第001話


序章 隣の席のデミウルゴス




 あーあ……退屈だな……
 学校、辞めちまおうかな……良いこと何てなんも無いし。
 ――なぁんて、ちょっと自暴自棄になっちまってるなぁ。

 俺、兼六 庄助(けんろく しょうすけ)は現在、傷心中。
 ずっと好きだった後楽 風稀(こうらく かざき)ちゃんにやっとの思いで告ったは良いけど、返事はNOだった。
 どうせフるなら他に好きな人がいるとか付き合っている人がいるとか言ってくれれば諦めもつくんだけど――
 自分には倒さなくてはならないライバルがいるとか何とか言われたんだよな。
 何だよそれ?
 意味わかんねぇって。
 二年になってクラスも変わっちまったし、接点も少なくなっちまった。
 まぁ、向こうは学校一の美人様だし、俺とは釣り合わないってのは解るんだけどさ。
 傷を癒したくても隣の席はあの偕楽 芽吹(かいらく めぶき)だし――
 お先真っ暗って感じだな。

 偕楽 芽吹――
 ぼさぼさ頭に魔女の様なワシ鼻のオマケ付きの鼻眼鏡をした学校一の変人だ。
 みんなは最初はウィッチとか魔女とか呼んでいたけど、本人が否定、自分は造物主デミウルゴスだと言い張ったため、ニックネームは【でみちゃん】になった。
 友達は当然居ない。
 色気もゼロ。
 とても恋愛対象にはなりそうにもない相手だ。
 が、どうやら、俺は彼女に好かれてしまったらしい。
 理由は落ちた消しゴムを拾ってやっただけなのだが――
 ちょっと、彼女の頭に消しゴムを乗っけて
「落ちてたぜ」
 と言っただけなんだが、彼女にとっては何らかの契約が成立したらしい。
 以来、彼女からの視線を度々感じるんだけど、俺は知らんぷりしている。
 関わりたくないからだ。
「契約者、しょーすけ、契約者、しょーすけ」
「俺は契約者じゃないって言ってるだろうが」
 彼女から声をかけられるが同じ人間だと思われたくない。
「そんなことはない。君はこのデミウルゴスと魂の契約を果たしたのだ」
「してねぇって」
「契約のティアラをつけてくれたではないか」
「消しゴムじゃねぇか、あれは」
「いや、そうではない。リアル世界では消しゴムでも、我が世界においては立派なティアラなのだ。見ろ、ここにティアラという文字が」
「あんたが書いたんだろうが」
「そうだ。この消しゴムには我が力の契約の証として――」
「消しゴムっつってたじゃん」
「消しゴムではない。ティアラだ」
「もう……好きにしてくれ」
「あぁ好きにする。では契約者しょーすけよ。私にはライバル、デモゴルゴンとの戦いを必ず勝利しなくてはならない」
「あーはいはい」
「協力してくれ」
「するか、ボケ」
「そうはいかん。君は私と契約したのだ。契約を破れば血の粛清が」
「あー解った、解った」
 俺は反論するのも馬鹿らしいので適当に話を合わせた。

 そうこうしている内に授業が始まり、俺は睡眠タイムに突入した。
 俺は、数学の授業を子守歌代わりにウトウトと夢の世界に誘われて行った。

「よく来た、契約者しょーすけ」
 夢――のはずなんだが、そこは砂漠のような場所で、そこに偕楽 芽吹がいた。
 おいおい、夢の世界にまで【でみちゃん】かよ。
「勘弁してくれよ。俺は今、傷心中なんだからさ。寝てる時くらい静かに……」
「来るぞ」
「来るって何がって、おあっ」
 小さな隕石の塊がたくさん降ってきた。
 見ると上空には――
 【でみちゃん】二世とも言うべき、夢の中の偕楽と同じ格好をした女の姿が見えた。
 二人ともなにかのコスプレか?と思えるような派手な衣装で、フードをかぶり、相手の顔は見えなかった。
 そいつは急降下して来てフードを取った。
 その顔に俺は驚愕した。
 俺をフッた後楽だったからだ。
「我が名はデモゴルゴン。デミウルゴスよ、決着をつけに来た」
 夢なら覚めてくれ。
 よりにもよって、後楽まで偕楽と同じ様な事をしている夢を見るなんて。
「我がライバル、デモゴルゴン。私が勝つ」
「我は負けん」
「行くぞ」
「来い」
 二人が盛り上がって行く。

