第002話 東京女子代表編(後編)


00 始めにおことわり

 この物語はフィクションです。
 実際にある団体等とは別の物語です。



01 ダークホース対決


 東京女子代表戦に勝ち上がった4名――それは、
ハイスクールマザーズ第二話シーン1 圧倒的な実力差を見せつけ、勝利した優勝候補筆頭の世田谷組(せたがやぐみ)代表の新庄 絢香(しんじょう あやか)
 同じく、圧倒的な力を見せて勝ち残った優勝候補の一角、文京組(ぶんきょうぐみ)の相良 柚香(さがら ゆずか)
 優勝候補の港組(みなとぐみ)の芹沢 一恵(せりざわ かずえ)を破ってきた台東組(たいとうぐみ)の皆瀬 優樹(みなせ ゆうき)
 そして、我らが主人公で、優勝候補二人を破っての勝ち残りを決めた板橋組(いたばしぐみ)の亀井 百合萌(かめい ゆりも)だ。
 優勝候補2人にダークホース2人。
 抽選の結果、準決勝は百合萌対優樹のダークホース同士の対決と柚香対絢香の優勝候補同士の対決が行われる事になった。
 どちらも注目の一戦だ。
 まず、先に、百合萌が優樹と戦う事になる。
 準決勝は同じく、7戦中4勝先取の勝負になるが、新たに、双方の選手には1回ずつの拒否権が与えられる。
 拒否権とは10000種類の競技からランダムに選出される種目に対し、その競技をしないという事を選択出来るという権利だ。
 競技は双方の選手が拒否権を発動しなかった場合、競技として成立する。
 つまり、苦手な競技は一回だけ断る事が出来るのだ。
 この一回分の拒否権を上手く使う事も勝敗の分かれ目となる事もあり得るのだ。
 もちろん、全く拒否権を発動しなくても良い。
 発動するしないは選手の自由だからだ。
 勝敗を分ける駆け引きも加わるという事になる。

 百合萌は対戦相手の優樹を見た。
 外見上は普通の女の子だ。
 優勝候補を破ったというがどんな底力をもっているかはわからない。
 データとしては無い。
 彼女は元々台東組の第14席。
 つまり、代表戦に出てくる人間では無かった。
 が、万能塾(ばんのうじゅく)という塾の特別カリキュラムを選択し、地獄の猛特訓をして来たようで、一気に台東組の主席になったのだ。
 その勢いのまま、東京女子代表戦に出場し、そのまま、優勝候補の一角、一恵を倒したのだ。
 その経緯からすると百合萌と似ている。
 百合萌も板橋組を末席から勝ち上がって代表戦に出場したのだから。
 違う点で言えば、百合萌の方は、板橋組の主席の実力に達していないまま代表戦に出ているという事だろう。
 第三席・酒井 清美(さかい きよみ)、第四席・生方 尚美(うぶかた なおみ)を倒したところまでは行ったが、この二人にしても実力的には負けていた。
 実力的には板橋組の第五席という所が打倒だろう。
 ベスト4に入れたのは奇跡に近いものがある。
 キレた状態になってようやく勝てたのだ。
 そうで無ければ優勝候補二人のいた激戦区で勝ち残ることは出来なかった。
 一方、優樹は別だ。
 実力で一恵を倒している。
 コントロールがきかないキレた状態の百合萌とは訳が違う。
 単純に考えても百合萌が不利な状況なのは明らかだった。

 が、そんな事も言っていられない。
 彼女に勝たなくては次の東京女子代表戦決勝に出ることも出来ないのだ。
「よろしく」
ハイスクールマザーズ第二話シーン2 握手を求める優樹。
 やはり、余裕が感じられる。
 これまでやってきた事に対する自信が滲み出ているようだ。
「よ、よろしく」
 握手でかえす百合萌。
 余裕は無い。
 緊張が解けていない。
 昨日までで出来るだけの努力はしてきた。
 だが、それがまだ自信に繋がっていない。
 実力アップしたという確証がまだ持てないのだ。
 優樹の受けている万能塾の塾長――それは百合萌の父、亀井 重蔵(かめい しげぞう)だ。
 百合萌もまた、父、重蔵から特別カリキュラムを受けて育ったが、彼女は挫折したのだ。
 重蔵の万能塾の生徒である優樹に対しての劣等感があるのだ。
「私が成長出来たのもあなたのお父さんの教えを受けたからです。ありがとうございます」
 感謝の言葉とは裏腹に百合萌に対して揺さぶりをかけて来ている。
 勝負はもう始まっているのだ。
 おそらく重蔵から百合萌の事を聞かされていたのだろう。
 父の名を出せば狼狽えると思っているのだ。
 こういう勝負への貪欲さも重蔵は教え込んでいた。
 百合萌の全身の毛穴から汗が噴き出す。
 完全にトラウマとなっている。
 だが、その事は事前に調査済みだ。
 板橋組主席、河原 千亜紀(かわはら ちあき)は一恵から情報を聞いていたので、第二席、藤堂 可憐(とうどう かれん)と共に調査していて、百合萌と万能塾塾長、重蔵との関係とトラウマに行き着いた。
 優樹が重蔵の生徒だという事は単なるオマケでしかない。
 これは娘と父――百合萌と重蔵の代理戦争なのだという事だ
 優樹が揺さぶりをかけて来るのは予想がついていた。
 その上で、百合萌は千亜紀と可憐に付き合ってもらってメンタルトレーニングをしていた。
 自己暗示に始まり、様々な状況に応じての精神の持っていき方の特訓をした。
 時間が無かったから付け焼き刃に過ぎないがそれでもやらないよりはマシ。
 百合萌は感情を殺す事に必死になったが、それでは、やはり、だめだ。
 感情を凍結しなければ意味がない。
 必死だという事は熱い感情だという事だ。
 百合萌はすぐに気持ちを切り替える。
 無視する事が出来なければ、気持ちの持っていき方を変える事にした。
 父に自分を何が何でも自分を認めさせてやる。
 父の考えより、自分の考えの方が正しかったと認めさせてやる。
 そう、思うことにした。
 それが、千亜紀と可憐との特訓の成果、感情のコントロールだった。
 キレるのは簡単だが、自由にコントロール出来なければ無駄に疲弊し、自滅するだけだ。
 だったら、使いどころを調節して、コントロールする。
 それが、百合萌が出した結論だった。

