第一話 蛇遣曇天降臨


序章 私は蛇遣曇天です。


「ぜぇはぁ……」
 真夜中の二時、僕は息も絶え絶えにあるものを運んでいる。
 全ては僕の野望のため……
「しっかりしろ流星(りゅうせい)、それでも男か」
「う、うん、ねーちゃん、僕、頑張る」
「ねーちゃんじゃない、オレの事はにーちゃんと呼べといつも言ってるだろう」
 にーちゃん(兄)――僕にとってはねーちゃん(姉)なんだけど――彼女はいわゆる女の子が好きな男性の心を持った女の子なんだよね。
 にーちゃんには野望があって、それが僕の野望とぴったり一致したからこんな面倒くさい事をしているんだよね。
 野望の事は後でって事にして、面倒くさい事ってのは今、立像を運んで移動している事なんだよね。
 この星、乳球(ちちきゅう)では、曇天信仰(どんてんしんこう)がある。
 世の中の自然の猛威を司る十二曇天を崇めてるんだ。

 十二曇天にはそれぞれ名前があって――
 白羊曇天 アミイ
 金牛曇天 シエル
 双児曇天 イアン&イオン
 巨蟹曇天 エミル
 獅子曇天 ハンナ
 処女曇天 サエラ
 天秤曇天 レイラ
 天蝎曇天 ルミネ
 人馬曇天 セシル
 磨羯曇天 ヘレン
 宝瓶曇天 リリア
 双魚曇天 イリア&イリス
 ――って感じのキュートな名前がつけられている。
 そう、みんな女の子なんだ。
 僕はその曇天の立像を移動しているんだけど、実はこの十二曇天の中にはいない、ある曇天の立像を動かしているんだ。
 十三番目にして十二曇天の選考からもれた曇天様、蛇遣曇天リノン様の立像をある位置にまで動かしているところなんだよね。
 はぁ〜重い。
 移動先は金牛曇天シエル様の隣だ。
 蛇遣曇天リノン様は胸がとっても寂しいので、最強のおっぱいをお持ちのシエル様の隣に居ると拒絶反応を起こすらしいんだ。
 ビックリしてお姿を現したリノン様に願いを叶えてもらおうという寸法さ。
 我ながら頭良いでしょ。
「よっこいしょっ、こんなものかな?」
 僕はリノン様をシエル様の目の前に置いた。
 こうして見ると全然違うな――おっぱい。
「でかした我が弟よ」
「ねー…いや、にーちゃんの為なら僕は何でもするよ」
 あぁ、早く願いを叶えてもらいたい。
 しばらく待つとやがて、リノン様の立像がカタカタと震えて来て……
「ちょっと、ちょっと、何の嫌がらせよ」
 立像が割れて中から女の子がピョコンと飛びだして来た。
 出たぁ〜リノン様、ご降臨。
「リノン様、リノン様、僕の願いを聞いて下さい」
「待て、流星、オレが先だ」
「良いじゃないか別に、にーちゃん、どうせ願いは一緒なんだし」
「よかぁねぇよ。お前の願いはついでだ。オレの願いが本命なんだよ」
「んじゃ、良いよ、にーちゃんに譲るよ、お先にどうぞ」
 僕は快くにーちゃんに譲った。
「じゃあ、早速叶えてもらおうか。オレの願いはだなぁ――」
 にーちゃんが願いを言おうとしたその時、リノン様が口を開く。
「何が願いよ。こんな嫌がらせをした奴の言うことなんか聞くわけないでしょうが」
「ん?どういう事だ?、弟よ」
 僕もよくわからないなぁ。
「おかしいねぇ。確かにリノン様を呼び出せるって言われていて本当に呼び出せたんだけど――そう言えば、やり方は解っているのに何故か誰もやりたがらなかったんだよね、この方法――。何でだろ?」
「ボケ、やり方が間違っているからだろうが。どうすんだ、オレの野望はこのペチャパイにしか叶えられんと言っていたから付き合ったんだぞ」
「ままま、待ってよ、にーちゃん。僕が得意の交渉術で説得するからさ」
「お前が交渉術、得意だったってのは初耳なんだが?」
「大丈夫、僕を信じて」
「今まで、お前を信じて大丈夫だった試しがあったか?」
「今度こそ、大丈夫だから――。リノン様、リノン様そういう訳ですので何とか不幸な姉弟をお救い下さい」
 僕は十八番の泣き落とし作戦をやった。
 これで女の子はいちころさ。
「では、与えましょう。蛇遣曇天リノンの名にかけて……」
「ホントですか」
「与えるのは天罰です」
「ひぎゃああああああっ」
 僕は雷に撃たれた。
 死んじゃうじゃないか。
「ひ、ひどい、リノン様……哀れな美少年にこんな仕打ちを……」
「何が美少年よ。元凶はあなたのようだから罰を与えただけです。生きているだけでも感謝なさい」
「せ、せめて願い事だけでも聞いて下さい。お願いします」
「そ、そうね、罰は与えたし、元の位置に戻すのであれば、聞いてあげます。ただし、聞いてあげるだけです。無理難題だったら即刻、却下しますからね」
「大丈夫です。みんな幸せになる心温まる願い事ですから」
「そうなの?」
「そうです。では、にーちゃんどうぞ」
 僕はにーちゃんにバトンをタッチした。
「……いまいち、腑に落ちねぇが、まぁいいか。実はなオレはこう見えても女なんだ」
「こう見なくても女の子に見えるけど?」
「オレは男だ」
「どっちなのよ?」
 リノン様が首を傾げる。
 にーちゃん、頑張れ。
「心は男だが、身体は残念ながら女なんだ。オレは女が抱きたいんだ。男なんて気持ち悪くて抱けるかぁってな」
 にーちゃんは叫んだ。
 リノン様がちょっと後退る。
「女の子が好きなの?」
「悪いか?ちなみにお前もちょっと好みだ。っていうか、十二曇天も全部オレのものにしてハーレムにしたいと思っている」
「な、なんて罰当たりな」
「待て、まだ、問題は本題に入っていない。女は好きだが、オレではどうしても抱くことが出来ない最高の女がいた……オレだ」
「は?……言っている意味がよく解らないんだけど?」
 リノン様は困惑顔だ。
 にーちゃん、説明よろしく。
「だから、毎朝顔を洗うと鏡の前に現れるオレの事だと言っているんだ。オレを抱きたくてもオレ自身だからオレは抱けない……こんな不幸な事があるか?」
「ふ、不幸って?」
「オレはオレを抱きたい。だが、オレはオレを抱けないと言っているんだ」
「大丈夫?あなた……」
「オレは正気だ。オレは男として、オレを抱きたい。だが、オレが男に抱かれるのは気持ち悪い。そこで、お前の脱皮の力を使ってオレを脱皮させて弟の中にオレを入れて、弟をオレの中に入れて欲しいのだ。つまり入れ替えて欲しいのだ」
「え?」
「オレが他の男に抱かれるのは許せんが、弟ならば、何とかギリギリセーフと言った感じだから頼んでいる。でもやっぱり許せんから後で弟を三百万発ほどぶん殴ろうと思っているんだがな」
 え?そうなのにーちゃん?僕、聞いてないよ。
「に、にーちゃん、僕だってにーちゃんを抱きたいって気持ちを我慢して、しょうがないからにーちゃんに抱かれるって事を了承したんだよ?」
「関係ない。オレはお前が羨ましい。オレの身体といい仲になれるのだからな。出来ればいつまでも殴っていたいくらいだ」
「そんなむちゃくちゃなぁ〜」
「どっちもどっちだと思うけど……」
 僕の野望はにーちゃんをさわりまくりたいことだ。