「やめてくれぇ〜」
 俺は思わず叫んだ。
 後楽に【でみちゃん】と同じ事をして欲しく無かったからだ。
 ただ――

「はい、兼六君、後で職員室に来るように」
「あ、はい」
 俺は寝ぼけていたようだ。
 数学の教師にこっぴどく叱られた。

「くそっ、ついてないぜ」
 俺が職員室から出てくると【でみちゃん】が待っていた。
「契約者しょーすけ、何故逃げた?」
「は?何言って……」
 夢の話に偕楽は関係無いのに何を言っているんだと思っていたがその後、信じられない事を聞いた。
「ふはは。デミウルゴスよ。お前の契約者は情けないな」
 突然現れた後楽がまるで夢の続きの様な事をしゃべったからだ。
「あ、あの、いったい……」
 俺は恐る恐る事情を聞こうとした。
 だが、俺の願いも虚しく、考えたくない答えが返ってきた。
「我が名はデモゴルゴン。デミウルゴスに契約者しょーすけよ。次こそは雌雄を決するぞ」
「それはこちらも望む所だ。デモゴルゴン、君には負けん」
「あ、あぁ……そんな」
 俺はショックを受けた。
 後楽がライバルと言っていたのは【でみちゃん】の事だったのだ。
 そして、後楽も【でみちゃん】同様、電波ちゃんだったのだ。
 でも、なんで、後楽も【でみちゃん】も俺の夢の中に出て来たんだ?
 それだけは解らなかった。
 だけど、それを気にしている余裕は俺には無かった。
「契約者しょーすけ、こっちに来て作戦会議だ」
「は、はは、もう好きにして……」
 俺は【でみちゃん】に連れられて階段下に作戦会議をしに向かった。
 ショックがでかすぎて何も覚えちゃいなかったけど。
 誰か、俺の青春を返してくれ。




第一章 俺もそっちの世界へ




「聞いてくれ、実は――」
 俺は友人達に夢の中で起きた事を話した。
「そうか、お前もとうとうそっちの世界の住人になったか」
「ゴメンな、俺、お前と友達やっていく自信がなくなったわ」
「【でみちゃん】と付き合ったら?」
 という様に友人達の反応は冷たかった。
 俺が今まで、【でみちゃん】に対して向けていた感情をそのまま、向けられたような感じだった。
 俺もとうとうそっちの世界の住人として、端に追いやられる時が来たのかと思った。
 そう思うと何だかムカムカしてきた。
 その怒りを【でみちゃん】に文句の一つでも言ってぶつけてやろうと思って彼女に話したら――
「そんな事で無くなるような薄っぺらい付き合いをしていたのか?」
 と言われた。
 ズキッっと響いた。
 俺は何てつまんない人生を歩んで来たんだろうか?
 そう思った。
 俺は今まで、普通の人間と思われるように努力してきた。
 いや、努力したというのは違う。
 人と違う事をする事に臆病になっていたんだ。
 人と外れる事が怖くて、人に合わせて生きて来た。
 そして、ちょっと変な事があっただけで、省かれるような本当に薄っぺらい友達付き合いをしていた事を思い知った。
 そして、俺は何て弱いんだ。
 人と違うというレッテルを貼られる事がこんなにも怖いのか?
 ひとりぼっちでも自分を通してきた偕楽の方がずっと強い人間だ。
 そう思った時、俺は信じられない言葉を口にした。
「あ、改めて契約したい」
 青天の霹靂――何でこんな台詞を吐いたんだ。
 言った自分が信じられなかった。
 半ば、自暴自棄になっていたというのもある。
 一人になるくらいなら偕楽と――
 そう思ったんだ。
「君ならそういうと思っていた。ようこそ、こちらの世界へ」
 そういう偕楽は鷲鼻付き鼻眼鏡を取って微笑んだ。
 ありがちな、お約束かも知れないが、素顔の彼女は可愛かった。
 すんごく可愛かった。
 それこそ後楽にも引けを取らないくらいに。
 後楽に偕楽――
 こっちの世界には俺好みの女の子が二人もいたのか……。
 そう思うと少し気分が楽になった。

 変人だと言いたい奴には言わせておけば良い。
 俺はこっちの世界で生きていく。
 なんたって俺の好きな女の子が二人もいる世界だ。
 その他の人間なんていらない。
 俺達は俺達の世界で生きていく。
 俺は人の目を気にしないで自由に妄想する世界の住人になる事を選択した。

「あー……何だかちょっと楽しくなって来たかな?なぁんてな」
「楽しい事は良い事だ。次こそはデモゴルゴンに勝つ」
「おれはデモゴルゴンとも仲良くしたいけどな」
「彼女は宿命のライバルだ。仲良くなどありえん」
「楽しく行こうぜ、楽しく」
「そうはいかん」
 会話が弾む。
 さっきまでは嫌々話していたが、今は何だかこいつと話すのも楽しく思えた。
 なんせ、俺と偕楽、そして後楽だけの秘密の世界を共有しているんだからな。
 だけど、俺の夢の中の世界であったあれは何だったんだろう?
 それだけは解らなかった。