 まだ、心許ないがそれでも百合萌は彼女なりに感情コントロールしていた。
 そして、心理戦の挨拶は終わり、いよいよ、優樹との戦いが始まった。

 10000種類の種目からランダムに7種目選択され、4種目先取の戦いが始まる。

 第一種目と第二種目はそれぞれ双方が一回ずつ拒否権を発動し、お互いを牽制する試合運びになった。
 そのため、第三種目目が第一種目となったのだった。

 第一種目
 オールピースパズル

 この種目は体育館上に10種類の形の違う枠が用意されている。
 その枠には100ピースで1種類の枠が埋まるようにパズルのピースをはめていくゲームだ。
 10種類の袋から1つずつ選んで10種類の枠の1つを埋めるためにパズルを当てはめていく。
 もちろん、自分が選んだパズルと枠が一致するとは限らない。
 間違ったパズルを選んでしまうと当然、パズルは完成しない。
 プレイヤーは5つまで袋を選ぶことが出来る。
 制限時間2時間でどのくらいパズルを完成出来たかを勝負する長期戦のゲームだ。
 パズルは赤、青、黄色、緑、ピンク、茶色、紫、白、黒、オレンジの十色に分かれていて、審査員にはどの枠がどの色のパズルか一発で解るようになっている。
 パズルは一つ完成すると300点の点数が与えられるが、完成しないと出来た所までのピースの数の分の点数が入る。
 90ピース以上ならピースの数×2倍の点数が入る。
 例えば、89ピースなら89点、90ピースなら180点、99ピースなら198点、100ピースなら300点だ。
 どこまで完成させるかでも点数は変わる。
 外れたら全く意味のない0点となる。
 仮に、全部完成出来たとしたら300点×5枠の1500点入るという事になるが、制限時間から考えても、それはまず不可能だ。
 時間内にどれだけのペース配分でやるかというのと正解のパズルを引く運も必要になる複雑なゲームだ。
 これは良い勝負だった。
 百合萌も優樹も重蔵からパズルの解き方をある程度習っていた。
 だから、パズルのピースを見ていると何となくどのパズルで使われているピースだか読めるようになっていた。
 二人とも引っかけ問題のようになっていた二つはお互い取り違えて持ってしまったが、それ以外の四つずつは見事正解のパズルと枠の組み合わせを当てていた。
 後は、それぞれのパズルの完成度だった。
 優樹は0点、188点、65点、38点、12点という得点だった。
 一つのパズルを完成近くまで作り、倍の得点を稼ぐという方法ととった。
 対する百合萌は0点、72点、69点、55点、54点という得点だった。
 平均的に一つ一つのパズルの点数を上げるという方法だ。
 結果、優樹は303点、百合萌は250点だ。
 5つの内、3つで優樹より百合萌は得点が高かったが、たった1つのパズルを完成近くまで押し上げた優樹の作戦勝ちだった。
 やはり倍の得点というのはでかかった。
 平均的に上げる方法よりも1つを選んで完成に持っていく方が結果的に高い点数を取れるという事だろう。
「どんまい、どんまい、まだ、1敗だ。次に勝てばイーブンだ」
「まだまだ、いけるよ、百合萌ぉ〜」
「ファイトぉ〜」
 板橋組の応援団が百合萌を応援する。
 対して、台東組の応援は特にない。
 それは百合萌にとってはありがたい事だ。
 重蔵からは逃げ出したが、そこで、新たな仲間という力を百合萌は得ているのだ。

 第二種目
 1000単語暗記

 千種類の単語を暗記してその正解率を競う勝負だ。
 覚える単語の種類は12枚のカードの中から5枚引く。
 12枚のカードは動物、鳥、魚、植物、虫、小説、マンガ、歴史、宇宙、地球、ゲーム、ランダムとなっていて、それぞれ200種類ずつ覚える単語が用意されている。
 当然、統一感の無いランダムが一番難しい。
 この勝負は優樹が769種類、百合萌が824種類正解を出して百合萌に軍配が上がった。
 優樹がランダムを引いてしまった不運と、百合萌は単語を歌にして、覚えたので、比較的多めに覚えられたのだ。
 板橋組のみんなと行ったカラオケで歌った歌の替え歌を作り楽しく、覚える事が出来た。
 身体に負担をかけて覚えた優樹より勝っていたのは当然と言えば当然だった。

