を吐くと、次はどんな卑怯な手を使ってくるか解んねぇし、煽らないほうが良いって。
 私達は関係有りませんで良いんじゃねぇの?
 正直、あんまり関わりたくねぇんだよ、俺は。

 まぁ、なんにせよ、最後に正義は勝つってことで一件落着かな?

「ところで、でみちゃん、風邪はもういいの?」
「問題ない」
「では、デミウルゴス、明日のお弁当をかけて勝負だ」
「望むところだデモゴルゴン」
「えー、まだやるの?」

 今度はでみちゃんとでもちゃんが明日の弁当をかけて戦う事になった。
 いつもの状態に戻ったと言うべきか。
 俺はこの二人のこういうところ――結構好きかも知れないな。




第十章 宣戦布告




 次の日の昼休み――

 昨晩、引き分けたでみちゃんとでもちゃんは仲良くそれぞれの弁当を持ってきていた。
 それはそれで良いんだけど、生徒会室に再び呼び出された。
 今度は、でみちゃん、でもちゃんも一緒にだ。

 生徒会室には生徒会長の他に、十三人がおかしなかぶり物をして待っていた。
 おそらく、演劇部からでも借りて来たんだろう。
 甘奈さんの笑顔は引きつっている。
 状況から考えて、このいかにも迷惑そうな十三人が闇の生徒会なんだろう。

 平然とかぶり物をしている所から考えても、周りの空気を読んだり出来ない人間の集まりなんだろうなってのはよくわかる。
 俺は、はぁ〜…っとため息を一つして――

「生徒会長、こいつらっすね、闇の生徒会ってのは」
 と言った。
 すると、
「ちょっとあんた、目上の人間に対して、こいつらってのはどういう事よ」
 にわとりのかぶり物をした奴が怒鳴る。
 声が多少くぐもってはいるけど、生徒会長と似ている。
 おそらく、こいつが双子の姉の蘭菜さんなんだろう。
 ――甘奈さんには【さん】づけするべきだけど、こいつらには必要ないな。
 蘭菜で良いか。

「我妻 蘭菜だろ、あんた?かぶり物取ったら?」
「残念だったな、兼六 庄助、私は我妻 蘭菜などではない。闇の支配者、バハムートだ。バハムート様と呼ぶが良いわ」
「いい年して中二病か?」
「だまれだまれだまれ!」
 蘭菜が怒鳴る。
 俺は耳をほじくり、やれやれと言った表情で見る。
「年下のくせに生意気なのよ!」
「年上なら年上らしく、後輩に迷惑かけないで下さいよ蘭菜先輩!」
「だれが、あんたに私のファーストネームを呼んで良いと言ったのよ」
「あ、じゃあ、認めるんだ?自分が我妻 蘭菜だって」
「認めないって言ってるでしょ。いちいち細かい事にうるさい男ね」
「はいはい、それはすみませんね」
 俺はどうでもいいような態度で対応した。
 本当に、甘奈先輩の双子の姉なのか?と思うくらい幼稚な性格をしているように感じたからだ。

 この愚かな先輩には言いたい事は山ほどあるけど、そんな事をしていたら昼休みが終わってしまう。
 それが解っている甘奈先輩が割って入ってくれた。

「姉さん達は少し黙っていて下さい。兼六君、本当にごめんなさいね」
「いえ、甘奈先輩もこういう姉を持つと苦労しますね」
「は、はは。そ、そうねぇ……」
 甘奈先輩も苦笑いをして同意する。
「ちょっと甘奈、解ってるんでしょうね?」
 蘭菜が甘奈先輩を脅すように言う。
 なにやら弱みを握っているようだ。
「ゴメンね。私も恥ずかしい写真をばらまかれるって言われると弱くて……」
「何があったんです?」
「せめて、メンバーの名前だけでも調べようと思って、姉さんの夢の中に入ったんだけど……そこで、捕まってしまって……」
「ふふふ、良いものを見させてもらったわ」
「あぁ……お嫁に行けない……」
 甘奈先輩は湯気が出そうなくらい顔を赤らめる。
 何かしやがったなこいつら。
 どこまで汚えんだ。

「ふふふ、正体を知りたいのなら教えてやろう。我々はお前に宣戦布告をする。我が名はバハムート。闇の生徒会長なり」
 いや、それは聞いたから。
「……姉の我妻 蘭菜です」
 甘奈先輩が本名を言ってくれた。
「私の名前はドラゴン。闇の副会長だ」
 また、本名を言わねぇ。
「二年四組の大島 梨寿(おおしま りず)さんです」
 甘奈先輩が補足説明してくれるから良しとするか。
「私の名前はフェンリルだ。闇の生徒会書記だ」
「二年六組の松本 小鳥(まつもと ことり)さんです」
「おれっちはフェニックス、会計だ」
「二年三組の反町 衣風(そりまち いぶ)さんです」
 なるほど、ここまでが、幹部って事か。