第二章 お弁当を巡って




 その日の夜、俺はまた夢を見た。
 偕楽と後楽の出てくるあの夢だ。
 前回は授業中の居眠りってのもあったし、逃げ出してしまったからな。
 今回はどんな世界なのか、見極めねぇとな。
「おーい、偕楽、来たぜ」
「契約者しょーすけ、ここでは私はデミウルゴスだ。そう呼ぶがよい」
「じゃあ、【でみちゃん】で」
「……まぁそれでいい」
「サンキュ、――で、でみちゃん、ここはどういう世界なんだ?俺の夢だって事はわかるんだが、どうもこの世界の事はわからん」
「了解した。説明しよう。ここは契約者しょーすけの頭の中に私が作った世界だ」
「俺の頭でそんなことしてたのか……」
「契約者しょーすけの頭は私にとって都合の良いフィールドなのだ。物を作るのに適している」
「そうなのか?」
「そうだ。だが、このフィールドを狙いに来る者がいる。それがデモゴルゴンだ」
「後楽、いや、【でもちゃん】でいいか、でもちゃんも俺の頭を狙っているのか?」
 俺は頭が混乱しそうだった。
 俺の知らない間に俺の頭の中のフィールドとやらを取り合って美少女二人が争っていたとは夢にも思わなかった。
「デモゴルゴンも造物主だ。私と同様に、このフィールドは手に入れたいと思っているはずだ」
 美少女が俺を取り合っているのはちょっとは嬉しいが、頭の中に勝手に巣を作られるのはどうなのかと思ってしまうな。
「それで、俺の陣地を守れば勝ちってことなのか?」
「そうではない」
 でみちゃんは否定する。
 彼女の言うことはいまいちわからんな。
「じゃあなんなんだ?」
「明日のお昼がかかっている」
「は?」
 明日のお昼――
 その単語の意味が俺にはよく解らなかった。
「明日のお昼だ。私はサンドイッチを作ろうと思っている」
「おいおい、なんだよ、明日の昼飯の事かよ。今、関係ねーじゃん」
「ある。私はここで作ろうと思っている。今日負けてしまったら私は購買部でパンを買うことになってしまう」
 何を言っているんだ、こいつは?
 俺の頭の中で昼飯を作るってのか?
 パニックとまではいかないまでも、多少混乱している俺の気持ちをよそに、でもちゃんもやってきた。

「ふはは、我が宿命のライバル、デミウルゴスよ。明日の昼食は私が作る。覚悟は良いか」
 デモゴルゴンも宣言する。
 うわぁ、でもちゃんも同じかよ。
「望むところだ。私は、パン、ハム、レタス、卵にシーチキンを用意した」
 デミウルゴスが献立を発表した。
「なかなかやるな。私はご飯、卵、豚肉、アスパラガス、海苔に調味料を用意した」
 デモゴルゴンも献立を発表する。
 おいおい、何をやろうってんだ、こいつらは……。

「勝った方がそこで調理する。異論はないな」
「ない」
 ゴゴゴという感じの音がする。

 二人は燃えている。
 逆に俺はちょっと、いや、かなり引いている。
 俺の頭の中で何をやっているんだ、こいつらは……と思ってしまう。

 二人はしばらくにらみ合い、そして、戦闘?が開始された。
 二人が次々に描き出す魔法陣から、巨大な腕が飛びだして来た。
 でみちゃんは右腕が十三本、でもちゃんは左腕が十三本だ。
 双方の腕はみんな握り拳、つまりじゃんけんで言うところのグーの状態だった。

「な、何が始まるって言うんだ?」
「契約者しょーすけよ、説明しよう」
 でみちゃんが俺の疑問に答えてくれた。

 それは、最大十三回戦って、先に七勝を先取した方が勝ちというものだった。
 勝負が行われ、勝敗が決すると、勝った方が勝利の印、ピースサイン、つまり、チョキ、負けた方が降参の印としてパーを出す事になる。
 要するにチョキの数が七つ揃った方が勝ちというものらしい。

 だけど、たかが昼飯を作るだけなのに、ここまで大げさに勝負しなくても良いような気がするんだが……

 呆気にとられている内に、勝負が始まった。

 一戦目はでっかいカードの様なものがフィールド内に無数に散らばった。
 何が起きるのかと思ったら、先行のでみちゃんが風のようなものを起こして、カードを飛ばす。
 裏返ったカードはドロンと食べ物に変わる。
 三枚のカードが裏返り、出てきたものは――
 鍋焼きうどん
 ポテトサラダ
 湯豆腐
 の三つだった。
「無念……」
 何が無念なんだ?
 そう思っているとでもちゃんも風を起こし、四枚のカードが裏返った。
 出てきたのは――
 きつねそば
 カレーライス
 ペペロンチーノ
 クリームソーダ
 だった。
「無念……」
 だから、何が無念なんだ?

 俺の疑問を余所に、交互に風を起こしてはカードを裏返し、それが全て飲食物に変わるという作業を続けた。
「おーい、俺を置いて行かないでくれぇ〜説明してくれぇ〜」
 俺は答えを求めたが、二人は黙々と裏返し作業を続けた。
 そして、十八回目の時――

 ピコン
 という音がした。
「当たりです。当たりです」
 という声が何処からともなくあがった。
「やったぞ、契約者しょーすけ」
 めくったでみちゃんが叫ぶ。
「だから何が?」
 俺は意味が解らなかった。
「ふっ甘いぞ、デミウルゴス」
 不敵な笑みをうかべるでもちゃん。
「な、まさか……」
 焦るでみちゃん。
 めくれて出てきたのは豚肉やアスパラガスがおかずのお弁当だった。
 そこで、鈍い俺もようやく気付く。
 おそらく、でみちゃんはサンドイッチを出したかったんだろう。
 だけど、でもちゃんの弁当を引き当ててしまった。
 だから、この勝負はでもちゃんの勝ちという事なのだろう。