 第三種目
 隠し味勝負。

 プレイヤーの前には30種類の料理が用意されている。
 この料理は食べても良いし、匂いを嗅いでも良い。
 この30種類の料理の中にお題になっている七つの隠し味を入れてある料理が一つずつ入っている。
 プレイヤーは同時に一つずつ料理を審査員の前に持っていき、見事隠し味を7つ分、当てれば良いという勝負だ。
 一回に対して持って行ける料理は1品だけ。
 また、食べてしまった料理は例え、お題の隠し味が入っていないと思っていても審査員の前に持って行かなくてはならないというルールがある。
 味覚も大事だが、視覚と嗅覚、時には触覚も使って食材を当てる勝負だ。
 これも百合萌が連取した。

 第四種目
 ダイス・フリースロー

 これはバスケットボールのフリースロー対決だ。
 ただし、やる前にダイス(サイコロ)をふり、出た目の数だけフリースローを連続で入れないと得点にならないという勝負だ。
 例えばダイスで6を出すと、6回連続でフリースローを入れないと得点にならない。
 しかも、例え6回連続で入れても1点にしかならない。
 ダイスを振って出た目の数ゴールに入れて1点、次にまたダイスを振って出た目の数ゴールに入れるというのを繰り返し、先に3点先取した方が勝ちという勝負だ。
 これは粘り勝ちで優樹が取った。

 ここまで、一進一退のシーソーゲームが続いた。
 2対2のイーブンだ。
 勝負は後半戦へともつれ込んだ。

 第五種目
 ジャストタイムダッシュ

 これは10メートル走だ。
 たった10メートルと侮るなかれ。
 プレイヤーは自己申告でタイムを宣言する。
 それをコンマ一秒単位で正確に当てた方が勝ちというサドンデス勝負だ。
 もちろん、ダッシュと認められない走りは承認されず、三回続けたら危険扱いで負けとなる。
 これを制したのも優樹だった。
 これにより百合萌は後がなくなってしまった。

 第六種目
 心眼演奏

 自分の得意の曲を演奏してより高度で難易度の高い曲、より正確に弾けた方が勝ちという勝負。
 ただし、目隠しをした状態で全く鍵盤が見えない状態でやらないといけないため、より演奏に慣れたものでないと難しい。
 優樹はベートーヴェンのピアノソナタに挑戦して大失敗した。
 万能塾ではピアノだけ特化して教えている訳ではない。
 いろんな種目をなるべく高得点取れるように特定の種目に特化させていくという方法をとる。
 そのため、優樹はピアノはそれほど得意では無かった。
 逆に、百合萌は無理をせず、猫踏んじゃったを弾いた。
 指が覚えていたので、猫踏んじゃったは完璧に弾けた。
 そのため、この種目は百合萌が取った。

 またしても同点。
 勝敗は最終第七種目に持ち越されたのだった。

 第七種目
 100冊読書感想文

 この種目は10万冊の中からランダムに選別される双方100冊の感想文を書くという勝負だ。
 もちろん、選ばれた100冊の中に知っている話があれば読まずに書いても良い。
 パソコンで文字入力して1冊最低原稿用紙1枚以上の分量があれば良い。
 もちろん、内容について触れていなければ、読書感想文として認められない場合もある。
 先に決められた100冊文の読書感想文を書けた方が勝ちという勝負だ。
 勝負は接戦だった。
 どちらも負けられない勝負。
 勝てば天国、負ければ地獄という勝負。
 勝負はどっちが勝ってもおかしくなかった。
 先に100冊目を提出したのは優樹の方だったが、誤字脱字があり、それが、内容を把握していないと判断されて、タッチの差で出した百合萌の方が先に100冊目の感想文を出したと判断されたのだ。

 熱い勝負だったが、終わって見れば、キレることも無く勝負に専念出来た。
 実力的に優樹と百合萌は互角と言って良い才能だったので、父親の事とか気にしている暇が無かったのだ。
 だから、勝負に集中出来た。
 優樹に敗因があったと言えば、最初に揺さぶりをかけたが、百合萌が思ったような反応を示さず、それを気にして勝負に集中するのが百合萌より多少遅れがちになり、それが、得点の決定力の差となって現れたのだろう。
 重蔵の言う通りにやった結果、勝負にかける熱意が足りなくて負けてしまったのだ。
 重蔵の万能塾は全国展開している。
 生徒も優樹1人ではないし、優樹は最近入って力をつけただけの生徒でしかない。
 だが、それでも重蔵の生徒に勝てたという事は百合萌の自信になったのだった。