「私の名前はラミア」
「一年五組の北見 翔子(きたみ しょうこ)さんです」
「あたいの名前はスキュラ」
「一年三組の羽鳥 雫(はとり しずく)さんです」
「私はケルベロス」
「一年一組の長谷川 貴子(はせがわ たかこ)さんです」
「キマイラよ」
「一年二組の坂本 妃華利(さかもと ひかり)さんです」
「バジリスク」
「同じく一年二組の高田 萌(たかだ もえ)さんです」
「グリフォンよ」
「一年六組の真田 美知恵(さなだ みちえ)さんです」
「おひさ、メデューサよ」
「一年四組の緑川 麻衣(みどりかわ まい)さんです」
「あたしもひさしぶりね、セイレーンよ」
「同じく一年四組の関山 美保(せきやま みほ)さんです」
「とりは私ね。ドッペルゲンガーよん」
「一年三組小島 妙子(こじま たえこ)さんです」

 闇の生徒会十三人、全員の自己紹介が終わった。
 こいつらが俺達の敵か。
 かぶり物を取ったこいつらはどいつもこいつも性格が悪そうな面構えをしてるな。
 確かに全員美人って言えば美人だけどな。

 だけど、こいつらとまともに戦うつもりはねぇな。
 ページ数も残り少ねぇしな。
 俺は、でみちゃん、でもちゃんと仲良くやれればそれで良い。
 外野には引っ込んでいてもらいてぇな。

 パシャ!

「じゃ、そういう事で。この恥ずかしい写真をばらされたく無かったら、勝手に俺の頭の中に入って来ないでね」
 俺はかぶり物を手に持った、外に出したら恥ずかしくて表を歩けない写真をデジカメに抑えた。
 実は、昨日のでみちゃんとでもちゃんの戦いの時、俺もちょこっとゲームに参加させてもらって、このデジカメを手に入れておいたんだよね。

 汚え手段を使う奴らには汚え手段で対抗しないとな。
 弱みを握って黙らせるのが一番だし。
 お前らの恥ずかしい写真、取らせてもらったぜ。

「な、何を言っているのかしら?そんな写真なんかばらまかれても私達は全然きにしなくてよ」
 強がる蘭菜。
「じゃあ、これを先生に見せたら?こんなの見たら内申に響くと思うけど?生徒会室でその格好はまずいでしょ?」
「ひ、卑怯よ」
「それはあんた達でしょ。さんざん、姑息な手使って、俺の頭の中を占領しようとしてきておいて、こっちが使ったら文句言うわけ?恥ずかしくないの?よく言うでしょ。やられたらやり返せって。俺達はやられたことをやり返しているだけですよ」
「お、覚えていなさい」
 でた。
 悪党の捨て台詞。

 隠して、悪は去った――
 訳にはいかないだろうな。

 あの魔女共の事だから、また、何かくだらないちょっかいでもかけて来るんじゃないかと思うけど。
 俺とでみちゃんとでもちゃんでまた、追っ払ってやるだけさ。

「じゃ、生徒会長、俺達、夜の打ち合わせがありますんで、これで失礼します」
「あ、はい」
「じゃ、行こっか、二人とも」
「契約者しょーすけ、何だか今日はとても頼もしく思ったぞ」
「私もそれには同意見だ。何か変なものでも食べたのか?」
「何も喰ってねぇよ。ただ、俺はこの素晴らしい世界を守りたかっただけさ。俺の頭の中に招いているのは君らだけだからね」
「そうか。では今夜は奮発して、すきやき弁当を作ろう」
「私は天ぷら弁当だ」
「じゃあ、俺は、焼き肉弁当だ。スタミナ弁当だな」

 俺は二人を連れて今晩会う約束をした。

 完。


登場キャラクター紹介

001 兼六 庄助(けんろく しょうすけ)

兼六庄助 この物語の主人公。
 今までのつまらなかった生活と決別し、でみちゃんとでもちゃんと友達関係になる少年。
















002 偕楽 芽吹(かいらく めぶき)

偕楽芽吹  でみちゃん。
 学校一の変わり者とされている、造物主。
 庄助と契約を交わす。
















003 後楽 風稀(こうらく かざき)

後楽風稀  でもちゃん
 学校一の美人。
 でみちゃんの宿敵、ライバル。
















004 緑川 麻衣(みどりかわ まい)

緑川麻衣  コードネーム メデューサ。
 卑怯な手を使う魔女。


















005 関山 美保(せきやま みほ)

関山美保  コードネーム セイレーン。
 卑怯な手を使う魔女。


















006 小島 妙子(こじま たえこ)

小島妙子  コードネーム ドッペルゲンガー。
 人に化けたりするのが上手い魔女。


















007 我妻 甘奈 (あがつま かんな)

我妻甘奈  生徒会長。
 双子の姉、蘭菜の暴走に頭を痛めている。


















008 我妻 蘭菜(あがつま らんな)

我妻蘭菜  闇の生徒会長でコードネームはバハムート。
 会長選で妹に負け、憂さ晴らしに魔女となった。
















009 高田 萌(たかだ もえ)

高田萌  コードネーム バジリスク。
 キス魔で彼女とキスした者はお腹を壊す。
 魔女。















010 真田 美知恵(さなだ みちえ)

真田美知恵  コードネーム グリフォン。
 姑息な手を使う魔女。


















011坂本 妃華利(さかもと ひかり)

坂本妃華利  コードネーム キマイラ。
 姑息な手を使う魔女。