 それを示すように、でもちゃんの所の左腕の一つがピースサインを作り、でみちゃんの右腕の一つがパーをだした。

 ――あぁ……そういうことね。

 何となく、解ってきたわ。
 とにかくゲームをやって七勝しろって事か。
 なるほどねぇ……

「くっ、次は負けん」
 悔しがるでみちゃん。
「返り討ちにしてくれる」
 ふんぞり返るでもちゃん。

 二戦目が続けて行われる。

 ふと見ると空にいっぱい可愛らしい生き物がぷかぷか浮いている。
 どれもこれもゆるキャラっぽいな。
 こうして見るとなんだか和むな。

 穏やかな目でゆるキャラ達を眺めている俺とは裏腹に、でみちゃん、でもちゃんは大きな水鉄砲みたいなものを装備した。
 そして――

「シューティング!!」×2
 かけ声と同時に、ゆるキャラめがけて撃ちまくる。
 おいおい、何をやって――

 そこまで思いかけて、すぐに納得した。
 ゆるキャラが一瞬、ドクロに変わる瞬間がある。
 その一瞬にドクロを撃ち抜けば、ポイントになるんだ、これは。
 ゆるキャラを撃ち抜けば、減点。
 要はドクロを撃ち抜いた回数を競うゲームなんだこれは。

 おいおい、二人だけで楽しまないでくれよ。
 俺も混ぜて欲しいな、これは。
 そう思えるくらい楽しそうだった。

 勝負の方は、今度はでみちゃんが勝ったみたいだ。
 でもちゃんの方が二つ多く撃ち抜いたが、減点が少し多かったため、でみちゃんの勝利が決まったようだ。

 続いて第三戦――

 それは、デンっといきなりそびえ立った、不気味な洋館。
 それをスタート地点の入り口から屋上までのタイムを競うゲームだった。
 二人は怖いからと言って、俺をサポートとして同行させた。
 俺が二人に増えた時は正直ビックリした。
 何で二人いるんだとパニックになりかけた。
 が、キャーキャー怯える美少女二人に抱きつかれて俺は鼻の下を伸ばしてしまうような良い思いをさせてもらった。
 やっぱり、こういうおいしい目に遭わないとな。
 俺も自分の頭の中のスペースを貸している甲斐がないってもんだな。

 この勝負は、悲鳴の少なかったでみちゃんが連取する事になった。

 続いて第四戦――

 でみちゃんとでもちゃんは小人サイズに小さくなった。
 そして、三百メートルくらいのコースが出現する。
 コース上にはたくさんの小動物がエサを食べている。

 小さくなった二人はこのコース上にいる小動物達を乗り継いで先に、ゴールした方が勝ちというゲームだ。

 小さい二人も何だか可愛らしい。
 家に持って帰りたくなるな、これは。
 俺はミニサイズの二人のレースを楽しんだ。
 これは、でもちゃんがタッチの差で勝った。

 続く第五戦――

 無数に並んだシュー生地。
 これはお笑い番組で見たことあるぞ。
 中に、わさびやらからしやらが入っているってやつだ。
 これは見ていて楽しそうだ。

「じゃ、じゃあ私から行くぞ」
 でもちゃんが食べる。
 が、一つじゃない。
 三つのシューを食べた。
「ど、どうかしら?」
 にやりと笑う。
 どうやら、一つずつじゃないみたいだな。
「や、やるな、ならば……」
 続いてでみちゃんは五つのシューを食べてみせた。
「ど、どうだ?」
「ふ、ふふ、やるわね、こっちは七つよ」
「こっちは十個だ」
 どうやら、前にやった方より、多くのシューを食べないといけないみたいだな、これは。
 夢の中だから、太るって事はないだろうけど、実際にやったら何処の大食い大会だって話になるな、こりゃ。
「モガー」
 百二十七個のシューを食べたでみちゃんが何かを引き当てたらしい。
 転がり回ってもだえ苦しんでる。
 ちょっとパンツも見えちゃったな。
 何だか得した気分だ。

 またでもちゃんの方が盛り返したようだ。

 続く第六戦は――

 天空までとぎれとぎれに続く梯子。
 それを早く昇った方が勝ちというものだ。
 何か、そういうゲームが昔にあったような無かったような気がするな。
 途中には相手を邪魔したりするアイテムや回復アイテムがあるみたいだな。

 どうでも良いけど、俺の頭の中が遊技場と化しているな、これは。

 早速、レースがスタートする。
 でも下から丸見えなんですけどこれ。
 良いのか?
 本人達は気にしないのか?

 俺の心配っていうか期待どおりの展開となった。
 俺にサービスしてくれているようにも思えるなこの勝負。
 こんな勝負ならいつまでもやってくれと言いたいな。

 バケツをかぶって、服が透けたり、鋏でスカートが破けたり美味しい展開が続くが、梯子を上に上がっていくと小さくてよくわからなくなるな。
 あんまり美味しい展開じゃなかったな、これは。

 これも、でもちゃんが勝利した。
 これで、でもちゃん四勝、でみちゃん二勝で、ピンチだな、これは。
 何か協力した方が良いのか?