 勝負が終わって。
「ごめんね、卑怯な真似して」
 優樹が話しかけてきた。
 何だかすまなさそうな顔をしている。
「何が?」
「あなたに揺さぶりをかけた事。スポーツマンシップに反する行為だったわ」
「あなたの意思じゃないんでしょ?」
「え……そ、それはまぁ、そうなんだけど……」
「父の考えそうな事だわ。あの人、自分がやっている事が絶対っていう所があるから。あなたにも変な小細工使ってなんとしても勝てとか言ったんでしょ?」
「あなたに勝つ事が万能塾への正式な入会試験って言われたわ。どんな手を使ってでも勝て、あなたはお父さんの事を持ち出されると動揺するからそこをつけって……でも、これで万能塾への入会は失敗。きっと罰があたったのね」
「そんなことないわ。万能塾が絶対な訳じゃない。あんな所入らなくても強くなれる。私は板橋組に来て、強くなった。あなたも台東組で」
「無理ね。私、孤独だもん」
「あそこで見ているのは台東組の人達じゃないの?」
 百合萌がさした方向には台東組の生徒達が見ていた。
「み、みんな」
 優樹は自分から台東組の他の生徒達を遠ざけていたが、台東組の生徒達は優樹を応援したかったのだ。
「ごめんね、来ちゃった」
「頑張ったね」
「また、来年もあるよ」
 台東組の生徒達が優樹を慰める。
 優樹の頬を涙が伝う。
 雨降って地固まる。
 優樹は台東組達と打ち解けた。
 やっぱり、優樹は百合萌と似ている。
 百合萌にも……
「よくやった」
「あとは決勝」
「祝勝会、祝勝会」
 板橋組の祝福が出迎えた。

 板橋組代表亀井 百合萌VS台東組代表皆瀬 優樹、4対3で百合萌が勝利した。
 ダークホース同士の対決はこうして幕を閉じた。


02 優勝候補対決


 続く準決勝第二試合は優勝候補同士の対決となる。
 まずは、優勝候補 文京組代表 相良 柚香。
 続いて、優勝候補筆頭 世田谷組 新庄 絢香が入場する。
 どちらも冷静だ。
ハイスクールマザーズ第二話シーン3 冷静ではあるが、どちらの瞳からも火花がバチバチいっているのは誰の目にも明らかだった。
 正直な所、大多数の者は絢香が勝つと予想している。
 だが、そんな事は柚香は百も承知だった。
 だが、柚香とて、優勝候補と呼ばれているのだ。
 意地がある。
 ストレート負けという醜態だけはなんとしても避けたい所だった。
 それよりも勝ちたいという気持ちの方が強いのではあるが、それでも絢香の圧倒的な強さは認めるしかなかった。

 対して絢香の方には余裕が感じられる。
 戦い慣れているという感じだ。
 心理的には絢香優勢のこの勝負は日を改めて行われた。

 第一種目
 テーマしりとり

 この種目は通常のものとはひと味もふた味も違ったしりとりだ。
 ルールは交互に単語を言い合い、次のプレイヤーは前のプレイヤーの言った言葉の一番最後の文字と同じ文字の言葉を先頭にして次の単語を言い合い、同じ言葉を言うのと最後に【ん】がつくと負け、時間内に単語を言えなくても負けという通常のルールの他に追加ルールがある。
 それは、例えば、【調査】テーマは【花】という様な言い方をしなくてはならない。
 【ちょうさ】だから次にくる言葉は【さ】が頭につく言葉を言わなくてはならないが、【蠍/さそり】では不正解なのだ。
 【蠍】は【花】の種類ではないので、次のプレイヤーは【花】の中から【さ】のつく言葉を探さなくてはならない。
 【桜/さくら】ならば正解という事だ。
 また、相手プレイヤーが答えられなかったら勝ちという訳でもない。
 相手プレイヤーは1分以内に次の言葉を言わなくてはならないが、相手プレイヤーが不正解をした、もしくは1分経過してから更に1分以内に正解の言葉を言わなくてはならない。
 正解を言えなかったら無効となり、やり直しとなる。
 すると、相手プレイヤーは好きな言葉から始められ、相手プレイヤーに有利にゲームが再開されてしまうのだ。
 つまり、自分のターンだけでなく、相手のターンでも言葉を探さなくてはならず、相手が解らず、自分が正解するテーマを探すという超インテリジェンスバトルなのだ。
 そして、これは双方2万4千語という脅威的な数字をたたき出し、結局決着がつかず、ドロー、引き分けとなった。
 この第一種目だけで一日を使ってしまったので、第二種目からは翌日になった。

第二種目 一筆書きイラスト

 この種目はランダムに選出されるお題を距離にして、100メートル以上1000メートル以下という条件で一筆書きでイラストにして審査員が全員、解れば正解というバトルだ。
 これも長期戦となった。
 双方譲らず午前中を使ってしまった。
 これも丸一日かかると予想した運営委員はこれも引き分けとした。

 さすが優勝候補同士の戦いである。
 どちらも譲らず、決着がつかないという戦いだった。

第三種目 地名言い当てバトル

 この種目は世界のマイナーな地名を読み上げ、それを世界地図のどの国のどの場所か当てるという勝負だ。
 これは双方苦戦し、お互い解らない地名が続いた。
 片方が解ったと思ったら、もう片方も正解をするなどして、やはり決着がつかず、二日目も終わってしまった。

 稀に見る激戦となった準決勝第二試合。
 優勝候補筆頭の絢香に対して、同じ優勝候補の意地なのか柚香は一歩も引かなかった。

三日目――
第四種目 真贋鑑定

 この種目は似たような彫刻1000体の中から写真の彫刻を当てるという競技だ。
 写真は全体ではなく、彫刻の一部が写っているだけで、少ない情報の中からいかに正解の彫刻を当てるかというものだ。
 正解が一つしかないので、これは決着がついた。
 スタートダッシュで柚香が3体目で見事正解を引き当てた。