 にーちゃんの野望はにーちゃんを抱きたい。
 この二つの野望が合わさった時、僕らは共に行動したんだ。
 出来れば、どちらも良い思いをしてと思っているんだけど。
 それなのに、殴るなんてヒドイなぁ。
「どの辺が、みんなが幸せになれる心温まる話なのよ?聞いてて呆れたわよ」
「リノン様、僕らを見捨てるの?」
「見捨てるとかそういう問題じゃないわよ。そもそも私、脱皮の能力なんて持ってないわよ。私は蛇遣いであって、蛇じゃないの。脱皮なんて出来ないわよ」
「何だと?それじゃ、肌が荒れるのを覚悟して、わざわざオレがこんな夜更けに出向いた意味がないじゃないか」
「私だってこんなとんちんかんな願い事をされるためにシエルの胸くそ悪いおっぱいをガン見させられるとは思っていなかったわよ」
「リノン様を刺激するのはおっぱいを見せるのが一番だからね」
「私はおしりのラインに自信を持っているの。女の子の魅力はおっぱいだけじゃないのよ。おわかり?坊や」
「僕はおっぱいでもおしりでもオッケーです。でも、にーちゃんのが一番良いので、にーちゃんを下さい」
「お前、そんな事、考えていたのか?これから千メートル以上オレに近づくな」
「そんな、にーちゃん、それじゃ一緒に暮らせないよ」
「オレはお前に抱かれたら犬にかまれたとでも思って我慢するように思っていたのに」
「それ、褒めてるの?」
「にーちゃんに、捨てられたら僕は他の女の子に走るしかなくなっちゃうじゃないか」
「いや、それが、普通だから……」
「にーちゃん、僕を捨てないで」
 僕はにーちゃんに縋った。
 にーちゃんのぬくもりはあったかくて、気持ち良かった。
 一瞬だったけど……
「正拳突き」
「痛い、にーちゃん」
「オレにむやみに触れるな。気持ち悪い」
「そんな、弟だよ、僕。昔、一緒にお風呂にも入った仲じゃないか」
「それが我慢ならんのだ。オレの裸を舐めるように見やがって」
「そんな――当時はそんな事、思わなかったよ」
「当時って事は今は違うんだな?」
「そ、それは否定しないけど、それはにーちゃんが魅力的だからで……」
「むむむ、複雑な気持ちだ。女のオレを褒められるのは嬉しいが、男に魅力的と言われてもいまいち嬉しくない自分もいる……」
「あの、そろそろ帰りたいんだけど?姉弟のじゃれあいは後でやってもらって」
「リノン様、お願いだから、お願いを聞いて」
「お願いをお願いするって、二度も願いを叶えさせる気?」
「そうじゃないよ。僕はにーちゃんが欲しいだけ」
「お前、その口黙れ。こうしてやる」
 にーちゃんの手が僕の口を広げる。
 僕はたまらず……
「うわ、舐めやがった。気持ち悪いだろうが、こらっ」
「いたっ、ゴメンにーちゃん。にーちゃんの手が僕の口に入ったかと思うとついキッスを……」
「べろんべろん舐めまわしておいて何がキスだこのやろう」
「……じゃあ、私、帰るんで」
「願いを叶えられないんじゃ仕方ないな」
「仕方なくないよ、待ってよリノン様ぁ。お願いだから……」
「放してよ、ヘンタイ」
「ヘンタイじゃないよ。僕は純粋ににーちゃんの事が大好きなんだ。女の子も普通に好きだけど」
「解ったから、放してよ」
「リノン様も結構、好みですよ。だから僕の願いを叶えて下さい」
 僕はリノン様に必死にお願いした。
「あ、何処触ってるのよ、この変態っ」
「あ、いや、リノン様さっき、お尻の方に自信を持っているみたいな事言ってたからどんな感じかなって」
「ふざけるな、天罰、ほいっ」
 ピッシャー!!
「ピギャ!」
「ピギャ!」
 僕はまた、天罰の雷を貰ってしまった。
 リノン様にくっついていたからリノン様も一緒に貰っておそろいだね。
 死なない程度に手加減してくれる辺り、リノン様の優しさを感じるな。
「おい、バカ共、じゃれ合ってないで、オレの願いをどうするつもりだ」
 離れていて無事だった、ね……にーちゃんがしれっと言った。
「もう、いや……お願いだから、私を像に戻してぇ〜!」
 リノン様は何故か泣き叫んだ。
 出てきたばかりで情緒不安定なのかな?
 まぁ、いいや。
 戻し方も解らないし、リノン様には僕んちに一緒に住んでもらおうっと。
「おい、流星、この洗濯板女じゃ埒があかねぇ。他の十二曇天も目覚めさせてオレの願いを叶えさせろ」
 にーちゃんのお達しだ。
 だけど、残念。
 現在、調査中で、他の十二曇天様の目覚めさせ方はまだ、わからないんだよね。
 でも、全員起きてもらって、うちが美少女だらけっていうのも悪くないよね。
「にーちゃんの頼みなら仕方ないな。後で調べておくよ」
「お前の瞳がそれは嘘だと言っているぞ流星よ。お前の眼光は腐っている。濁っている。よどんでいる」
「ううう、うそじゃないよよよ。ほほほ、ほんとだよってば……」
「お前はすぐ顔や言葉に出るからな、まるわかりだ流星よ」
「び、美少女に囲まれてうっはうはなんてこれっぽっちも思ってないよ」
「なるほど、そう思っているのか、愚弟よ」
「痛い、痛い、ぐりぐりはやめて……でもおっぱいが背中に当たってちょっと気持ち良いかも」
 僕はにーちゃんのヌクモリを背中に感じで感動する。
「せいっ」
「ぐはぁっ……痛い、にーちゃん」
「貴様には鉄拳制裁が良いようだな。それとも回し蹴りの乱舞がお好みか?」
「はい、ボディープレスが良いです」
「するか、ボケ」
 僕はにーちゃんとスキンシップした。
「もう、いや、この変態姉弟」
 何故か、涙目で訴えるリノン様。
「愚弟の相手をしていてもしかたない。リノン、貴様にはまだ聞きたいことがある。しばらくオレの家で暮らせ、良いな」
「僕の家でもあるけどね」
「嫌よ。私を像に戻してってば」
「戻す方法がわかれば役立たずな貴様など、とっくに戻しているわ。そんな事もわからんのか?」
「何を偉そうにしているのよ。私、一応、曇天よ」
「十二曇天からあぶれた落ちこぼれが偉そうに言うな」
「うっ、痛いところを……」
「リノン様。うちは良いところですよ。広いし。何より、サービス精神旺盛な僕が居ますしね」
「私に変な事したら天罰落とすからね」
「あの気持ち良い電気ショックですか?」
「気持ちいいって普通の人はショックで動けなくなるくらい電圧高いんだけど?」
「ふんっ、流星のバカは毎回、オレにお仕置きされているからな。ちょっとやそっとの電気ごときではケロッとしているわ」
「あなたは虐待しているんじゃないの?」
「これは弟への愛だ」
「さっき愚弟とか言っていたじゃない」
「にーちゃん、僕を愛してくれるんだね」
「近寄るなと言っているのがわからんのかこのウジ虫め」
「ウジ虫って……」
 にーちゃんはツンデレさんというやつなんだね。
 うん。
 そうだ。
 そうに違いない。
 僕はにーちゃんの愛を再認識した。
 少し何かあったけど、リノン様は快く僕の家に来てくれる事になった。
「私は納得してないわよ」
 リノン様もツンデレさんだね。