「おーい、どうしたら良いんだ俺は?」
 一応、でみちゃんに聞いてみる。
「契約者しょーすけ、ピンチだ」
「解ってるよ。向こうは四勝だもんな」
「しかたない、ならば、こうだ」
「え?ちょ……」
 俺は彼女の魔法で彼女のシャツになった。
 そのまま、でみちゃんは俺を着た。
 彼女の柔らかい感触が俺の股間を刺激する。

「動くな。集中できん」
「動くなって、ちょっと無理だろ、これは。密着しすぎてるぞこれは」
「二人のシンクロによって敵を倒すのだ」
「シンクロってドキドキして、それどころじゃ」
「行くぞ」
「話を聞けって」
 俺の動揺を全く無視して、第七戦が始まる。

 第七戦は迷路だった。
 先にゴールまでたどり着いた方が勝ちというゲームだ。

 お、知ってる。
 これなら解るぞ。
「おい、これの攻略法は知ってるぞ。片方の腕を壁側につけてそれをなぞっていけばゴール出来るぞ」
 俺は得意げに言った。
「甘いぞ、契約者しょーすけよ、それだとゴールまで時間がかかってしまう。それにこの迷路は特別製だ。3D迷路になっているからその常識は通用しない」
 あ、そ、そうなの?
 俺はガックリきた。
 せっかく役にたてると思ったのに。

 だが、あれこれ悩んでいる暇など無かった。
 ゲームはスタートしていたからだ。
 この迷路は落とし穴やシャワーはもちろん、モンスターや壁が変形する等のトラップも多々あった。
 俺には全然解けない問題を解かないと先に進めなかったりして、二人との学力の差を見せつけられるようなゲームだった。
 正直楽しくなかった。
 俺の頭に知らない知識とかが入り込んで気持ちが悪かった。
 夢を見ているとしたら、うんうんうなっている所じゃねぇかな、今は。
 唯一の救いはでみちゃんと密着出来ていたという事だけだな。

 第七戦はでみちゃんが勝利した。
 これで三勝四敗だ。
 まだ、負けている。
 次も取らないと苦しい戦いになりそうだ。

 第八戦は――

 美術コンテストだった。
 ヌードを描いて綺麗な方が勝利となる。
 俺は、服から元に戻された。
 どうでも良いけど、俺の扱い、かなり雑じゃねぇか?

「さあ、脱ぐのだ、契約者しょーすけよ」
 でみちゃんが脱衣を催促してきた。
「脱ぐって俺が?そこは普通、女の子がやった方が良いんじゃねぇの?」
「私は描かねばならん。だから脱ぐのだ」
「男が脱いでもえづらが汚ねぇだけだって」
「わかった。では……」
 俺は女の子に変えられた。
「うぅ……」
 俺は女の子として辱めを受けた気分になった。

 こいつら夢の中だと思って好き放題やってくれるな。

 俺の厳正な審査の結果、勝ったのはでもちゃんだった。

 負けているでみちゃんに票を入れる訳にはいかなかった。
 明らかに、技術的にでもちゃんの方が綺麗に描けていたからだ。

 これで、三勝五敗。
 もう一回しか負けられない状態になった。

 第九戦目はバスケだ。

 シュートを決めれば二点、離れた位置からなら三点が入るというのは変わらないが、細かいルールが違っていた。
 まず、ドリブル禁止。
 パスでつないでいかないとダメで、三秒以上持っているとボールが破裂して相手のボールになる。
 ボールは途中で二個になったり三個になったりする。
 ボール毎に得点が決められていて、二個目は二倍、三個目は三倍の得点が入る事になっている。
 プレイヤーは分身で別れたでみちゃんとでもちゃん達。
 プレイヤーの数は十人ずつ。
 ゴールは自動運転で移動し続けて、三十秒毎に敵のゴールと味方のゴールが入れ替わる等、複雑怪奇にルールが変更されている。
 ルールを覚えるだけで、時間がかかってしまうんじゃねぇかと思ったが、二人は慣れているのか、ちゃんとゲームになっていた。
 このゲームはでみちゃんが勝って四勝五敗となった。

 第十戦目はファッションショーだ。

 二人がそれぞれデザインした服をショー形式で次々と披露していく。
 それを見た審査員ってか俺なんだけど、持ち点百点×百着の1万点満点で審査する。
 俺は次々と変わる衣装を厳正に審査した。
 っていうか、俺の好みの度合いを数値化していった。
 結果は九千七百五十九対九千七百五十一で、でみちゃんに軍配をあげた。
 理由は、水着が一点多かったのと、ランジェリーみたいな服が俺のドストライクだったのがあったからだ。
 大分、目の保養をさせてもらった気分だった。
 これで、五勝五敗、イーブンにまで戻した。

 第十一戦目は――

 間違い探しだ。
 複雑なジオラマを俺が、百点分、変更する。
 それを二人同時に探して、多く間違いを見つけた方が勝利するというものだ。

 これは、でみちゃんがまた勝利した。
 六勝五敗となり、でもちゃんの方が後は無くなった状態となった。

 第十二戦目は――

 料理対決だ。
 正直、昼飯を競うんだから、この十二戦目だけやれば良かったんじゃねぇか?って気分になるんだけどな。

 が、これもただの料理勝負じゃなかった。
 悪戯ネズミが食料を食べようとやってくるからだ。
 二人は悪戯ネズミから料理を守りながら課題の料理を作り上げて行く。
 時間は夢の中の時間だけど、2時間だ。
 その中で出来た料理を俺が食べて、審査をする。