 柚香が一勝した事で絢香にも火がついた。

第五種目 ダビング

 プレイヤーは10分間の映像を見せられる。
 その映像はつぎはぎだらけになっている。
 プレイヤーは様々な映像の中からダビングをし、つぎはぎだらけの映像をどこまで再現出来るかという勝負だ。
 柚香が1分12秒の再現性に対して、絢香は4分8秒の再現性という圧倒的大差で勝利した。

第六種目 宝探し

 プレイヤーはそれぞれ指定された30種類ずつの品物を校舎の中から探し出すという勝負だ。
 柚香が18品目を探している所で絢香は30品目を探し当てた。

 これで、柚香1勝、絢香2勝、引き分け3で、柚香の方が後がなくなった。
 次の種目で勝たなくては柚香の敗退が決まる。

第七種目 三教科テスト

 この種目は国語、数学、英語の三教科のテストの合計点数を競うというものだった。
 一教科あたり、1問1点の500点満点、三教科で1500点満点という勝負だ。
 動揺したのかイージーミスが多発して、絢香1322点に対して柚香は1121点という惨敗を喫した。

 結果、柚香1勝、絢香3勝、引き分け3で絢香が決勝に勝ち残った。
 柚香も健闘したとは言え、やはり絢香は強かった。

「次は負けないわ」
「次は1勝も与えないわ」
 負けた柚香、勝った絢香、双方言いたいことを言ってそのまま踵を返しお互い背を向けた。
 慰め合うより、次の戦いへの言葉をかける事がお互いを思いやるという事なのだろう。
 激闘を戦い抜いた二人に拍手が送られる。

 次は決勝――
 百合萌対絢香だ。
 泣いても笑っても次に勝利した方が東京女子代表となるのだ。


03 東京女子代表戦決勝


 長かった東京女子代表戦も後は決勝を残すのみとなった。
 絢香が柚香との激闘を繰り広げたので彼女の疲れを取るため、一日休みがもうけられた。

 空き教室には三人の影が――
ハイスクールマザーズ第二話シーン4 一人は新宿組代表佐伯 里穂(さえき りほ)。
 二人目は決勝に進出した世田谷組代表 絢香。
 三人目は板橋組の主席、千亜紀だった。
 里穂の父と絢香の母が姉弟、千亜紀の母と絢香の父が兄妹という従姉妹同士の間柄だ。
 里穂は千亜紀のいる板橋組の百合萌に負け、百合萌は決勝で絢香とあたるという関係でもある。

「決勝にはあなたが出るんでしょうね、千亜紀?」
 絢香が千亜紀に尋ねる。
 絢香は千亜紀の実力を認めている。
 千亜紀ならば絢香と互角の戦いが出来ると思っているのだ。
「私は出ない……決勝は百合萌が出る」
 千亜紀は答える。
 自分は出るつもりは無いと。
「お話にならないわね。だったら東京女子代表は世田谷組に決まったようなものね」
 絢香は千亜紀との戦いを望んでいたが、それが敵わないと思うと勝負などどうでもよくなった。
「絢香、百合萌を甘くみると痛い目見るわよ」
 里穂が忠告する。
 百合萌と激戦を繰り広げ結果、負けた里穂は百合萌の潜在能力の高さを評価していた。
「里穂、あなたが負けたから私も負けるとでも?冗談言わないで。あなたも油断しただけでしょ?あんなポッと出の新人なんかに負けて動揺しているのよ」
「違うわ。私は油断はしていない。戦ったから解る。彼女は伸びしろが大きい。恐らく、私と戦った時よりも強くなっているでしょうね」
 絢香の見解を否定する里穂。
「私もそう思う。日々強くなっているわ、彼女は……」
 千亜紀も里穂に同意する。
「はっ、二人揃って節穴なの?準決勝見た?台東組と互角ってレベルよ、彼女は。その程度で私に勝てるとでも?」
「絢香、あなたは強い。だけど、その分、傲慢になっている。それじゃ、あなた、本当に負けるわよ」
「里穂ぉ〜子供の頃から一度も私に勝っていないあなたに言われても説得力が無いのよ」
 絢香は突っぱねる。
「……予選ブロックで百合萌の戦いを見てきたから解る。だから、戦った時も互角に戦えた。そのままだとあなた勝てないどころかボロ負けするわよ。台東組だって強かった。あなたにはそれが解らないの?」
「くどい。私はどこの馬の骨ともわからないやからに負けるつもりはないわ。」
「里穂、もう良いよ、絢香も一度負けて見ると良い。それが絢香のためでもある」
「お話にならないわね。見てなさい。一勝足りとも取らせないで勝ってあげるから」
 絢香はあくまでも強気だった。

 確かに、絢香は東京で負けた事はない。
 唯一、千亜紀と引き分けたくらいだ。
 だからこその絶対の自信があった。
 だが、その絢香を持ってしても全国の壁は厚かった。
 彼女は前回、全国大会で敗退した。
 だが、プライドの高い彼女はそれを認めたくない。
 今度こそ、全国でその実力を示してやる――
 そう意気込んでいた。
 だから、東京女子決定戦ごときで敗退する訳にはいかないのだ。