第一章 小田桐家の日常


「さぁ、さぁ、入って入って」
 僕はリノン様を家に連れて行った。
 にーちゃんはふてくされてさっさと部屋に戻ってしまった。
 曇天様を家に招待するのなんて生まれて初めてだから、ドキドキするな。
 リノン様には色々聞きたい事があるけど、スリーサイズなんて聞いたら気を悪くするかな?
 リノン様はお胸にコンプレックスあるみたいだしね。
「私は長居する気なんかないんだからね」
「解っていますよ、リノン様」
「何が解っているのよ?」
「リノン様がツンデレさんで実はいつまでも僕と末永く幸せに暮らしたいって事をです」
「ふざけるんじゃないわよ。何処をどう曲解したらそんなとんちんかんな答えが出てくるのよ」
「自慢じゃないですけど、僕の脳みそはほぼ僕の都合の良いように解釈出来るように出来ているんですよ」
「確かに、自慢にはならないわね、それは。この際だから取り替えてもらいないさい。うん、それが良いわ」
「そんな勿体ない。僕はこの幸せ脳みそを大切に思っているんですよ」
「燃えないゴミに出した方が良いんじゃない?」
「何を言っているんですか?」
「私が聞きたいわよ、それは」
「僕の脳みそは僕を幸せにしてくれる大事なアイテムなんです。僕の脳みそが無くなったら僕は生きていけない」
「ふぅ……あなたとその話題をいつまでも続けるつもりはないわ。話が全然進まないしね、それよりもっと建設的な話をしましょう。あなた方は私を元に戻す方法を知らない?それで良いのね?」
 リノン様は話題をそらして尋ねてきた。
 せっかく僕の脳みそのすばらしさを二時間くらいかけて語ろうと思ったのに。