 ちょっと待て、衛生面は大丈夫なのか?とツッコミたくなるが、俺の意見は即座に却下された。
 勝負は互角……と思われたが、明らかにでみちゃんの方は喰いたくねぇって気持ちになった。
 料理中にネズミがダイブしたからだ。
 俺はあれを食べねぇといけないのかと戦慄を覚えた。

 結局、おれはでみちゃんの料理を吐きだし、勝利はでもちゃんの方となった。

 六勝六敗で最終戦にまでもつれ込んだ。

 最後の第十三戦――

 それは、水着相撲だった。
 最終戦で何故、相撲?とも思ったが、俺にとっては嬉しいゲーム。
 十二分に楽しませて貰うことになった。

 がっぷり四つに組んだ、二人は互角の勝負を繰り広げた。
 魔法は一切抜きの力と力の勝負。
 水着が引っ張られて食い込み千切れそうになったり、俺の目を存分に楽しませてくれた。

 勝負は俺が影響した。
 俺が眺めの良い位置に移動した時、でもちゃんと目が合った。
 それで、でもちゃんが恥じらった隙をでみちゃんが見逃さなかった。
 上手投げで土俵の外に押し出した。

「そんな……」
 天を仰ぎ、悔しがるでもちゃん。

 よくやった、二人とも。
 十分、俺を楽しませてくれた。
 ありがとう。
 サンキュウ。
 謝々。
 どちらが勝って、どちらが負けたかなんてどうでもいい。
 俺は楽しかった。
 ありがとう――本当にありがとうという気持ちでいっぱいだった。

 そんな夢を見て、俺は朝を迎えた。

 翌朝登校し、いつもの日常を過ごす。

 そして、昼食の時間――

 でみちゃんはサンドイッチを持って来ていた。
「ふっ勝利しての食事は旨いな」
「で、でみちゃん、それ……」
「契約者しょーすけ、君の頭の中で作ったサンドイッチだ。旨いぞ」
 夢の中の出来事が本当に起こっていたかもしれない事に俺は驚いた。
「そ、それは……」
 俺は気のせいだと思った。
 でみちゃんの仲間になるつもりではいたが、まさか本当に俺の頭の中で調理したとは思えなかったからだ。
 だが、本当に、彼女のサンドイッチは俺の頭の中で作っていたサンドイッチとそっくり、うり二つだった。
 あり得ない、あり得ないと思っていたら、でもちゃんがやってきて。
「明日こそ、私が作るんだからね」
 という捨て台詞を残して悔し涙を滲ませて去っていった。
 え?まさか、本当に俺の頭の中で昼食を作っていたのか?
 俺は訳がわからなくなった。




第三章 課題図書




 ゴールデンウィークも間近となったある日、宿題が出た。
 課題図書を読んで感想を書くというものだ。
 最近、本を読まなくなった生徒を憂いた教師が本を読ませるのが目的らしい。
 俺も漫画をたまに読む程度で全然、本は読まねぇから当然やってくるように言われた。
 面倒臭ぇな。
 どうにか短縮して読んだことに出来ねぇかな……。
 そう思った俺は、でみちゃんに相談した。

「なぁ、でみちゃん、読んだ事に出来る裏技ってねぇかな?」
「あるぞ、契約者しょーすけ」
「マジで?どんなんだ、それ?」
「デミウルゴスフィールドに行けば、一瞬で読んだことにも出来る」
「それって、ひょっとして、俺の頭の中の事か?」
「そうだ。あそこではあらゆる事が可能となる。早速、今夜にでもやってみよう」
「そ、そうか、じゃあよろしく頼むわ」
「うむ、任せろ」
 俺は、今夜もでみちゃんと俺の頭の中で待ち合わせをした。

「ちょっと待ちなさい」
 そこへ、でもちゃんがやってきた。
 彼女は、この前、弁当の件ででみちゃんに負けた事を根に持っている。

「デモゴルゴン、貴様は負けたのだ。大人しく去れ」
「一回くらい勝ったくらいで勝った気にならないでね。その前は不戦敗してるって事、忘れてない?」
「うっ……」
 あぁ、俺が途中で起きたあれか……

「勝負よ。今度はどちらが読書感想文を召喚出来るかを賭けた」
 でもちゃんがまた勝負を仕掛ける。
 読書感想文って召喚出来るものなのか?
「望むところだ。デモゴルゴン。次も返り討ちにしてやる」
「今の内にいい気になっている事ね。次はそううまく行かないわよ」
「ふっ……」
「ふっ……」
 にらみ合う両者。
 また、あれをやるのか、俺の頭の中で……。

 俺はため息をついた。

 その夜、俺は早めに就寝した。
 読書感想文を書くのに時間がかかると思ったからだ。
 正直、召喚出来るもんだとは思っちゃいない。

 俺はデミウルゴスフィールド――要するに、俺の頭の中に降り立った。
「良く来た、契約者しょーすけよ。ここで迎え撃つぞ」
「迎え撃つっつうか、俺は読書して感想文を書きに来たんだけど……」
「勝利すれば、出てくる。負けたら、君は罰当番だ」
「なんだよ、それは……」
 俺は、不安になった。

 しばらく待つとでもちゃんもやってきた。
「待ったぞデモゴルゴン」
「待たせたわね、デミウルゴス」
「勝負はいつもので良いな」
「嫌よ」
 でもちゃんが拒否する。
「何?」
「嫌と言ったのよ。私はクエストハント勝負を挑むわ」
「クエストハント?」
 俺は疑問符を浮かべる。
 クエストハント……っていうからには冒険して何かをハントしてくるって事か?