 だが、千亜紀と里穂はその姿勢では東京女子代表にはなれない――
 そう言いたかった。
 残念ながら、それは絢香には伝わらなかったようだが。
 千亜紀と里穂は百合萌と良い勝負をして欲しかった。
 ただそれだけだったのに。

 日も変わり、いよいよ、百合萌対絢香の東京女子決定戦決勝戦が行われる事になった。

「千亜紀と里穂があなたの事、大変評価しているようだけど、私、負けるつもりないから」
「……私もです。よろしく」
 絢香の威嚇に対して、百合萌は冷静だった。
 対優樹戦では出来なかったメンタルコントロールが出来ている。
 絢香対柚香の戦いが長引いた事も百合萌の成長には良い結果をもたらした。
「蹴散らしてあげるわ……」
「………」
ハイスクールマザーズ第二話シーン5 言葉からもどちらかと言えば、絢香の方が冷静さを欠いている雰囲気だった。
 やはり、千亜紀と里穂に言われた事が少なからず後を引いているのだ。
 メンタル面では百合萌有利という展開だった。
 そして、勝負が開始される。

第一種目
タクティクスビンゴ

 この勝負はビンゴを利用した戦略ゲームだ。
 マップには両端にプレイヤー双方の城があり、その間には様々なルートとその上に1000カ所の四角い枠がある。
 プレイヤーはその1000の枠に1から1000番までの枠を相手に解らないようにランダムに指定する。
 その後、プレイヤーは交互に1から1000番までの番号を言い合い、相手の指定した番号が自分の枠を埋めていく。
 逆に自分の指定した番号が相手の枠を埋めていく事になる。
 ルールとしては交互に言い合った番号で先に、1つのルートの枠が全て自分の城から相手の城に繋がれば勝ちとなる。
 ルートはいくつもあるので、1つのルートに自分の思った番号が出るという事はまずない。
 要はいかに寄り道せずに、自分の城から相手の城までのルートをつなげるかの勝負である。
 相手の選ぶ番号をなるべくルートをばらけさせ、自分はいかに少ないルートで相手の城にたどり着くかを競うゲームである。
 相手の表情などを読んだりしての駆け引きも重要である。
 この勝負は番狂わせが起きた。
 大半の者が絢香有利と予想していたのだが、百合萌が勝ったのだ。

「そ、そんな……」
 絢香は動揺する。
 里穂戦との時の違いは里穂は先に同じ優勝候補の豊島組(としまぐみ)小泉 友那(こいずみ ゆうな)が百合萌に敗北していたのを見ていたので素早く気持ちを切り替えた。
 だから、力をつけてきた百合萌に対して互角の勝負が出来ていた。
 対して、絢香の場合は自らの力に驕っていた彼女は相手の百合萌の事を全く研究して来なかった。
 だから、百合萌に対する警戒が皆無に等しく、彼女に競り負けたのだ。
 それは友那が百合萌に負けた時と同じだった。

つづく、第二種目
紐ほどき対決

 複雑に絡んだ紐を先に100本解いた方が勝ちという勝負だ。
 複雑に絡んだ紐も難易度に差があり、複雑に絡んだ紐とそうで無い紐があり、当然、複雑に絡んでいない紐を選んだ方が有利である。
 動揺していた絢香は比較的複雑な紐を選んでいる。
 そのため、冷静さを保っている百合萌が連取した。
 百合萌は当然、複雑ではない紐を選んでいるので、圧倒的な勝利だった。

 連敗……
 それは絢香にとっては信じられない事だった。
 ショックを隠せない。
 だが、腐っても彼女は優勝候補筆頭である。
 気持ちの切り替えは早かった。

「タイム」
 絢香はタイムを宣言した。
 この戦いでは種目と種目の間の時間であれば、トイレ休憩は認められている。
 絢香はトイレに行くふりをして、里穂の前に来た。
「どうしたの、絢香?」
 首を傾げる里穂。
「……ごめんなさい。私が悪かったわ。里穂、あなたの言う通りだった。同じ組だから千亜紀には頼めない。里穂、お願い。私を叩いて」
「絢香……」
 里穂は理解した。
 ここからが絢香の本当の実力を発揮する時なのだと。
「お願い……」
 頭を下げる絢香に里穂は……
「おやすいご用よ」
 バッチーン!
 絢香の頬を思いっきり叩いた。
 これで、絢香は気持ちを切り替えた。
「ありがとう、里穂。後で何かおごるわ」
「いらないわ。ただ、良い勝負をしてきて」
「了解」
 絢香は決勝の舞台に戻ってきた。
 百合萌は瞬時に理解した。
 これからの絢香は強敵だと。
 正直、さっきまでの絢香は拍子抜けするくらい弱かった。
 が、今の絢香は数段実力がアップしている。
 そのまま楽に勝たせてもらえる様な相手では無くなったと。

第三種目
収納後片付け

 この種目はびっちり整理整頓されている二つの部屋の内、片方ずつを一時間かけて散らかす。
 その上で、相手が散らかした部屋を先に元通りに戻した方が勝ちという勝負だ。
 物を壊してはいけない。
 あくまで部屋の中であるものをバラバラに配置するのだ。
 この勝負は圧倒的な強さで絢香が勝利した。
 百合萌は瞬時に判断する。
 絢香をこれ以上勢いづけさせてはいけないと。