 まぁ、いいや。
 今は、お互いを知る事が先だからね。
 僕という人間を知って欲しいし、リノン様の事(特にスリーサイズ)を知りたいしね。
「リノン様、リノン様、僕の事を話したらリノン様の事も教えていただけますか?」
「私はあなたの事が知りたいんじゃなくて私を元に戻す方法を知っているか知りたいだけなんだけど」
 解ってます、解ってますとも。
 リノン様、それは照れ隠しですね。
「……話せば長くなりますが……」
「ちょっと、聞いてる?私は――」
 解ってます、解ってますよ。
 それは乙女心ですよね。
 僕に興味があると知られたくないので、あくまでも自分は興味ないけど、教えてくれるなら聞いてあげるという態度を取りたいと――そういうわけですね。
「改めまして、僕の名前は小田桐 流星(おだぎり りゅうせい)、小田桐家の長男です。でもにーちゃん、本当はねーちゃんの前では僕は次男という事にして下さいね。ねーちゃん、気にするから」
「いや、そんな話はどうでも良いから」
「解ってますよ。僕の愛するねーちゃん――さっきにーちゃんと呼んでいた人の事ですけど――ねーちゃんの名前は小田桐 侑輝(おだぎり ゆうき)、見ての通りとびっきりの美少女です」
「聞いてないってば」
「悲しいかな、僕とねーちゃんは血の繋がった実の姉弟なんです」
「まぁ、そうだろうね。同じ変態の匂いがするからね」
「だけど、そんな事には僕はめげない――めげてなるものか。愛があれば、二人の仲は必ずしや……」
「超えちゃダメだからね、その一線」
「解ってますよ。世間的には許されない事。だけど、困難があれば愛は燃え上がる――そうでしょ、リノン様」
「その話はいいから、さっきので大体解ったから」
「ふふっ、ジェラシーですか?」
「何で、嫉妬しなきゃならないのよ、あんたたち相手に」
「人はみんなそう言うんですよ」
「私、人じゃなくて曇天だから」
「ヤキモチ……」
「ハイ、天罰、ホイッ」
 ピシャー!!
「パギャッ」
 僕はリノン様の愛の雷をお受けした。
「話、進まないじゃないの」
「わ、わかりました。話題を変えます。では、リノン様の腰回りを――」
「ハイ、天罰、ホイッ」
 ピシャー!!
「へ、部屋の中でも雷って起こせるんですか?」
「自然現象じゃなくて、私の天罰の雷だからね、自由に出せるわよ」
「さ、さすがに何度も味わうと――」
「そうね、どんどん、寿命は削られていくんじゃない?」
「そんなさらっと……」
 リノン様の雷は気持ちいいけど、さっきちょっと、大きな川みたいなのが見えたので、ちょっと不味いかなと思ってしまった。
 どうやら、僕の愛の語らいはお気に召さないようなので、リノン様の言う本題の話をすることにした。
 まず、一緒に暮らすに当たって、家族構成や友達などの情報の一部を伝えた。
 後、部屋を案内して回った。
 うちは成金のとーちゃんとギャンブラーのかーちゃんが残してくれた広い家があった。
 残してくれたと言っても二人とも死んだ訳じゃなくて、とーちゃんは女の人のお尻を追って世界中を旅して回っている。
 かーちゃんは世界中のカジノで稼ぎ回っているみたいだ。
 二人とも自分の趣味の世界にどっぷりとはまっていて、僕らはすっかりほったらかし状態さ。
 でも悲しくはないさ。
 二人の血を引いているのか、僕もねーちゃんも自分の世界ってのは大切にしている。
 誰にも譲れないっていうものを持っている。
 だから、家族のそういう世界っていうのには、慣用になれるんだよね、不思議と。
 後、下に二人、妹がいるんだけど、さすがに美少女好きの僕でもロリコンじゃないからね。
 おっぱいもろくに出ていない妹達には興味なんてないのさ。
 あ、でも、リノン様のおっぱいは別ですよ。
 リノン様のおっぱいは微乳で美乳ですからね。
 ちゃんと興味の対象に入っていますよ。
 腰のラインとかも魅力的ですしね。
 それから――
「ちょっと、聞いてるの?」
 あ、いけない、いけない。
 自分の世界に入っていた。
 しっかりと部屋を案内しないとね。
「ごめんなさい、リノン様。案内の続きですね。後はねーちゃんの部屋と二人の妹の部屋が残っているんですけど、三人とも僕が入ると怒るんで僕は案内出来ないんですよ。で、一番最後に残ったのが――お待たせしました、僕の部屋です」
「待ってないから、それ――もう良いわ、大体、解ったから」
 そんな――
「ま、待って下さい。僕の部屋って言ったらメインじゃないですか。それを外してこれまでの部屋の案内に何の意味が……」
「あるじゃない、私が寝泊まりする部屋を案内したんでしょ?」
「いや、それもありますけど、僕の部屋に女の子を招待するっているメインイベントがあるじゃないですか」
「メインというより、いらないイベントじゃない、それ?」
「い、いりますって。僕の部屋の素晴らしいコレクションで、リノン様のハートをゲットするという大事なイベントが」
「だから、いらないんじゃないの」