「私は研究した。そして、弱点を発見した。契約者しょーすけ、お前だ、それは」
「は?俺?」
「何故それを……」
 でもちゃんも認めちゃうの?
 俺って足手まといなの?
 じゃあ何で俺が契約者なの?

「今から、私はゲームマスターとなり、お前達の行く手を阻む。お前達は時間内に三体のモンスターをハントすれば勝ちとなる。契約者しょーすけが起きたらお前達の負けだ」
 なんじゃそりゃ?
 俺が起きたら負け?
 意味わからん。
「気をつけろ、契約者しょーすけ。何かを狙っているぞ」
「そりゃそうかもしれねぇけど、意味わかんねぇし」
「解らなければ教えてやろう」
「へぇ、そりゃ、聞きたいな、是非教えてくれ」
「ふふふ――」
 悪党の様な笑いを始めるでもちゃん。
 その恐怖の企みを知ったとき、俺は恐怖する。
「契約者しょーすけ、お前の興奮値がある一定以上に達すると前立腺を刺激して、お前はむむむ……むせー……する」
 へ?何?今、何て言ったの?
「どういう事だデモゴルゴン」
「に、二度も言わせないで、恥ずかしい。……だから、前立腺を刺激して、漏らしてもらうの。年頃の男の子はそういうのあるんでしょ?」
 ちょ、ちょっと待て――
 ひょっとして、俺は勝負に負けたら、女の子二人の前で夢精させられるって事か?
 それはダメだ。
 死ぬほど恥ずかしい。
 もう学校に行けなくなる。
 冗談じゃない。
 嫌だ。
 絶対に嫌だ。

「ま、まて、そんな勝負は……」
「案ずるな、契約者しょーすけよ。要は勝てば良いのだ」
 勝てばって、お前……
「クエストハントでは様々なお色気モンスターがお前達を襲う」
 それって、地獄だろ、逆に。
 気持ちよくなる変わりにいっちまったら、俺は大恥をかくことになる。
 そんな危険な勝負はしたくない。

「よし、わかった、受けて立とう」
 バカ言うな。
 そんな勝負受けられるか。
「や、やめよう。バカらしいし」
「何を言う。契約者しょーすけよ。ここは神聖なデミウルゴスフィールドだ。ここで行われる勝負は神聖なものだ」
 そういう事言ってるんじゃねぇって。
 俺達が負けたら、俺は外を歩けなくなっちまうんだよ。
「勝負に異論はないな」
 ある。
 大ありだ。
「異論はない。これは聖戦だ。受けてたとう」
 何が聖戦だ。
 俺を貶めて何が楽しいんだ。
 やめろ。
 やめてくれ。

 という俺の心の叫びは二人の美少女には届かなかった。
 思春期の繊細な男心を壊さないでくれぇ。
 俺のハートは割れやすいガラスで出来てるんだぁ……。

 俺の気持ちを無視して、ゲームはスタートされる。
 最初はジャングルのステージだ。

 目的のモンスター――
 写真で見たけど、無茶苦茶俺好みで色っぺーじゃねぇか。
 こんなのに迫られたら俺、いっちまうよ。
 こんな生殺しのクエストなんかしたくねぇよ。
 してみてえって気持ちとしたくねぇって気持ちがせめぎ合う。

 俺はおかしくなりそうだった。

「少しは落ち着け、契約者しょーすけよ。これで安心だ」
 でみちゃんが落ち着くように言う。
 だが、
「落ち着けるか、これは何だ、これは」
「何って手錠だが?これで、私とは運命共同体だ。安心したか?」
「するか!いざって時、逃げられねぇじゃねぇか」
「逃げる?何の冗談だ。私達はハントしにきたのだぞ。敵前逃亡は銃殺刑と相場が決まっている」
「何言ってんだよ。俺、誘惑されちまうんだよ」
「心境滅却すれば火もまた涼しいだ。無心でいれば良い」
「俺、誘惑とかされたらどうにかなっちまうって」
「大丈夫だ。私がついている。安心しろ」
「お前と一緒でどう安心しろと?」
「お前を守ってやる」
「攻撃されるんじゃなくて、俺は誘惑されるんだよ」
 本来なら嬉しい事なんだが、今はそんな状況じゃない。

 そうこう言い争っている間に、モンスターがやってきた。
 お決まりの最初のモンスター、スライムだ。
 が、やっぱり色っぽい女型をしている。
 まとわりつかれたが、恐ろしく気持ちいい。
 肉布団に包まれているような感触だ。
 あっという間にいってしまいそうだった。

 嫌だ。
 本当に嫌だ。
 このままでは俺は醜態をさらしてしまう。
 でみちゃんとでもちゃんの前で、
「うっ……」
 とかいっちまったら、次の日、どんな顔して会えば良いのかわかんねぇじゃねぇか。
 そんな微妙な気持ちを察してくれよぉ。
 頼むから。