第四種目
 ロボット障害物レース

 この種目はロボットを組み立てて、それをスタートラインにおいて、リモコンで障害物レースをさせるというもので、当然、先にゴールした方が勝ちという勝負だ。
 これは百合萌も奮闘したのだが、難度もキレた状態を利用して挑むものの引き分けに持ち込むのがやっとだった。
 だが、絢香の勢いは止める事が出来た。
 だが、今の絢香には驕りは一切無い。
 もう、油断を誘って勝てるような状態ではないのだ。

第五種目
 サドンデスドミノ

 この種目は双方同時にドミノを作っていくというものだ。
 一度でも失敗した時点でプレイヤーの作業は終了。
 その時点までの数を競うという勝負で当然、積んだドミノの数が多い方が勝ちだ。
 二人とも凄い集中力でその日は決着がつかず、ドロー、引き分けとなった。

その日の競技が終わって――
「訂正するわ、亀井さん。あなたは強い。全力で相手をさせていただくわ」
「……よろしく」
 スッキリとした表情の絢香に対して、微笑するのがやっとの百合萌。
 成績で言えば、百合萌が2勝、絢香が1勝、引き分けが2で百合萌が有利だ。
 だが、心理的に言えば、試合開始前と逆転して、余裕が無くなった百合萌に対して絢香は冷静になってきた。

 このままでは明日、逆転負けしてしまうのは確実だった。
 今日の後半戦で見せた絢香の戦い方を見ているとポテンシャルの高さを認めざるを得なかった。
 それが解った板橋組の応援団も意気消沈気味だった。
 ただ、一人、千亜紀をのぞいて。
「百合萌、ちょっと良いかしら?」
 千亜紀は疲れている百合萌を誘い出した。
 他のメンバーには同席はご遠慮願っている。

 空き教室で二人っきりになる百合萌と千亜紀。
「ごめん、千亜紀、私、疲れているから……」
「勝負しよう、百合萌」
「え?」
 突然の勝負を申し出た千亜紀。
 最初は、何を言っているのか解らなかった。
 だが、千亜紀の目は本気だった。
「勝負よ」
 その言葉に促され、百合萌は千亜紀との簡単な勝負をした。
 一つはトランプ。
 二つ目はチェス。
 三つ目は腕相撲。
 四つ目はおしくらまんじゅうだ。
 疲れているというのもあるが、百合萌は千亜紀に全敗した。
「はぁはぁはぁ……」
 息を切らす百合萌。
 それを見た千亜紀は――
「リラックス出来た?」
 と言った。
「はぁ?何を言っているの?」
「あなたは4回負けた。東京女子決定戦で言えばストレート負けよ。だけど、これは本当の勝負じゃない。だから負けても何もない。負けたけど、あなたはキレなかった。もう、克服したってことじゃない?負けは経験出来たんだから、後は絢香に勝って来なさい」
「千亜紀……」
 百合萌は千亜紀を見た。
 確かに今、負けたのは絢香との激闘の後だからという言い訳が立つから負けても悔しくない。
 一回負けた事で緊張が解けた気もする。
 そう――。
 千亜紀なりに百合萌をサポートしたのだ。
「どうなの、勝てそう?」
 千亜紀は尋ねる。
「勝ってくるわ。ありがとう」
 百合萌は勝利を予告する。
 今日の試合が終わった時点では気持ちの上で百合萌も板橋組も絢香や世田谷組に負けていた。
 このままでは明日の結果を見るまでもなく、逆転負けは必死だ。
 千亜紀は上手く、負けモードになっていた雰囲気を破壊してくれたのだ。

 翌日、百合萌は絢香との決戦に望んだ。
 正直、疲れはかなり残っている。
 だが、気持ち的には全開だ。
 もう迷いはない。

 それを見て絢香は――
「どうやら、気持ちを切り替えて来たみたいね。昨日の終わりのままだったら、勝てたけど、今は解らないわね」
 と言った。
 瞬時に百合萌は千亜紀に喝を入れられてきたんだと理解した。
 そして、勝負が始まった。

第六種目
ページブレイク

 この種目は一冊の本を1ページずつ破いて行く。
 本は競技用でノンブル(ページ数)以外は何も書いていない。
 プレイヤーはお互いノンブルを言い合い、本を閉じたまま1ページ分引き抜く。
 プレイヤーが指定したノンブル以外のノンブルのページを引き抜けばセーフ。
 指定したノンブルを引き当ててしまったはアウトというルールだ。
 300ページの本でお互い交互に1枚ずつページを引き抜いていく。
 最初の内は決着はつかないがページが少なくなって行くと解らなくなってくる。
 引き抜くページをばらけさせる事で相手も解らなくなる。
 また、既に引き抜いてしまったノンブルを言ったらアウトである。
 これは善戦したが、残り12枚となった時点で百合萌がすでに引き抜いたノンブルを言ってしまってこの種目は絢香が取った。

 これで、百合萌、絢香共に2勝2敗2分けで勝負は残る第七種目に持ち越された。

第七種目
銀はがし

 この種目は1000カ所の銀剥がしをするという勝負だ。
 剥がした銀の下には得点が書いてあり、双方それぞれ1000カ所の中から100カ所ずつ剥がし、その合計得点で勝負する。
 結果は215043点対215043点で全くの互角だった。