「す、すると既に、リノン様は僕にくびったけだという……」
「んなわけあるかぁ、私はあなたの部屋に興味が無いって言っているのよ」
「す、素敵な部屋なんです。是非、是非、見て下さい。見たら惚れ直すんで」
「怪しい小道具があるとしか思えないから」
「そんなことありませんから。綺麗に整頓されていて美しい部屋なんですから」
「……解ったわよ。一応、お世話になるんだし、お情けで行ってあげるわよ」
「ありがとうございます。絶対気に入りますから」
 僕は行きたくて行きたくて仕方なさそうにしていたリノン様を部屋にご招待した。
「……絶対に気に入るって言って無かったっけ?」
「はい、凄いでしょ」
「確かに凄いかもね。女の子をこんな部屋に招待する気持ちになれるあなたのおかしな神経が」
「見て下さい。部屋中、女の子でいっぱいです」
「部屋中女の子の隠し撮り写真でいっぱいね」
「僕の集大成です」
「何が集大成よ。自分の姉の抱き枕まで用意して――こんな部屋に女の子が来たら一発でひくわよ」
「抱き枕だけじゃありません。見て下さい、このおっぱいマウスパットを!腕をこうして――」
「説明せんでいい!引っ込め変態」
「この程度で驚かれては困ります。これなんか透けて下着姿に、あ、こっちなんか本人が使っている香水と同じものを……」
「こんなの市販で売っている訳ないよね?どうしたのこれ?」
「はい、僕の手作りです、全部」
「はい、解った、まずは警察に行きましょう」
「な、何でですか?警察が来たら、全部持って行かれてしまいます」
「自覚はあるようね、この性犯罪者予備軍が」
「ぼ、僕は美少女が大好きなだけなんだぁ」
「とりあえず、天罰、ホイッ」
 ピシャー!
 あぁ……ぼ、ぼぼ、僕のコレクションがぁ……
「な、何てことするんですか、僕の宝物がぁ――。もう二度と部屋には入れませんよ」
「二度と来たくないわよ、こんな部屋」
 解っている――解っているんだ。
 彼女は嫉妬しているだけなんだ。
 僕が他の女の子にかまうもんだから。
 そうだ、そうに違いない。
 もう、ヤキモチ焼き屋さん。
 ちょっと、僕は心にポッカリ穴があいた気持ちになっちゃったぞ。
「変態野郎がぁ」
「ほぎゃぁっ」
 突然、怒声が飛んできて僕は部屋の中に吹っ飛ばされた。
 ねーちゃ……にーちゃんだった。
「下でバタバタとうるせぇから来てみれば、流星、てめぇ、こんな変態趣味を隠してやがったのか」
「あなたも五十歩百歩だと思うけどね」
 横でリノン様がにーちゃんにつっこんでいたけど、僕にはそれを気にしている余裕は無かった。
 目の前には何故か怒りの表情を浮かべ、怒髪天状態のにーちゃんが……
「オレの抱き枕なんぞ勝手に作りやがって……」
「ご、ごめんよ、にーちゃん。僕に悪気は無かったんだ」
「悪気以外のなんだというのかしらね」
「そこへなおれ、流星。ぶち殺してやる」
 僕は大ピンチを迎えた。
 どうしよう、このままじゃにーちゃんに殺されてしまう。
「こここ、これはにーちゃんにプレゼントしようと思ってたんだよ。ホントだよ」
「何が、プレゼントだ……ぷ、プレゼントだ……これは罰としてオレが全部没収する。良いな」
「そ、それじゃ、僕は」
「プレゼントなんだろう?だったら貰ってやるよ」
 う、しまった。
 これでは、僕のコレクションがにーちゃんに持って行かれてしまう。
「にーちゃんがいらないっていうなら仕方ないから、僕が預かっておくよ」
「いや、オレが没収する」
「大丈夫、僕が何とかするからさ」
「黙れ、これはオレが始末する」
「いやいや、僕がつくったんだから僕がしなくちゃ」
「オレへのプレゼントだからオレが処分する」
「そ、そんな事言って、にーちゃんが貰っちゃうつもりだろ」
「プレゼントなんだから良いだろう」
「よよよ、良くないよ、プレゼントだけどプレゼントじゃないんだから」
「プレゼントだけど、そうじゃねぇってどういう意味だよ」
「そそそそれはその……失敗作だからだよ」
「なんだと、てめぇこれを失敗だとぬかすのか」
「ちちち違うよ」
 僕とにーちゃんは僕の宝物を取り合った。
「要するに、二人とも、それが欲しいのね?」
「な、何バカな事言ってんだよ、リノン」
「そそそ、そうだよ、リノン様、僕は仕方なくだねぇ」
「解りやすっ、欲けりゃ欲しいと言えば良いじゃない」
「べ、別に欲しくなんか……ねぇよ」
「ぼ、僕だっていらないんだけど、仕方ないから」
「いや、これは年長者として、オレがだなぁ」
「いやいや、弟としてはにーちゃんの手を煩わすのは」
「めんどくさい姉弟ね。いらないなら燃やしてあげるわ。ホイッ天罰」
 ピシャー!!
 あぁ、マイスイートメモリーがぁ……
「お礼は良いわよ。これがあると話が全然進まないから、何よ、二人とも、その恨みがましい目は」
 リノン様はそれだけ言うと僕の部屋を出て行った。
 後には途方に暮れた僕とにーちゃんが取り残された。
 こうして、小田桐家の夜は更けていった。