 俺が悲痛な思いでいると、次々と可愛いモンスターや綺麗なモンスターが襲ってくる。
 本当ならハーレムにでもいるような気持ちになる所だろうが、俺は、でみちゃんとでもちゃんの前でいきたくない。
 夢精を見られるというのは思春期の男にとっては自殺もんの恥ずかしさを伴う。

 俺はそれだけは避けたいと必死で我慢をした。
 弁当の時は天国かと思ったけど、これは地獄だ。

 俺は必死で逃げたが、ガッとくるのではなく、モンスターはピタって感じで、触ってくる。
 そのさわり方が女の子に触れられたみたいで、超気持ち良い。
 気持ち良いから、逆に苦しい。

 ――持たない。
 ぜってぇ、三体のモンスターをハントするまで俺の股間は持たない。
 イっちまう。
 誰か――誰か助けてくれ。

 それどころか俺は早漏と言われる危険もある。
 それくらい、モンスター達は気持ちいい感触だった。
 モンスターなら、グワっと来いよ、グワっと。
 ホント、勘弁してくれよぉ。

 俺はお漏らしを我慢する子供の様に震え上がっていた。
 何とか、一体目のハントモンスターの前に来た時は破裂寸前だった。
 今にもぶちまけてしまいそうだった。

 が、一体目のハントモンスターをハントする前に俺はガバッと起きて、トイレに駆け込んだ。
 為す術無く、俺達は負けてしまった。
 何とか、夢精だけは回避出来たが、それでも起きてしまったので、勝負をするまでも無く、俺達が敗北したという事になった。

 起きたのがまだ夜中だったので、俺は二度寝した。
 デミウルゴスフィールドに行ったら、でみちゃんがガックリと肩を落としていた。
「おーほほほ。勝ったわ。勝ったのよ」
 逆にでもちゃんは高笑いをあげていた。
「契約者、しょーすけよ、なぜ、もう少し我慢できなかったのだ?」
「い、いや、トイレに行きたくてつい……」
「寝る前にトイレで用を足しておくのは当たり前だと思っていたのだが」
 どうやら、でみちゃんは俺がしょんべんを我慢しているんだと思っているようだ。
 夢精を我慢している事を知らないって事はちょっとお子様なんだな、でみちゃんは。
 でもちゃんの方は何だか知ってる見たいだけどな。
 夢精をさそうゲームを企画したんだから、当然か。
 男の純情を弄びやがって。
 ちょっとムッと来たぞ、でもちゃん。
「我がアドバイザーが言ったことは間違いなかったな」
 アドバイザー?
「協力者が居たという事か、デモゴルゴンよ」
「ふふふ、我が配下の四天王だ。驚いたか、デミウルゴスよ」
「四天王……」
「我が四天王、メデューサとセイレーンもその内お前達の前に姿を現すだろう」
「後の二人は?」
 俺の素朴な疑問に対し――
「……募集中だ」
 と答えた。
「は?」
「募集中だ」
 な、なるほど、今は二人しかいないのね……。

 可愛いんだけど、でみちゃんもでもちゃんもどっか抜けてんだよな。

 それにしてもでもちゃんに余計な入れ知恵しやがったのはメデューサとセイレーンって奴か。
 とんでもねぇ奴らだ。
 後でとっちめてやりてぇな。
 俺はムカムカがおさまらなかった。

 翌日、読書感想文は出来ている筈もなく、俺は、ゴールデンウィークに慣れない読書と苦手な感想文を書くはめになった。


登場キャラクター紹介

001 兼六 庄助(けんろく しょうすけ)

兼六庄助 この物語の主人公。
 今までのつまらなかった生活と決別し、でみちゃんとでもちゃんと友達関係になる少年。
















002 偕楽 芽吹(かいらく めぶき)

偕楽芽吹  でみちゃん。
 学校一の変わり者とされている、造物主。
 庄助と契約を交わす。
















003 後楽 風稀(こうらく かざき)

後楽風稀  でもちゃん
 学校一の美人。
 でみちゃんの宿敵、ライバル。
















004 緑川 麻衣(みどりかわ まい)

緑川麻衣  コードネーム メデューサ。
 卑怯な手を使う魔女。


















005 関山 美保(せきやま みほ)

関山美保  コードネーム セイレーン。
 卑怯な手を使う魔女。


















006 小島 妙子(こじま たえこ)

小島妙子  コードネーム ドッペルゲンガー。
 人に化けたりするのが上手い魔女。


















007 我妻 甘奈 (あがつま かんな)

我妻甘奈  生徒会長。
 双子の姉、蘭菜の暴走に頭を痛めている。


















008 我妻 蘭菜(あがつま らんな)

我妻蘭菜  闇の生徒会長でコードネームはバハムート。
 会長選で妹に負け、憂さ晴らしに魔女となった。
















009 高田 萌(たかだ もえ)

高田萌  コードネーム バジリスク。
 キス魔で彼女とキスした者はお腹を壊す。
 魔女。















010 真田 美知恵(さなだ みちえ)

真田美知恵  コードネーム グリフォン。
 姑息な手を使う魔女。


















011坂本 妃華利(さかもと ひかり)

坂本妃華利  コードネーム キマイラ。
 姑息な手を使う魔女。