 この絢香戦もまた、里穂戦の時と同様に延長戦に突入するのだった。
 勝負は先に勝利した方が勝ちというサドンデス形式となる。

第八種目
ぬるぬる反復横跳び

 この競技はローションを塗ってぬるぬる状態の床での反復横跳びの数を競うという勝負だ。
 これも429対429という全くの同点。
 どちらも引かずという接戦だった。

第九種目
大車輪

 この勝負は鉄棒の大車輪の回数を勝負するものだが、双方、疲労がたまっているため、危険と判断され、無効に。
 勝敗は体力系以外の勝負で決められる事に。

 拒否権はお互い一回ずつ認められているが、どちらも使う気配はない。
 このまま決着をつけるつもりだからだ。

第十種目
 1000メートル走

 この勝負も体力面を考えて無効。

第十一種目
 クロスワードパズル

 泣いても笑ってもこの勝負で決まる。
 交互に答えていき、答えられなくなった方が負けという勝負だ。
 これは3つのクロスワードパズルが双方完璧に答えられ、4つ目のパズルでようやく絢香がミス。
 勝利はギリギリで百合萌がもぎ取った。

「やったぁ〜」
「代表だぁ〜」
「東京代表よ〜」
 歓喜する板橋組応援団。
 万年最下位だった板橋組がついに東京女子代表の座を勝ち取ったからだ。

「負けたわ……百合萌さん、おめでとう」
 正直、最初から油断していなかったらというのはある。
 だが、それは絢香が未熟だっただけ。
 その為、2つの敗北を喫し、それが元で絢香は負けてしまった。
 全ては自分が巻いた種。
 絢香は素直に負けを認め、制服を脱いで下着姿になった。
「ありがとう……でも……」
 百合萌にとってもスッキリとした勝利ではない。
 彼女は運良く勝ち残れたに過ぎないからだ。
 だが、運も実力の内。
 全ての状況が彼女に勝利を運んできたのだ。
 それは素直に喜ぶべきだ。
 絢香も――
「言わないで、最初の2敗は私のせい。だから後悔はないわ」
 と言った。

 稀に見る激戦が続いた東京女子代表戦。
 負けた各組の代表達も全国大会に行ってもおかしくない実力の持ち主達だ。

 いろいろあったが、百合萌は東京女子代表となったのだった。

続く。




登場キャラクター説明

001 亀井 百合萌(かめい ゆりも)
亀井百合萌
 この物語の主人公。
 東京女子分校東久留米組から東京女子板橋組に転入してきた少女。
 興味無いように装っているが、東京女子代表になることに執念を燃やしている。
 追い詰められるとキレてしまう癖がある。
 主席にこそなれなかったが板橋組代表として東京女子代表戦に出場する。
 今回、ベスト4に選出される。







002 藤堂 可憐(とうどう かれん)
藤堂可憐
 板橋組第二席の少女。
 クールな性格。
 東京女子代表戦では、倒れた百合萌の代わりに戦い、勝つ。
 板橋組のリーダー的立場。











003 河原 千亜紀(かわはら ちあき)
河原千亜紀
 板橋組第一席(主席)の少女。
 その力は世田谷組の絢香が力を認める程優れている。
 代表戦には興味がなく、板橋組は第五席に代表を譲っている。














004 酒井 清美(さかい きよみ)
酒井清美
 板橋組第三席の少女。
 ボーイッシュ。
 百合萌(ゆりも)との勝負には負けたが、圧倒的なポテンシャルを示す。
 第四席の尚美(なおみ)と仲が良い。













 
005 生方 尚美(うぶかた なおみ)
生方尚美
 板橋組第四席の少女。
 お嬢様風。
 百合萌(ゆりも)との勝負には負けたが、まともに戦っていたら、勝負は解らなかった程の実力者。
 第三席の清美(きよみ)と仲が良い。











006 相良 柚香(さがら ゆずか)
相良柚香
 文京組代表の少女。
 優勝候補の一角。
 見事、ベスト4まで勝ち上がる。
 準決勝で絢香とぶつかる。











007 佐伯 里穂(さえき りほ)
佐伯里穂
 新宿組代表の少女。
 優勝候補の一角。
 同じ優勝候補の友那(ゆうな)を破るも、百合萌に敗れる。
 勝負は延長戦までもつれ込んだ。











008 皆瀬 優樹(みなせ ゆうき)
皆瀬優樹
 台東組代表の少女。
 百合萌同様、今大会のダークホース。
 優勝候補の一恵(かずえ)を破り、ベスト4進出を決める。
 準決勝で百合萌とぶつかる。











009 新庄 絢香(しんじょう あやか)
新庄絢香
 世田谷組代表の少女。
 優勝最有力候補で、かつて全国で最強とされた東京女子復活に彼女の力が大きく期待されている。
 全く、危なげ無く勝ち進み、ベスト4進出を果たしている。
 千亜紀の母と彼女の父が兄妹で従姉妹同士、里穂の父と彼女の母が姉弟で従姉妹同士という間柄でもある。











010 亀井 重蔵(かめい しげぞう)
亀井重蔵
 百合萌の父親。
 彼女のトラウマの原因を作った万能塾(ばんのうじゅく)の塾長でもある。
 全国に弟子を多く抱える。