 追伸――
 さっき飛ばしてしまったけど、僕とにーちゃんの二人の妹の話を付け加えると一人は中学生の眞郷(まさと)と小学生の鮎夢(あゆむ)がいる。
 侑輝、眞郷、鮎夢……そう、我が家の女性陣はみんな男性名と間違われるような名前でもある。
 これはとーちゃんが自分の娘に変な虫がつかないようにわざと男と間違えるような名前をつけて、遠ざける意味を込めたみたいだ。
 とーちゃんも女好きだけど、自分の娘が他の男に取られるのが嫌なみたいだからね。
 その気持ち解るよ。
 僕もにーちゃんを他の男に取られたくないからね。
 こんな一家だけど、僕は幸せだな。
 ねーちゃんと一つ屋根の下に暮らせて。
 妹達もねーちゃんみたいに育ってくれたら嬉しいんだけどね。


第二章 曇天


 僕は大体、家の事を話したので、今度はリノン様に曇天様達の事を教えてもらう事にした。
 ギブアンドテイクじゃないけど、僕らの事を教えたんだから、今度はリノン様の事を教えて貰わないとわかり合えないからね。
 僕が知っているのはリノン様が最強おっぱいの金牛曇天シエル様に対して強いコンプレックスを持っているという事だけ。
 他は、殆ど何も知らないと言っても良い状態だからね。
 これには、にーちゃんも参加した。
 リノン様の力が役に立たないと解った今、にーちゃんの興味は他の曇天様達の力を知ることだからね。
 リノン様はそのために、僕らの家に招待されたようなものだしね。
 ここで、リノン様に語ってもらっても良いんだけど、十二曇天から漏れたリノン様は、シエル様以外にも少なからず、劣等感を持っているみたいで、しどろもどろで話すから、とても聞けたものじゃないので僕なりに解釈した形で説明しようと思うけど、良いよね?

 十二曇天――と言っても双児曇天はイアン様とイオン様が、双魚曇天はイリア様とイリス様がいるから、数で言えば、十四曇天いるんだけどね。
 一年間を十二の月で割ってそれぞれの月での曇天を司る存在として、十二曇天様達はいるんだよね。
 一年間を十三の月で割るっていう見方もあって、それには蛇遣曇天のリノン様も入るんだけど、有名なのは十二で割った方なので、それで、リノン様がもれちゃったんだよね。
 元々十三曇天だったのに一人だけあぶれてしまって、それで、リノン様は他の十二曇天様達にコンプレックスを持っているみたいだね。
 十三曇天の中で一番おっぱいが小ぶりだったリノン様はそれが原因で曇天の座を降ろされたと思っていて、一番立派なおっぱいをしていた金牛曇天のシエル様に強い拒絶反応をしめしていたんだ。
 それが、人間の間に間違って伝わって、リノン様の召喚方法として言い伝えられたみたいだ。
 それを僕が知って、にーちゃんと一緒にリノン様を呼び出す儀式としてシエル様のおっぱいにリノン様のおっぱいを近づけたという訳だね。
 結果、呼び出す事には成功したけど、それは本来の召喚方法じゃないから、元の状態に戻す方法が解らない。
 それが、今の状態だ。
 話から察するとシエル様はリノン様の事を好意を持って接しているけど、リノン様にとってはシエル様は天敵だと思っているのがうかがわえた。
 おっぱいへの劣等感というのは友情も壊すのかと思ってしまった。
 曇天様の世界も女性というのはいろいろあるんだなと思った。
 僕も、確かに、無いよりはあった方が良いと思うからね、おっぱいは。
 でも、安心して、リノン様。 
 僕は大きいのも小さいのもオッケーです。
 小さいですが、しっかりちょびっとお山はあるじゃないですか。
 僕は温かい目でリノン様の胸元を見守る事にした。
 何故か、リノン様は「どこ、見てんのよ、変態」と照れ隠しに天罰をしてきたけど、解ってます、解ってますとも。
 女性の魅力的な部分はおっぱいだけではないということも、お尻だけでないと言うことも解っています。
 ちなみに僕はうなじにくびれもグッと来ます。
脇の下も良いなぁ……。
 足首も手の小ささも鎖骨も良いなぁ。
 長い髪も短い髪も良いし……
 あぁ、これを言っていたらきりがなくなるなぁ。
 話を戻して、金牛曇天シエル様以外にもリノン様が強いコンプレックスを持っている曇天様はいて、それが、処女曇天サエラ様らしい。
 サエラ様は大変女性らしい曇天様で、女性としての格の違いを見せつけられるみたいで、シエル様と同じ様に、サエラ様の前にリノン様の像を持って行っても同じ様な状態になったみたいだ。
 何でも、昔、ミスコンみたいなイベントがあって、それで、大差をつけて負けたのを未だに引きずっているらしいね。
 僕なんか都合の悪い事は三歩歩いたら忘れられるのに。
 損な性格だね、リノン様。
 いつまでも根に持って、大人げないなぁ。
 そんなリノン様だけど、ダンディな僕は守ってあげたくなるけどね。
 シエル様とサエラ様以外の曇天様にもリノン様は多少、コンプレックスを持っているらしいね。
 何でも、十二曇天の座を巡って、全員に挑戦して、片っ端から負けてったみたいなんだよね。
 要するに、十二曇天様全員に何らかのコンプレックスがあるって事だね。
 まぁ、あぶれちゃったんだから仕方ないのかも知れないけどね。
 僕と一緒にお風呂にでも入ればスッキリするよ、きっと。
 ブルッ
「何?今、寒気が……」
 リノン様、それは寒気じゃなくて、僕との夢のお風呂のコラボを楽しみにしている武者震いってやつだよ。
「可愛い、リノン様」
「あんまり見ないでよ。妊娠しちゃうでしょ」
「大丈夫、僕は曇天様との間の子供もちゃんと認知するから」
「ふざけないで」
「まぁまぁ、とにかく、リノン様は十二曇天様の仲間入りを果たしたら僕らのお願いを聞いてくれるって事でしょ?」
「まぁ、それなら考えてあげなくもないってだけよ。私に願いを叶えて欲しいならそれなりの対価が必要よ。」
「じゃあ、僕がリノン様を手取り足取り腰取り導いてあげるよ。だから安心してね」
「腰取りは余計でしょうが。そんなんだから信用できないのよ」
「信用してくれて大丈夫だよ。僕の真剣なまなざしを見て」
「あなたのお姉さんじゃないけど、私もあなたの目は腐っているように見えるわ。あふれでんばかりの欲望に満ちあふれているっていうか」
「欲望じゃないよ。それは僕の夢だよ」
「夢っていうと聞こえは良いけど、要するに下心でしょ」
「そこはオブラートに包んでもらってかまわないよ」
「かまうわよ。そこが問題なんでしょ。私の近くにも寄らないで欲しいわね」
「そんな危険人物みたいに」
「私の貞操に関してはかなりの危険人物でしょうが、あなたは」
「飢えた野獣じゃないんだから」
「欲望に飢えた珍獣でしょう」
「そんなぁ」
 リノン様、解ってますよ。
 ツンデレさんですね。
 チクチクするこの痛み。
 何だか、ちょっと快感です。
「目がいやらしいのよ、あなたは」
「そんな事ないですよ。このキラキラした目を見て下さい」
「ドロドロして濁っているようにしか見えないのよ」
「照れなくてもいいんですよ」
「照れてないわよ」
「嫌も嫌も好きの内って言いますもんね」
「正直、あなたには無関心でいたいけど、無関心でいたら、どんなエッチな事をされるかわからないから身構えているのよ」
「安心して、僕は優しいから」
「やらしいの間違いでしょ」
「リノン様!」
「飛びかかってくるな、天罰ほいっ!」
 ピシャーッ
「うぎゃーっ」
 僕は照れ隠しの雷を受けた。
 愛を感じるなぁ。
 僕は全身で、リノン様の愛を感じ取った。
 それに嫉妬したのか、にーちゃんが、声を荒げてきた。
「おい、じゃれつくな。話が進まんだろうが」
「じゃれてないわよ、どうみたら、このけだものとじゃれているように見えるのよ」
「オレの目には、お前達が仲良しこよしのカップルに見えたぞ」
「どういう目をしているのよ。弟と同じで目が腐っているんじゃないの?」
「黙れ。オレはとにかく、オレの身体と弟の身体を交換する力を持っている曇天の事を知りたいんだ。お前の知っている事をさっさと話せ」
「む、曇天に対して失礼な、天罰喰らわすわよ、あんたにも」
「ふっ、落ちこぼれの貴様の天罰など、オレが黙って喰らうと思うか?ちゃんと身代わりは用意してある」
「身代わり?」
「そうだ、そこの愚弟だ。オレの代わりに煮るなり焼くなり好きにするが良い」
「だってさ?とりあえず、受けとく、天罰?」
 とリノン様がこっちを向く。
 そんな、にーちゃん。
 あんまりだ。
 僕が可哀相じゃないか。
 天罰は寿命を縮めるんだよ。
 僕が不憫じゃないの?
 リノン様が僕に対する愛情表現としてやってくれる天罰は受けられるけど、にーちゃんの代わりに受ける天罰は話が別だよ。
 にーちゃんへの愛を代わりに受けるなんて、心は僕に向いてないって事じゃないか。
 そんなの嫌だ。
「あなたの愚弟がまた、何か変な曲解した事考えている見たいよ?」
「ふっ、弟の頭には脳みその代わりに煩悩を練り込んだ、合わせ味噌が詰まっている。奴の考える事など、オレが理解する必要ない」
 二人とも照れ屋さんだなぁ。
 僕への愛を素直に認めたくないんだね。
 解るよ、その気持ち。
 うんうん。
 僕が……
「だから、あんたの妄想が入ると話が進まないでしょうが。天罰、ほいっ」
「ぴぎゃぁっ」
 と、とにかく、リノン様が他の十二曇天様の説明をある程度かいつまんでしてくれた。
 それぞれ、魅力的で、僕は他の曇天様達にも早く会いたいなと思うようになった。
 それはにーちゃんも同じみたいで、曇天様達を降臨させるべく行動に移す事にしたみたいだ。
 リノン様の話では僕とにーちゃんの野望を叶えてくれそうな曇天様の事がよく解らなかったので、とりあえず、降臨方法が確定した曇天様から、順番に、どんどん降臨していってもらおうという事になった。
 幸い、うちは成金のとーちゃんのお陰で、余っている部屋の数は曇天様達全員に一部屋ずつ割り当ててもまだ余るくらいあるので、降臨して貰った曇天様は全員、うちに住んで貰うという事になるね。
 僕としても美少女がうちに住んでもらうのは歓迎出来る事。
 曇天様達は全員僕のもの。
 にーちゃんも僕のもの。
 にーちゃんは曇天様達は自分のものって言うと思うけど、それはそれ、にーちゃんもひっくるめて、全体的には、僕のものっていう事で。
 もちろん、リノン様の事も忘れてないよ。
 リノン様の腰回りは確かに魅力的だし。
 僕としてはリノン様も他の曇天様達と同じように愛してあげるよ。
 いやぁ〜楽しみだなぁ〜。
「お前、変な事考えているだろ、とりあえず……」
「痛い、痛い、ぐりぐりはやめて、にーちゃん」
「お前は放っておくとろくな事を考えないからな、たまにぐりぐりしてやるのが兄の愛だと思え」
「そんな愛はいらないよ。あ、でもおっぱいがちょっと当たるから良いかも」
「せいっ」
「痛い。殴るのは嫌」
「うるさい、黙れ、愚弟」
「――早く、像に戻りたい……」
 僕らは、こうして打ち解けていった。


続く





登場キャラクター説明


001 蛇遣曇天(じゃけんどんてん)リノン
蛇遣曇天リノン
この物語の主人公その1。
曇天進行のある乳球(ちちきゅう)の神様に当たる存在。
立像の中で眠っていたところを小田桐姉弟に無理矢理起こされ降臨させられてしまう。
胸に対して強いコンプレックスを持っている。
天罰として、雷を与える事が出来る。










002 小田桐 侑輝(おだぎり ゆうき)
小田桐侑輝
自分の事をオレと言う女の子。
心は男性で、女性の事、特に、自分の事が大好きで、自分を抱きたいために、弟の身体と心を取り替えることを野望とする。
性格はかなり乱暴。
野望に刃向かう者はとにかく叩き潰すという性格。







003 小田桐 流星(おだぎり りゅうせい)
小田桐流星
姉の侑輝の事が大好きな男の子。
自分の都合の良い方向に物事を考える性格。
性格はかなり危なく、性犯罪者として裁かれていないのは奇跡と言えるほど変態チックな少年。